異世界でもお前のパンチを見せてやれ!   作:Hetzer愛好家

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どうなってるんですかこれ!?(通販風)

 ライセン大迷宮は、想像よりも遥かに厄介な場所であった。

 

 大渓谷以上に強い魔力分解の作用が働いており、ブーツを装着していても、空中に足場を出す事が俺はできなくなった。優花も、いつものように遠隔で無数のナイフを操作するのは辛いとボヤいている。

 

 身体能力の強化は特に変わらず可能なので、実は俺はそこまで大幅な戦力ダウンはしていない。優花は優花で、本数を減らせばナイフを操る事は可能であるし、近接ナイフ術と拳銃も駆使すれば何とか戦えそうなのが幸いだ。

 

 最初から殺意フルマックスの物理トラップを、文字通り拳で粉砕して何とか突破した俺たちだが、その先にあるやや狭めの通路に入ったところで、安堵する暇もなく次のトラップが襲いかかってきた。

 

ガコンッ!

 

「うげっ!?」

「きゃあ!?」

 

 うんざりしたくなる音と共に、いきなり床の一部分がスッポリ抜けたのだ。

 

 空中で優花をキャッチし、〝集中強化〟を使用して三角飛びで壁を蹴る。壁キックは意外と得意なリトルマック。あまり抜けた床の幅が広くなかったのもあり、優花をお姫様抱っこした状態であっても、俺は何とか元の位置まで戻ってこれた。

 

 戻った瞬間に次の物理トラップが作動し、また毒矢が飛来するが、それは優花が両手に持った手持ち用のナイフで全て叩き落とす。

 

 本当に息をつく暇もない。

 

 矢を全て叩き落とした優花を狙い、今度はいきなり壁の中から騎士甲冑が出現し、彼女を串刺しにするべく手にした剣を突き出した。

 

「んなろっ!」

 

 左ジャブで突きを相殺し、右ストレートで騎士甲冑の胸元を粉砕する事で、何とか優花への攻撃が届く前に撃破できた。

 

 だが、騎士甲冑の猛撃は終わらない。

 

 数体の騎士甲冑が出現したと思うと、盾を構えてしっかり防御しながら、隊列を組んでこちらに突撃してきたのだ。

 

「優花!」

 

 風を切って投げ飛ばされた投げナイフと、それを追いかけるようにして拳銃から放たれた鉛玉が飛び出す。

 

 俺も弾丸と並走する。当たり前のようにナイフを鉛玉で打ち抜き、更なる加速をさせた事には流石に変な笑い声が出てしまったが。

 

 再加速して、全ての騎士甲冑の盾を弾き飛ばした投げナイフ。心を持たない騎士甲冑だからなのか、特に意に介してはなさそうだが。それでも動きに、一瞬の鈍りが見えた。それだけで十分だ。

 

 中心に陣取る騎士甲冑を、ガンダッシュからのワン・ツーパンチで奥へとブッ飛ばし、左の騎士甲冑は剣を振り下ろすよりも早くスマッシュストレートで粉砕。右側の騎士甲冑は何とか攻撃の発動をさせられたようで、俺が振り向く頃にはもう剣が眼前に迫っていた。

 

 だが、ギリギリで優花が操るナイフが数本飛来。刃を交差させて強度を高め、騎士甲冑の斬撃を受け止めた。

 

「ナイスだ優花!」

 

 普通の正拳突き(見た目ファルコンパンチ)を放って騎士甲冑を破壊しながら叫ぶ。ナイスアシストだ。

 

 一連のトラップはひとまずここまでらしく、次から次へと何かが現れる状況は、一旦だが終息した。

 

 また数歩行けばトラップが起動する気がするので、ここで一旦足を止めて息を整える。

 

 肉体的な疲労感はそこそこだが、ビックリドッキリの連続で心臓は早鐘を打っている。精神には割とダメージが来ているようだ。

 

 腰に手を置いて深呼吸。そうしていると、不意に目の前の壁に文字が浮かび上がった。

 

〝ねえねえ、もしかしてもうバテちゃった? もうバテバテ? ねえねえねえ〟

〝流石に誰か死んじゃったんじゃない? ……ププッ〟

〝まあ、死んじゃったならドンマイだよ! 君たちは私と違って、ただの凡人さんだからねっ! プギャァー!〟

 

 ここで文字は終わりらしい。

 

 一連の文章を、俺は全て浮かび上がるまで待ち。そして読んだ。

 

「……フンッ!」

 

 そして、壁を殴った。

 

