異世界でもお前のパンチを見せてやれ!   作:Hetzer愛好家

23 / 129
 こ れ は ひ ど い

 はい、ご都合解釈大暴走の回です。


K.O.を数発やっても許されるかな?

 荒野征くバイクが1つ。

 

 搭乗者はもちろん俺と優花である。

 

 魔力効率が最悪なライセン大渓谷だが、幸いにも俺と優花、どちらも保有している魔力は普通のそれではない。

 

 保有魔力量によるゴリ押しで、俺の運転するバイクは颯爽と大渓谷を駆け抜けていった。

 

 時々魔物が顔を見せるが、俺たち自身の技能や、バイクに付与された〝気配遮断〟のお陰で、まるで気がつかれる事なく華麗にスルーしている。

 

 あっという間にハイリヒ王国へと行ける道に出た事で、同時にライセン大渓谷を抜ける。途端に魔力効率が上がり、少ない魔力で速度をグングン上げてくバイクは、そのままノンストップで王城へと向かうのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 王城の少し手前でバイクから降り、指輪の中に収納し。徒歩で正門のところまできた俺と優花は、数値や技能欄をしっかりと隠蔽した上で、門番にステータスプレートを見せて中に入ろうとする。

 

 だが、

 

「え、行方不明だった真久野ケンと園部優花!? ちょちょ、ちょっと待っててください!」

 

 大慌てで城の中へ入っていき、何かを伝えに行ってしまったので、現在俺たちは正門前で待ちぼうけを食らっている。

 

「何かこれ、思ってたより大事になってない?」

 

 ため息を吐きながらそんな事を言った優花に、俺も全面的に同意する。思ってたより大事になってたわ。

 

 ステータスや技能欄を隠蔽して大正解だった。しっかり隠蔽してなかったら、まずこの門番が気絶して大騒ぎになる可能性がある。

 

「俺たち、全力で〝気配遮断〟をして忍び込んだ方が良かったんかね」

「いや、それはそれで問題になると思うのだけど……」

「……これが最適解だったと思うしかねえな」

 

 待つ事10数分。ようやく正門が開き、その奥から色んな人影が現れた。

 

 まず目に入ったのは、畑山先生の姿だ。ちっこいけどすぐに分かった。我先にと走ってる。

 

 その後ろに、優花の友達が追従していた。後は、天之河ら勇者パーティーの姿もあるな。

 

「真久野くん! それに園部さんも! 1ヶ月もどこに行ってたんですかーッ!」

 

 そう叫びながら。畑山先生は、俺と優花を同時に抱きしめた。

 

 何とも言えない気分になるが、間違いなく1番心配してたのは先生だろう。黙ってされるがままになる。

 

「優花! アンタ、いきなり失踪なんかして……!」

「心配したんだから! もう死んだかもしれないって、気が気じゃなかったんだよ!?」

「あー、うん。そうだよね。ホント、ごめん」

 

 珍しく優花も素直に謝った。流石に悪いと感じているようだ。

 

「真久野くん。香織と、それに南雲くんは一緒じゃないの?」

 

 勇者パーティーの1人。そして白崎の親友である八重樫雫が、俺にそう尋ねてきた。

 

 その目は焦燥で染まっている。1ヶ月も音沙汰がなければ、最悪の可能性も考えるはずなので。相当な期間、眠れない夜を過ごしていたのだろう。

 

 隠すつもりもないので、俺は正直にハジメと白崎がどうしてるかを答えた。

 

「一緒ではない。けど、ピンピンしてるよ」

「ほ、ホントに?」

「おう。今は別行動してるがな。後で詳しく話すが、2人共バカみたいに強くなってるから、別行動しても簡単には死なないぜ。今はライセン大渓谷を探索しつつ、街を目指してるはずだ」

 

 それにしても、どこまで話そうかね。オルクス大迷宮の事。世界の真実。解放者。

 

 ひとまずここでは落ち着いて話せない。俺は先生を軽く引き剥がすと、中に入るように進言した。

 

 まあ、揉みくちゃにされてるのは変わりないので、ノロノロとしたペースでしか歩けてないけど。

 

 それでも何とか王城内に入り、国王や王女様とも謁見。無事を伝え、テキトーに話を聞き流した俺たちは、応接室のような場所で腰を下ろした。

 

 ちなみに応接室にいるのは、俺と優花に加えて、勇者パーティー、先生、優花の友達だ。

 

「さて、どこから話そうかな……」

 

 取り敢えずデリケートな部分は避けて話す事に決める。

 

「みんなの中では行方不明になったあの日。俺たちは、ハジメのとある一言が気になって、一緒にオルクス大迷宮の入場口の裏手側に行ったんだ」

「……南雲が、何て言ったんだ」

「いきなり怖い顔をするなよ天之河。別に大した事じゃないさ。入場口の裏手側に、明らかに岩ではない何かがあるから、一緒に調べて欲しいと言われただけだ。本来は俺だけで行こうと思ってたんだが、何かあったらマズいと思ってな。優花と、ついでに回復役として白崎も誘った」

