異世界でもお前のパンチを見せてやれ! 作:Hetzer愛好家
「っ、ここは……」
光が戻った視界に映ったのは、果ての見えない鬱蒼とした樹海だ。
気候はいかにも樹海って感じである。ジメジメと湿度が高く、何もしなくても絶妙に汗ばむぐらいの気温だ。端的に言ってダルい。
顔を顰めながら、更に周囲を見渡す。すると、白竜に跨るフリードが目に入った。
「む、サンドマンとナイフ使いの女の姿が見えなくなった……待て、貴様。その姿は何だ?」
険しい表情で辺りを見渡していたフリードだが、俺の顔を見て目を見開いた。
何だ、そんなにおかしい姿をしているか。別にいつも通りだろう。
軽く不機嫌になりながら、手や足を見るが、特に変化は……。
「……心做しか、細くなった?」
そう発した俺の声は、幾分か高く聴こえた。
言葉の通り、俺の手足はつい先程よりも、少しだけ細くなっている。筋肉質ではあるが、間違いなくここまで細くはなかった。そう分かるぐらいの変化である。
「ま、真久野。何か、少しだけ若返ってない?」
そう言う中村との目線は、いつもより高い位置にある気がする。
おかしい。中村との身長差は、頭1つとちょっとぐらはあったはずだ。
確か、奴の身長は155センチぐらいで、俺は170を超えている。それが今は、そこまでの差が見られない。
「身体特徴は、中学3年生ぐらいの頃が1番近いな。流石は大迷宮、早速面倒な事をやってくれる……」
しかし、妙だな。若返らせる事で弱体化を強いるなら、もっと幼い頃まで戻してしまえば良いはずだが。それこそ、小学生低学年ぐらいまで逆行させてしまえば、マトモに大迷宮では戦えないと思う。
攻略の余地を残しているのか、それとも別の趣旨があるのか。現時点では、ちょっと分からない。
何度かその場で動きの確認を行いながら、技能の発動ができるか一通り試してみるが、僅かに素の戦闘力が低下したぐらいで済んでいる。
「取り敢えず、進むしかないな。視界に入った〝敵〟を殺し続ければ、いつかは終わるはずだ」
「まあ、そうだね……? ああ、それと。はぐれたサンドマンや優花も探さないと」
確かに。この場にサンドマンの姿は見られないから、探さないとダメだな。
だが、引っ掛かりを覚えて、俺は中村に尋ねた。
「ユウカ……て、誰だ? お前の知り合いか?」
「はあっ?!」
「えっ」
酷く驚いた様子を見せた中村。そんなに変な事を言った自覚はないので、俺も思わず声を出してしまった。
「誰って、それ本気で言ってる? あんなにボクの前で、見せつけるようにイチャコラしていた恋人の、園部優花の事を、誰って。冗談にしては、流石に笑えないんだけど」
「何言ってるんだ中村。俺は、〝恋人どころかマトモな異性の友人すらいない〟ぞ」
「嘘、だろ……」
ユウカ。ソノベ、ユウカ。何度か脳内で名前を呼んでみたが、全くピンと来ない。少なくとも俺の中では、〝全く知らない誰か〟の名前となっているようだ。
中村が、この世界へ来てから仲良くなった友人なのだろうか。
まあ、別に中村の友人とやらがどうなろうと、俺としては知った事ではないので、凄まじくどうでも良い。無駄話をする時間も勿体ないので、サッサと大迷宮の攻略に移ろう。
未だに動揺している中村を放って、俺は先へ進む事にした。
慌てて俺を追い掛ける中村と、同じく怪訝そうな表情を崩さないフリードを引き連れて、樹海を探索する。
白い霧がどこまでも広がっている関係上、あまり視界には頼れない。技能による探知を使いつつ、第六感と聴覚に意識の多くを注ぎ込む。色覚の情報は……必要ないな。凍らせちまおう。
誰も、一言も発する事なく足を動かす。時折中村が何かを言いたそうな表情を浮かべているが、それだけだ。
