異世界でもお前のパンチを見せてやれ!   作:Hetzer愛好家

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それぞれの道

 優花と抱き合い、そのままその先へ……は行かず、唇を重ねるに留めてから一晩が経過して。更にそこから2週間の時が流れた。

 

 この数日間。新たに手に入れた神代魔法である〝生成魔法〟をひたすらに鍛錬し、遂にはアーティファクトを生み出せるにまで至ったハジメから、俺たちは様々な装備を受け取った。

 

 まずは最初から持ってた籠手。見た目は前と変わらないが、拳の部分に魔法陣が仕込まれており、優花が触ればすぐに〝火種〟を設置できるようになった。これでいつでもダイナマイトアッパーカットを敢行できる。

 

 次に受け取ったのが、リトルマックではお馴染みの黒いタンクトップと緑色の短パンに緑色のボクシンググローブ……の形をした、普通の籠手。黒色で〝空力〟が付与されたボクシングブーツ。そしてサーモンピンクと緑色の上下スウェットだ。

 

 スウェットはそれぞれで性能が異なる。ピンクのスウェットは、〝衝撃吸収〟と〝高速魔力回復〟が付与されている。かなり持久戦に向いた仕上がりだ。

 

 一方で緑色のスウェットには、〝気配遮断〟と〝魔力感知〟が付与されており、奇襲に向いた物に仕上がっている。

 

 また、衣類には共通して〝着用者の体感温度を常に20度に保つ〟機能まで盛り込まれている。寒くても暑くても安心安全。考えるまでもなくとんでもねえなこれ。

 

 余談だが、服の形を作ったのはユエさんである。どうも裁縫が得意らしく、全員の新たな服を作ってくれていた。当然、ハジメの手で素晴らしい温度調節機能と衝撃吸収機能付きだ。

 

 新装備一式を装着した際、ハジメには「めっちゃリトルマック」との感想を頂いた。まあ、一応俺はリトルマックですからね。

 

 優花の装備も一新している。

 

 まず、色々と便利な技能を付与されたアーティファクトナイフが大量に彼女の手に渡った。

 

 どのナイフにも〝魔力吸収〟と〝気配感知〟に〝気配遮断〟が付与されており、命中しただけで魔力が削られる上に、索敵まで可能な超万能ナイフになっている。また、吸収した魔力はちゃんと優花の物にできる。ヤベえなこれも。

 

「確かにアタッカーとヒーラーはいるけど、デバフと索敵要員はいなかったわね」

 

 こう優花は口にしており、ハジメ作のナイフは随分と気に入っているようだ。

 

 短筒も新たに制作しており、これまで通り爆発する短筒と、普通の拳銃両方を彼は制作した。

 

「デザインはデザートイーグルだよ!」

 

 目をキラッキラさせながら説明するハジメくん、中々に可愛かった。本当に錬成師って彼にピッタリの天職だと思うわ。

 

 ああ、そう言えば。ハジメも錬成の魔法陣が刻まれた手袋に、色んな機能を盛り込んでいたっけ。

 

 俺と同じように衝撃波が飛ばせるようになったり、その衝撃波を収束する機能も搭載してた。ロマンの塊を生み出すのが本当に上手い。

 

 移動手段も新たにハジメが生み出した。

 

 まずは6人は確実に乗れる車。魔力で動く。あの回復する水が湧き出てたが、完全に枯渇してしまった魔晶石の一部を使い、そこに魔力を込める事で駆動する。また、車底には錬成の魔法陣が仕込まれており、常に地面を平らにしながら移動可能だ。

 

 同じ仕組みのバイクも2つ用意している。ちなみに俺の進言で〝気配遮断〟を付与してあるので、いつでもどこでも奇襲可能である。

 

 車の説明をした時の通り、あの回復する水は遂に抽出されなくなり、試験管型容器12本分でラストとなった。ただ、こちらにはヒーラーとして随分と能力が極まっている白崎がいるので、そこはあまり問題にはならない。

 

 仮に白崎がいなくても、優花やユエも基本の回復魔法なら扱える他、そもそも俺やハジメの打たれ強さが異常なので、回復について大きな問題にならないのが実際のところだ。

 

 最後に俺のステータスの方も確認しておこう。

 

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真久野ケン 17歳 男 レベル:???

