異世界でもお前のパンチを見せてやれ! 作:Hetzer愛好家
「新しい遠距離攻撃手段だよ!」
そう言ってハジメが見せてくれたのは、俺も形だけは知っている物だった。
「これ、銃か?」
「正確には短筒だね」
「短筒。短筒って、あれか。たまに戦国時代の漫画やゲームで見かける」
「馬の上で撃つ事を想定した小さな火縄銃だね。全長が30から、大きくても40センチぐらいの」
わざわざこの形にしたのか。そう思うぐらい、精巧な作りをしている。
だが、疑問もあった。
「しかし、何故に短筒?」
短筒を作るぐらいなら、普通に拳銃でも良かった気がするのだ。
「短筒ってさ。重たい馬上筒を片手で扱えるようにした物なんだよね。ある程度の腕力は必要だけど、片手で発砲してもどうにかなる程度の重量と反動なんだ」
「まあ、それは分かるが……」
「僕の戦闘スタイルは分かるよね?」
「超々インファイトだよな?」
「その通り。錬成パンチは、潜り込みさえすれば無敵に近い。でも、大きな欠点は接近までのリスクの高さ。ならば、接近までのリスクを必要最小限かつ、あわよくば接近前に出血を強いる兵器を作り出したい。そこで、この短筒の出番って訳なんだ」
ハジメの説明は、更に熱を帯びて加速する。
MAD錬成師モードになってると悟り、俺は静かに耳を傾ける事にした。
「鉛玉を火薬で飛ばすだけの機構だから、生身の人間や動植物は粉砕できても、魔物を一撃とは行かない。銃身もそこまで頑丈じゃないから、10発撃ったらお釈迦になる。火縄銃の機構だから、装填も1発ずつ行わないといけない、けど、片手1つで簡単に致死攻撃になるかもしれない一撃をブッパなせる。何となく、マックくんならその脅威が分かるんじゃないかな?」
「……ああ」
分かる。めっちゃ分かる。引き金を軽く引くだけで、リトルマックのスマッシュストレートが、サムスのチャージショット並みに少ない後隙で吹っ飛んでくると考えれば、そのヤバさが理解できるぞ。
初見殺しとしての有効性。発砲音や、異世界性の生き物からすれば見た事のない武器であるので、何をするか分からないという点からくる強烈な威圧感。命中すれば、このオルクス大迷宮内の魔物でも出血は強いられる破壊力。
……何より。ハジメの必殺技との相性が良すぎる。
発砲を許したその時点で、相対した敵は詰みになる可能性が高いのだ。
現在のハジメなら、発砲の瞬間スタートを切れば弾と攻める事も可能だろう。某サムスみたいに。で、接近したらどうなるか? 錬成パンチで死亡である。鉛玉も命中していれば、死ぬまでのスピードはあっという間に違いない。
え、ヤベえわ。イカれてら〜
「あ、そうそう。10発撃ったら、5秒後に自爆する機能もあるよ」
「は?」
「折角だから手榴弾の機能も盛り込んだんだよね。そこまで手の凝ってない短筒だから、生み出すのは簡単だし」
「え、量産可能?」
「マックくんも欲しいなら作るよ? 園部さんの分はほら、ここにあるんだけど……」
用意の良いハジメくん。よりによって、某オールレンジ兵器も真っ青な超機動すらも行える投術師に短筒を与えてしまった。
こりゃあれか。白い悪魔にでもなれって事か。
「……改めて、ハジメって凄いな」
もはや短筒の仕組みに頭はいかなかった。ただ、目の前でニコニコしながら優花に短筒と銃弾を手渡すハジメを見て、そんな言葉が漏れるのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ある程度ハジメが落ち着いたところで、俺たちは例の部屋の前にやってきた。
おそらく、何らかの封印が施されているであろう扉。それを、俺は真正面に捉える。
普段なら、ハジメの錬成で強引な突破を行うのだが。たまには、俺の拳で切り抜けて彼の魔力を温存しようと思ったのである。ちなみに考えたのはたった今。
「ハッ――!」
気合一閃。そこから放たれたのは、全力のスマッシュストレート。
密かに行った〝集中強化〟により、破壊力が増しているスマッシュストレートは、いとも簡単に荘厳な扉を木っ端微塵に破壊してしまった。
目が点になっているハジメたち。いきなり扉をぶっ壊したともなれば、仕方ないか……!?