特に気に掛ける事はなく、ひたすら辺りの索敵をしていた俺は、15分ぐらい歩いたタイミングで足を止めた。
「お前か」
そして、すぐさま後ろを振り向くと、能面のような表情でこちらに手を翳していたフリードの腕を捻り上げた。
途端に能面が崩れ、焦った顔で腕を引き抜こうとするフリードだが、俺の拘束を解く事はできない。
いきなりご主人様の腕を捻り上げたと思ったのか、白竜が猛スピードで俺にタックルを仕掛けたが、微動だにしない俺に弾き飛ばされる。
「な、何を」
「俺に殺意を向けたな? なら〝敵〟だ。死ね」
尚も弁解しようとするフリードだが、それより先に俺の正拳突きが顔面の中心に命中した。
螺旋を描きながら放たれた拳は、顔面の肉を巻き込みながら貫通していく。
俺の手には、頭蓋を砕くあの嫌な感覚はなく、代わりにブヨブヨとした何かを殴ったような、奇妙な感覚が遺された。
一瞬怪訝に思って首を傾げそうになったが、すぐにその答えは出た。
「……なるほど。魔物の擬態だったのか」
弾け飛んだと思われたフリードの頭部からは、赤銅色のスライムのような物が飛び散っていた。やがて頭部を失った胴体も、ドロリと形を崩して地面のシミになっていく。迷いなく頭部を粉砕して正解だったらしい。
フリードの頭部が吹っ飛ばされたと思ったら、今度は赤銅色のスライムとなって地面のシミとなった様子を見て、呆然としている白竜の顔を軽く叩いて正気に戻す。
「多分、どこか別の場所にフリードも飛ばされている。そのうち合流できると思うけどな」
クルァ……と安心したかのように鳴く白竜。まあ、衝撃的な光景ではあったな。変に力が入っちまうのも無理はない。
本来なら、いきなりフリードの頭部を粉砕して驚かせた事を、白竜に謝るべきなのだろうが。あいにく俺は、今の行為を全く悪いとは考えていないので、謝罪の言葉は一切思い浮かばないのが、終わり散らかしているとは思う。
いつものように、俺を害そうとする〝殺意〟に反応しただけだ。日本に住んでいた頃から、日常的にやっていた事である。もはや癖と言っても過言ではないので、今更変えようにも変えられない。
「容赦なさすぎじゃない……?」
「別に、いつも通りだ。仮に中村だろうと、〝殺意〟をぶつけてきたら、今みたいに反応するだろうよ」
本物を殺ってしまう結果になったとしても、仕方ないと割り切れるだろう。これが、〝いつも通り〟だから。
心の奥底で、誰かが何かを叫んでいるような気もしたが、何の言葉を話しているのか認識できない。だから、間違いなく本当の事である。
「……本当に、真久野なんだよね」
「何だよ藪から棒に。真久野ケンその人だが?」
「うん、そうだよね。さっきみたいなスライムの擬態じゃない、本物の真久野だよね。信じられないけど……」
何とかして、自身を納得させようとしている中村。だが、どうも上手く行かないらしい。
偽物だ擬態だと思われるのは心外だが、特に害がある訳でもないので、ここからは無視する事にしよう。そう決めて、俺は前を向く。
長々と同じ場所に留まる訳にはいかない。既に、遠くから無数の〝殺意〟がこちらに近づいてきているし。
「取り敢えず、間違えて〝殺意〟を向けるような真似をしなければ、危害は加えねえよ。多分」
「向けられる訳ないだろ、真久野に。ったく、少し前のボクをぶん殴ってでも止めたい……」
クルルァ。
「君もそう思うかい? なら同志だね。被害者の会でも設立するかな。結構な数が集まりそう」
白竜と中村が変な形で意気投合しているのを尻目に、俺は前方から迫る無数の〝殺意〟に向けて、風神閃焦拳の遠当てを放った。
籠手から飛んだ衝撃波が、木々を薙ぎ倒しながら数百メートルは先にある無数の〝殺意〟に命中し、凄まじい風圧によって身体を引き千切っていく。それを何度か繰り返すと、最初と比べて大きく数を減らした〝敵〟の姿が目に映った。
