異世界でもお前のパンチを見せてやれ!   作:Hetzer愛好家

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 キャラ分散も大事(白目)

 ありふれ零を今更ながら読んでるんですが、ハジメくんとオーちゃんさんの共通点多すぎてニヤニヤしてます。金髪美少女に惚れるとこ、オタク&職人気質なとこ、超兵器アーティファクト、争いは好まないが殺る時はしっかり殺るところ等。やっぱオスカー大好きだわ。


メタキャラは多い方が楽

「ちょっとぉ。挨拶もしないでいきなり酷くない?」

 

 何事もなかったか……いや、良く見れば甲冑の一部がひしゃげてるか。だが、本当に何もなかったかのようにまた現れたミレディと名乗るゴーレム騎士。

 

 チッ、仕留められなかったか。あわよくばと僅かばかりの淡い希望を抱いてはいたが。そう甘くはないようだ。

 

「……悪かったな。先手必勝で倒せてしまうぐらい弱い相手なら、めっちゃ楽だし良かったと思ってただけだから」

「お、おう。久しぶりの誰かとの会話に内心狂喜乱舞してる私だけど、こんな変わり種が来るとは思ってなかったよ」

 

 お前が言うなお前が。

 

 それにしても、右腕が間違いなくしばらくは使えなさそうな状況なので、サクッと不意打ちで倒せたら本当にありがたかったのだけど。

 

「で、アンタはミレディ・ライセンと名乗ったな。オスカー・オルクスの手記には、人間の女性だと記録されていたんだが……」

「ああ、もしかしてオーちゃんの迷宮の攻略者?」

「いかにも。オスカー・オルクスから、ちょっとした頼み事もされてるんだが。この場で告げてしまった方が良いか?」

 

 指輪を見せ、取り敢えず聞きたかった事を尋ねる。

 

 一言一句たりとも忘れてはいない。だから、聞きたいと彼女が願うなら、この場であの言葉を告げても構わないのだが。

 

 しかし、ミレディと名乗るゴーレム騎士は首を横に振った。

 

「今は、良いや。ミレディちゃん、オーちゃんから攻略者に頼んだ事が何なのか、すっごく気になってるけどねぇ〜」

「今は良い、か。ここでアンタをぶっ壊しても、まだ話せるみたいな言い方をするな。それじゃあ、遠慮する必要はなさそうだ」

「あっちゃ〜、この超絶天才美少女のミレディちゃんとした事が。ついついうっかりと余計な事を口にしてしまったよ。やっぱりオーちゃんの話題は、未だに心に響いちゃうんだなぁ……」

 

 言葉選びは色々とムカムカするのだが。オスカーの名を口にし、そして彼から何か頼まれてると知ってからの彼女からは、何だか物悲しい空気が滲み出ていた。

 

「まあ、聞けるかどうかは君たち次第だねぇ。君の右腕、使い物にならないでしょ? それでこの私と戦えるのかなぁ〜?」

「ああ、そこは心配するな。この距離で衝撃波をぶつけて傷が入るなら、片腕なくても何とかなる。それに……」

「それに?」

「……頼りになる仲間が、こんなにも一緒にいる。負けるつもりはないさ」

 

 押し黙るミレディ。俺の剣幕に圧倒されたのか。それとも、もっと別の理由か。俺には分からない。

 

 ミレディは、軽く赤熱化した拳を開いたり握ったりしてから。ポツリと尋ねてきた。

 

「戦う前に。1つだけ聞かせて」

「……ああ。何でも答える」

「目的は何? この大迷宮に、何を目的に来た? 神代魔法を手に入れて何を成す?」

 

 答えよう。嘘偽りなく。彼女の望むがままに、俺の本心を。俺たちの総意を。

 

「オスカー・オルクスにも告げた事だが。俺たちの最終目標は、元の世界に帰る事だ」

「……そう」

「だが。もし帰るまでの道中に、貴方たちの運命を狂わせた神々が立ち塞がると言うなら。俺たちは、全力を持って奴らの排除をする」

 

 俺とて人間だ。心までは、完全に失っちゃいない。

 

