異世界でもお前のパンチを見せてやれ! 作:Hetzer愛好家
真久野ケンOriginになります。ボクシングを習っているだけでは到底説明ができない技術を彼が覚えすぎてるので、こうして過去を盛る羽目に。
人の心とかないんか? みたいな発言&表現が目白押しですが、ありふれ時空の治安は基本的に終わり散らかしてるので、こんな感じでも多分大丈夫でしょうっていう謎の確信。
人がアングラな世界に足を踏み入れる要因。色々あるが、1番多いのは劣悪な家庭環境による物ではないだろうかと、俺は考えている。
絵に描いたようなドブカスの父親と、笑えない三文芝居に出てくる病弱で優しい母親の元に生まれた俺は、この世界に生まれ落ちたその瞬間からアングラな世界へ足を踏み入れる条件をバッチリ揃えていた。
ドブカスとは言ったものの、何だかんだで父は母をしっかり愛していたのもあって、彼女が生きていた5歳ぐらいまでの間はそれなりに普通の生活を送れていたのだが。病で母が亡くなってからの生活は、控えめに言って生き地獄であった。
愛した人間が亡くなるのは、どれだけ身構えていようと辛い物だ。頭でしっかりと理解できていて、亡くなった理由が比較的理不尽でなかったとしても。
時に、簡単に人間の精神を破壊してしまう死の概念は、俺の父親を文字通りのドブカスへと変えてしまった。
酒に、タバコに、女に、薬に溺れていった父は、常に何かしらに対してイライラしていて。俺が目に入ると、どれだけ嫌がろうと「スパーリング」と称して一方的に殴ってきた。
元ボクサーだった父の拳は、幼子には酷な物であった。だからなのか、俺は生き延びるためにも本能的に攻撃の芯を外すような動きを体得していったし、動体視力も生きる上では不要なぐらい上がっていった。そして、痛覚に対する耐性も徐々に備わっていったので、母が亡くなってから3年もした頃には、父が満足するまで殴られ続けても大丈夫になっていた。ここまでのレベルに至るまでに、脳に障害が残らなくて本当に良かったと今では常々思う。
ただただ耐久面のステータスを伸ばしていただけではない。齢8にして既に父親に対する強い憎しみの感情を持っていた俺は、いつの日かドブカスに一矢報いるべく、効率の良い人体の破壊方法を探っていた。その際に目を付けたのが、家の近くにあった空手道場である。
何も門下になるのではない。そんな金をドブカスが出さないのは、幼子の俺でも分かっていた。給食費すら私的に使ってたぐらいだし。
だが、当時の俺の耳にも入るぐらいに、あの道場の師範代には悪い噂が絶えなかった。
特に、実の息子を殺めたと言う噂に関しては、近所の奥様方がよく話していた。その真実を確かめる術はなかったが、そんな噂が立つぐらいに恐ろしい人物だったのだ。だから、空手道場の周りはいつも人が居なかった。父親すらも避けて通ってたぐらいである。
だが、そんな恐ろしい人物に俺は惹かれた。本来なら小学校で勉強をしている時間に、様子見のつもりで覗きに行った時に。
たまたま鍛錬をしている様子を目にできたのは、俺の人生の中でも特に幸運だった出来事の1つだろう。
ただの拳打一撃で、何の造作もなく鉄板を真っ二つに粉砕する。その強さに魅せられたのもある。だが、何よりもその所作が美しかった。力任せなんかじゃなく、一切無駄なく自身の繰り出す拳打の衝撃を伝えるその姿に、俺は惚れ込んだのだ。
そこからの行動は早かった。道場へ足を踏み入れると、小童が何の警戒心もなく近づく事に困惑する師範代に、躊躇いなく頭を下げたのである。
「強く、なりたい」
身の上を途切れ途切れながらも話し、再度俺は師範代に頼み込んだ。どんな理不尽も跳ね除けられるぐらい、強くなりたいんだと。
当時、何故に父にこうも殴られるのか。その理由を、自分がどこまでも無力だからだと幼いながら結論付けていた。自分が無力だから。理不尽を跳ね除ける力がないから、ドブカスのような輩に傷つけられるのだと。歪んでいるにも程があるが、幼い俺はこれが世界の真理とまで考えていた。満足に学校へ行く事も叶わなかったのだから、思考が歪んでも致し方ないだろう。
弱者だから虐げられる。強者になれば、誰からも虐げられない。どこまでも危険思考である。冷静になって考えてみれば、弱者はクソッタレな父の方であるし、強者になったからと言って虐げられないとは限らないのが実際の所だ。
