異世界でもお前のパンチを見せてやれ!   作:Hetzer愛好家

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 ツンデレは可愛い。


こいつホント可愛いな

 膠着状態。無差別級では中々ない状況である。

 

 現在、スマッシュストレートによる衝撃波の遠当てでこれっぽっちも近寄れず、ついでに目元をナイフで切り裂かれて怒りを滲ませる爪熊と、決定打を与えられず歯噛みしている俺との間で異様な緊張感が漂っていた。

 

 チラリと穴の方に目を向ければ、相当深くまで掘れているらしく、魔法名を叫ぶハジメの声が聞こえにくい。

 

「もう数分かな……?」

 

 次いで、園部の様子を見る。相当に魔力を消耗したらしく、肩で息をしている。だが、戦意だけは一向に衰えず、ただ爪熊を睨んでいた。

 

 園部が戦える時間も、そんなに長くはないだろう。

 

 彼女が撤退し、更には俺自身の撤退を行うとなれば。衝撃波で後退させるのではなく、直接攻撃で爪熊を大きく怯ませる必要がありそうだ。

 

「大きなリスクを取らねば前には進めない、か。やれやれ」

 

 あの攻撃を掻い潜れるかどうか。分からないが、やらなければ俺たちが死ぬ。

 

「園部。〝火種〟を頼めるか?」

「え……? っ、分かった。何か考えがあるんだね」

 

 火属性の中でも最下級となる〝火種〟を、園部はポンっと生み出した。

 

 それを俺は、むんずと手で掴んで握る。空気がなるべく入らないように。

 

 こいつに息を吹きかければ、拳大の炎が生まれるのだが。今回は、その用途では使用しない。

 

 火種を握った俺をギョッとした顔で見た園部に、簡潔にやるべき事を伝える。

 

「次にナイフを顔面に投げて、回収が終わったらそこの穴に逃げ込め」

「……真久野は、逃げないの?」

「すぐ追いかける。奴を遠くにブッ飛ばしたらな」

 

 一瞬、引き留めようとする園部だったが。俺の顔を見て、泣きそうな顔ながらも頷いた。

 

 すまないな、何度も気負わせてしまって……。

 

 全力のナイフ投擲。それと“全く同じスピード”で、俺も足を動かす。

 

 限界まで低くした体勢故か。爪熊は、ナイフの方を先に打ち落とした。

 

 硬質的な音と共に、ナイフが弾かれて園部の元に戻る。

 

 が、その時既に俺は。爪熊の足元にいた。

 

 気がついた時にはもう遅い。

 

 あらかじめ置いていた火種を思いっきり擦って着火させ、生まれた炎を拳に移しながら。俺は、地から天へと一気に拳を振り抜いた!

 

 ダイナマイトアッパーカット。ただしリアルバージョンかつコンビネーション技だ。

 

 少しでも威力を上げられるようにと、咄嗟に思いついた技である。炎は衝撃波による暴風で消えてしまったが、吹き飛ばされる瞬間に見えた爪熊の腹に、しっかりと火傷ができていたので良しとしよう。

 

 爪熊が地面に落ちてくるまで、僅かながら時間がある。その間ボサッと待つ俺ではない。

 

「ハァアアア――!」

 

 足を大きめに開いてドッシリ構え、右拳に俺の気合いを込めていく。

 

 派生技能を使用し続けた代償に、魔力がここに来て枯渇してしまったが。その代わり、〝逆境強化〟が発動したので俺に対するバフが消える事はない。

 

 顔をキッと上げれば、既に爪熊はすぐそこまで落ちてきていた。

 

「オゥリャ!」

 

 そして俺は、タイミングを合わせて全力の右ストレートを爪熊にブチかました。

 

 俺の中でも格別破壊力の高いパンチ。気合いストレートが綺麗に決まり、衝撃波の効果も相まって、爪熊は一瞬にして姿が見えないぐらいの速度でブッ飛ばされた。

 

 ぶっちゃけ倒せたかは分からない。そもそも効いているかも不明だ。

 

 しかし、俺が逃げるだけの時間は何とか確保できたと言って良いだろう。

 

 俺は、知らず知らずのうちに疲弊した身体にムチを打ちながら、ハジメが作り出した穴に転がり込むのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 どのぐらい、時間が経ったのだろう。

 

 穴に転がり込んだ瞬間に意識が消し飛んだ俺は、微睡む意識の中でそんな事を考える。

 

 やはり、死のプレッシャーはバカにならない。知らず知らずのうちに、気を抜いたら倒れてしまうぐらいに心身を疲弊させてしまうようだ。

 

 それにしても、やけに頭だけは柔らかい感触がある。背中は普通に硬い感じがあるんだけどな……。

 

 どうにかこうにか、苦労しながら重たい瞼を開く。

 