赤子ぐらいのサイズ感の、オオスズメバチみたいな造形の魔物。クマ以上のサイズは間違いなくあると思われる、アリのような魔物。体長2メートルはありそうなカマキリ型の魔物。基本的に、生理的嫌悪感を促す虫型の魔物ばかりである。
「ま、殺せば全てただの骸。関係ない……」
白竜が放った極光によって、射線上にいた魔物が文字通り消滅したのを合図に、俺は敵中に飛び込んだ。
すぐに取り囲まれそうになるが、焦らず拳を握ると、左右のフックを連打して複数体を一気に撃破していく。背後に回る隙を与えない。
しかし、大迷宮の魔物もバカではない。何としてでも俺を殺すべく、すぐに動きを変えてくる。
近距離は厳しいと判断したハチ型の魔物は、遠距離攻撃の手段を持たないカマキリ型の魔物を囮にすると、すぐに俺から距離を取る。そして、マシンガンのように毒針を一斉に乱射してきた。発射した次の瞬間には毒針が新しく生成されているようで、リロードの間隔を全く感じさせない。
アリ型の魔物は、地面を掘ったと思えば後方支援を行う中村と白竜の方へ向かった。巨体な分、地面を掘るスピードも凄まじく速いようだ。
まあ、後方へ抜けていった奴らを相手にするつもりは毛頭ない。自分で対応してくれ。そう考えて、目の前の〝敵〟を殺す事に集中する。
こちらを狙って放たれる毒針の雨霰を、正中線に命中すると思われる物だけ躱しながら、左の手刀でカマキリ型の魔物の腕を叩き折り、前蹴りの代替技である右の掌底で腹部を爆裂させて奪命すると、屍と化したカマキリの身体を即席の盾にしながら前へ出る。それまでの間に毒針を何発も被弾しているが、〝毒耐性〟があれば即死はしないし、〝麻痺耐性〟のお陰で動きが鈍るような事もない。
ある程度の距離まで近づいた俺は、盾として手に持っていたカマキリ型の魔物をハチの大群に投げ込むと同時に気配を断ち、〝縮地〟を使った風神ステップでヌルリとハチ型の魔物の懐に入った。
超々至近距離であれば、どれだけ気配を断っていても流石に気がつけるようだが、もう遅い。避けるよりも、振り上げた拳が着弾する方が速い。
鉄槌で頭部を砕き、貫手で腹部を穿ち、手刀で胴体を真っ二つに割る。簡単な作業だ。数だけは無駄に多いが、全滅するまで作業を続けるだけの話である。
そうやって蹂躙していると、1分もしない内に、ハチの大群は姿が見えなくなった。その流れで、残っていた他の魔物も全滅させに動いたが、後半は逃げ惑うばかりだったような気もする。まあ、先に〝殺意〟を向けてきたのは魔物の方なので、徹底的に迎撃をする分には問題なかろう。
半径数十メートル以内に存在している、最後の〝敵〟であるアリ型の魔物を、俺は背中に飛び乗ってからの〝獅子切り包丁〟で寸断した。取り敢えずこれで、先に進めそうである。
「強いね、真久野」
「なんだ、生きてたか」
「酷くない?」
俺が残心を解いた辺りで隣にやって来た中村が、そう声を掛けてきた。
「それにしても、手刀に貫手、掌底、肘。全部ボクシングじゃ禁止技じゃなかった?」
「そりゃあボクサーなら使おうともしないだろうが。俺が体得している技の全ては、殺人空手の物だ。反則もクソもねえよ」
「……そうか。空手、ね。やっぱり、何かがおかしい。絶対に」
空手の技に違和感を覚えているのか、それとも俺が空手の技を使う事が変なのか。中村は頻りに首を傾げている。
高校で空手部に所属していた訳ではないし、〝殺人拳〟と称すべき技術体系を繰る人物は、表の世界で生きる限りはそう見る事もないので、物珍しいだけかもしれない。そう思いたいが……どうも違いそうだな。
攻略が終わるまで放置を決め込むつもりでいたが、ここまで妙な反応をされるのは、嫌でも気になってしまう。
