異世界でもお前のパンチを見せてやれ!   作:Hetzer愛好家

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 空手の技、どれも殺意が高くて震えながら執筆しました。人体破壊の観点で見れば、ボクシングより適性がありそうです。

 そう言えば、エアグライダー本日発売ですね。制作発表が4月2日だったので、もう半年以上経過しています。時の流れ早くない……?


はじめまして

 ブチブチィ!

 

 ボトリ

 

 俺の中で、ドブカス未満の存在である父親の首が、捩じ切られてから地面に落ちる。

 

 少しすると、擬態が解けてサルの首になった。首を失った身体も合わせて、毛むくじゃらのサルの物に変化する。

 

 そう、頭の中では分かっている。さっきまで女子を引き摺っていた男は、全くの別人だという事は。何なら人ですらない。ただの魔物だ。

 

 分かってはいる。怯えた様子で俺を見上げる女子も、サル型の魔物が擬態しただけの存在だって事は。多分、この場の誰よりも分かっているだろう。

 

 だが。それでも心中が穏やかではないのは。俺の鍛錬が足りていない証拠他ならない。

 

 そんな自分自身に苛立ちながら、地面に転がるサルの首を踏み潰すと、今度は女子の姿を取るサルの首を掴み、片手で持ち上げる。

 

「や、めて。ケ、ン……」

「その声で囀るな。耳にするだけで、虫酸が走る」

 

 理由は分からない。ただ、ひたすら腹が立つ。その声で話されると。

 

 大迷宮の魔物如きが、その姿形を借りて、その声で人語を発するだけで、怒りの炎が際限なく増大していく。

 

 お前じゃない。そんな声で、頭の中は埋め尽くされている。

 

「あ、がっ」

「死ね」

 

 ゴチャア!

 

 生々しい音を立てて、サルの首元から血飛沫が上がり、胴体と泣き別れになった。

 

 血の涙を流しながら、こちらを睨む見る女子の瞳は、少しすると醜いサルの物に変わった。それを確認してから、先程と同じように頭部を踏み潰す。

 

 サッサと踏み潰せなかったのは、足が何故だか動かなかったからである。頭の何処かで、無意識に「待て」と命令されていたのかもしれない。

 

 目を閉じると、荒れた心を鎮めるべく、何度か深呼吸を行う。そう時間は取らない。数分もあれば、また凪いだ水面のような心持ちで、大迷宮攻略に戻る事ができるだろう。

 

 そう思って、精神統一を図ったのだが……。

 

「ニャア」

「……」

「ナァ〜、ニャアン」

「………うるさい。今度は何だって、ネコ?」

 

 目を開けると、いつの間にか足元に寄ってきた1匹のネコが、俺に身体を擦り付けていた。

 

 魔物かと考え、即座に踏み潰してしまおうと考えた俺だが、また足が動かなくなる。何か、強烈な拒否反応によって身体の自由を奪われているようだ。

 

 そうしている間に、ネコは俺の肩に飛び乗ってきた。そして、今度は頭を俺の首元に擦り付ける。少しくすぐったい。

 

 敵意は全く見られない。だが、フリードに擬態したスライムの実例から、油断したところを狙うタイプの魔物ではないかと疑っているため、どう接すれば良いのか分からずにいる。

 

「……もしかして、優花?」

 

 ここまでずっと黙っていた中村が、ネコに近づくと、目を軽く見開きながらそんな事を口にした。

 

「フーッ!」

「いって。うん、真久野以外に触られるのを徹底的に拒否る辺り、優花っぽいね」

 

 何度か触ろうとするも、ネコパンチによって追い払われた中村は、苦笑しながら確信を持った様子でそう告げた。

 

 どうやら、中村はこのネコが、ユウカとやらだと思っているらしい。

 

 俺はそもそも、ユウカとやらが何者なのかサッパリなので、中村に「お前なら分かるだろ?」みたいな顔で見られても困るんだが。

 