「ハジメ、左を頼む!」
扉の両側。そこに安置されていた像が、ズズズと前に出てきたのだ。ご丁寧に、同化していた肌は緑色に変化している。
どうやら、扉の前を守護しているガーディアンズらしい。それも1つ目のサイクロプス。
何もさせるつもりはない。ただ、圧倒する。中衛と後衛の温存が優先だ。
未だに吠えているサイクロプスたち。その右側の方へ俺はダッシュで向かう。
そのまま、俺は無言でK.O.アッパーをサイクロプスの腹にブチかました。
パンチの軌道に沿うようにして、サイクロプスの腹が大きく抉れ、臓物がビチャビチャと辺りに撒き散らされる。
「ガ、ア……!?」
そして、仰向けに倒れた。合掌。
秒殺K.O.である。開幕K.O.ブッパとか、試合でもやった事ないんだが、大迷宮では命が懸かってるので仕方がないね。
ハジメの方は、最初はサイクロプスの出現に驚いてスタートダッシュが遅くなったようだが、短筒を咄嗟に発砲した事で上手い具合に仕留められたようだ。
単眼を綺麗にぶち抜かれ、倒れ伏しているサイクロプスさんが何だか可哀想だった。
「び、ビックリしたぁ。短筒がなかったら、もう少し倒すのが遅れてたかもね」
そうは言いながらも、脊椎反射で敵をしっかり仕留められたのは流石である。
さて、邪魔者はひとまず排除できた。改めて俺は、粉砕した扉の奥を眺める。
明かり1つない真っ暗闇な空間だ。迷宮攻略中に手に入れた技能〝夜目〟がなかったら、わざわざ明かりを灯さなければならなかったかもしれない。
少しずつ目が慣れていき、室内の全貌が分かってきた。
中は、聖教教会の大神殿で見た大理石のように艶やかな石造りで出来ており、幾本もの太い柱が規則正しく奥へ向かって二列に並んでいた。そして部屋の中央付近に巨大な立方体の石が置かれており、部屋に差し込んだ光に反射して、つるりとした光沢を放っている。
直感的に、その立方体に何かがある。そう思い、俺は数歩前に出た。
「……だれ?」
そこに響く、知らない人の声。かすれた女性の声だ。
俺は思わず、その場で硬直してしまった。
声がしたのは、例の立方体から。俺は再度、立方体を凝視する。
その立方体には、人が生えていた。
上半身から下と両手を立方体の中に埋めたまま顔だけが出ており、長い金髪が某ホラー映画の女幽霊のように垂れ下がっていた。そして、その髪の隙間から低高度の月を思わせる紅眼の瞳が覗いている。年の頃は12、3歳くらいだろう。随分やつれているし垂れ下がった髪で分かりにくいが、それでも美しい容姿をしている事だけは分かる。
「何故、人が」
こんな場所に、このように封印されるような形で存在する人型の何か。
まず脳裏によぎったのは、これだ。
(厄災の種)
関わらない方が、色々と面倒を起こさずに済む。そんな気がしたのである。
しかし、同時に考えてしまった。
(こんな小さい子が封印されてる理由は?)
そう、好奇心を抱いてしまったのだ。
好奇心は何とやら。分かってはいるが、俺は好奇心のままに言葉を発す。
「君は何者だ」
真っ直ぐに、俺は女の子の紅眼を見つめる。女の子もまた、真っ直ぐ俺の瞳を見ている。
軽く目で、質問に答えるように促すと、女の子は口を開いた。
「私、先祖返りの吸血鬼……」
「吸血鬼?」
「え、吸血鬼!? 300年以上前に滅んだはずじゃ……」
いつの間にか隣に立っていたハジメが、驚嘆の声を上げる。
そう言えば、彼は座学にも力を入れていたな。俺との鍛錬がない時間は、錬成の訓練と座学に勤しんでいた。
「滅んだはずの種族。だが、確かにここに存在している。理由があるのか?」
「凄い力、持ってる。致死の傷を受けても死なない。勝手に再生する。それに、魔力を直接操れる。陣もいらない」
「何だって? そいつは……」
俺たちと同じじゃないか。
俺とハジメは、魔力こそ直接操れるが、魔法への適性が皆無なので、身体強化の技能の発動こそ詠唱も陣も必要ないのだが、魔法を打つにはやはり巨大な魔法陣が必要になり、ロクに扱う事は不可能である。
一方、魔法にもしっかり適性のある優花と白崎。こちらはとにかく凶悪だ。
周りがチンタラ詠唱している間に、2人はバカスカ無詠唱で攻撃魔法を仕掛けられるのだから。相手にならない。
この封印されている女の子は、それと同じ能力を持っている事になる。
「封印された理由は?」
「裏切られた……私、凄い力を持っているから国のために頑張ってた……でもある日……家臣の皆……お前はもう必要ないって……おじ様……これからは自分が王だって……私……それでもよかった……でも、私、凄い力あるから危険だって……殺せないから……封印するって……それで、ここに……」
