異世界でもお前のパンチを見せてやれ!   作:Hetzer愛好家

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こんだけ人数いりゃ、そりゃあねぇ

 爪熊の魔物肉を食らい、大幅なステータスの向上に成功してから2日後。俺たちは、大迷宮内を高速移動しながら爪熊を探していた。

 

 あのウサギの能力である〝空力〟と〝縮地〟をマスターした事で、言葉通り縦横無尽に駆け抜けている。時には天井を走ってるぐらいだ。

 

「……っ! マックくん、見つけたよ!」

 

 先頭を走っていたハジメが、そう言いながら立ち止まった。

 

 俺、優花、白崎の順で立ち止まり、それぞれが前方を睥睨する。

 

 目線の先には、確かに爪熊がいた。無傷の。

 

 原理は謎だが、魔物が勝手にリスポーンするのは本当らしい。

 

 低い唸り声を出しながら、いつでも飛びかかれる準備をしている爪熊。奴が仕掛けるよりも先に、数的優位のあるこちらから行くべきだろう。

 

「行くぞハジメ!」

「うんっ! 白崎さんと園部さん、援護をお願い!」

 

 2人して、〝縮地〟を利用した爆発的な加速を使用しながらスタートダッシュを切る。

 

 俺は最前線より少し手前で一瞬立ち止まったので、最初から爪熊と真正面から対峙するのはハジメのみだ。

 

 無論、俺もただ立ち止まった訳ではない。

 

 ここ最近、ずっと世話になりっぱなしブッパなしなスマッシュストレートを放つために止まったのだ。

 

 ハジメが爪熊の豪腕、及び刃渡り30センチメートルぐらいの風の刃を出す固有魔法〝風爪〟の射程範囲内に入る直前に、俺の放ったスマッシュストレートの衝撃波が奴に到達した。

 

 踏み込みが強くなった事で、遠当てであってもバカにならない破壊力となった衝撃波。それを受けた爪熊は、浅く吹っ飛ばされる事になった。

 

 その隙をハジメは見逃さない。

 

 接近までの間に〝纏雷〟を発動させ、その状態で左ジャブからの右フックを仕掛けたのだ。

 

 二尾狼の固有魔法を取り込んだ事によって、錬成パンチ以外の特殊ブローを覚えたハジメは、この電撃パンチを戦闘中は主に使用するようになった。

 

 電撃の出力はそこまで高くない。オリジナルの半分程度だろう。本家本元のように、電撃を飛ばす事もできない。だが、サブウェポンとしては十分すぎる。

 

 いきなり拳の直撃を受け、更に電撃によって動きが鈍くなった爪熊。そこを、優花の投げた無数のナイフが襲いかかる。

 

 ハジメの錬成により、この階層では最高硬度のタウル鉱石で作り出された追加のナイフ。そして、王国で譲り受けたアーティファクトナイフ。合計10本だ。それを優花は、一瞬の超速ジャグリングの後に全てを同時に飛ばした。

 

 一直線に爪熊に向かっていたナイフ群は、途中で大幅に軌道を変更し、花火が弾けたかのように散開する。

 

 アーティファクトナイフは常に爪熊の死角に入り、虎視眈々と首を刈れる時を待っている。他のナイフは、爪熊の手足を狙って様々な方向から飛来した。

 

 全てのナイフが命中した訳ではなく、何本かは爪熊によって弾かれている。だが、隙が生まれた事に違いはない。

 

 ナイフを操作する優花の腕を信じ、俺とハジメで爪熊の懐に入り込む。

 

 パーリングに近い動きで、飛ぶナイフを叩き落としている爪熊だが、防御行動を取り終わった瞬間の明確な隙を狙い、俺とハジメが次から次へと拳を叩き込んだ。

 

 互いになるべく同じ箇所を殴る殴る殴る。俺はラッシュで。ハジメはワン・ツーと単発フックで。

 

 ナイフを躱せば拳が。拳を躱せばナイフが爪熊の皮膚を削っていく。みるみる間に、爪熊は至るところから出血をしていた。

 

 出血さえ起こしてしまえば、もう勝ったも同然だ。

 

「〝光縛〟!」

 

 そしてここにきて、白崎の光属性魔法が炸裂した。

 

 光の鎖が展開され、爪熊の自由を一時的ながら完全に奪ってしまったのだ。

 

 戦闘で数秒も無抵抗で硬直すれば、それは完全に致命的な隙となり得る。

 

「〝錬成ぇ〟!」

 

 必殺の錬成パンチが、スマッシュストレートの振りで爪熊の傷口に突き刺さった。

 

 途端、傷口から次々と鋭利な刃物が生えていく。

 

 一気に鉄分を。そして酸素を運ぶ血液を失った爪熊が、フラフラと蹈鞴を踏みながら後退りした。

 

「逃すか!」

 

 すかさず俺がハジメと入れ替わるようにして最前線に立つ。

 