「なあ、お前がユウカって奴なのか? なら、〝はじめまして〟だな」

「ニャッ!?」

「……優花。今の真久野は、何故か優花や南雲の事を〝知らない人〟として認識しているみたいなんだ。大迷宮の試練が影響しているのか、それとも別の要因があるのかはちょっと分からないけど」

「ニャア……」

 

 ネコから、分かりやすく悲壮そうな雰囲気が溢れ出す。だが、すぐに暗い空気は吹き飛び、代わりに力強い空気が辺り一帯に流れた。

 

 ネコは俺の顔に軽く頭突きをしてから、地面に飛び降りてこちらを見上げると、短く「ニャンッ!」と鳴いて、俺たちを先導するように歩き始めた。

 

「攻略が終わったら元に戻るはずだから、サッサと攻略するよ、だってさ」

「ああ、そう……って、ナチュラルにネコ語を通訳するんじゃねえ」

 

 白竜の背に乗り、ネコを追う中村に追従する。

 

 取り敢えず、今はこのまま進むしかなさそうだ。万が一危害を加えてきたら、その時に対応する事にしよう。

 

 しかし、ネコの先導を追うだけでは延々と攻略が終わらない。そう判断した俺は、仕方なしにネコを腕の中で抱き抱える形を取った。

 

「! ……ンニャゥ」

「この方が早く終わる。それだけだ」

 

 胸元に身体を擦り付けてくるネコに、一応そうやって念を押すが、お構いなしである。見ず知らずの人間に、心を許しすぎではないだろうか。

 

 他の人間にも、こうするのだろうか。何だか、それは……。

 

「って、俺は何を考えているんだ」

「ニャ?」

「何でもない。気にするな」

 

 遂には尻尾まで腕に絡めてきたネコの背を、無意識に撫でながら、俺は足を動かすのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 鞭のようにしなり不規則な軌道を描いて襲い来る巨大な枝。刃物のように舞い散り飛び交う葉。砲弾のように撃ち込まれる木の実。突如地面から鋭い切先を向けて飛び出してくる槍のような根。放たれる攻撃は、全てが致死に至る。

 

 かつて、オルクス大迷宮で対峙した木の魔物と類似している。いわゆるトレントと言うべき魔物だ。もっとも、大きさ、スピード、耐久力のステータスは、段違いに今現在戦っている目の前のこいつの方が上であるが。

 

 全長が30メートルはありそうな巨木が必殺の意思を持ち、容赦なく襲い掛かってくる様は、中々に迫力がある。

 

 そんな巨大トレントが放つ攻撃を、〝オーガ〟が搭乗した白竜が純白の極光によって薙ぎ払い、その隙に俺とサンドマンが距離を詰めて何度か殴っては離脱を繰り返す。一撃離脱を行う俺たちを狙う反撃は、中村が撃った火属性魔法か、ネコの念動力によって寄せ付けない。

 

 あの後俺たちは、オーガの姿に変えられたフリードと、人の形をした魔物という異分子故に姿を変えられていなかったサンドマンと合流する事ができた。

 

 最初の転移陣によって俺たちと分断されると、オーガの姿に変えられ、マトモに魔法も扱えない状態となったフリードだが、早い段階でサンドマンと落ち合えたらしい。それから何度か魔物に襲われたが、弱体化を起こしていないサンドマンによって全て退けられたとか。流石はサンドマンである。

 

 ちなみに、姿を変えられたフリードが、単体ではほぼ何もできない置物状態となっている中で、ネコの姿に変えられたはずであるユウカとやらは、何故か念動力らしき能力を使えるようだ。今現在も、普通に戦闘に参加している。

 

 そのまま少し進むと、明らかに回りの樹々とはサイズが異なる巨木が鎮座する場所に辿り着いたのだが……その巨木が「ここを通りたければ俺を倒せ!」と言わんばかりに暴れ始めた。それが、眼前の巨大トレントであり、絶賛俺たちと戦闘中だ。

