異世界でもお前のパンチを見せてやれ!   作:Hetzer愛好家

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未知の先へ

 勝手に身体は動いていた。

 

 火球をストレートで打ち消し、すぐさま飛来した風球は咄嗟の裏拳で弾く。スマブラマックの上強みたいな動きになってしまったが、何とか弾けてひと安心だ。

 

「あっっぶね……」

 

 数秒は休憩していたお陰で、何とか身体が動いた。この2発で既に体力はレッドゾーンだが。

 

「あ、ありがとう真久野くん。流れ弾かな?」

「……いや、流れ弾に見せかけた物かもしれない」

 

 確かに、クラスメイトは今必死にトラウムソルジャーと戦っている。俺とハジメが席を外している間に囲まれていたらしく、チラホラとしか様子は確認できないが。

 

 必死に戦っていれば、必然的に視野は狭くなるので、流れ弾がこちら側に飛んでくる事もありえなくはない。

 

 だが。あの火球と風球は。明らかに俺たちを狙った魔法攻撃だったように感じるのだ。

 

「流れ弾なら、あんな正確に俺たちの方まで飛来するとは思えないんだよ」

「……言われてみれば、確かに」

「それに流れ弾だと言うなら、もっと他にもこちらの方に飛んできても良いはずだ。だが、今のところ飛んできたのはあの2つだけ。おかしくないか?」

 

 誰が攻撃してきたのか。誰が、明確に殺意を持ってこちらに魔法を放ったのか。それは分からない。

 

 だが、攻撃された事実に変わりはない。気を抜いたら、一瞬でやられてしまうだろう。

 

 特に今は、警戒心を緩めてはならない状況だ。もしも攻撃を受けて、この橋から落ちてしまったら。そう考えるだけでもゾッとする。

 

「ハジメ。ここからは普通に歩く。クラスメイトから攻撃を受けた疑惑がある以上、すぐに対応できる体勢じゃないと危険だ」

「そうだね。取り敢えず、互いの動きに干渉しない程度の距離感で歩こう」

 

 互いに頷き合い、腕が当たらないぐらいの距離感を空けてゆっくり歩く。

 

 随分とトラウムソルジャーの数は減り、囲いも今ではすっかり瓦解している。ついでに、クラスメイトの顔も見えるようになった。

 

 真っ先に俺たちを視認したのは白崎だ。次いでメルド団長。トラウムソルジャーの数が減ったのを良い事に、こちらに一目散である。

 

 随一のヒーラーと騎士が抜けても大丈夫なぐらい、戦線は安定しているようだ。本当に何とかなったらしい。

 

「南雲くん! それに真久野くんも!」

「ハジメ! ケン! お前ら無事だったか!」

 

 俺は軽く手を上げて応え、ハジメも苦笑いしながら手を振っている。

 

「お前ら、ベヒモスは!?」

「あー、俺とハジメで奈落の底へ落としました。これ、討伐の内に入りますかね」

「何ぃ!? おいおい、本当に大したもんだなぁ! かつて最強と呼ばれていたパーティーですら討伐できなかった魔物を、たった2人で……!」

 

 感極まってる団長。あんな形で俺たちに命を預けた事が、もしかしたら申し訳なくて仕方がなかったのかもしれない。

 

 白崎の回復魔法を受けながら、俺たちは苦笑いする他なかった。

 

「まあ、運が色々と良かったです。俺の持ってる技能が、ことごとく格上キラーなので。それにハジメの戦い方も格上キラーですから」

 

 俺はともかく、ハジメの戦い方は相当に格上殺しな部分がある。

 

 内部から破壊は基本だが、その極地を行くハジメがいたからこその勝利だ。

 

「後でゆっくり、騎士団員も含めて戦いの経過を聞かせてくれよ。もう何年か分からないが、あのベヒモスも討伐だ。お前たちの奮戦具合を正確に把握し、お上に伝えたいのでな!」

「はは、分かりましたよ。でもその前に迷宮からの撤退ですね」

「違いないな。よーし、そろそろ頃合いだ。2人共回復はできたか?」

「俺はオッケーです」

「僕も行けます」

「良し! ならば行くぞ! おい、皆でそろそろ撤収を開始するぞ! 今交戦している魔物を蹴散らした者から、階段の方へ向かえ!」

 

 メルド団長は、一足早くクラスメイトの方へ戻っていきながら指示を飛ばしている。

 

 それに続くように、白崎でも追いつける速度で俺たちも走り出した。

 

「ねえ、南雲くん。後で私にもいっぱいお話し、聞かせてね?」

「あ、あはは。僕で良ければ喜んで」

 

……ま、ラブコメする余裕があるならハジメも白崎も大丈夫そうだな。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 魔物との交戦を極力避けた最短距離での脱出。

 

 おそらく、歴戦の騎士団員たちが同行していなければ不可能だった芸当だった。

 

 マッピングが確実にされていない階層であっても、騎士団の素早い判断と移動のお陰で、俺たちはほとんど戦闘を行う事なくトラップが起動した20階層まで戻ってこれたのだ。

 