攻略に影響が出ると判断し、俺は中村に聞いてみる事にした。何かおかしいのか。どんなところに違和感を覚えるのか。
「中村。お前から見て、今の俺はそんなにおかしいか?」
「おかしいとか、そんな次元じゃないかな。本当に真久野なのか、今も疑っているぐらい」
「お前が知る、真久野ケンはどんな人物だ」
「まず、天才ボクサー。クラスメイトの多くが光輝くんに夢中だったけど、テレビで名前が出るぐらい有名人だった真久野を、密かに応援している人もいた。あと、南雲ハジメと仲が良かったね。オタク友達って感じで」
「すまん、ナグモハジメって誰だ?」
「……そこもか。取り敢えず、続けるよ。真久野は、信じられないぐらい恋人優先思考だった。異世界に飛ばされて、優花と恋仲になってからの真久野は、何よりも恋人を大切にしていた。優花のためなら、簡単に自己犠牲に走るぐらいに。あっ、殺生に対して強い恐れを抱いていたのも印象深いかな」
中村からもたらされた情報を脳内で整理していくが、どれも俺という人物に当てはまらない情報で、軽く目眩がした。
ボクサー? ナグモハジメとオタク友達? 恋人を大切にしている? 殺生に恐れを抱く? 誰だそれ。
「本当に俺なのか、それ。顔が似ているだけの別人としか思えないんだが」
「だから変だと、さっきからボクは言っているんだ。つい先日まで見てきた真久野とは、あまりにも違いがありすぎる。大迷宮にはコンセプトがあるってオスカーさんから聞いてるけど、真久野の今の状態は、この大迷宮のコンセプトから外れている気がするし。だから、訳が分からない……」
そう言って、中村はまた黙って考え込んでしまった。そんな彼女をさり気なく背中に乗せた白竜。お前ら仲良くなりすぎだろ。
俺も同様に考え込む。無論、その場に留まる時間は勿体ないので、先へ進みながらだが。中村が白竜の背に乗っているので、遠慮なく歩を進める事ができる。
記憶の中に、俺がボクサーであったという情報は〝見られない〟。師範代から教わった〝殺人拳〟以外は、俺が扱える技術体系はない。と言うか、他の技術体系を習得する時間が一切なかった。
オタク友達を作るような時間もなかった。中学を何とか卒業し、高校へ進学こそしたが、アングラな世界にどっぷり身を浸からせてしまったが故に、誰かと関わりを持つ事は意図的に避けていたと記憶している。
殺生に恐れを抱くのも、まずあり得ない。そりゃあ、最初の頃は手が震えて仕方がなかったが。日本にいた頃から人殺しを生業にして金を稼いでいたので、今更殺生に対して怖いだの恐ろしいだの、無駄な感情を覚える事はまずない。
中村の言う事が、大迷宮の見せる幻覚なのではないか。そう片付けてしまえば楽なのだが、心の奥底で叫ぶ何かがそれを邪魔する。
それは違う。絶対に違う。そう叫んでいる。
正直、煩わしい。だが、その声を無碍にして幻覚扱いしようとしても、何故かできない。
悶々とした思いを抱えながら、言葉を発する事なく進み続ける。だが、鍛え上げられた俺の耳が、木々の葉擦れにズレが生じたのを捉えた。
「〝敵〟か」
そう口にして、足を止める。
少しすると、ガサガサと葉擦れが不規則になっていき、俺に向けられる〝殺意〟がまた無数に出現した。
ダラリと腕を下ろしたまま、俺は目を閉じて深く集中する。撹乱しようと、木から木へと縦横無尽に動き回っているようだが、音さえ分かれば十分だ。
5分程度、その場で〝敵〟が動き出すのを待っていると、一際大きく葉擦れの音が聴こえた。
すぐさま俺は、右斜め後ろ上方を向く。
「キキッ!?」
「バカが」
俺の目には、槍を手にしたサルがいた。十中八九、大迷宮の魔物である。グリーンカーテンから飛び出して、俺の事を突き殺そうとしていたらしい。
「死ね」
