異世界でもお前のパンチを見せてやれ!   作:Hetzer愛好家

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 お待たせしました。ストックがまだ作れるほど余裕がないので、しばらくは不定期の更新になってしまうかと思いますが、どうかご容赦くださると嬉しいです。


ちょっと本気出す

「さて、この試合で決勝戦の相手が決まるんだが……」

「何あれ。金ピカすぎて目が痛いんだけど」

「分かるわぁ」

 

 俺たちの視線の先には、リングの上に立ち、金色に輝く甲冑を見せびらかすようにして、ひたすらポージングを取る男がいた。

 

 ブーイングが飛ぼうがお構いなし。むしろブーイングに対し、厭味ったらしく金ピカ甲冑を見せびらかすようにしてる。とんでもねえ精神力だなおい。

 

 呆れ半分、感心半分でそれを見ていると。反対側のコーナーに、金ピカ甲冑野郎の相手となる男が現れた。

 

 ドスッ。ドスッ。歩を進める度に、そんな音が聞こえてきそうなぐらいに威風堂々としている。甲冑は身に着けていないが、それがかえって良い味を出しているように見える。

 

 金ピカ甲冑野郎もかなりの巨漢なのだが、甲冑を着てない男の方は、嵩増しなしなのに凄まじい体格をしている。まるで怪獣だ。

 

 俺のボクサーとしての本能は、自然と甲冑を着ていない男の方へ向いていた。

 

 そうして始まった準決勝の試合は。あまりにも一瞬で、本当に終わったのかと疑うぐらいにスピーディーな幕切れとなった。

 

 挑発として金ピカ甲冑野郎がポージングをした瞬間。甲冑を着てない方の男は、数多のボクサーを見てきた俺でも思わず「速い」と称するほどのスピードで左のハンマーパンチを放ち、そのままノックアウトしてしまったのだ。

 

「……雑魚が。このサンドマンの敵ではない」

 

 あ、サンドマンなのかアレ。シンプルに顔があまり見えてなかったのだが、パンチに見覚えがありすぎたのでまさかとは思ったけども。

 

 とにかく、サンドマンが決勝戦の相手のようだ。

 

 サンドマンも俺の姿を認めたのか、俺の前にノシノシとやって来ると、拳を俺の眼前に突き出してきた。

 

「マック坊や。良い夢を見られるのもここまでだぜ」

「俺のリングネーム覚えてくれてたんだ」

「皇太子を無様な傷物にした、小さな超人ボクサー。覚えない訳がない」

 

 思ってた以上の高評価をもらってた。

 

 このサンドマン、負けるつもりはないにせよ、過小評価まではしていないらしい。

 

 面白い男だ、ミスター・サンドマン。

 

 俺は眼前の拳に、己の拳をガツンとぶつける。

 

「俺は夢を見続けるさ。いつまでもな」

「……ふん。減らず口がいつまで叩けるか、楽しみだ」

 

 鼻を鳴らしながら、サンドマンはクルリと背を向けてこの場から去っていった。

 

「優花」

「なに?」

「久しぶりに燃えてきたわ」

「そ、そう。 ……また、魅力的な顔してるし」

 

 軽く頬を掻いた優花は、少しだけ照れ顔を見せてから、俺にニッコリと微笑んできた。

 

「強そうな相手だったけど、ケンの勝利以外は信じてないからね」

「……お前、殺し文句だぞ」

 

 やる気は出るけどね。

 

 互いに笑い合ってから。俺たちは、決勝戦に向けてのアップを始めるのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 昼休憩前、最後の試合。拳闘大会の決勝戦である。

 

 ちなみに決勝戦が終わったら、表彰式をした後に昼休憩。その後特別試合を何試合かするらしい。

 

 特別試合はぶっちゃけどうでも良く、眼の前の決勝戦に俺は全神経を集中しているが。

 

『さあ、皆さんお待ちかねの決勝戦がいよいよ始まるぞ! 今大会、決勝進出を果たした選手はどちらも初出場かつダークホースだから、その快進撃には俺も含めて観客全員が本当に盛り上がっていたんだけどな! それもこれで終わりと思うと、少し寂しいぜ!』

 

 へえ、俺は当たり前だけども、サンドマンも初出場だったのか。

 

『まずはミスター・サンドマンの登場だっ! 前回大会の優勝者であるスーパー・マッチョマン含めた全ての対戦相手を、まさかまさかの一撃のみで屠った番狂わせの王様! 番狂わせの王様は、この決勝戦でどんな夢のような舞台を見せてくれるのか、実に楽しみだな!』

