異世界でもお前のパンチを見せてやれ!   作:Hetzer愛好家

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 話はマックくんと優花さんが別行動を始めた時ぐらいまで戻ります。今回は優花視点です。


恋人として

 ケンと別れた私は、早速空中で暴れている大鷲型の魔物目掛けてナイフを数本投擲。動く事を強要させると、回避先に銃弾を叩き込んで撃墜する。

 

 普通なら死角となり得る背後から、わざわざ固有魔法で気配を消してまで接近していたネコ型の魔物には、嫌な予感がした瞬間に配置した別のナイフ群で爪の一撃を防御。ナイフが弾かれた事で襲撃に気がついた私は、振り向きざまに発砲して頭部を撃ち抜いた。

 

 投擲したナイフは回収する事なく、そのまま個別に動かして空を飛ぶ魔物への牽制に当てつつ。私自身は、様々な魔物が合体したキメラのような生物と相対した。

 

 聞くに堪えない絶叫を上げながら、無数にある口からやたらめったらに極光を撒き散らす。照準がされてない分、動きが非常に読みにくい。

 

 極光の迎撃は考えず、体の動きは回避に徹させながら。ナイフはキメラに向けて次から次へと斬撃を繰り出させるも、背中の中心部に埋め込まれるようにして存在するカメ型の魔物の目が光ると、強固な障壁が私のナイフを阻み、そして弾いていく。どさくさに紛れて放った鉛玉も、やはり障壁によって無効化されていた。面倒な事この上ない。

 

 こちらに伸びてくる触手を、最近こっそり鍛えていた手持ちのナイフによる斬撃術で何とか切り裂いて無効化し、極光は相変わらず回避しながら思考を巡らせる。

 

 現状、私のステータスはこんな感じだ。

 

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園部優花 17歳 女 レベル:???

天職:投術師

筋力:7260

体力:6810

耐性:6000

敏捷:6580

魔力:15550

魔耐:13000

技能:投擲術[+精密操作][+遠隔操作][+属性付与][+複数操作]・火属性適性[+消費魔力減少][+魔力効率向上]・高速魔力回復・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・纏雷・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛・豪腕・威圧・念話・追跡・魔力変換[+体力][+治癒力]・生成魔法・言語理解

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 このステータス以上の事は、おそらく私にはできない。

 

 卓越した技術力により、ステータス以上の力を発揮するケンと南雲が少し羨ましく感じるが、今はそんな事を言ってる場合ではないだろう。

 

 継続時間にやや難あるものの、己の集中力が飛躍的に向上する〝瞬光〟を躊躇いなく使用。ナイフと弾丸に割ける意識を大幅に増やし、更に自身は〝縮地〟で突貫。最低限の動きで伸びる触手を躱すと、一気に懐へ潜り込んだ。

 

 浮遊するナイフの動きが複雑化し、死角からの攻撃やフェイントの回数が爆発的に増加。カメ型の魔物が展開する障壁での防御が間に合わず、咄嗟にかざしたであろう触手も次々と斬り落とされる。

 

 ならば先に術師をと、強化された肉体であってもダメージは免れないレベルの勢いで、驚異的な速度で再生した触手がこちらに飛んできた。

 

 片手にナイフ、片手に拳銃を持ち、私は迫りくる触手を斬り落とすと同時に数発発砲。弾丸は全て障壁で防がれるが、その隙を嫌らしく突くナイフたちの斬撃がキメラを襲う。

 

 一瞬にしてあちこちを切り刻まれ、血まみれになるキメラ。1度動きを捕まえれば、後はこっちの物だ。

 

 足の指を数本斬り裂いてその場に釘付けにしてから、更に何本かのナイフで地面に縫い付ける。極光を放とうとした口には、拳銃から切り替えた短筒から放たれた鉛玉を叩き込んで暴発させ、逆にダメージを負わせる。苦し紛れの触手は、浮遊するナイフと手持ちのナイフでしっかりと斬り落とす。

 

「これでチェックメイト!」

 

 今一度大きく踏み出して、私は短筒を発砲と同時に投げ捨てる。障壁によって鉛玉は弾かれるが、短筒本体は急ブレーキによって減速。弾かれず、その場に留まった。

 

 浮いたままの短筒を追い越すと、〝纏雷〟を発動しながら不意打ちとなる形で手持ちのナイフを振り抜き、私はカメ型の魔物をキメラから切り離した。これで、障壁はもう張れない。

 

 キメラを通り抜けた瞬間、奴は狂ったように触手を私の方へ飛ばすが。こちらを狙うのは、もう意味がないだろう。

 

ドガアンッ!

