異世界でもお前のパンチを見せてやれ!   作:Hetzer愛好家

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 今回で本編100話目。文字数も70万字超えらしいです。ちなみに過去のありふれ小説は完結(126話)して50万字いかないぐらい。いっぱい描いてますね。

 超ハイペースで大迷宮攻略を進めているので、原作より一足早いタイミングでタイトル通り最後の大迷宮になりました。

 原作でも相当に厄介な大迷宮でしたが、本作ではどうなる事やら……。


最後の大迷宮

 フリードとあわや殴り合いにまで発展するのではと感じた事情聴取だが、終わってみれば特に何かが起こる事もなく、無事に済んだ。

 

 今後の方針も固まった。良きタイミングでライセン大迷宮を出発し、樹海の大迷宮に挑むつもりである。ただ、俺と優花は1度も樹海に足を踏み入れた事がなく、亜人族の知り合いが身近にいる訳でもないので、ひとまずハジメからの連絡待ちであるが。

 

 案内をしてくれる亜人族がいないと、マトモに探索する事すら叶わないのが【ハルツィナ樹海】だ。空間魔法でワープするしてにも、大樹の座標を知らない俺たちでは、即座に移動する事は難しい。そのため、攻略が完了したハジメから〝念話〟が来るまでは、動こうにも動けないのである。

 

 なお、中村にフリード、そしてサンドマンと白竜も、今回の大迷宮攻略に参加する事になった。

 

 中村に関しては、魂魄魔法の極みに到達するためには、必ず樹海の大迷宮攻略を果たさなければいけないらしく、オスカーとミレディから頼み込まれた。そこで手に入る神代魔法については教えてくれなかったが、何が何でも必要との事だったので、渋る優花を説得して同行を許可した。

 

 まあ、その日の夜は色々と大変だったのだが。

 

 オスカーが制作したアーティファクトと、今日まで努力を怠らなかったであろう本人の技量もあって、戦力としては申し分ない。足手まといにはならないだろう。ミレディと鍛錬をする一環で、さり気なく重力魔法を習得している点も評価できる。

 

 ちなみにフリードたち魔人族勢は、より強大な力を手に入れたいというシンプルな理由である。俺としては、こっちの方が単純で分かりやすい。サンドマンとは、大迷宮にいる間は争わないという形で、お互いに協力しながら攻略できたという実績もあるので、こちらも承諾した。

 

 ハジメからの連絡があるまでは、俺たちができる事は少ない。フリードは時折外に出て魔国へ戻り、ダーズについて調査を行っているが、それ以外の時間は基本的に鍛錬である。

 

 何だかんだで帝国の拳闘大会の時以来である、サンドマンとの本気の殴り合いは、中々に楽しい時間であった。

 

 仮に紙に書き出せば、ほぼ垂直というバカみたいな成長曲線になるぐらい、戦闘能力が短期間で伸びている俺であるが、サンドマンもそれに負けない勢いで急成長している。ハイリヒ王国で優花と殺り合った時は、素の俺と同等レベルのステータスだったそうだが、そこから更に成長しているようだ。

 

 戦ってみた感じ、身体能力を強化する魔法を1つも使わなくても、神格を得る直前の素の俺と同等か、何ならそれ以上のステータスを持っていそうである。

 

 そこから倍率補正をかけて強さが増していくので、場合によってはハジメと良い勝負ができるのではないだろうか。変成魔法で無限に力が伸びていくので、下手したら勝つ事も有り得る。

 

 まあ、ハジメの方も、まだまだ伸び代が随分と残っていそうな雰囲気があるので、戦いの場で新たな派生技能に目覚めて、更に壁を超える可能性を否定できないのだが。

 

 サンドマンの急激な成長に隠れてしまっているが、フリードと白竜の戦闘力も短期間で相当高まっており、大迷宮へ挑むには十分すぎると言える。危害を大迷宮攻略が完了するまでは加えないという相互不可侵の約束を取り付けている今は、頼もしい戦力と言っても問題ないだろう。仮に約束を反故にされて手を出されても、しばき倒せば良いだけの話だ。

 

 いつでも大迷宮に挑める状態を作って待ち続ける事、1週間。

 

〝マックくん。樹海の大迷宮の攻略が終わったよ〟

 

 待望の、ハジメからの〝念話〟が来た。

 

〝大樹、だったか。そこの座標を頼む〟

〝了解! ちなみに、大樹に攻略の証を4つ嵌め込んでから再生魔法を行使すると、入口が現れるシステムなんだけど、先んじてやっておいたよ!〟

〝おおう、めっちゃ助かる。再生魔法を発動するだけで、俺も優花も結構な魔力を消耗しちまうんだよ。ありがとうな〟

 