天職:拳士

筋力:14000 [最大560000]

体力:12650 [最大506000]

耐性:13100 [最大524000]

敏捷:16880 [最大675200]

魔力:5000

魔耐:5000

技能:格闘術[+集束拳打][+浸透破壊][+身体強化][+集中強化][+逆境強化][+闘神]・物理耐性・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・魔力操作[+魔力放射]・胃酸強化・天歩[+空力][+縮地]・纏雷・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・熱源感知[+特定感知]・先読・金剛・豪腕・威圧・念話・生成魔法・言語理解

===============================

 

 ヒュドラ戦で目覚めた〝闘神〟が色々と狂ってる事もあって、ステータスが良く分からん状態になっている。

 

 レベルの表記はされなくなったし、そもそものステータスが人外魔境だし。まあ、魔法関連は相変わらずパーティー内では1番低いのだが。一応身体強化系統の技能を発動させる分には問題にないが、ハジメ以上に俺は魔法関連が壊滅的だ。

 

 ステータスの最大値こそ頭がおかしい事になってるが、そもそも〝逆境強化〟が発動しない限りは〝闘神〟も発動しないので、中々こんな数値に至る事はない。ヒュドラ戦では瞬間的には到達してそうだが。

 

 そもそもの話、〝逆境強化〟は魔力枯渇かスタミナ切れか、あるいは身体的に大きなダメージを負った状態に陥らないと発動しない、超的な諸刃の剣だ。発動した時点で、戦闘後に倒れる事は確定である。俺としてはあまり使いたくない。

 

 ちなみに優花、ハジメ、白崎は魔法関連のステータスはしっかり万を超えている。

 

 特にハジメのステータスはバランスが良く、魔力関連の派生技能にも目覚めているので、どんな状況でもハイスタンダードに立ち回れるだろう。

 

 俺はスーパー肉弾戦キャラに仕上がってしまったが、ハジメにはこのままハイスタンダードキャラで成長して欲しいなと勝手に考えている。

 

 それこそクラウドとか格闘ミーぐらい機転が利くようになったらハジメは本当に強く、かつ厄介になるだろうな。

 

 そうそう。オスカーの指輪だが、こいつもまた便利なアーティファクトだったりする。

 

 魔力を込めれば、どんな物でも自由に範囲内へ出したり収納したりが可能なのだ。手持ちの物全てを放り込んでも余裕がありそうな様子だったので、相当な量の物資が入るのだろう。

 

 ちなみにハジメは、材料さえ揃っていれば複製が可能な技能を駆使し、この指輪と同じ機能を持つアーティファクトをもう1つ生み出しており、それはハジメが所持している。

 

 いわゆる勇者袋が2つ。強力なんてもんじゃないわな。

 

 さて、雑談はこの辺りで一旦終わる事にしようか。

 

 滞在した期間で、相当に強くなったのは間違いないし、このまま滞在を続ければ更なる力を手にする事も可能だろう。

 

 しかし、いつまでもこの迷宮内にいる訳にはいかない。

 

 俺たちの行方を、今頃ハイリヒ王国は必死になって探しているだろう。いつまでも行方不明の期間が長引くと、色々と後に引く可能性がある。

 

 日本への帰還を目指すに当たり、俺たちがこれから行うのは、世界のどこかにある大迷宮を全て攻略し、〝概念魔法〟という物を習得する事だ。

 

 だが、その前に。1度王国に顔を出し、無事だという意を伝えた方が良いだろう。後々、行方不明の件で詰問されるのは面倒くさい。

 

「……よし。みんな、準備はできたな」

 

 オスカーが身にまとってたローブを改造し、己の服として羽織っているハジメ。

 

 ハジメの手によって改良された魔法の杖を持ちながら、ユエと鮮烈な隣争いを繰り広げている白崎。

 

 そして、新たなナイフを2本腰に提げて、俺の手をそれとなく握っている優花。

 