 右アッパーを爪熊の顎に叩き込んで打ち上げると、俺は回転しながら右足で跳び上がり、ドリルのように回りながら拳を爪熊の腹に当てた。そして、爪熊の腹の皮膚が拳に巻き込まれて抉れたところで右腕を引っ込め、更に足下に〝空力〟で足場を作って左足で踏む事でフワリと2段ジャンプ。左拳も同時に上へと突き出した。

 

 左拳が腹部に突き刺さり、強烈にブッ飛ばされた爪熊を見送りながら、俺はクルリと前宙して着地体勢に入る。

 

 ライジングアッパーカット。スマブラリトルマックにおける、大事な大事な復帰技。色んな意味で復帰技としてはあまりにも欠陥技なので、何度絶望したか分からん。まあ、その分攻撃においては優秀なのだが。

 

 地面に降りようとすると、優花のアーティファクトナイフ8本の刃の部分が次々と交差しながら重なり合い、即席の足場として待機していた。どうやら、このまま追撃を仕掛けろとの事らしい。

 

 合点承知。その意を込めて、俺は左足でナイフの足場に着地。再度飛翔する。

 

 それに追従するようにして、優花のアーティファクトナイフが一緒に上昇してきた。

 

 ジャンプの頂点に達したところで、爪熊の浮いた体よりやや低い位置に到達する。ほんの僅かに、爪熊の方が上の位置だ。

 

 むしろ好都合。気にする事なく、俺はバリーブローで爪熊の腹を抉り抜いた。その動きに呼応するようにして、アーティファクトナイフも紅色にスパークしながら爪熊の首筋を斬り裂く。

 

 真下へ叩きつけるような動きで腕を振ったので、メテオスマッシュでも受けたのかと錯覚するぐらいのスピードで、爪熊はそのまま地面へと激突。数回バウンドをした後に、ピクリとも動かなくなった。

 

「〝螺炎〟」

 

 最後に、白崎が念のために放った火属性魔法で火葬する形でフィニッシュである。

 

 着地した途端、真横を通り抜ける形で渦を巻いた炎が襲来したので、軽くビビったのは内緒だ。

 

 灰すら残さずに消えた爪熊。ちょっと哀れだとか、食料の確保忘れたとか。そんな事を考えるよりも先に、胸の奥から安堵感と僅かな高揚感が湧いてくる。

 

「勝った……」

 

 そう、勝った。みんなで。万全な状態の爪熊を。

 

「……勝った、ね!」

 

 ハジメが、拳を突き出してきた。

 

「ああ。勝ちだ!」

 

 その拳に、俺は自分の拳を打ちつけるのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 大迷宮の探索は続く。

 

 それなりに広大な場所だが、4人かつ超速ならマッピングもあっという間だ。そこまで時間もかからず、下へと続く階段を見つけられた。

 

 一方、上へと向かう道は遂に見つからなかった。全ての分岐点を探索した上で見つからなかったので、何か特別な処置を施されて隠されているのだろう。

 

 脱出には、もはや下へ下へと行く他ない。

 

 互いに頷き合い、俺たちはこの大迷宮を最速で攻略する道を選んだ。

 

 暗闇と石化魔法のコンボで攻めてくるバジリスクモドキ(次階層)。足場の悪いタールの川上で、気配を完全に消してくるサメ(更にその次)。この辺りの階層は、かなりあっという間に終わってしまった。

 

 独りぼっちなら大変な場面も多いが、こちとら4人である。前衛の俺かハジメが魔物を抑え込み、その間に優花か白崎が後方から攻撃。怯んだ隙に撃破でどうにでもなる。

 

 そこからも攻略は続いた。毒を吐く虹色カエルと麻痺する鱗粉を散布するモスラモドキとのコンビ相手の時は、優花を庇ってダブルで毒を受け、マジで死ぬかと思った。あの回復水(ハジメ曰くポーション)を使う事もなく、限界ギリギリのど根性だけで乗り切れたが、本当に辛かった。みんなはちゃんとお薬使おうね!

 

 また、大迷宮なのに密林のような階層もあった。

 

 ここでまず大変だったのが、超巨大なムカデである。

 

 見た目だけでも嫌悪感がヤバい相手なのだが。よりによってこいつ、自分の体の節ごとに分裂して襲いかかってくるのだ。

 

 流石の俺たちも、顔を引き攣らせながら戦う羽目になった。ちなみに優花さんは台所の黒い悪魔を想起したのか、目がヤバい事になってた。白崎は涙目になってたな。

 

 確実にスマッシュなんかブッパしては対処に間に合わないので、この時は限界を超えるK.O.ラッシュで乗り切った。ハジメも電撃で筋肉を刺激し、更に電撃ラッシュを習得してむっちゃ頑張ってた。スタプラと英国紳士のラッシュとハジメが言ってたのは……まあ、うん。

 