 人類、亜人、魔人族。全てをオモチャとしか見ていなくて、遊戯感覚で命を消す神々に対して。少なくない憤りを感じてはいるのだ。

 

 ツギハギで心が辛うじて繋がった俺ですらこれだ。元は穏やかな日本人であるハジメたちは、更に激しい憤りを感じていると思う。

 

「そっか。ふふ、遂に……」

 

 感慨深そうに、静かに笑ったミレディ。

 

 だが、それもほんの僅かな時間だけの事。すぐに、物悲しくシリアスな空気は消し飛んだ。

 

「ん~、そっかそっか。なるほどねぇ~、別の世界からねぇ~。うんうん。それは大変だよねぇ~よし、ならば戦争だ! 見事、この私を打ち破って、神代魔法を手にするが良い!」

「脈絡が不明すぎて凄いな色々と」

「まあまあ。超絶天才美少女のミレディちゃん程度を蹴散らせないと、あのクソ野郎共に立ち塞がられても勝てないからねぇ。凡人には難しいかもだろうけどぉ、せいぜい足掻いてねぇ〜!」

 

 その言葉が、開戦の合図となった。

 

 何の予備動作もなく、ミレディが手にしていたフレイル型モーニングスターが飛来した。あのミサイル騎士アタックと似ている。

 

 片腕がない以上、下手な迎撃はできない。俺は真っ先に回避行動を取った。ハジメたちも、各々で回避して別のブロックへと飛び移る。

 

 モーニングスターで足場が粉砕されるとほぼ同時に、剣を構えたままだった他のゴーレム騎士も動き出した。

 

 先ほどと同じように、重力を難なく無視してこちらに突っ込んでくる。

 

「シュッ、ハッ!」

 

 まず攻撃を行ったのはハジメだ。拳の僅かな範囲にだけ錬成の魔力を宿らせているようで、前よりもずっとコンパクトな光に包まれている。

 

 魔力の分解作用が非常に激しいライセン大迷宮で、魔法の適性がないハジメなりに、どうやったら必殺の武器を扱えるかを必死に考えたのだろう。

 

 限界まで使う魔力は抑えつつ、しかし凶悪な性能をなるべく損なわないように試行錯誤したようだ。輝きは淡いながらも、拳が命中したゴーレム騎士たちは次々と武器や甲冑を変形させられて、虚空へ殴り飛ばされた。

 

 ワン・ツーパンチも鍛錬を忘れてないのが透けて見えるぐらい、発生速度と威力が良い方向に向上している。

 

「へえ〜、君も中々面白いねぇ。でも、無限に再生するゴーレム騎士と、私からの攻撃を同時に捌けるかなぁ〜」

 

 モーニングスターがハジメの方へ飛来する。やはり前触れも予兆もない。

 

 回避先にはゴーレム騎士。ジッとしていても、超重量物のモーニングスターの餌食。中々難しい局面に、早速ハジメは陥った。

 

 だが、こちらは1人で戦っているのではない。

 

「ハジメ、背中は任せて」

「ハジメくんはあの大きいゴーレム騎士をお願い!」

 

 ユエが腰にぶら下げた水筒を手に。白崎は杖と拳銃を構えてハジメの背中側に立った。

 

 更に優花も魔法組と合流。俺の左拳を触ってから、目線でミレディを指して走っていった。

 

 ハジメは一も二もなく背中を預けると、拳銃を取り出した瞬間に引き金を引く。

 

ドパァァンッ!

 

 銃声は1発。されど放たれた弾丸は6発。早打ちにより解き放たれた閃光は狙い違わず豪速で迫るモーニングスターに直撃する。流石に大質量の金属球とは言え、レールガンの衝撃を同時に六回も受けて無影響とはいかなかった。その軌道がハジメから大きく逸れる。

 

 その間にシアはいくつかの足場を乗り継いで、ミレディの頭上に到達していた。

 

 位置エネルギーを利用し、手にした大槌を振り下ろすシア。だが、どうやらその攻撃は見え透いているらしい。

 

「甘いよぉ〜」

 

