異世界でもお前のパンチを見せてやれ! 作:Hetzer愛好家
バイアスの命が何とか繋がったが、片方のゴールデンボールは諦めるハメになったと聞かされた俺は、含み笑いを隠せぬまま準決勝の場へと出た。
相当バイアスの容態は酷かったらしく、わざわざ現状を伝えてくれた衛生兵の顔はかなーり引き攣っていたけど。
ちなみに準決勝の相手の名前は……。
「拙者、ホンドーと申す!」
「……おおう」
「お互いに全力を尽くそう!」
はい、まさかのピストン・ホンドーでした。防具を何故かしてなくて、鉢巻をしっかりと巻いている。鉢巻に書かれてる言葉は赤字で「一番」。おい、どっから日本語が入ってきたんだよ。
流石にこれには言葉が出なかった。ここで来るか? しかも、ここまでやる? 細かすぎて伝わらないモノマネ選手権の出場者だろうか。
やっぱり謎の運命力働いてるよな、これって。
軽く動揺しながらもリングに上がり、ボクシングの時と同じようにお互いの拳を軽く突き合わせてから。試合開始である。
「礼ッ!」
「……礼っ」
不意打ちは、しない。何だか不意打ちしたら負な気がした。ボクサーとしてではない。単なる日本男児として。
見事にシンクロした礼を終えた後、改めて試合開始。
俺は何となく攻撃する気が失せており、ホンドーの出方をひたすら待つ。
「1、2、オリャァ! ……えっ?」
大ぶりのアッパー。取り敢えず右スウェーで回避する。
眉を動かしてからのジャブ。結構速い。が、ダッキングで躱して様子見続行だ。
一瞬だけ引いてからフックカット。スピードはかなりあるし、当たれば破壊力は高そうだが、回避はそこまで難しくない。
「うおっ、やるな!」
「……っす」
「だが、逃げてばかりでは勝てないぞ!」
その後も回避に徹してみたが、どうも攻撃パターンがあのゲームとほぼ同じである。
一応、なかなかの発生速度を誇るジャブからの連携を何度も繰り出しているが、やはり回避はそこまで難しくない。
まあ、準決勝まで勝ち上がっただけあって、当たればかなりのダメージを普通なら負いそうである。眉の動きで攻撃のタイミングが分かると知らなければ、そこまで苦戦はしないだろが。逆に見抜けないと、延々と打ち合いにもつれ込み、そのまま粘られて結果負ける……なんて事が多発しそうだ。
基本は逃げてばかりで、隙を見てカウンターを取るだけでも良いのだが。ホンドーの人柄が帝国民とは思えないぐらい良いので、真っ向から打ち合っても良いかなと思えてきた。
正々堂々と戦う大和男子。俺は好きだぞ。
「そんじゃ、行きますか」
「抜かった!? アガッ、ウゴオ!」
ホンドーのジャブを前方に動きながらのダッキングで急接近しながら回避。そのまま懐へと入り込んでワン・ツーを叩き込み、軽くピヨらせながら足を前に出してダッキングを行う。
俺の中で、ダッキングからの最速かつ最大攻撃はガゼルパンチ。それを少し低空気味に放つ事で、俺の左拳はホンドーの腹に思いっきり刺さった。
更に追撃として、跳ね上がった勢いで降下しながら頬にジョルトもぶち込む。
「ダメだぁ!? たまご、たまご……ガクッ」
この一撃だけで、ホンドーはアッサリとダウンした。防具なしで、籠手で固めた拳から放たれるガゼルパンチを受けたらそうなるわな。
倒れる際のセリフまで知ってる物だったので、ちょっと笑いそうになっているのは……あ、これ優花にはしっかりとバレてるね。
「ぐ、くっ……もう1本っ!」
「お、マジか。あれ受けて立てるんか」
何気に拳闘大会で、ダウン後に立った出場者は初では?