しかし、師範代はそんな俺を気に入ったらしい。幼いながらも、ある意味覚悟がガンギマリな小僧。人格破綻者同士、シンパシーを感じる部分があったのだろう。
それと、腫れ物のように扱われる自分に恐れる事なく近づく俺に興味を持ったのもあるようだ。
黙って奥の方へ1回引っ込むと、やや小さい道着を持ってきて。それを俺に投げ渡してから、こう口にした。
「儂が修めているのは、人の心を育てるなどと吐き気のする御高説を垂れるお遊びの空手ではない。全ての技が死へと直結する、究極の殺人拳じゃ。それでも構わぬと言うのならば、その道着に袖を通せ」
迷いなく道着に袖を通した俺は、その日から師範代にとってただ1人の教え子となった。
さて、師範代との鍛錬は、限りなく低く見積もっても父親とのなんちゃってスパーリングの1000倍はキツい物であった。鍛え抜かれた痛覚耐性と防御技術のお陰で、拳打の被弾よって気絶する事は基本的になかったが、スタミナ切れによってぶっ倒れる事は非常に多かったので、特にメンタル面の観点から中々シンドい物だったと今でも思う。
気絶しちまった方が、何なら楽だったのではないだろうか。スタミナ切れは身体こそ動かないが、意識は案外ハッキリしていたりする。早鐘を打って爆発しそうな心臓をリアルに感じながら、無理やりにでも荒くなった呼吸を整える時間が、個人的には何よりも辛かった。
それでも、決して逃げ出すような真似はしなかった。
成果が見られなくなったら即座に殺すと言われてたのもある。しかし、それに対する恐怖なんかよりも、何が何でも強くなりたい気持ちの方が強かったのである。
常に限界を超え続ける鍛錬は、人道的な面から否定されがちだ。単に無茶するだけで、何も身につきやしないとまで言い切る人も存在する。だが、こうも思う。弱い自分を殺すぐらいの気概で限界を超え続ける事で、見えてくる世界も確かにあるのだと。
俺が技術を習得するまでのスピードは、師範代の教えが良かった事を鑑みても常軌を逸していた。
まず、独特な足捌きである〝霧足〟とそこから派生するステップを教えてもらったのだが、これは数日で物にした。軸外しやダッキングに近い、それなりに高度な技術だったのだが、攻撃を当たる寸前まで引きつけてから行う事で〝消えた〟と錯覚させるのは、動体視力が異様に高くなった俺にはそう難しい事ではなかったのである。
そのステップから派生するパンチも、かなりのスピードで物にした。特に左右のショートアッパーに関しては、腕が千切れたのではと思うぐらい延々と練習したので、小さな身体からは想像できない程に高い威力を発揮できるようになった。今でも使う頻度の多い〝風神拳〟と〝雷神拳〟がこれに当たる。なお、師範代のように電撃を纏う事は無理だった。アレに関しては、何回やっても微塵も電撃が出なかったので、きっと理外の理を駆使して何かしてるのだろう。
他にも色々教わったが、習得までのスピードは非常に速かった。ちなみに勉学面も面倒を見てもらったので、学校へ行けてない分の遅れも何とか取り戻せたのは結構今でも感謝している。代償として、人を罵倒するためのボキャブラリーが異常に豊富になってしまったけど。
ただ、どうやっても蹴り技はしっくり来なかったし、スタミナの問題も解決しなかったが。
拳での攻撃を極めれば、蹴り技の有無は些細な問題で片付くので良かったのだが、スタミナだけはそうも行かない。スタミナ切れから気合と根性のみで頑張れば、無理やり動ける時間を延ばす事はできたが、それはあくまでも奥の手である。そう何度も出すべき物ではない。
「速攻で戦闘が終われば良いが、そうは行かない事の方が圧倒的に多い。何とかしろ……と、言いたいところじゃが。ここまで酷な鍛錬を継続していても持久力に伸び悩むのは、心臓か呼吸器に何かしらの問題があると考えた方が良さそうじゃな。小僧、貴様の両親は何か病を患ってなかったか」
「……母が、病で亡くなった。随分と前に」
「死因は」
「分からない、けど……胸を押さえて苦しそうにしてた」
「ならば心臓病か、重度の喘息か。いや、小僧の様子を見るに喘息はないか。苦しそうにはしても、咳込みはしてないからな」
少し考え込んだ師範代は、唐突にニヤリと悪巧みをした子どものような笑みを浮かべた。