「はあ、そりゃまた」
随分と波乱万丈な人生を送っている。
「お願い、助けて……」
懇願する女の子。
俺は、何となくハジメの方を見た。1人ではとても決められそうにない。
ハジメは、顔を下げたまま黙って何かを思案をしている。
話しかけられる感じではなく、俺は後ろに立っていた優花たちの方を向いた。
「どうする?」
「助けてあげたい、けど……南雲次第じゃない? 香織は、南雲に合わせるんでしょ?」
「ふふ、そうだね。多分だけど南雲くん、この場で何よりも最善の行動を取ると思うよ」
微笑みが深くなった白崎。きっと彼が、最善の選択を行う。そんな風に、ハジメに対して全幅の信頼を置いているようだ。
当のハジメは、いつの間にか顔を上げて俺を見ていた。
「マックくん。助けよう」
「……一応、理由を聞いても良いか。その様子だと、同情だけじゃないだろ?」
「境遇に対する同情もある。けど、これからの事を考えてみたら、戦力の増強をするのは間違えてないと思うんだ」
「戦力の増強、か」
「後衛が1人増える。それだけで、かなり戦線は安定すると僕は思うんだけど、どうかな」
少し考えて、彼の言う事が俺は理解できた。
現在は白崎のみが後衛だ。しかしここに、もう1人攻撃が可能な後衛が存在したら。白崎はヒーラーに専念しつつ、時折援護射撃を行うだけで良いし、シンプルに前線の支援の枚数が増えるだけで安定感はかなり変わってくるだろう。
もう1つ。優花が現在、前衛と後衛の間のアタッカーと言う、本人的にはちょっと微妙な立ち位置なのだが。前線支援を後衛に任せ、彼女も俺と同じぐらいの距離感で戦えるようになったら。
戦術の幅が、一気に広がるのは間違いなかった。
「……確かにな。メリットの方が多そうだ」
「でしょ?」
文句はない。
俺はハジメと頷き合う。そして、先んじて前に出たハジメの代わりに、後ろで待機している女性陣に、予備の服を用意しておくように伝えた。
「マックくん。僕が錬成するから、マックくんは錬成で崩れた部分を破壊してくれるかな」
「任せとけ」
籠手を打ち鳴らし、俺は立方体の前に構えた。
ハジメは、立方体に手を置いて一呼吸。そして、
「〝錬成っ〟!」
錬成を始めた。
それと同時に、俺は立方体に全力で拳を叩きつける。
どんな素材で作られているのだろう。〝身体強化〟に〝集中強化〟を重ねがけしてる状態であるにも関わらず、立方体は軽くヒビが入る程度しか変化がない。
「くっ、抵抗が強いな……」
ハジメの錬成も、立方体に弾かれているようだ。
しかし、全く通じてない訳ではないらしい。ジワリ、ジワリと立方体にハジメの魔力が浸透し始めている。
「行けるか?」
「もちろん。こんなとこで、諦めるつもりは毛頭ないよ!」
「ハハッ、良いど根性だなァ!」
デンプシーロールに切り替え、俺は拳打を加速させる。すると、少しずつだがハラハラと、立方体が崩れ始めた。
ハジメの方も、気合を入れながら魔力を全放出。限界ギリギリまで魔力を振り絞り、意地の錬成を成し遂げようとしている。
すると、遂に立方体がドロリと錬成によって形を変え始めた。
すかさず俺は、形が変わり出した部分を集中して殴る。
脆くなった立方体は、もう俺の拳に耐えられるだけの耐久性を持ち合わせていない。
さっきまでの硬度が嘘のように、次から次へと砕け散ったのだ。
徐々に。しかし確実に、女の子の枷が消えていく。錬成で完全に溶け出した部位もあるので、身体がどんどん自由を取り戻していった。
「ラストッ!」
ハジメの掛け声。俺たちは、同時に拳を改めて構える。
そして、全く同じ動きで。スマッシュストレートを放ち、女の子の背中部分に未だ張り付いていた立方体を粉々に粉砕した。
解放された女の子は、ペタリと座り込んだ。立つ力も残されていないらしい。
魔力を一気に放出したハジメも、肩で息をしながら膝をつく。それを見た白崎が、すかさずハジメのところに向かった。手には予備の服を持って。
俺も俺で、少し息が上がっている。座り込みこそしなかったが、息を整えるために軽く身体を揺らしながらリラックスする。
「ケン、お疲れ様」
「おう」
額から落ちる汗を、優花がタオルで拭ってくれた。
こいつにセコンドを頼んだら、俺のメンタルは相当安定するのではなかろうか。
そんなどうでも良い事を考えていると、白崎の回復魔法によって動けるようになったハジメが、女の子と真正面から向き合っていた。
「ありがとう……」
その言葉に、どれだけの想いが込められているのか。