 そこから更に上を目指すのは辛かったが、どうにかこうにかして俺たちは入口のある広場まで戻ってきた。

 

 外の明るい光を浴び、そして爽やかな空気を吸った事で、俺はすっかり緊張の糸が解けてしまい、その場に座り込んでしまった。

 

 忘れかけていた事だが、俺はクラスメイトの誰よりも長く、延々と強烈な殺意を感じながら戦い続けていた。それによる精神的疲労は非常に重い。

 

 ボクシングで試合をするよりも。スマブラの配信台で試合をするよりも疲れた。

 

 まあ、クラスメイトの多くが俺と同じように気が抜けて座り込んでいるので、特に戦闘回数が多く時間も長い俺がこうなるのも自明の理である。

 

「真久野」

「おう園部。どうやら無事だったみたいだな」

 

 地面に足を投げ出してボーっとしていると、いつの間に園部が俺の隣に腰を下ろしていた。

 

「……ありがとう、色々と」

「約束だったからな」

「斬られた腕は?」

「もう白崎に治してもらった。アイツ、本当に凄いな。あっという間に傷口が塞がっちまったよ」

 

 園部が死にそうになってたら、この身体が動く限り守ってみせる。そう約束した。だから、あのトラウムソルジャーに斬られても守り抜いたのだ。

 

 約束は守る。決めた事は最後までやり通す。人間として当たり前の事だろう。

 

 だが、どんなに約束だと言われても。約束を盾に、俺が傷つくのを見ていて園部が気に病まないはずがない。こいつ、本当に優しい人間だから。

 

「まあ、気にするって言うなら今度は園部が、死にそうになった俺の事を助けてくれや」

「……うん。絶対、助けるから」

「期待してるよ」

 

 気休めになるかは分からない言葉を投げかけると、少し園部の顔色が良くなった。

 

 心の中に立ち込める暗雲を、全て払えた訳ではないだろう。だが、園部が潰れるような事態は避けられそうだ。

 

 何となく。本当に何となくだけど。異性の中で園部だけは、潰れずにこの先も前に進んでほしい。そう思える唯一の女子である。

 

 だからなのだろう。こんな言葉を投げかけたのも。そもそも、約束なんて称して「守る」と言ったのも。

 

「やれやれ。分からん事だらけだな……」

「え、何が?」

「言葉の通りさ。これから先の事もそう。それに今俺が抱えている、園部に対する気持ちも……」

「へっ」

「そんな大した事じゃない。気にするな」

 

 少し座ってた事で、かなり体力は回復した。

 

 俺は立ち上がり、軽く伸びをしながら未だにラブコメを繰り広げているハジメたちの元へ向かうのだった。




 シレッとマックくんの上強アンチエアナックルを取得しています。飛び道具を消せて便利だね。

 奈落落ちはどうにか回避しましたが、まだまだマックくんとハジメくんの受難は続きます。

※ハジメくんの技紹介
✦錬成パンチ
…錬成の魔法陣が描かれた手袋を改造し、人を殴る道具に変えた上で、〝錬成〟を発動させながら人体や武具に殴る事で起こるガード不能の必殺ブロー。

 大前提として、この世界の錬成は鍛冶職で使う魔法であり、攻撃に扱う人間は存在してなかった。そんな〝錬成〟を攻撃に使用するべく、ハジメが思考に思考を重ねて編み出した努力の結晶とも言えよう。

 何度も描写しているし、過去に大まかな概要は描いているのだが、改めて使用用途を説明すると、人体や武具に含まれる〝鉄分〟や〝鉱石〟を狙う技。

 武具に対して使用した場合、不用意にパンチを防ごうとすると逆に武具が一瞬にして使用不可になるガチの初見殺しブロー。ハジメのイメージ次第だが、基本的にグニャグニャと形を変えて役立たずにされる。

 人体に向けて使用する場合は、そのままだと効果が薄いので、流血するぐらいの傷を負わせた上で敢行する。傷口を抉るようにして殴る、あるいは手刀を刺す事で発動し、体内に含まれる鉄分が強制的に形を変えられる。大体は刃物に形を変え、内部から対象者の体と精神を破壊する。あのマックくんをして「怖い」と言わしめるぐらいむごい。

 弱点としては、地面を〝錬成〟して戦うのと同じくド至近距離まで接近しなければ使用不能な点。人体には傷を作らないと効果が薄い点。そして、武具や肉体に魔封じのカラクリがあると発動が難しい点。

 奇しくも遠距離武器の花形である拳銃とは相性抜群な攻撃方法だったりする。

マックくんの新たな恋人候補

  • 〝初恋枠〟優奈ちゃん
  • 〝妹枠〟ルウちゃん
  • 〝大穴枠〟恵里さん
  • ハジメくんの嫁候補以外のクラスメイト
  • アルテナを始めとする亜人族の皆様方
  • 〝英雄〟に嫁ぎたい帝国住まいの方々
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