何やら嫌な予感がしたが、俺はただ黙って聞くのみである。
「小僧。今の段階で、父親と本気で死合したらどうなるかの想像はできるか」
「五分よりの微不利、だと思う。こちらの拳打は通用するだろうけど、体力のなさが足を引っ張るはず。回避だけなら何とか持ち堪えられるとしても、攻撃をも並行するってなると、体力の消耗は倍増すると思うから。あと、体格差はどうしても埋められない。明確な不利要素でしょ」
「そうか、五分か。拳闘士崩れの大人とついこの前まで素人だった小僧が死合して、五分。クハッ、中々に面白い」
師範代は、かつてない程に力強く俺の方に分厚い手を置いて。笑みを深めると、俺に命じた。
「おい。明日にでも、父親と死合をしろ」
「は?」
「勝てたなら、貴様を病院へ連れて行ってやる。脆弱な臓器を治療し、より強くなる機会を与えてやろう」
ハッキリ言って、こちらからすれば無茶苦茶も良いところだ。俺としては不利だと口にしたじゃないかと、文句の1つや2つ垂れてやりたい気持ちである。
しかし、拒否権なんて物は元より存在しない。了承以外の応答は許されぬ。
物申したい気持ちをグッと抑えて、俺は一言のみ口にした。
「……承知」
決意が鈍らぬ内に実行してしまおうと考え、その日の夜にドブカスから強制スパーリングへと引っ張られた時に、俺は何も言う事なく自然な形で構えた。
当然、奴は困惑する。これまで対して構えもせず、ひたすら打たれていただけのサンドバッグが、いきなり堂に入っている構えを見せたら。多分どんな人でも驚くだろう。
「スパーリングについて、色々調べたんだ。実戦に限りなく近い打ち合いなんだってね。今までアンタが俺にしてきたのはただの人間サンドバッグへの打ち込み。元ボクサーなら、どれくらい危険な事をしていたのか分かっているよな? それでもテメェは、辛い現実から逃げたくて、一瞬の快楽のためだけに俺を殴ってたんだろ?」
前半のスパーリング云々については師範代が考えた物だが、後半は完全に俺の本音であった。ずっと、ずっと憎かったドブカスに、殴る前に少しでも罵倒をしたかったのである。
自分でも驚くぐらい、スルスルと罵倒の言葉が喉から流れ落ちる事に笑いが止まらなくなった俺は、ありったけの憎悪を笑みと暴言に変換して延々と口を動かす。目の前で唖然としている、ドブカス未満の父親に。忌まわしい血を分けた、唯一の肉親に対して。
「みっともねえなァ、みっともねえなァ! 酒を飲んでも、タバコ吸っても辛い現実から逃げられず、自分より弱いと思い込んだガキにしか八つ当たりしねえと死んじまう人生なんて! 何でそこまで生き恥を晒しながら、必死に生きようとするんだよ。惨めで恥ずかしい人生を送るぐらいなら、いっそ死んじまった方が良いんじゃねえの? なあ、どうなんだよ自称父親さん……おい、黙ってても分からねえから口を開いて舌を動かせよ。それとも何だ、格下だと思い込んでいたガキに強い言葉を使われただけで、怖くて怖くて仕方がなくなる弱虫か、それとも負け犬なのか?」
顔の色が赤、青、白と鮮やかに変化したドブカスは、再び顔を真赤にして憤怒の形相を浮かべると、技術も何もないテレフォンパンチを繰り出した。よっぽど腹に据えかねたらしい。
1打目を〝霧足〟で回避し、2打目を上段受けで威力を殺して、3打目を前に出ながら額で受け止め、踏ん張ったところで俺は疑問に感じた。
「おいおいおい。遅えし痛くねえしで、何だこりゃ。随分怒ってる割には、お遊びにしても全く笑えないヘナチョコパンチだな?」
むしろ、痛がってるのはドブカスの方であった。師範代の教え通り、拳を人体でも比較的固い部位である額で受け止めてみただけなのだが、随分な痛がり方をしている。拳を押さえ、呼気を荒げている。
一方、こちらは全くのノーダメである。師範代と練習した時は、軽い拳打であっても脳天まで響く衝撃を必死に耐えなければ立っていられなかったのに。
疑問は残る。が、ドブカスが怯んでいるには違いないと思考を切り替えた俺は、みっともなく拳を押さえて頭を下げている奴よりも更に下方へと身を沈めてから、腰の回旋と腕の振り上げ、そして立ち上がる際に発生するエネルギー全てを右拳に乗せ、ショートアッパーを鼻っ柱目掛けて叩き込んだ。
咄嗟に身を引こうとしたドブカスだが、完全には躱せない。拳が鼻を叩き、蛇口を捻ったかのように血を出す羽目になった。しとどに流れる鼻血が、薄汚れた床を生々しい紅色に染めていく。