 

 爆発を起こした短筒の一撃を、キメラはモロに受けた。障壁は張れない上に、触手も私の方へと向かってる最中。防ぐ手立てはない。

 

 マトモに爆発を受け、悲鳴を上げるキメラの腹の下には。既に、私がこの戦闘で投擲した全てのナイフが待機している。

 

 ケン曰く、いかなる生物でも共通の弱点となる腹。そこから背中に向けて、無数のナイフが無情にも貫通していった。

 

 全てのナイフが貫通して背中側から抜けていき、私の元へ戻った時には、もうキメラは悲鳴すら上げる事なく息絶えていた。

 

「ふうっ……」

 

 1度〝瞬光〟を解いて一息入れる。連続使用は身体に悪いのだ。

 

 浮いたナイフが墜落しない程度の集中力は保ちつつ、ほんの少しだけ休憩するつもりで私は深呼吸しようとして。背筋に走った悪寒によって体が勝手に動いた。

 

 転がるようにしてその場を離れると、ついさっきまで私の頭があった位置に、猛烈な速度で振るわれた拳が通り抜けていった。棒立ちしてたら危なかっただろう。

 

 拳を繰り出した主を見て、私は思わず息を呑んだ。

 

「まさか、ミスター・サンドマンなの……?」

 

 昨日、ケンと激戦を繰り広げたサンドマンの姿が、そこにはあったのである。

 

 理解が追いつかない。彼は人間族ではなかったのか?

 

「……お前は、あの時の女か」

「ええ。真久野ケンの、リトルマックの恋人よ」

「なるほど。あの男の恋人なら、その強さにも納得がいく」

 

 合点がいったかのように頷いたサンドマン。拳には、魔法陣が刻まれた手袋をしている。

 

「サンドマン。アンタは、魔人族なの?」

「……魔人族ではない。だが、人間族とも言えない。そして俺は、人間族の味方ではない」

「なにそれ。じゃあ、何?」

「造られた生物、と評すのが正しいだろうな」

 

 彼の言葉を読み取るに、魔人族に造られた人型の生物と言ったところか。

 

 ステータスを縛っていたとはいえ、数千を超えるケンと一定時間、互角の殴り合いを演じただけはある。明らかに普通の人間ではないと思っていたが、なるほど。そんなバックボーンがあるなら、ある程度納得がいく。

 

 どうして拳闘大会に出場したのかまでは分からない。だが、ぶっちゃけその理由は何でも良いだろう。この状況において、その情報は必要ない。

 

「この場から消えろ。今なら、フリード様にも報告はしないでやる」

「悪いけど、ケンを置いて逃げる選択肢は取れないわね」

「……女を殺す趣味はない。邪魔者は消せとの命令だが、俺なりに線引はしてある。このままフリード様に見つかれば、お前も否応なしに消されるぞ」

「女だからって舐めないで。伊達や酔狂であの人の彼女をやってる訳じゃないのよ」

 

 対話での解決は不可能だろう。女を殺す趣味はないとサンドマンは口にしたが、どうしようもなければ実行に移すだけの気概はあるに違いない。

 

 私もまた、人殺しをする趣味はない。しかし、生きて明日を迎えるために、戦って〝敵〟を無力化する。それだけの覚悟は決めている。

 

 一触即発の空気となり、互いにジリジリと殺気を深めていく。

 

 だが、私はそんな状況下で、思わず空を見上げた。

 

 釣られてサンドマンも空を見たらしい。それとほぼ同時に、サンドマンが声を上げる。

 

「フリード様!?」

 

 魔人族の男が、まずは空から落ちてきたのだ。

 

 その体をサンドマンが受け止める。随分とアザだらけだが、意識を失う事態にまでは至ってない。

 

 次いで、ケンが〝天歩〟を駆使しながら地面に降りてきた。

 

「優花、無事か」

「うん。ケンは……まだ軽傷?」

「このぐらいなら何の問題もない」

 

 ところどころ傷があるが、打たれ強い彼の事だ。ちょっとの擦り傷切り傷打撲傷はノーダメージとしてカウントされるだろう。

 