 壁が粉砕した事で、文字は取り敢えず見えなく……ならなかった。すぐさま壁が再生し、新たな文字が出現したのだ。

 

〝ざんね〜ん! どれだけ破壊しても壁は壊れないし、文字も見えなくならないよ〜! プークスクス〟

 

 もう相手にするのが負けな気がしてきた。

 

 頭をガシガシ掻いて気持ちに整理をつけると、俺は前に進もうとして。優花に手を握られてクイッと引かれた事で、立ち止まった。

 

 振り返って何かと尋ねようとする前に、優花のキスが降ってきたので、俺は硬直する。

 

「ぷあっ……落ち着いた?」

「落ち着くどころか、折角落ち着いた心臓くんが超元気になったんですがそれは」

「あら、失敗かな」

 

……なんか、積極性が以前よりも遥かに増した気がする。

 

 実はあの宿で、様々な事を例の亜人たちに吹き込まれた事など俺は知らないので。ただひたすら頭を捻るばかりだ。

 

「……まァ、心は落ち着いたか」

「そう。なら良かった」

「行くかァ」

 

 今度こそ前に進む。

 

 数メートル進んだかどうかのところで、またガコンッ! と音が鳴り響き、まずは天井からタライが数え切れないぐらい降ってきた。

 

 が、キスされてからやけに明瞭な俺の感覚神経は、全てのタライを見る事もなくアンチエアナックルで弾いてしまった。

 

 次いで、パラパラと石粒が落ちてきたかと思うと。轟音と共に、天井その物が落ちてきた。

 

 俺は天井を見ると、自然に構えてラッシュを繰り出す。

 

 優花もナイフを2本操り、適当な幅を取って天井の一部分に打ち込んだ。その幅は、俺と優花が2人収まれるぐらいの幅だ。

 

 ラッシュの軌道を変更し、ナイフとナイフでマークされた範囲にだけ、集束した衝撃波を猛烈な勢いで繰り出していく。

 

 その成果は、案外すぐに見える事になった。

 

 魔法で粉砕するなら、とんでもない労力が必要になっただろうが。あらゆる物体を破壊する事にだけ特化した拳ならば、この場を切り抜けるのもそう難しくはない。

 

 天井が地面に到達するよりも遥かに早く、安全地帯を自力で作り出した俺は、着ていたピンクのスウェットを広げてしゃごみ、先に緑のスウェットの上を頭上に広げていた優花と共に、ジッと事が終わるまで待つ。

 

 地面に落ちた際の凄まじい衝撃波と、それに伴う石礫が襲ってくるも、広げたスウェットが上手い具合にそれらを弾いていった。

 

 全てが終息したのを確認すると、俺は優花と共に天井の石群から抜け出す。

 

「……スウェット、指輪の中に収納しないのか?」

「? ケンの匂いがするから、しばらくこのまま羽織ってる」

「さいですか」

 

 ツッコミ禁止。緑のスウェットを羽織るなら、そこらの魔物じゃ感知できないだろうし。普通に防具としても優秀だし。ちょっと俺が恥ずかしい以外は、特に何もない。

 

 極力気にせずに進むと、数メートル行ったところで階下へ向かう階段が出現した。

 

 一本道なので、迷う事なくその階段を下っていく。

 

 さっきまでは連続でトラップが襲ってきたので、数分何もないと変な感じがするのだが。それでも進んでいくと、今度は踏んだ感じがないのにガコンッ! と音が聞こえた。

 

 もうスイッチ起動とか関係ねえだろこれ。そう思った次の瞬間には、階段がいきなり滑り台のようになって段差が消えた。ご丁寧にも、いつの間にか空いていた地面や壁の穴からは、いかにもタールですと自己表現している黒い液体が流れ出てる。

 

「優花、ナイフを」

「はいっと」

 

 優花からナイフを2本受け取り、地面に突き刺して滑り落ちるのを阻止する。なお、ナイフを貸した方は俺の腰にしがみついていた。

 

 これだけで終わるなら、ここからゆっくり下へ行くだけなのだが。どうもそうはいかないのが大迷宮。遠くの方から、ゴロゴロと何かが転がる音が聞こえてきたのだ。

 

 なるほど、定番と定番の合作って事かい。クソッタレが。

 

 現れたのは、トラップの定番中の定番。転がる大岩だ。

 

 なお、階段が滑り台になるテンプレも追加である。面倒くせえ!