 

 サンドマンが先にリングへ上がり、拳を振り上げる。

 

 会場が割れんばかりの歓声で包まれる中。俺は、ピンクのスウェットを先んじて脱いで優花に渡した。

 

『この流れでもう1人の決勝進出選手を紹介しよう! 皇帝陛下が直々に気に入ったとも噂される、神の使徒の一員でもあるリトルマック! 小柄だと侮る事なかれ、流麗かつ力強いファイトスタイルで、今大会を盛り上げ続けている屈指の猛者だ!』

 

 実況の選手紹介を受け、俺はリングに上がろうとして。不意に優花の両手で顔が包まれたと思った次の瞬間には、触れるだけのキスをされていた。

 

「おまっ、あのな……」

「ダメ、だった?」

「……いや、やる気が溢れてくる」

 

 ここまでさせたんだ。勝ちを彼女に捧げようではないか。

 

「勝ってね!」

「……おう!」

 

 今度こそリングに上がり、俺はシャドーボクシングをしてから目の前に立つサンドマンを睨む。

 

 観客席から「叩け、マック!」とか「お前のパンチを見せてやれぇ!」とか聞こえるので、少し笑っているけど。

 

「ファイッ!」

 

 カンッ! とゴングが鳴った。決勝戦スタートだ。

 

 初手。いきなり予備動作が全くない、サンドマンの左のハンマーパンチが飛来した。

 

 山を張ってなければ、反応が間違いなく遅れていたであろう一撃。俺は大きめのスウェーで何とか回避する。

 

「そこで立ってろ!」

「ぐおっ!?」

 

 回避先へ、今度は十分に力を貯めた右のハンマーパンチがきたのだ。まさかの連携技である。これを回避するには時間が足りない。

 

 上半身のバネだけで、俺はスマッシュアッパーカットを繰り出す事で迎撃を図る。

 

 踏み込みのないスマッシュアッパーカットだが、威力は相変わらず高い。犠牲になってるのは多少の威力とリーチぐらいか。完全に押し勝って弾くまでには至らないが、それでもパンチの軌道を変える事には成功した。

 

「シュッ!」

 

 だが、すぐに追撃が飛ぶと予測した俺は、最速発生の左ジャブでサンドマンの顔を叩いた。

 

 偶然にもそれは、追撃に入ろうとしたサンドマンがやや前に出た瞬間にヒットしたので、ほんの僅かながら彼が怯む。

 

 ヒット確認した俺はすぐさまハジメ式のワン・ツーパンチ……左ジャブからの右フックでサンドマンの頬を抉った。

 

 普通ならこれを受ければ、ある程度は効くと踏んだのだが……。

 

「……俺のターンだ」

 

 が、あまり意に介している様子はない。それどころか、右のコークスクリューパンチで反撃をしてきた。

 

 流石にコークスクリューパンチは食らえない。そう本能に刻まれている俺は、咄嗟に姿勢を低くして距離を詰める事でパンチを透かす事に成功する。

 

 このまま反撃に転じ、ノックアウトまで持っていくのは難しい。居合のような形でボディに右ストレートを叩き込みながらサンドマンの脇を通り抜けて反転し、一旦態勢を立て直した。

 

「おいおい。すげえタフだな」

「……ふん」

 

 しれっとストレートも受けているのに、全く効いている様子がない。マジで何者だ?

 

 まるで、何か身体強化の魔法を使っている魔物のような……。

 

 まさか、な。魔物って事はないだろう。魔物にしては知能がありすぎるし。何より仮に魔物だったら、俺の感知系技能に引っかかると思う。

 

「とは言え、このままじゃ埒が明かないな……」

 

 ずっと身体能力を魔力で縛っていたが。その縛りを、多少は緩くしないとダメージが通らなさそうだ。

 

 オール1000ぐらいのステータスに調整していたが、俺は一気に数倍に跳ね上げる事にした。

 

「むっ。マック坊や、まだ底力を隠していたのか」

「お前はこれで終わりだと思うのかい?」

「……すぐ楽にしてやる」

 

 サンドマンの目が変わった。余裕を多少は残していた様子から、一気に獲物を仕留める猛獣のような瞳に変わる。これは、まるでマイク・タイソンの……!?