「……園部?」

「ひゃっ、真久野!?」

 

 目の前に、園部がいた。

 

 そして俺の後頭部は、何故か少々高いところから落ちて地面に激突する。

 

「いってぇ!?」

 

 ゴチンッ! と結構な音が後頭部からした。マジで痛い。

 

 今ので完全に目が覚めた。俺は後頭部を押さえながら、ムクリと身体を起こす。

 

「園部、何してた?」

「い、いや何も……」

「ほーん……」

 

 まあ、追求は良いか。しても意味ない。

 

 ひとまず自分の身体の状態を確認する。

 

 疲労感は抜けており、8時間キッチリ寝た朝のように軽い。そんな長くは寝てないはずなんだけど。

 

 周りを見渡すと、まず目に入った物があった。

 

「何だありゃ。綺麗な鉱石だなァ……」

 

 そこにはバスケットボールぐらいの大きさの青白く発光する鉱石が存在していた。

 

 その鉱石は、加工されたであろう受け皿のような形の石の中にデンと構えており、どんな原理か分からないが水滴を滴らせている。神秘的で美しい石だ。アクアマリンの青をもっと濃くして発光させた感じが一番しっくりくる表現だろう。

 

「あ、起きた?」

 

 思わず見惚れていると、ハジメが苦笑しながら話しかけてきた。

 

 ちょっとした秘密基地みたいになっている簡易拠点。それを生み出した主は、何だか途轍もなく目つきが優しい。

 

「その鉱石から滴る液体さ。何が何だか分からないんだけど、飲むと魔力が全回復するんだ。それと、身体の疲れも全部取れちゃうんだよね」

「何だそりゃ。あ、もしかして俺も飲んだのか? 寝ている間に」

「まあ、うん。飲んでたね」

「おい何で言い淀む」

「飲んでたよ。それは確か。うーん、でもあれは飲んだうちに入るのかな……?」

 

 苦笑を彼は崩さない。

 

 本当に何があったのか。結構真面目に教えてもらいたいのだが、この感じだとひたすら苦笑いで流される未来が見えた。

 

 やれやれである。ホント。

 

「……ハジメ。白崎は無事か?」

「うん。今は別の部屋で回復魔法の鍛錬をしてるよ」

「そうかい。何はともあれ、無事なら良かった」

 

 彼女がもしも亡くなったら。ハジメが、正気を保てるか分からない。

 

 未だ完全な自覚は持ってないらしいが、ハジメもまた白崎の事を好いている。そんな感情を、彼女の死によって完全に自覚する。そんな悲劇、俺は見たくないのだ。

 

 もう、誰にも。そんな思いを。

 

……口が滑ったな。

 

 白崎の様子を見に行くと言ってこの場を離れたハジメ。後には、俺と園部だけが残された。

 

「真久野。もう、身体は大丈夫なの?」

 

 園部が、俺の顔を覗き込む。何だか距離が近い。

 

「大丈夫だ。ぶっちゃけ疲れてたのは精神面の方だからな。時間さえ経過しちまえば、この通り何事もなく復活さ」

 

 何千、何億倍ものプレッシャー。それをなかったかのように立ち回れるぐらい、強心臓なら良かったのだが。

 

 それにしても、浮かない表情の園部が気になる。

 

「……また、真久野に色々と助けられちゃった」

「やっぱり気になるのか? 俺ばかり命を助けてる現状に」

 

 敢えてストレートに、オブラートに包む事なく園部の心境を予想して言葉にしてみると、どうやら図星だったようだ。

 

 何とも言えない表情で、園部は頷いた。

 

「何かを受け取ったら、それに見合った量だけ私もお返しする。そんな風に生きたいと思ってたからさ。助けられてばかりの現状に、ちょっと鬱屈してるの」

「死ぬような目に合わない方が、お互いとって良いと分かっていても、か」

「その通り。何も返せてないって思っちゃう」

 

 苦笑する園部。笑ってこそいるが、とても痛々しい表情。俺にはそう見えた。

 

 本当に義理堅いというか、優しすぎるというか。

 

 そんな人だと分かっているから、俺も園部にあんな提案をしたのだけど。

 

「園部の中では、命を助けられたら助け返す。それぐらいしないと、受けた恩と釣り合わないって考えてるんだな」

「まあ、ね」

「難儀なもんで。そんな不器用だけど優しいところ、俺は凄く好きだけどさ」

「えっ」

 

 何か、妙に〝好き〟って言葉に反応した気がするが。今は取り敢えずスルーして、話を続ける方に注力する。

 

「もっと他の行動で返すとかないのか?」

「うーん。中々すぐには……あ、定番だけど手料理とか。ああ、でも命を助けてもらったお礼にしては……」

「まあ、何か納得がいく形の何かが見つかったら。その時に借りは返してくれや。いつまでかかっても構わないし、何でも俺は良いよ」

「……優しすぎるって、ホント。でも、ありがと」

 