 

 あの場所へ行き、1ヶ月もの期間帰れなかったのは、間違いなく俺に責任がある。

 

 優花と白崎を誘ったのも俺だし、先へ進むかどうかをみんなに聞いたのと俺だ。最初から俺が「やめとこう」と口にすれば、少なくとも行方不明扱いにはされなかったと思う。

 

「どうして、わざわざ香織を誘ったんだ! 他にも回復役になれるクラスメイトはいただろう!」

「俺にとって1番話しやすいヒーラーが白崎だったからなァ。何せ、日本にいた時はクラスメイトとあまり関わり持ってなかったし。それに、回復役としては最も優秀な白崎が一緒なら、当時はステータスが低かったハジメのカバーも容易だろ? てか、優花は誘って良かったのか。お前の中では。普通そこも咎めるもんじゃね? クラスメイトを危険な目に遭わせたって」

 

 何だかいちいち突っかかるな、この勇者。

 

 優花を誘った事も咎めてくるかと思ったのだが、ちょっと拍子抜けである。

 

「まあ良いか。話を続けるぞ。ハジメが気になると言った岩ではない何か。それは鉱石でな。彼が錬成すると、鍵の形に変わった。更にそれを岩壁に当てると、いきなり先へと繋がる通路が現れたんだよ。で、どうするかを〝みんなで〟決めて、先に進んだってわけ」

 

 その後も俺は、つらつらとオルクス大迷宮内での激闘を掻い摘んで説明した。

 

 明らかに俺たちが訓練した階層とは一線を画す、超強力な魔物が生息していた事。初手で色々と襲われるも、何とか凌いで仮拠点に潜んだ事。だが、食料が尽きてから地獄だった事。

 

 魔物肉を食べて飢えを凌いだ事も話した。これにはみんなが驚いてたが、生きてる理由であるポーションの説明をすると、取り敢えずは黙ってくれた。

 

……ハジメと白崎が、魔物肉を食べた影響で髪が白くなった事には、天之河が憎悪を込めた目で見てきたが。サクッとスルーである。

 

「で、そこから確実に100層は下に行ったぞ。100層目になって、やっと外に出られる方法が分かったんで、そのまま出てきたけどな」

「相当なスピードで下に下にと進んだよね。多分だけど、1日で15層ぐらい進んでた時もあったんじゃない?」

「だな。50層を過ぎた辺りから攻略のスピードは劇的に上がった記憶がある」

 

 ユエがパーティーに加わってからだ。色んな意味でデリケートな存在であるユエの事は伏せてあるが。

 

 一通り話し終えると、少しの間だけ静寂が戻る。

 

 中々理解が追いつかないのだろう。理解するためには、ゆっくり考える時間が確実に必要だ。

 

「つまり、南雲が真久野たちを洗脳して危険なところに連れて行ったって事だな?」

「はっ?」

 

……浅慮なまま言葉を口にすると、こうなるからな。

 

「そうでなきゃ、香織が南雲なんかについてくはずがないだろ? 真久野、お前も洗脳されてたんだな。だから香織を誘った。南雲に命令されて、香織を誘って。オルクス大迷宮でも、未知だらけの危険区域に連れて行ったんだろ? 何なら、真久野たちが行方不明になる前日に、檜山が何者かに襲われたとも聞いている。これも、檜山の事が嫌いな南雲が誰かを洗脳して仕向けた事なんだろ?」

「いや何を言ってんの? 話をしっかり聞いてたか? さっきも言ったが、俺たちが〝みんなで〟現れた通路の先へと進んでみようと決めたんだぞ? そこにハジメの思惑はないだろ。確かに先に進んでみたいとは口にしてたが……」

「私も、自分の意志で先に進む事を決めたつもりなんだけどね」

「だよな?」

 

 優花も分かりやすく不機嫌になっている。流石にその物言いはないだろ。

 

 てか、何で洗脳してまで俺たちをオルクス大迷宮の未開地に連れて行くんだよ。何の意味もないじゃん。

 

 天之河が、さっきから白崎の事にしか言及してないのも何だか気に食わない。で、ハジメを絶対悪としている事も気に食わん。ハジメはそんな人じゃねえよ。

 

「連れて行くメリットもない。そもそも、ハジメは錬成師であって魔術師ではない。洗脳なんか無理だろ。それに、白崎はヒーラーである関係上、〝解呪〟も得意分野のはずだ。仮に洗脳されそうになっても、自力で解けると思うんだが」

「じゃあ、何で南雲〝なんか〟と一緒に行くって決めるんだよ。おかしいだろ?」

「おかしいのは天之河の思考回路じゃね?」

 