 

「夢の国へ案内してやる!」

「チイッ!」

 

 ウインクをしたのを認識したのとほぼ同時。殺人アッパーと称すべき、強烈なパンチが連続で放たれた。

 

 反撃する猶予もない。俺はスウェーでの回避に専念する。

 

 3連続アッパーを放ち、一呼吸。そして再び殺人アッパーの連打。

 

 俺とはある意味で真逆だ。俺はフックの連打。サンドマンはアッパーの連打か。

 

「サッサと寝ちまえ、マック坊や!」

「るっせえ、まだ起きたまま夢を見てたいんだよ!」

 

 何とか反撃の隙を伺うが、俺が動こうとした瞬間にサンドマンはアッパーを打ってくる。反撃に転じられない。

 

 高速のアッパーカットとスウェーの応酬に、観客は大盛り上がりだが、こっちはそんな事を気にしている場合ではない。サンドマンの繰り出す高速アッパーってだけで、食らいたくないという意識が優先するのも厄介だ。

 

 原作知識がアダとなった瞬間である。

 

「はあ、はあ、チョコマカと鬱陶しいぞ!」

「……」

 

 俺にしては大変珍しく、回避のみに専念している影響なのだろうか。集中の度合いが少しずつ上昇しており、サンドマンの放つアッパーのスピードが、何だかゆっくりに見えてきた。

 

 それだけではない。サンドマンのウインクと、繰り出されるアッパーの方向がパターン化されてる事に、集中力が上がった事でようやく気がつけたのである。

 

 スウェーから∞の字を描くようなウィービングに切り替え、更に少しずつ先読みする形で俺が攻撃を躱すようになると、サンドマンは焦れったくなったのか、呼吸も忘れてアッパーを連打。10数発ものアッパーを、一切の休みも入れる事なく繰り出したのだ。

 

 それに合わせて、俺もウィービングのスピードを加速させていく。竜巻を起こす勢いで。

 

「ぐ、おお……」

 

 どれだけウィービングで攻撃を回避したのだろうか。随分長い事、こうして頭を振っている。

 

 俺が異変に気がついたのは、サンドマンの呻き声が耳に入ったからだ。

 

 ウィービングを継続しながらもサンドマンの様子を確認すると、どうやら奴の体内に残っていた体力と酸素が底を尽いたらしい。大きく肩で息をしながら目を回していた。

 

 チャンス。ここで仕留めきるつもりでひたすらに叩け、マック!

 

 もう1段階、ウィービングを加速させて。俺は足を前に踏み出すと、ノーガードとなったサンドマンの腹部に、必殺のフックカットを何度も何度も叩き込んだ。

 

 デンプシーロールだ。特に強烈な破壊力を有する俺のフックカットを、相手がダウンするまでひたすら叩き込み続ける大技。狙う場所は決まっておらず、ボディの時もあれば顎を叩く事もある。共通して言えるのは、捕まったが最後、倒れるまで凄まじい痛みを味わう事だろう。

 

 サンドマンの顎が徐々に下がってくる。顎にフックを受けたら、流石にマズイと本能で理解しているのだろう。ボディにフックを受けながらも、ガクリと顔が落ちないように必死に踏ん張っているのが分かった。

 

 痛みこそ凄惨だろうが、同じ箇所を殴っていれば、そのうち脳が痛みに慣れてくる。痛覚が麻痺すれば、サンドマンレベルのボクサーなら無理やり反撃に転じる事も可能だ。

 

 このままフックのみのデンプシーロールを継続していると、打ち倒す事こそ可能だろうが、俺も顔にかなり拳を叩き込まれる事になる。

 

 ダウンを喫しない自信はある。だが、どんなに身体が頑丈な人間でも。脳を揺らされたら、万が一が起こる可能性も否定できない。

 

……仕方ないな。切り札を1つ、使わせてもらうか。

 

「しつ、こいぞっ。マック坊やの分際で!」

 

 サンドマンの拳が振り上げる。そのまま俺が右フックを当てたタイミングで、左のハンマーパンチを落としてきた。

 

 本来なら必殺となる一撃だ。意識外になり得るパンチほど、怖いパンチはない。

 

 本当に山を張っていて正解だったな。

 

 一気に体勢を変化させ、真正面への超低空ダッキングを敢行。ハンマーパンチの射程外に潜り込む。

 

 まさかカウンターをこんな形で躱されるとは思わなかったのか、サンドマンの顔に焦りの表情が浮かんだ。

 

 俺は身を屈めた状態から一転して跳ね上がり、ガゼルパンチではなく雷神拳の動きでサンドマンの顎を斜めから打ち抜いた。

 

 斜めにカチ上がる顔。雷神拳の反動で浮いたまま俺は右の打ち下ろしを振り抜いて、奴の頭部を今度は斜め下に落とすようにして、さっきとは逆側の顎に右ジョルトをぶち込む。

 