 

「背中に乗れ!」

「う、うんっ」

 

 優花を背負うと、突き刺さったままのナイフの柄に足を乗せて立ち上がる。

 

 相変わらずタールみたいな液体は流れてるので、地面で踏み込みを行う事は不可能だ。それは当然、シンプルに立つ場所が少なすぎるナイフの柄にも言えるのだが。

 

「振り落とされるなよ!」

 

 そんな状況下でもバランスを崩さない程度に腰を捻り、俺は右拳に力を入れる。

 

 もちろん〝集中強化〟によって、右拳は存分に強化されている。もう振り抜くだけだ。

 

 気合を入れるべく、俺は世迷い言みたいなアレを叫ぶ。

 

「ファルコーン……!」

 

 大岩が目の前に迫る。

 

 まだ待て。まだ打つな。まだ、まだ、まだ……。

 

 今だ!

 

「パアァァアンチ!!!」

 

 全力の右ストレート。ただし上半身の力だけ。

 

 下半身の力も使えれば、もう少し楽に行けたのだろうが、無理な事は望んでも仕方がない。

 

 俺の右拳は、大岩の中心部にガッチリと命中した。

 

 かなりの質量である事と、それなりに速度も乗っていたが故に、ほんの少しだけ上体が反りそうになるが。それを腹筋に力を入れる事で堪えると、軽く押し戻したのを確認した上で、一気に右拳を振り抜いた。

 

 この瞬間、辛うじて拮抗していた俺の拳の破壊力と、大岩の耐久力は崩れ去り、俺の一撃の方に軍配が上がった。

 

 木っ端微塵に砕け散る大岩。いつものスマッシュストレートなら一瞬だったろうが、まあ良いだろう。

 

 地面も平常状態に戻り、坂道のようになってこそいるが、滑る事なく地に足をつける事ができるようになっている。

 

 ナイフを引き抜いて優花に渡し、これでゆっくり下れる。そう思ったところで。今度は、ガシャガシャと金属製の何かが、複数動いているような音が聞こえてきた。

 

 ウンザリしながら大岩が転がってきた方向を見て、俺は背筋が凍りつく。

 

「おい重力仕事してねえじゃねえか!?」

「仕事放棄してるね……」

 

 騎士甲冑が無数に出現した。これは許そう。だが、壁だの天井だのを全力疾走し、眼前を完全に鉄色一色で染め上げている様子には、流石の俺も変な声を出した。

 

 驚いて咄嗟に動けなかった俺の代わりに、優花は短筒を連射しながら、指輪からハジメお手製の爆発物を次から次へと取り出した。

 

 手榴弾。ロケット弾。シンプルに暴風だけを放つ爆弾。ミサイル。その他いっぱい。それらを、爆発寸前の短筒と共に、〝投術〟の技能を利用して騎士甲冑たちにブン投げたのである。

 

「耳塞いで!」

「おうっ!」

 

 途端、猛烈な爆発が辺りを揺るがした。

 

 爆発によって灼熱の暴風が発生し、騎士甲冑がバラバラになって弾け飛んでいく様を見た俺は、爆音の中でも耳を塞ぎつつ堂々と立つ優花を見て、密かに決意した。

 

――絶対怒らせないようにしよう。




 騎士甲冑は爆★殺。投擲物が多すぎて、優花っちの万能度合いがヤバい事になってます。

 それとここ数日は筆が乗ってるので、明日も更新します。

※マックくんの技紹介
★ファルコンパンチ(ファルパン)
…みんな(多分)大好きファルパン。爆裂蹴より発生は速いけど、カズミシの横スマ先端より吹っ飛びが低い悲しい技。カービィちゃんが使うと可愛い。あと馴れ合いに発展する時が多い。楽しいよねファルパン合戦。ファルコーンパァンチ!!

 マックくんの場合は、下半身が使えない状況下での全力ストレートを繰り出す際に、自分自身に気合を入れるべく使う。実際のファルパンもほぼその場から動かないから、ある意味で原作再現してる。

 強靭な足腰がほぼ使えないとはいえ、破壊力は普通に高い。技能だの籠手のギミックだのをしっかり活用すれば、そこそこ役立つ場面も多い。

 まあ、それ以外の場面ではまるで使えないけど。

 火属性なので、優花っちとの連携技にもなる。

マックくんの新たな恋人候補

  • 〝初恋枠〟優奈ちゃん
  • 〝妹枠〟ルウちゃん
  • 〝大穴枠〟恵里さん
  • ハジメくんの嫁候補以外のクラスメイト
  • アルテナを始めとする亜人族の皆様方
  • 〝英雄〟に嫁ぎたい帝国住まいの方々
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