 あの約束通り、死にかけてる時に助けてくれたらそりゃあ嬉しいが。その約束を意識するがあまり、精神を病まれちゃ困る。

 

 もう少し簡単に、何かお礼をするぐらいの意識で良いのだ。俺としては。

 

 ポロッと彼女が口にした料理という単語。そいつでも俺は構わない。てか、普通に食べてみたい。

 

 俺の記憶違いでなければ、園部の両親は洋食店を営んでいたはずだ。そこの娘である園部なら、かなり美味しい料理が出てくると期待しても良いのではないだろうか。

 

 今度、個人的なお願いとして手料理を頼むのもアリかもしれん。

 

「……あ、そうだ」

「何か思いついたのか?」

「ああ、えっとね。その……」

 

 ゴニョゴニョと口ごもる園部。心なしか、頬も赤い。何だか可愛らしい。

 

 クラスメイトはみんな白崎や、その友人の八重樫雫にうつつを抜かしていたが。園部も全く見劣りしない別嬪さんだろと、この場ではあまり関係ない事を考えながら、俺は彼女からの言葉を持つ。

 

「その、さ」

「おう」

「お礼うんぬんとはあまり関係ないんだけど、1つ私から個人的にお願いしたい事があったなと思って」

「ほう、言ってみてくれ。それとお礼の件に関しては、どれだけ遅くなっても大丈夫だからな。いつまでも待つぞ」

「んえっ、あ、ありがと……」

 

 こいつクソ可愛いな。どうした?

 

 急に乙女チックな感じなんですが。

 

「んで、お願いって?」

「え、えーっと。その……私たち、いつも名字で呼び合ってるじゃない。それ、変えない?」

 

 名字呼びを変える。ほう。

 

 つまり、お互いに名前で呼ばない? っていうお願い……いや提案かな?

 

「そいつは別に良いが、随分と急だな」

「……だって、ずっと戦い戦いで言い出せなかったし」

 

 今度はお手本のように、唇を尖らせる園部さん。何だかひっじょ〜に様になってる。こんな事を言ったら、ウガーッと怒るのだろうか。

 

……ちょっと見てみたい気持ちは我慢、ひたすら我慢である。

 

「んじゃ、俺はこれから優花と呼べば良いのかな?」

「え、う、うんっ。えへへ……」

 

 やっべえ俺も惚れちゃうかもしれん。

 

 一応ここは大迷宮内で、かつ超危険地帯であるのだが。それを思わず忘れるぐらい、こいつの可愛らしさが異常だ。

 

「それじゃあ、私もケンって呼ぶからっ!」

「おう。好きにしなさいな」

 

 取り敢えずあれだな。今現在も岩陰から覗き見しているハジメと白崎には、俺の事を“真久野”か“マック”と呼ばせるべきだな。

 

 相変わらず物陰から覗き見してる2人にため息をつきつつ、そんな事を決意するのだった。




 ステータス的には爪熊すらも討伐可能なマックくんですが、1人で倒しても面白くないので今回はこんな感じです。

 激アマアフターケア+常に相手方を最優先+さり気なく独占欲を刺激する行動=マックくんは恋愛強者。ポロッと零れた言葉からも、完全な唐変木でない事は確実にしてます。

 あと、これからハジメくんと香織さんは「マックくん」と呼ぶようになります。

※マックくんの技紹介
★ダイナマイトアッパーカット
…ガーキャンや対空、台上ダウン連のシメ、横スマ上シフトや上強の後の入れ込みでかなりお世話になってる人は多いのでは?

 グローブを地面に擦りつけ、摩擦熱で攻撃するのがスマブラ的解釈らしいのだが、そんな事流石に人外魔境なマックくんでも無理なのでコンビネーション技にした。

 テキトーな火種を用意し、地面に設置した上で超低空から全力アッパーカットを放つ。俺の拳が真っ赤に燃えて相手を天の果てまでブッ飛ばします。後で籠手だのグローブだのに火種を仕込める仕掛けをハジメくんが制作する予定。

 マックくんがその気になればの話だが、最初から拳を燃やす事でファイヤー昇龍拳や神龍拳にもできる。

 ちなみに園部さんは、意図せずとは言え想い人とのコンビ技ができてご満悦の模様。

マックくんの新たな恋人候補

  • 〝初恋枠〟優奈ちゃん
  • 〝妹枠〟ルウちゃん
  • 〝大穴枠〟恵里さん
  • ハジメくんの嫁候補以外のクラスメイト
  • アルテナを始めとする亜人族の皆様方
  • 〝英雄〟に嫁ぎたい帝国住まいの方々
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