 最後に。完全にリトルマックと化した俺だ。

 

「取り敢えず俺と優花は王国の方へ戻るが、その後すぐさま出発。先んじて大迷宮攻略に入るハジメたちに、必ず後から追いつく……で、正しいよな?」

「うん。僕たちは、取り敢えずライセン大迷宮か樹海の迷宮を探そうと思うよ。その前に街へ行って、食料品辺りを買い揃えてからだけどね」

「ああ、それは大事だな。オルクス大迷宮の攻略中、兵站の重要性は身に沁みているからなァ……」

 

 魔物肉で飢えを凌ぐのをこれからも続けるのは、何だか嫌だった。

 

 日用品込みで買い物をしてから行くと告げたハジメの言葉に頷くと、俺はオスカーの指輪を持って例の魔法陣に足を踏み入れる。

 

 すぐにみんなが魔法陣に入ると、光が少しずつ部屋の中に広がっていく。

 

 どうやらこの魔法陣が、そのまま地上に行く道になるらしいのは分かっているので、俺たちは黙って経過を見守った。

 

 光が晴れ、視界が戻ると。俺たちは、洞窟の中に立っていた。

 

 ただし、洞窟内の割には空気が新鮮である。

 

 そのまま前にみんなで進んでいく。途中、封印やトラップがあったが、指輪をかざすだけで次々と解除されていくので、俺たちは何の苦労もせず先へ先へと歩を進められた。

 

 そして、遂に光が現れる。洞窟内を照らす鉱石の明かりではない。大自然の、太陽の光だ。

 

 真っ先にユエが走り出し、それをハジメと白崎が慌てて追いかける。ユエは300年もの間、求めて止まなかった外の世界だ。仕方のない事だろう。

 

 俺と優花は、走る事なくゆっくりと。手を繋ぎながら歩き、そして外に出た。

 

 胸いっぱいに広がる外気。空気が旨い。

 

 およそ1ヶ月ぐらいは陽の光を見てなかったが、こんなにも綺麗だったのか。

 

「……戻ってきた、な」

「ね。随分と久しぶりに外に出た気分」

 

 外に出た事で、実にハイテンションな状態でハジメに飛びついたユエを見守りながら、俺たちはしみじみとお互いに呟いた。

 

 地上の人間にとって、ここは地獄にして処刑場だ。断崖の下はほとんど魔法が使えず、にもかかわらず多数の強力にして凶悪な魔物が生息する。深さの平均は1.2キロメートル、幅は900メートルから最大8キロメートル、西の【グリューエン大砂漠】から東の【ハルツィナ樹海】まで大陸を南北に分断するその大地の傷跡を、人々はこう呼ぶ。

 

 【ライセン大峡谷】と。

 

 まあ、外は外だ。どんなに地獄みたいな環境だと人が称したとしても、オルクス大迷宮よりかは圧倒的にマシな環境だ。

 

 確か、この渓谷の途中には王国へと向かう分かれ道が存在しており、そこをひたすら真っ直ぐ行くと簡単に王国へと戻れる。バイクもある事だし、あっという間だろう。

 

 さて、と。

 

「取り敢えず、魔物の包囲網を突破してからだな。優花は待っててくれ」

「はいはい。こうも魔力が分解される場所じゃ、ケンの方が適任だしね」

 

 ピンクのスウェットを脱いで優花に手渡して、俺はスッと構えを取る。

 

 それに反応したのはハジメだ。すぐに周囲を見渡して状況を察知し、俺の隣に立って全く同じ構えをした。

 

「少しの間別行動だし、最後にここで連携の確認でもしておく?」

「お、良いなそれ。やっとくか」

 

 魔物に対する恐れなんて物はない。

 

 何せ、あのヒュドラと比べたらどれも大した魔物じゃないのだ。余裕である。

 

「あれ、衝撃波は出さないんだ」

 

 俺のグローブ……ではなく籠手を見て、ハジメがそんな事を言う。

 