突き出された槍を左手で、空いている右手でサルの顔面を握り潰す。そして念の為、完全に脱力したサルの首を踏み折った。
それを合図として、四方八方から武装したサルたちが襲い掛かってきた。
いつの間にか白竜の背から降りていた中村が展開した障壁で数匹の攻撃を受け止めてから、白竜の爪や尻尾で殲滅していく様子を見てから、俺は彼女たちから視界を完全に切る。
長剣、槍、棍棒。そして、サル自身の爪や牙。木々を飛び移りながら、群れを成して俺を殺そうと襲い掛かってくるも、尽くを躱し、1体ずつ的確に殺していく。
近距離型で、しかも人間に近い骨格と動きをする魔物など、俺の敵ではない。
やがて、タッグで攻撃を捌き続ける中村たちより、ソロで次々とカウンターを決めてサル型の魔物を殺していく俺を最大の脅威と感じたのか、奴らの動きに少しずつ変化が生じる。
ターゲットを俺のみに絞り、少しでもダメージを与えて体力を削ろうと、視界に映る範囲と死角である背中側の両方から同時に攻撃してくるようになった。
が、それも通用せず、むしろ同士討ちが多発する結果になった。背後からの攻撃は確かに脅威だが、来ると分かっていれば避ける事も、利用して同士討ちを誘発させる事も容易い。同士討ちによって奴らが動揺したら、あとはその隙を狩れば良いだけなので、何ともコスパが良い戦法である。
ここまで手酷くやられて、やっとサル型の魔物たちは、俺を真正面から攻略する事が不可能だと判断したらしい。せめて人質を取ろうとでも考えたのか、今度は中村たちの方へ向かうが、それも上手く行かない。
凄まじいスピードで放たれる炎弾によって行く手を阻まれ、右往左往しているところに白竜の極光が直撃して消滅する。何とか極光を回避しても、回避先に置かれた炎弾が爆発して致命傷を負う。シンプルな戦法だが、シンプル故に強力であり、奴らがそれを突破する事は遂に叶わなかった。
すると、サル型の魔物は、俺たちに攻撃を仕掛けるのをパタリと止めた。
何事かと思って辺りを警戒していると、すぐにガサガサと葉擦れの音が聴こえた。ただし、今度は頭上の木々からではなく、目の前の草むらからである。
草むらを注視していると、やがて2つの〝人影〟が現れた。
「……テメエは」
1つは、ボロボロとなった女子の姿をしている。だだが、俺の知る人物ではないので、一旦目を離した。それよりも、もう1つの人影の方に視線が釘付けとなる。
ボロボロの女子を引き摺るようにして現れたのは、俺の生みの父親であった。
「久しぶりだなァ」
「ケン、助けて……」
存在価値がドブカス未満の、2度と目にしたくなかった父親の顔を見て、急速に燃え上がった憎悪の炎は。見ず知らずのはずである女子の声を聞いて、心の奥底や脳内を完全に焼け野原とする業火に変化した。
そう、俺はあの女子の事を知らない。知らない、はずなのだ。はじめましての、顔のはずなのだ。ここまで、酷く感情を揺らす要素にはならない、はずだった。
何故俺は、ここまで〝激怒〟しているのだろう。
その理由を考える余裕は、今は全くないが。
これまで紡いだ絆の道標を絶たれたオリ主を描写するに当たり、〝IF〟の世界線を意識して描いてます。もしも、優奈ちゃんと出会わなかったら、優花さんとハジメくんを知らなかったら。そんな世界線です。合わせて記憶も改竄してあります。
IFオリ主の情報は以下の通りです。
・初恋の人、親友、現恋人を知らない。
・扱える技術は喧嘩空手のみ。
・ボクサーとしての鍛錬をしていないので、身体がそこまで大きくない。
・ゲーマーではない。
・高校へ進学したが、アングラな世界の住人なため欠席が多い。
・生業は人殺し(最重要)。
闘争以外を知らない、悲しい人間です。もはや人間と言って良いのか怪しいかも……。