 着地と同時に始まるのは、ウィービングを斜めに傾けた状態で放たれる雷神拳とジョルトブローの高速連打だ。

 

 左アッパーと右ジョルトの連打を軸とするデンプシーロール。そもそもデンプシーロールを使う事自体が少ないし、倒しきれない事態にも中々遭遇しないのだが。通常のデンプシーロールで倒しきれないと判断した時のみ繰り出す、俺の切り札の1つである。

 

 より破壊力の高いアッパーとジョルトの連打にデンプシーロール中に切り替える事で、痛みに慣れてきた相手の身体に甚大なダメージを負わせるという物だ。

 

 ミソとなっているのは、人体の急所である顎を徹底して狙う部分である。

 

 脆い顎骨が粉砕するのはもちろんの事、頭が勢い良く揺さぶられるので、脳震盪も起こしやすい。

 

 実際に試合で使用したのは1度限りである。あの時は、優奈が俺の試合を現地で見に来れる最後の試合だった事もあって、咄嗟の思いつきで使用した技なのだが。対戦相手は試合後に、歩けない身体になってしまった。

 

 競技特性上仕方のない事だが、後味がとんでもなく悪かったのは事実だったので、今日に至るまで封印していたのだが。身体が比較的頑丈な異世界なら何とかなる。そう信じて、使用に踏み切ったのだ。

 

 その破壊力は相変わらず凄まじく。5ループしたところで、サンドマンは崩れ落ちるようにしてうつ伏せに倒れた。

 

 意識までは断ち切れなかったようで、必死に奴は立ち上がろうとしている。だが、激しく揺さぶられた脳がそれを許さない。

 

 力は入らず、思考能力も放棄される。顎骨を砕かれた痛み。そして、最初に受けたデンプシーロールのダメージも相まって、どんな屈強な男でも発狂寸前まで追い込まれるのが、この技の真に恐ろしい部分である。

 

 あっという間に10カウントが数えられて。ゴングが何度も鳴り響き、レフェリーが両腕を振りながら俺たちの間に入ってきた。

 

 すっかり顔馴染となった救護班が姿を表し、サンドマンの事をエッサホイサと運んでいく。

 

 魔法でどこまで回復するか分からんが、まあ何とかなるでしょ。てか、なってくれ。マジで頼むから。

 

 ボクシングは相手を殺るつもりで取り組むが、実際に殺人を犯すのはまっぴらごめんだ。

 

 試合及び大会の勝利が宣告され、大歓声に包まれる中でも。俺は、医務室に運ばれたサンドマンの様子が気が気でなかった。




 サンドマンは原作でも生身の拳でコンクリ造りの建物を破壊してたし、このぐらい強くても問題ないと思った。ステータス的には身体能力系統が最大で5000ぐらいあります。ちなみに試合中、ギアを上げたマックくんのステータスは4000ぐらいです。

※マックくんの技紹介
★軸を傾けたデンプシーロール
…概要は縦のデンプシーロールで完結する。通常のデンプシーロールで倒しきれないとマックくんが判断した際、使用に踏み切る事がある切り札その1。

 アマチュアボクサー時代、絶対に負けられない試合でデンプシーロールを使用した際に、グローブとアーマーの関係で倒しきれないと判断したマックくんが、咄嗟に閃いた事で生まれた。

 デンプシーロール中に飛来したカウンターパンチを風神ステップに似たダッキングで回避し、そこから雷神拳に派生して、更に後隙をジョルトでキャンセルしながら着地。そのまま無限ループに入る。早い話が、ホワイトファングを無限ループする形。

 カウンターに対するカウンターである点も凶悪だが、それ以上に顎を執拗に狙う点から、耐えれば耐えるほどにエグい後遺症が残るとかいうヤバすぎる初見殺し。通常デンプシーで沈んだ方が結果的にはマシである。

 当然、縦のデンプシーロールに移行する関係でとんでもない負荷が足腰にくる。が、そこは我らのマックくん。出せるのは1試合につき1度だけの制約こそあれど、使用後のデメリットはほぼない。

 ちなみにこれで完成形ではない。

マックくんの新たな恋人候補

  • 〝初恋枠〟優奈ちゃん
  • 〝妹枠〟ルウちゃん
  • 〝大穴枠〟恵里さん
  • ハジメくんの嫁候補以外のクラスメイト
  • アルテナを始めとする亜人族の皆様方
  • 〝英雄〟に嫁ぎたい帝国住まいの方々
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