女の子の発した感謝の言葉に、ハジメは微笑みながら頷く事で応える。
「皆の名前、なに?」
「僕はハジメ。南雲ハジメだよ。こっちは……」
「白崎香織。香織って呼んでね」
この感じだと、俺たちも自己紹介をした方が良さそうだな。
「真久野ケンだ。マックと呼んでくれ」
「園部優花よ。好きなように呼んで頂戴」
女の子は、告げられた名前を何度も何度も反芻するように呟いている。もう絶対、忘れないように。
次いでハジメは、女の子に名前を問う。
すると、
「ハジメに名前、つけて欲しい」
これである。
名前があるにはあるらしいのだが、その名前は捨てたい。そう女の子は口にした。
名付け親に任命されたハジメは、少しの間思案をすると、女の子の頭を撫でながら口を開いた。
「〝ユエ〟、なんてどう?」
「ユエ? ……ユエ……ユエ……」
「ユエって言うのはね、僕の故郷で〝月〟を表すんだよ。最初、この部屋に入った時、君のその金色の髪とか紅い眼が夜に浮かぶ月みたいに見えたんだけど……どうかな?」
咄嗟に考えたにしては、かなり理由がしっかりしてる事に感心する。
それは女の子も感じた事のようだ。しばしの間、目をパチクリさせた後。無表情ではあるが、どことなく嬉しそうに瞳を輝かせた。
「……んっ。今日からユエ。ありがとう」
その様子に、少しホッコリとした気持ちで見守っていた俺だったが。不意に、常時展開している技能〝気配感知〟に何かが引っかかった事で、一気に臨戦態勢に入る。
ハジメと白崎も、その気配を察知したようだ。ハジメはユエを抱きかかえながらその場を撤退した。
撤退とほぼ同時に、何かが天井から落ちてきた。
「あれは……」
「サソリ?」
ハジメの言葉通り。落ちてきたのは、サソリのような魔物だった。めっちゃデカイけど。
いきなり気配感知に引っかかったので、ユエを解放するまではこの場にいなかった可能性が高い。しかし、解放した途端に現れた。こいつは、ユエを逃さないための最後のガーディアンなのだろう。
彼女を置いていけば、安全に逃げる事は可能だ。逃さないためのガーディアンなら、彼女を置いていけば大人しくなる可能性が高い。
だが、それをハジメは絶対に良しとしないだろう。
逃走の択はない。戦う以外、取れる選択肢はゼロ。
「ハジメ。彼女の回復を」
「え? あ、うん。ポーションで……」
「いや、違う。血を吸わせてやるんだ。吸血鬼なら、薬を飲むより血を吸う方が回復効率は良くなるはずだからな」
あくまで予想。しかし、確率は高いだろう。
ユエを見ると、彼女は目を見開きながらも、大きく頷いていた。
「回復したら、強力な魔法攻撃を見せて欲しい」
「魔法を?」
「まあ、あれだ。折角だから見てみたくてな。後衛にしてもしっかり機能する威力かどうかを」
試すような視線をユエに送る。
彼女は、決意に満ちた瞳を作った。どうやら、やる気になったらしい。
「優花。それに白崎。俺たちで時間を稼ぐぞ」
そう言って、俺は拳を構えるのだった。
今作のハジメくんは、原作ほど錬成に費やす時間が多くなかったので、簡素な機構で性能も少し劣る短筒を制作しています。
※ハジメくんの技&武器紹介
✦短筒
…ちっさい火縄銃みたいな形をしている。単発式。原作のドンナー・シュラークより簡素な機構で作られており、現時点のハジメでも量産が可能。弾と共にタウル鉱石で生成されているので、冷却攻撃以外にはそれなりに耐えられる。
腐っても銃には違いないので、レールガンほどではなくても破壊力はかなり高い。また、片手でも扱えるぐらい軽く、更に反動も小さいので発砲後の隙がほぼゼロ。発砲後に接近を仕掛けたいハジメとの相性抜群。
10発で銃身がダメになる欠点を抱えているが、ただでは転ばないのがハジメクオリティ。銃身内部に溜まった燃焼石の粉末が、撃鉄時の熱で熱されて臨海点に達するのが10発目であり、ハジメの計算によって10発目から5秒後に爆裂するようになっている。弾切れしたアイテムも飛び道具として有効活用するスマブラから着想を得たそうだ。
ちなみに10発目を発砲してすぐに、火薬類を詰め込んでやると爆発の威力が上昇する。弾を投げてリロードできる優花っちなら、ぶん投げた短筒に火薬と火種をぶち込んで大爆発させる事も可能。
マックくんの新たな恋人候補
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〝初恋枠〟優奈ちゃん
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