 唯一無二の親友。そして、戦闘におけるパートナーその2。その1は優花だけど。とにかく、そんな位置にいるハジメの事をこんな物言いでコケにされて、俺は心中穏やかではない。

 

「ハジメがそんなに気に入らねえのか? 自分よりも劣ってると認識している南雲ハジメに、白崎が盗られるとでも思ってそんな事を言ってるんじゃないだろうな?」

 

 1番あり得ない事だが。しかし、何だかそんな気がした俺は、ついそんな事を口にした。

 

「なっ、俺は!」

「オイ。まさか、図星じゃねえだろうなァ」

「違う! ただ俺は、香織が心配で……!」

「心配で。心配だから、ハジメを悪者に仕立てたのか? ふざけた物言いも大概にしろよ」

 

 大迷宮の攻略中。生きるため、思考を飛ばすぐらい必死になって戦った事はある。だが、こんな理不尽に対する怒りは感じてなかった。

 

 奴の態度を見て、ボンヤリとだが天之河が無意識に考えている本音を悟った俺は、一気に頭の中が冷えたような感覚に陥った。

 

 無関心から嫌いにカテゴライズされた瞬間である。

 

 隣の優花が、誰にもバレないように俺の手を握ってくれなかったら。多分、天之河を殴っていただろう。

 

「……もう何でも良い。お前に話しても、何も通じないって分かったからな」

 

 思いっきりため息を吐いた。それはもう深く。

 

「で、まさか他の人も同じ事を考えてるとかないよな? 特に畑山先生。公平な立場であるべき位置に立つ先生なら、ハジメがそんな事をしないって分かると思うんだが」

「愛ちゃん、私からも聞きたい。本当に南雲が、私たちを洗脳して危険な場所に連れて行ったと思う? ちなみに洗脳してるなら……」

 

 優花が、俺の手を今度は堂々と握った。

 

「こんな事、しないと思うんだけどね。洗脳されて意思がなければ、こんな行動取れないと思うけど」

 

 なるほど。頭良いな。

 

 仮にハジメが洗脳してるなら、俺も優花も意思は持たない。ただ、ハジメに従うだけの傀儡人形になる。傀儡同士の間に、恋愛感情が芽生える事はまずないだろう。

 

 ここまで言われて、ようやくハッとしたクラスメイトがチラホラ。優花の友達は気がついたらしい。八重樫だけは、最初から天之河に呆れた視線を向けてたが。やれやれだ。

 

 優花とその友達が話している間に、俺はクラスメイトと少し鍛錬をして、戦力増強に貢献してから出発しようと思ったが。その意思は呆気なく吹き飛んだ。

 

 こんな奴らと一緒にいたら頭おかしくなるわ。メルド団長と話したら、早いとこ王城を出てハジメたちと合流しよう。

 

 そう思ってたんだが。どうも運命の神様とやらは、とことん意地悪をしてくるらしい。

 

「失礼。勇者殿はいらっしゃいますか?」

「え、あ、はい! 何がありましたか?」

「かねてより予定しておりました、帝国の使者がお見えになりました。勇者殿との謁見をお望みのようです」

「わ、分かりました。すぐ行きます!」

「ああ、それから真久野殿」

「俺か?」

「真久野殿にも謁見したいと、帝国の使者が申し出ております」

 

 は? 面倒なだけなんだけど?

 

「……理由は?」

「長らく無敵だとされた、オルクス大迷宮65層のベヒモス。それを召喚直後ながらほぼ単騎で封殺し、そして討伐した真久野殿に、かなり前から帝国の者が会いたいと申し出ていたのですよ。もっとも、すぐに貴方たちは行方不明となりましたが。しかし、偶然にも本日お戻りになった事を伝えたところ、ぜひとも顔合わせしたいとの事でして」

 

 余計な事してくれたな、とは流石に言えない。

 

 迷惑をかけたのは間違いないのだ。ここで謁見を断り、サクッと出発する事もできるだろうが、これまた後に尾を引きそうである。

 

「……了解。行きますよ」

 

 渋々とだが、俺も立ち上がって天之河の後を追いかけるのだった。




 ハジメにも良くしてくれたメルド団長たち騎士団には恩義を感じているマックくんだけど、クラスメイトはぶっちゃけどーでも良いスタイル……のはずが、勇者が率先して嫌われ役を担う事で、無関心→関心の変化をもたらしてます。とても悪い方向に。

マックくんの新たな恋人候補

  • 〝初恋枠〟優奈ちゃん
  • 〝妹枠〟ルウちゃん
  • 〝大穴枠〟恵里さん
  • ハジメくんの嫁候補以外のクラスメイト
  • アルテナを始めとする亜人族の皆様方
  • 〝英雄〟に嫁ぎたい帝国住まいの方々
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。