 サラッと大迷宮の入口を出現させてくれていたハジメに、思わず笑みが溢れる。ごく自然に、人が喜ぶ事を下心ゼロで実行できる。それが、南雲ハジメである。

 

 それと、大樹付近にハジメたちがいた場合、色々と厄介な事になっていたと思うので、先に入口を出現させて撤収してくれたのは地味に超ファインプレーだ。

 

〝気をつけてね。本当に性格悪い大迷宮だから〟

〝どの大迷宮も大概性格が悪い気がするが……ちなみに、ミレディとどっちが上だ?〟

〝僕としては圧倒的に樹海。久しぶりにキレ散らかしたぐらいだよ〟

 

 ハジメをキレさせるって、どんだけエグい試練だったんだよ。

 

 その内容を軽く聞いておこうと思った俺だが、ハジメがお嫁さん候補たちに揉みくちゃにされてしまったらしく、〝念話〟が届かなくなってしまった。

 

 仕方ない。覚悟だけしておくか。

 

 出発するという事を伝えると、早速ミレディが中村にダイブして、ビエンビエン泣き始めた。

 

 やれ道端に落ちている草を食べるなだの、寂しくて死んじゃうだの。過保護にも程がある……あ、よく見るとウソ泣きじゃねえか。迫真の演技すぎるだろ。

 

 そんなミレディをウザそうにあしらいながらも、どこか幸せそうな中村。両親からの愛に飢えていたとは言え、それで良いのかお前。

 

 いや、意外とチョロいのかもしれない。それか、構われるだけで嬉しく思っちゃうタイプなのかも。

 

「チョロい」

「ブフッ……」

 

 優花が実際に言葉に出した事で、シュバッとミレディから離れた中村。図星っぽいな。

 

 軽く笑うと、こちらをジトッと睨む中村だったが、今更「違いますよ」感を出されても遅いんだわ。

 

 中村にチョロい属性が追加されたところで、俺たちは出発する事にした。不服そうな表情を浮かべているが、知った事ではない。

 

 優花がナイフを使って開いたワームホールに飛び込むと、すぐ眼前に立派な大樹が現れた。真正面の幹は空洞となっており、数十人が余裕で同時に通過できそうなぐらいの広さがある。

 

 日本、いや外国であってもまず見られないサイズの、超巨大な大樹に、思わず言葉を失って圧倒される。それは他のメンバーも同じようで、数分間は立ち尽くして全員が大樹に目を奪われた。

 

 が、いつまでもこの状態という訳にもいかない。真っ先に我を取り戻した俺は、手をパンッと叩いて全員の意識を元に戻す。

 

「行くぞ」

 

 頷いたフリードが白竜を連れて1番に入口を通過し、その少し後をサンドマン、中村、そして俺たちの順で歩き始める。

 

「ケン」

「うん?」

「……ちゅっ」

 

 なお、俺と優花はほんの少しだけ初動が遅れた。

 

 今回は人数が多いから、流石に自重するかなと考えていたのだが。3人と1匹が入口に視線が釘付けになってる時なら、確かに問題なかった。

 

「……1本取られたな、こりゃ」

「最後の大迷宮攻略だし、ね?」

 

 そうか。最後か。超ハイペースで大迷宮の攻略を進めていたから、すっかり忘れていた。

 

 もうすぐ、日本へ帰るための手段が手に入るかもしれない。そう思うと、嫌でも胸が高鳴ってしまう。

 

 が、気の緩みは死に直結する。気合いは十二分に入ったので、ここからはいつも通り、気を引き締めて戦いに挑もう。

 

 無言で優花とグータッチを交わしてから、洞の中へ足を進める。だが、割とすぐに行き止まりが見えた。

 

 訝しんで辺りを調べているフリードとサンドマン。が、俺と優花が足を洞の中へ踏み入れてから、少しずつ閉じていた入口が完全に塞がれ、地面に強烈な光を発する魔法陣が出現した事で、すぐに落ち着きを取り戻した。

 

 流石は大迷宮の経験者。転移陣だと即座に見抜いたようだ。

 

 一瞬だけ焦った表情を浮かべていた中村も、かつてオルクス大迷宮で経験した転移陣を思い出したようで、すぐにスンとした。切り替えの早さ、良し。花丸あげちゃう。

 

 転移の度に驚いていたら、その隙を狩られてそのうち死ぬ。だが、中村はそういう物だという割り切りができるタイプらしいので、その心配はしなくても良さそうだ。これで手間が1つ減る。

 

 爆発的に光度を増した魔法陣の輝きに、思わず目を閉じる。すると、僅かにだが神代魔法を得る前の精査を行う時のそれと同じ、脳内を探られる感覚があった後に、意識が遠のく感じがあった。

 

 さて、攻略開始だ。次に目が覚めたら、全力で頑張らせてもらおう。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 

 

 ???