「このクソガキぃ!」
激昂したドブカスが、息の根を止めてやらんばかりの勢いで次々と拳打を繰り出す。身長差の分、相当上の方から打ち下ろされる形となるので、仮に脳天にでも拳が突き刺さったら大惨事になるだろう。当たればの話だが。
師範代によって更に磨きがかかった俺の動体視力は、怒りによって動きが単調となったドブカスの拳打を完璧に見切ってくれた。それにより、皮一枚での回避を実現させる。身体を大きく動かさず、限界まで引きつけてから最低限の動作での回避は、体力の消耗を極力抑えてくれるので、持久力のない俺にとって非常にありがたい技術だ。
全く攻撃が当たらない現状に相当イラついているのか、泣けてくるぐらいドブカスの動きが単調になったところで、俺は奴が前に出た瞬間に合わせて大きく斜め下を目掛けて踏み込んだ。
元から身長差が相当ある状態なのに、かなり深くしゃがみながら前方へ突進した事で、奴は俺の姿を一瞬見失ったらしい。拳打が俺の後頭部を掠めて空振る。
奴の空振りとほぼ同時。俺は下肢に力を込めて跳ね上がる。腰の回旋は利用せず、純粋に奴との距離が近い左拳を硬く握り締めて、天まで届けと言わんばかりに思いっきり振り抜きながら。
攻撃後で前のめりになっていて、かつ頭が下がっていたドブカスは、完璧なタイミングで放たれたカウンターの〝雷神拳〟に反応する事すらできなかった。
左拳はドブカスの顎に直撃。跳躍の勢いを存分に利用した左アッパーがカウンターで突き刺さった際の破壊力は凄まじく、大人の身体が軽く浮いた後に奴がアッサリと白目を剥く。
着地した俺は、何か考えるよりも先に左足で地面を踏み抜きながら、左腕は前に出して方向を狙い定めると、大きく右拳を振り上げていた。完全に無意識の行動である。ここで確実に仕留めなければ、ズルズルと持久戦になっていつか命が取られると思っての行動だろう。
無意識ではあったが、身体に染み付かせた全力の右ストレートを放つ動作は、少しの無駄もなく実行されていく。
地面を踏み抜く。床が抜けるぐらいに。
拳を打ち込む方向を定めるために伸ばしていた左腕は、腰の回旋と共に強く胸元へと引いた。引き込む動作によって生まれる反力を、右拳に乗せるため。
最後に、背筋によって張っていた胸を急速に収縮させながら、肩の可動域の限界まで引いていた右拳を前方へ強烈に突き出した。
白目こそ剥いたが、未だ倒れず立っていた奴の胸元に、憎悪と怨念が乗った右拳は突き刺さった。衝撃が一切余す事なく伝わったようで、身体は吹き飛ばずその場に留まる。
ビクリ。1つだけ身体を震わせたドブカスは、グラリと前へ倒れ込んだ。
地面と激突したと同時に意識が戻ったらしく、奴は激しく咳込みながらのたうち回る。相当苦しく、そして痛いらしい。
それを見ても俺は、何の感情も宿らない。虚無に染まり切った目でジッと見るのみである。
その目が気に入らなかったのか、ドブカスは激しく咳込みながらも俺に殺意を向けてくる。だが、その殺意を全く物ともせずに見つめ続けていると、次第に奴から殺意が消えていき、代わりに恐怖の色が浮き出てきた。
随分久しぶりに父を真正面から見た。ずっと無抵抗の俺を狂ったように笑いながら殴る父しか見てなかったからなのだろう。俺をバケモノを見るかのように恐れている父が、酷くみすぼらしく見えたのは。
今更になって、俺は全く息切れしてない事にも気がついた。師範代との鍛錬では、常にゼーゼーと息をしながら無理やり身体を動かしていたのだが。このドブカスは、俺に息を切らすどころか呼吸を乱す事さえもできなかった。
こんな奴に。こんなドブカスに、これまで笑われながら良いように無抵抗で殴られていたのか。そう思うと、胸の奥底からドス黒い感情がドロリと溢れ出してきて。止めなければならないと分かっていながらも、止められなくなり。俺は殺意を前面に押し出すと、もはや抵抗する事が叶わないドブカスに馬乗りとなり、何度も鉄塊と化した拳を落とした。
「死ね」
ああ、死ね。
「死ね……」
死んでくれ。
「死ねっ」
顔も見たくない。誰なのか分からないぐらい変形させてやる。
「死ね!」
存在している事がまず許せない。息をしている事が許せない。忌まわしい。忌まわしい。忌まわしい!