軽く感心はしつつ、俺は油断せずに構える。
何度かフラフラと揺れながらも、しっかりと立ち上がったホンドーは、何歩か左右に動いて俺を撹乱しようとしてきた。その動きは中々に速く、残像が見えるぐらいだ。
「……よっしゃ!」
そして繰り出されたのは、知る人ぞ知るピストン・ホンドーの必殺技。ホンドーラッシュである。
リファインされたWii版ではそんなに凄まじくはなかったが、原点のFC版では目にも止まらぬ怒涛のラッシュだった。どうやら、性質的にはFC版らしい。
俺にしては大変珍しく、クロスアームブロックとパーリングを主体にして、ピストンのように繰り出されるジャブを次から次へと捌いていく。
「オリャア!」
「チィッ!」
ラッシュの締めに放たれたアッパーカットが、パーリングした隙を狙って俺の顎目掛けて襲来する。
即座に反撃に転じるため、受けながら強引に叩いても良いが。一応これに勝てば、次は決勝だ。無駄な蓄積ダメージを負いたくない。
足腰への負担がやや大きいが、パンチを受けるよりはダメージが少ない超速の後退スウェーで、俺は大きく距離を取った。
「ぬっ、すばしっこい奴!」
「俺にとって、そいつは褒め言葉だな!」
久しぶりに血が騒いでいる。天性のボクサーとして血が。
ニヤリと思わず笑う。
笑いながら、俺は一目散に距離を詰めた。俺から攻めるために。
滑りながらのワン・ツーパンチ。これはブロックされるが、距離を同じく詰めようとしていたホンドーを後退させる事に成功する。
「ラッシュってのはな……こうやるんだよぉ!」
「ぬおっ!?」
そう言って繰り出したのは、すっかり十八番となっているK.O.ラッシュだ。
そっちがピストンなら、俺はマシンガンだ。拳の雨を降らし、反撃の芽を完全に摘む。
だが、相手もラッシュを得意とする拳闘大会の出場者……いや、ボクサー。俺のラッシュに対抗し、ホンドーも負けじとラッシュを放ってきた。
「良いねぇ! ラッシュの速さ比べと行こうか!」
「絶対に退かぬ! 負けんぞおおお――!」
拳と拳がぶつかり合い、その度に火花が散る。
ステータス的には明らかに俺の方が上だが、ホンドーは気合と根性のみで俺のラッシュに食らいついてくる。ここに来て、スピードも成長しているようだ。
拳がぶつかった拍子に、優花が仕込んだ火種が発火して俺の左拳が燃え盛るが、お互い1歩も譲らない。
「オラオラオラオラァ!」
「ヌゥオオオオオオッ!」
リング中央で全く動かず、拳だけが行き来する状況に、観客も固唾を呑んで見守っている。
どのくらいそうやって打ち合ったか。俺は、耳に優花の声が入った事で。やっと冷静さを取り戻した。
「ケン! 1分を切ったわ! もう時間がないわよ!」
「っ!」
「決めきって!」
合点承知。俺は僅かにギアを上げる。
途端にラッシュで放たれる拳の数が急激に増えていった。
これには流石に驚いたのか、ホンドーの顔が驚愕の表情を浮かべる。
ほんの僅かな時間。しかし、確かな隙が生まれた。その間にラッシュを押し切るのは、俺なら容易な事だ。
あっという間に拳の雨が、ホンドーの肉体を叩き潰していく。
最後に燃え盛る左拳で、強烈なロングアッパーカットをブチかますと、ホンドーの体は大きく跳ね飛ばされ、ロープまでブッ飛んでから前方へ数歩フラフラと足を進める。
「む、無念……」
そしてバタリとうつ伏せに倒れた。そこまでしっかりと再現してるのかよ。
最後までピストン・ホンドーの原作再現を忘れない謎の姿勢。感心を通り越し、もう半笑いになりつつある。
思わず彼の体を起こして座らせると、そのまま俺はガッチリと握手をした。
「な、情けをかけるつもりかっ」
「違う。敬意を払いたいだけだよ」
目を白黒させるホンドーに構う事なく、俺は告げた。
「アンタ、めっちゃ良いボクサーだよ。どうかそのまま、鍛錬を続けてくれ」
「……? まあ、負けたからには改めて気合を入れ直し、更に精進する心づもりだが」
「うむ、楽しみにしてる。またいつか、大会で戦おうぜ」
再度握手をすると、俺は笑みを浮かべたままリングから降りた。
決勝戦で良い戦いができた時ぐらい、心の中はスカッと晴れている。実に。じぃつぅにぃ爽やかな気分だ。
「……まあ、次が決勝戦なんだけどね」
テンション上げすぎた。その反動で、俺は次に控えている決勝戦がやや気乗りしない。アカンなこれ。
最初は「次があるから被ダメを抑える」とか考えてたのに。結局、それに近しいだけの運動をしている。
優花にも「はしゃぎすぎでしょ」と言われてしまい、俺は軽く落ち込んだ。多分、周囲からキノコがニョキニョキ生えてくるぐらいには。
ガゼルパンチ→ジョルトは雷神拳を打った反動で跳ね上がったところ、全体モーションをキャンセルしてジョルトに派生するイメージです。
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