 

 手裏剣のように回転しながら飛来する葉を叩き落とし、巨大トレントの固有魔法と思われる、次々と地面から生えてくる大木を何発かに分けて殴る事で粉砕し、白竜の極光が放たれるまでの時間を稼ぐ。

 

 最初から白竜の極光を直撃させれば終わる話ではあるのだが、トレントが生やす大木には、魔法を遮断する特性が付与されているようで、無数の大木をガードに回されると突破する事ができなかった。

 

 その代わり、最優先で白竜の極光をガードしようとする特性と、ガードに回した大木はギリギリ極光を防げるだけの量しか生やさない癖が見受けられたので、極光で突破口を開いてから俺とサンドマンで本体をぶん殴って粉砕する作戦を取る事にしたのである。サンドマンで2発、俺で3発は殴らないと大木を破壊できないので、複数の大木を一撃で、一気に破壊できる極光を攻撃の起点とする作戦は、悪い物ではないだろう。

 

「……坊や、拳打の威力が落ちたな」

「一応、弱体化させられているんでね」

 

 唯一の懸念点は、俺の拳打の破壊力が落ちている事だ。巨大トレントの耐久力が群を抜いている点を考慮しても、やはり人体破壊に特化した拳では、魔物を完全に破壊するまで時間を要する。

 

 一撃離脱で放てる攻撃は、基本的に発生が速い技に絞られるため、俺の拳打はサンドマンと比べてあまりダメージを与えられていない。発生的に、〝最風〟が何とか1発入れられるかどうかって感じだ。

 

 ここは1つ、リスクを取って更に強力な一撃を放つ必要があるだろう。ジリ貧になって負けるのは洒落にならん。

 

「次の攻撃で、長めに前線に残ってもうちょい強力な攻撃を試みる。失敗して死んだら、俺の亡骸を投げつけて隙を作れ」

「何だ坊や、死ぬつもりか?」

「いや全く。単に言ってみただけだ。隙が生まれれば、サンドマンなら奴を殺せるだろうし」

「……らしくないな。微塵も死を恐れていないのか」

「ハッ、怖がってる時間が無駄だ。死ねばただの肉塊になるだけだろ」

 

 サンドマンも、中村と同じく今の俺に違和感を覚えるようで、頻りに首を傾げている。攻撃力の低下よりも、精神性の方に疑問を持っているらしい。

 

 が、今は巨大トレントを始末する事に集中しなければならないので、疑問の解決は後回しである。

 

 チラリと白竜の方を見ると、既に口元が神々しく輝いていた。

 

「行くぞ」

 

 俺とサンドマンが左右に散開した瞬間に、白竜の口から極光が唸りを上げて放たれた。

 

 巨大トレントの攻撃を軽々と呑み込み、ガードとして地面から生える木々を粉砕していくが、その勢いは徐々に減速。巨大トレントの眼前で、極光の進撃はピタリと止まった。

 

 だが、既に俺とサンドマンは、拳が届く距離まで近づいている。

 

「夢を見る時間だっ」

 

 先に巨大トレントの元へ辿り着いたのはサンドマンだ。見てから回避では間に合わない発生速度の左の打ち下ろしから、殺人アッパーカットを超速で6回放ち、全て直撃させた。

 

 彼もハイリスクハイリターンを選択したらしい。巨大トレントは苦しんだ様子を見せながらも、伸ばした枝を回避した先に根を生やす事で、サンドマンを何とかして追い払おうとする。

 

 根が生えるよりも速くサンドマンが動くため、反撃は彼に命中しない。が、余裕がある訳でもないようだ。サンドマンはひたすら回避に専念している。

 

 その隙に俺は近寄ると、左の刻み突きから逆突きへ連携し、そのまま右の掌底打一撃、すぐさま回転しながら左裏拳、右の〝獅子切り包丁〟と繋げ、人体なら六腑が砕ける左ボディアッパー、右の〝魔神拳〟まで一呼吸の内に叩き込む。