 ちなみにこの階層には、樹の化物であるトレントモドキもいた。こいつは、ピンチになると頭からワッサワッサと頭を振って投げてくる果実が尋常じゃないぐらい美味かった。ので、狩り尽くす勢いで戦っては果実を回収した。味はスイカ。見た目は完全にリンゴだけどね。

 

 そんなこんなで、俺たちは猛烈な勢いで下にと降りていった。

 

 ちなみに現在のステータスはこんな感じだ。

 

===============================

真久野ケン 17歳 男 レベル:50

天職:拳士

筋力:1200

体力:970

耐性:1000

敏捷:1560

魔力:500

魔耐:500

技能:格闘術[+集束拳打][+浸透破壊][+身体強化][+集中強化][+逆境強化]・物理耐性・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・魔力操作・胃酸強化・天歩[+空力][+縮地]・纏雷・風爪・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・気配遮断・言語理解

===============================

 

 ご覧の通り、ステータスは軒並み上昇を続けているし、技能の数も増え続けていた。

 

 さて、これまで快進撃を続けてた俺たちだったが。ようやく50階層になったところで。その足を少しだけ止める事になった。

 

 階下へ向かう階段は見つけている。しかしこの50層、何だか凄まじく悪寒を感じる場所があるのである。

 

 それは、なんとも不気味な空間だった。

 

 脇道の突き当りにある空けた場所には高さ3メートルの装飾された荘厳な両開きの扉が有り、その扉の脇には二対の1つ目巨人の彫刻が半分壁に埋め込まれるように鎮座していたのだ。

 

 遂に現れた大きな変化なので、調べるつもりではある。だが、何らかの厄災に巻き込まれる。そんな予感もあった。

 

 ひとまず仮拠点を作り、そこで1日は研鑽に当てる。そう決めて、各々で俺たちは装備の充実だの鍛錬だのを開始した。

 

 ハジメは、ようやく腰を落ち着けて装備の充実を図れるとの事で、新たに遠距離攻撃の手段を制作中だ。白崎はその隣でずっと見ている。

 

 俺は、いつも通りシャドーボクシングだ。それを優花が見ている。たまーに飛ぶナイフでちょっかい出しをしてくるが。

 

 超高速のスウェーとダッキングを織り交ぜながらのシャドーボクシング。最近一気に増えた技の確認も兼ねてるので、相当長い時間動き続けている。

 

 それでも疲れないのは、やはり魔物肉を食した影響が非常に大きいだろう。

 

 飛来するナイフの数が多くなってきたところで、俺はシャドーボクシングを切り上げる。

 

 あまり鍛錬に夢中になりすぎると、優花がご機嫌斜めになる。そんな気がしたのだ。

 

「終わりなの?」

「おう。確認したい事はもう全部できたからな」

 

 ドッカと腰を優花の隣に下ろす。

 

 最近、主張の激しい優花さん。見る分には可愛らしいので良いのだが、ジト目を向けられるのは少し心に来る物があったりなかったり。

 

 ぶっちゃけ、もう彼女が何を思っているのかは分かっている。魔物肉を優花が食した時、ずっと隣で手を握りながら、励ましの言葉を投げかけ続けた事が災いしたかもしれん。

 

 ただ、現状はその想いに応えられない。せめて、この大迷宮の攻略が完全に終わったら。そう思っている。

 

「……もう、気がついてるんじゃないの?」

「どうだかな」

「イケズ」

「るっせぇ。応えられる状況じゃねえよ」

 

 なお、この間も優花は俺の腕に抱き着いたまま。

 

 何かもう、ここ数日は彼女の頭にはネコミミが、尻にはネコしっぽが生えてる気がしてならない。

 

 戦闘では凛としているし、ハジメたちと話してる時も割りかしツンケン気味だし。だからこそ、このギャップが凄まじく心に来る。

 

……攻略が終わるまで、耐えられるかなァ?




※マックくんの技紹介
★ライジングアッパーカット
…空中戦は苦手だろ?(もっと飛距離伸びてくれ)

 右足を前にした右の打ち上げ→そのままドリルブロー→空中を左足で蹴って左の打ち上げまでをワンセットとする技。蹴りウサギの肉を食べてなかったら実現がかなり難しい技だった。

 魔法を使う技なだけあり、破壊力は相当高い。ド密着でしか使えないが、発生速度がワン・ツーパンチの次ぐらいに速いので、切り返しに重宝する。なお、今回はガンダッシュからキメた。イカれてら〜

 弱点は、リーチの短さと使用後のクソデカ後隙。

マックくんの新たな恋人候補

  • 〝初恋枠〟優奈ちゃん
  • 〝妹枠〟ルウちゃん
  • 〝大穴枠〟恵里さん
  • ハジメくんの嫁候補以外のクラスメイト
  • アルテナを始めとする亜人族の皆様方
  • 〝英雄〟に嫁ぎたい帝国住まいの方々
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