 状況確認をすぐに終えると、私とケンは同時に〝敵〟と認識している男の方を向く。

 

 〝フリード様〟と呼ばれた魔人族の男は、サンドマンに肩を貸してもらって、何とか立ち上がった。

 

「おのれ、忌々しい人間族めっ」

「人間族かどうかは関係ねえだろうが……」

 

 魔人族の男は気にせず、ケンは静かにサンドマンを見やっている。

 

「サンドマン。お前、どうしてそいつと……」

「……人間じゃ、ないんでな」

 

 ケンの顔は優れない。どこか悲しそうで、怒りを堪えた表情だ。

 

 その激情は、彼の拳に分かりやすく表れていた。

 

 黙ってケンが構えた。技能を発動している様子はまるでないのに、とんでもない威圧感が場を支配している。

 

 しかし、サンドマンは構えなかった。魔人族の男の様子を確認すると、即座に手を振って何かを呼んだ。

 

 途端に空から白竜が降り立つと、あっという間にサンドマンと魔人族の男を回収し、そのままこの場から飛び去ってしまった。

 

「追う?」

「……いや。逃げる敵を追う必要はない」

 

 魔物は全て殲滅してある。もう、戦いは終わりか。

 

 改めてケンと向き合う。

 

「ケン。大丈夫?」

 

 黙ってケンは頷く。どう見ても、大丈夫そうではない。

 

 籠手を外してやり、力が入ったままの拳を少しずつ解いていく。

 

「……こんな事、あるんだな。ちょっとショックだよ。裏切られた訳ではないけど、何だろう。拳で語り合った奴だったからさ」

「うん」

「次に戦う時は、もっと強くなって俺の前に現れて。心を躍らせる試合ができたら面白いよなって。楽しいだろうなって、勝手に考えてたんだよ。ホント、何やってんだかなァ。あいつが魔人族なら、もう拳で語り合う事はできなさそうだ……」

 

 どこまでもケンは、純粋なボクサーなのだろう。だからこそ、南雲以外で久しぶりに出会った強いボクサーに、珍しく心を躍らせてしまったのだろう。

 

 全くの他人なら、軽く笑って終わらせたのだろうけど。私は、ケンの恋人である。このまま宿の方へ帰るのは、私の恋人としてのプライドが許さない。

 

「おいで」

「いや、それは……」

「遠慮しないで。どうせしばらくの間、ここには誰も来ないよ。帝国兵辺りがこっちに駆けつけるまでの間は、存分に甘えて良いから」

 

 フラフラと、私と向き合うケン。もう1度「おいで?」と両手を広げてみると、彼は私の体をギュッと抱きしめてきた。

 

 泣いている訳ではないらしい。肩は特に震えていない。

 

 だが、私を抱く力の強さから鑑みるに、やりきれない気持ちが心の中で渦巻いているのは間違いなさそうだ。

 

「私は、裏切らないからね」

「優花……」

「消えたりもしないから」

 

 彼が落ち着くまでの間。ずっと私は、ケンの耳元で語りかけていた。

 

 少しでも、彼の心に刻まれた傷が薄れるように。




 サンドマンの事はボクサーとして、相当気に入ってたマックくん。いきなりお気に入りにカテゴライズした人が消えてしまう、あるいは会えなくなる事態になるとトラウマが刺激される。

 優花っちはリトマパーティー内では最も戦える範囲が広いです。拳銃&短筒で遠距離、浮遊ナイフで中距離、手持ちナイフで近距離と、どこでも戦える性能をしてます。パーティー内に距離特化のバケモノがいるから、中距離アタッカーなだけ。優花っちは某白い悪魔を彷彿とさせる戦い方ができるので、超万能の戦士です。いないとマジで困る系の御方。

 単騎での戦闘の際は、拳銃で牽制&浮遊ナイフ群で動きを制限or攻撃&手持ちナイフで致命傷を与え、更に浮遊ナイフ群のラッシュでトドメが必勝パターン。マックくんやハジメくん以上に初見殺しの塊かもしれない。

マックくんの新たな恋人候補

  • 〝初恋枠〟優奈ちゃん
  • 〝妹枠〟ルウちゃん
  • 〝大穴枠〟恵里さん
  • ハジメくんの嫁候補以外のクラスメイト
  • アルテナを始めとする亜人族の皆様方
  • 〝英雄〟に嫁ぎたい帝国住まいの方々
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