 

 〝魔神拳〟の動作で拳を振り抜いた事で、僅かに生まれた隙を何としてでも狩るべく、サンドマンを追っていた巨大トレントが全攻撃の標的をこちらに定め、確実に頭数を減らそうとしてきたが、構わず次の攻撃動作に入る。意識が暗転するまで止まるつもりはない。

 

 繰り出したのは、左拳での〝奪命拳〟。速射性の高い木の実の砲撃や葉っぱ手裏剣が何度か顔を掠めるが、鋭利な枝の先や、背後から槍のように飛び出した根は、俺の拳が巨大トレントの身体に直撃するのとほぼ同時に動きが止まった。

 

 最初は〝奪命拳〟の直撃が原因かと思ったのだが、軽く下を見ると、いつの間にか足元まで来ていたネコが、毛を逆立てながら念動力を発動していた。どうやら、俺の事を守ってくれたらしい。

 

「ニャア!」

 

 殺ってしまえ。そう背中を後押ししていると判断し、〝最速風神拳〟を巨大トレントに叩き付ける。

 

 〝纏雷〟によってバチバチとスパークする右拳を受け、巨大トレントの動きが明らかに鈍くなった。締めは〝雷神拳〟のつもりだったが、これなら間に合う。

 

 その場でしゃがみ込みながら時計回りに2回転。威力を回転運動によって最大限高めてから、全身をバネのように伸張させて〝真・鬼神滅裂〟を繰り出した。

 

ドパァン!

 

 辺りの空気を揺るがす程の轟音を上げて、左拳が着弾した巨大トレントは、ビクリと身体を震わせる。

 

 少しすると、巨大トレントはグッタリと動かなくなった。必殺の意思が消え、ただの巨木に戻ったようだ。

 

 巨大トレントはその状態のまま、暫くの間佇んだ後に、大迷宮の入口である大樹のように、木の幹が中心から左右に割れた。生まれた洞の中には、空間が出来上がっている。

 

 残心を解いた俺は、迷う事なく洞の中へ足を進める。少し遅れて、他のメンバーも洞の中へ入った。

 

 すると、やはりと言うべきか、洞の入口が閉じると同時に地面が輝き始める。

 

 再びどこかへ転移させられると分かった俺は、ちょっとウンザリしながらも経過を見守る。

 

「……ンニャゥ」

「おいおい、何だいきなりマフラーみたいに首元に巻き付いて。暑いんだが」

「ニャアッ! ミャア〜」

 

 離れるつもりゼロのネコ。何とかして引き剥がそうとするが、何故か凄まじい力を発揮して離れない。

 

 そうしている間にも、転移陣の輝きは増していき。俺とネコの攻防に決着が付くよりも先に、爆発的な光によって視界が潰されるのだった。

 

「――絶対、思い出させるから」

 

 誰かの声が、聞こえた気がした。




 身体は忘れません。たとえ、上位の神によって記憶を消されたとしても。魂と肉体を、パラレルワールドのマックくんの物にしない限り。

※マックくんの技紹介
★10連コンボ
…スマブラでも鉄拳でも最後まで当たらないでお馴染み。

 足技を使えないオリ主は、全て空手の拳打のみで構成している。

①刻み突き→左足前の左ジャブ

②逆突き→右足前の左ジャブ

③掌底打→右足前のまま掌の固い部分で突く

④回転裏拳→右足を軸に回転しながら裏拳

⑤獅子切り包丁→左足前で手刀メテオ。オラァ!

⑥六腑砕き→左のショートボディアッパー

⑦魔神拳→ジェッ!

⑧奪命拳→左の全力正拳突き

⑨最速風神拳→ドリャッ!

⑩雷神拳→デリャァ!

✰真・鬼神滅裂→余力があれば締めはこっち
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