 

 4つの大迷宮を攻略できるだけの〝力〟。

 

 再生の力。

 

 そして、紡がれた絆の道標。

 

 全てを有する者だけに開かれる、新たな試練。

 

 大迷宮とやらの例に漏れず、実に嫌らしい。しかし、神殺しを成す〝人間〟を育て上げるには、確実に必要となる試練だろう。

 

 1人の例外を除いて。

 

 真久野ケン。神の領域まで届いた彼の力は、大迷宮から与えられる試練程度では、いとも容易く粉砕してしまうだろう。

 

 愛する者の姿形が変わり、言語が通じなくなったとしても。感情の方向が反転したとしても。彼は、特段苦労する事なく、乗り越えられるはずだ。

 

……それでは、面白くない。

 

 確かに真久野ケンは、人の身から常軌を逸した鍛錬と覚悟の果てに神域へ達したが、まだまだ人間として成長できる余地が残っている。

 

 その全てを見ずして、神性を成長させる過程を見届けろなどという拷問を、我はきっと耐えられない。

 

 神性などと言う物は、いつでも磨く事ができる。しかし、1度神性を磨き始めれば、人間としての成長にまで目を向ける時間は、完全になくなってしまう。

 

 だから、1つ意地悪をしよう。人間として成長するための、意地悪だ。

 

 異なる発展を遂げた、別時空に存在する世界へ干渉を及ぼせる範囲は、如何に我と言えども、そこまで大きくはないがね。

 

 何せ、この身をそちらの世界へ移してしまえば、均衡が崩れたこちらの世界が簡単に崩壊してしまう関係上、思念体を送るだけで精一杯なのだから。思念体では、成せる事も限られてくる。

 

「あれ、神様の思念体? こっちの世界に来るなんて、珍しい事もあるもんですね」

 

 おお、愛しい神子よ。我は、少しあの者に、意地悪をしたくなったのだ。

 

「え、ケン先輩に? ああ〜、もしかして、またいつもの好奇心ですか?」

 

 その通り。流石、よく我の事を分かっているな。

 

 いや、神子となってからもう2年以上の月日が経つのだから、それもおかしい話ではないか。

 

「全く、好奇心が強すぎるのも考えものですね。国内外問わず、それで大変な目に合った神様もいるのに……」

 

 ふふふ。人間と同じく、神であろうと好奇心をそう簡単に止める事はできないのだ。

 

 特に、人間が試練を与えられた時、どのような形で乗り越えて成長していくのかを見るのは、我の密かな楽しみなのでな。どうしても、こればかりは止められないのだよ。

 

 それとも。貴殿は、愛しい人が藻掻き苦しむ姿を見たくないという一心で、我を止めようとするのかな。

 

「いや全く。神様は、厳しい試練は与えても、乗り越える事が不可能な試練は与えないでしょう? それに……」

 

 それに?

 

「ケン先輩に限れば、どのような形でも成長する様子を見守るのは、楽しいですから。あの人ほど、その時々の成長度合いによって見せる姿が変わる人は、他にはいない。まあ、終わったら目一杯甘やかすし、全力で甘え倒しますけど!」

 

 そう言って笑う神子。

 

 嗚呼、心の底から、あの男の事を信頼しているが故の言葉であるな。何度見ても、本当に美しい。

 

 あの神を気取った気狂いの男のように、自らの手で壊すような真似は、決してしたくない。

 

 その美しさが、更に増すという確信があれば。我は、迷う事なく難解な試練を与えるが。

 

「さて、真久野ケン。貴殿はどこまで抗えるかな」

 

 その強さの源。これまで紡いできた絆の道標を絶たれた状態で。どこまで。




 優奈ちゃんの情報から、一体誰の神子なのかを予測するのは……まだちょっと難しいですかね。情報少なすぎるかも。

 一応、私の中で誰にするのかは決めています。

 さて、“好奇心”を題材にした神話や昔話は、国内外問わず似たような内容が多いです。その中でも「〇〇するな」は鉄板ネタでしょう。振り向くな、覗くな、開けるな。まあ、大抵の場合は碌な目に合わないんですが。
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