「あんなレベルの魔物に衝撃波なんて要らんだろ」

「確かに」

「魔力を扱う技能も使うのが面倒だし、サクッと拳オンリーで片付けちまおうぜ」

「ふふ、そうしようか」

 

 その言葉と同時に、俺たちは左右に別れて飛び出した。

 

 仮に〝空力〟が使えずとも、今の身体能力なら空を飛ぶ魔物だろうと簡単に打ち落とせる。

 

 それを証明するかのように、俺は跳び上がってワイバーンのような魔物の背に乗り、その勢いでハンマーパンチを繰り出して墜落させた。

 

 ハジメは跳びはせず、地上に陣取るライオン型の魔物に認知される間もなく接近。左ジャブから右フックを繋げるド定番のワン・ツーパンチを決めて粉砕している。

 

 本当に破壊力が上がったな。そう思いながら、俺はもう1匹のワイバーンモドキにライジングアッパーカットで飛びかかり、腹に大穴を開通させて地面のシミにしてやった。

 

「ジャブジャブ! ラッシュラッシュ! アッパーカットぉ! っと」

 

 何かハジメが、ドック・ルイスみたいな事を言いながら魔物を処理している。かなりシュールな絵面だ。

 

 かなり余裕あるし、俺も遊び心入れながらやってみようかね。

 

「おらボディブロー」

「グガッ! グオオオ!」

「怯むなマック! 装甲なんかぶち破れぇ! ってか」

 

 明らかに硬そうな外郭を持ってたゴリラモドキに、俺はクリンチからド至近距離で数発ボディブローを叩き込み、その後少しだけ離れて豪腕を受け止めながらダイナマイトアッパーカットで処した。

 

 うん、強引に行ったけど全く痛くないわ。

 

「よっ、ほいっ、スリッピングカウンター」

「へえ、ハジメも高い精度でカウンターできるようになったんだな。よーし、そのまま叩き割れぇ! パンチは剣よりも強しだ!」

「そらよっと!」

 

 ちょっとテンション上がってきた。遊び心満載なのもたまにはアリだな。

 

「おっと……僕は空中戦苦手なんだよなぁ」

「とか言いながら、普通に空中でアッパー振って撃墜してんじゃん。ベクトル地獄門だけど」

「空中ジョルト僕も覚えたいんだけどな〜」

 

 呑気な声を出しながら、しかし次々と魔物を処すハジメくん。マジで心強い。

 

 俺も喋りながらだが、しっかりForバージョンのK.O.アッパーカットで1匹仕留めた。

 

 気がつけば、魔物は全て地面のシミと化していた。ここまで1分あるかないか。

 

「あ、連携技の確認忘れてた」

「まあ良いだろ。あのムービーの再現みたいになってて中々に面白かったし」

 

 遊び感覚で魔物を処す精神性に反省はしつつ。しかし楽しかった事実はしっかりと認める。

 

 色んな意味で息の合った掛け合いをしているので、大きな意味で連携技の確認ができたとも捉えるべきだろう。

 

「うーん。ま、良いか」

 

 ハジメもサクッと割り切ったようだ。

 

 その後俺たちは、軽く拳を突き合わせてスパーをしてから、それぞれ進む道へと体を向けるのだった。

 

「……ここからは2人きりね?」

「まあ、な」

「ふふ、嬉しい……」

「おん……」

 

 やっぱ可愛いな優花。




 ヘタレマックくんと優花さん。一線は超えてません。

 ステータスが色々とヤバいですが、このステータスになるまでが死ぬほど大変なのでお許しください。体が溶けるぐらい甚大なダメージを受けるか、魔力かスタミナが枯渇しないと発動しない特殊技能なんで……。

 緑スウェットはワイヤーカラーが着てた→見えにくい→隠蔽機能付けたろの精神です。

マックくんの新たな恋人候補

  • 〝初恋枠〟優奈ちゃん
  • 〝妹枠〟ルウちゃん
  • 〝大穴枠〟恵里さん
  • ハジメくんの嫁候補以外のクラスメイト
  • アルテナを始めとする亜人族の皆様方
  • 〝英雄〟に嫁ぎたい帝国住まいの方々
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