……どのぐらい、こいつを殴っていたのだろう。
胸元が爆発しそうなぐらい強烈に痛んでも、呼吸がままならず酸欠を発症して視界が明滅しても、ひたすら拳を落とし続けていた俺だが、遂に腕が上がらなくなった。
それだけなら良かったのだが、俺は馬乗りを維持する体力すらも尽きてしまい、ドブカスの横に寝るような形で倒れ込むと、そのままピクリとも動けなくなってしまった。
相当数殴ったはずのドブカスは、未だ呼吸を続けている。意識も落ちてない。中途半端な威力で殴ったから、気絶させる事ができなかったようだ。それどころか、落ちかけていた意識を回復させてしまった。完全にこちらの力不足であり、痛恨のミスである。
無抵抗のまま殴られる。多分、延々と。
そう覚悟して、俺はいつ衝撃が走っても良いように歯だけは食いしばり続けた。
「……?」
だが、一向に衝撃は来ない。
何かがズリズリと床を這った音の後に、ドアが開閉した音が耳に入った事で、俺はゴロリと寝返りを打つようにして体勢を変える。
横に、父の姿はなかった。辺りを見渡しても、父の姿は見つけられない。俺の呼吸音以外、何も聞こえないのも不気味であった。
家の中を1度確認したい気持ちはあった。しかし、立ち上がる事は当面の間は難しいのも分かっていた。
後で。そうだ、後で確認しよう。這いずり回って移動するだけの体力もない。今は、とにかく休みたい。
動く事を諦めて、目を閉じた。
これが、最後に〝実家〟で過ごした際の記憶である。
本編中の感想にある最風なんてどこの平八に教わったんだ……の答えです。どう考えても小学生が使って良い罵倒の嵐じゃないけど、まあ自らバケモノになる道を選んだオリ主だし。
次回、心臓病で入院する直前ぐらいまでのお話しです。
★師範代
…マックくんに〝集束拳打〟と〝浸透破壊〟と罵倒術を覚えさせた人物。どう考えてもボクシングだけじゃ習得できない技能をマックくんが使えるのは、この師範代に拳打のイロハを教わったから。
裏の世界では〝究極の殺人拳〟とまで称される喧嘩空手の使い手。過去に嫁を殺し、息子を殺したとされるヤベー奴。なお、息子は生き延びている模様。
マックくんには、もしも息子が普通の人間だったらこんな風に稽古をしてたのでは……なんて思いながら接している。
単純に格闘術へのセンスがずば抜けている事と、幼いながら真人間なら恐怖を覚えるレベルの狂気を特に気に入っており、どんな化け方をするか楽しみだった模様。その未来を見れないと分かっていながらも。
本編中でたまーにマックくんがボクシング由来のガゼルパンチではなく〝雷神拳〟を使用したり、〝纏雷〟を併用してまで再現した〝最速風神拳〟を使うのは、ボクシングの世界へ飛び込んでも師範代の教えを絶対に忘れないようにしたいから。ちなみに必殺のK.O.アッパーは風神ステップから雷神拳へ移行する際に発生する爆発的な破壊のエネルギーを参考にしている。
と言うか、結構な数の技がボクサーとしてのマックくんを形成する上で中核を担っている。
スマッシュストレート→〝奪命拳〟や〝風神閃焦拳〟が元ネタ。
スマッシュアッパーカット→〝風神拳〟や〝雷神拳〟が元ネタ。
スマッシュボディフック→〝魔神拳〟や〝忌怨拳〟が元ネタ。
K.O.アッパーカット→〝風神ステップ〟や〝雷神拳〟、あとは〝真・鬼神滅裂〟が元ネタ。
全てボクシング用にカスタマイズしてる状況だけど、別に今でも元ネタとなった動きは使える。中学生時点だと使用後にボクシングの動きへ戻すのに時間がかかるから使ってないだけ。リトルマックの動きから外れたら、優奈さんに見てもらえなくなるんじゃないかって恐れてます。