 そんな言葉と共に、ミレディ・ゴーレムは急激な勢いで横へ移動する。横へ〝落ちた〟のだろう。

 

 が、俺もまたそれは想定済みである。

 

「甘いのはどっちかな?」

「えっ、いつの間に!?」

 

 奴の移動先には、緑のスウェットを着込んで隠密性を上げていた俺が待ち構えている。

 

 ミレディが反応するよりも早く、俺はモーニングスターを持っている左腕に取り付くと、ダイレクトで左のジャブとショートアッパーを叩き込んだ。

 

 直接の打撃時に大きな効果を発揮する〝浸透破壊〟と〝集束拳打〟により、鋼鉄製の鎧であるにも関わらず、その2発であっという間にヒビが入る。

 

 邪魔くさい俺を排除すべく、ヒートナックルを叩き込もうとミレディは右拳を振り上げるが。奴の頭上には、回転しながらシアが大槌を構えて降下している。

 

「こんのぉ!」

 

ズゥガガン!!

 

 ヒビの入っていた左腕に、遠心力と位置エネルギーがたっぷり乗った一撃が炸裂。ミレディ・ゴーレムの左腕は、これによって完全に粉砕された。

 

 その衝撃でどこかあらぬ場所へ落ちぬように、俺は適当な足場に粉砕時の衝撃波を利用して着地する。かなり右腕が痛んでいるが、取り敢えずそれは無視だ。

 

 シアも俺の隣に着地……する前に、無造作に振られた右腕によって吹っ飛ばされた。ドンキーの横強か?(トラウマ)

 

 取り敢えず無事らしく、シアは大槌からどんな原理で出したのか分からない衝撃波を繰り出して、軌道を修正する事で別の足場へと着地した。

 

「やってくれちゃってぇ!」

「チッ!」

 

 こちらには、先ほど俺の右腕を動かなくしたヒートナックルが降ってくる。

 

 1発目は跳びながらのパーリングで軌道を逸らして回避し、2発目はダッキングで距離を詰めると、奴の装甲を壁キックの要領で蹴り抜いて後方へ飛翔。籠手からの衝撃波も利用し、やや離れた場所まで退避した。

 

 そんな俺と入れ替わるようにして、ハジメが今度は最前線に立つ。ミレディ・ゴーレムが回復する隙を一切与えない。

 

 半身になって構え直しながら、チラリと後ろに目をやれば、優花の近接ナイフ術で隙を生んだゴーレム騎士を、ユエの水筒から飛び出た水のレーザーや、白崎の銃撃によって次々と粉砕されている様子が見えた。

 

 あっちは加勢する必要なさそう……てか、そろそろ殲滅速度が再生速度を上回りそうだな。

 

 後衛からのサポートがあれば、取り敢えず何とかなる。そう信じると、俺は再度前線の方へと突撃した。

 

「ちょっとぉ! その打撃技、ものすんごい久しぶりに見たんだけどぉ!?」

「知らんがな! てか、本当にこの分解作用メンドイっ。これがなかったら、表面装甲も内部装甲も一瞬なんだけどね!」

「アザンチウムが一瞬なんて嘘だっ!」

「何でそのネタを……!?」

 

 この超短時間で、ハジメは随分とミレディ・ゴーレムの装甲を錬成によって破壊していた。

 

 分子と分子の配列を少しズラしてやるだけで、どんな鉱物であっても簡単にバラバラにできてしまうらしいのだが、それにしても凄まじい。ミレディ・ゴーレムにある意味で特効を持ってるのではないだろうか。

 

……てか、魔力の分解作用が仮になかったらの話だが。ミレディ・ゴーレム、もしかして一瞬でスクラップ?

 

 アザンチウムって、確かこの世界で最も硬い鉱石だろ? でも、万全な環境のハジメくんなら、鉱石相手には絶対無敵。つまり、硬かろうと関係ない。

 

「……とんでもねえバケモンじゃねえか」

 

 俺も装甲無視はデフォだが。そんな次元じゃねえなアレ。

 

 そんなハジメくんだが、シアと上手い具合に連携を取りながら、少しずつゴーレムの鎧を破壊していってる。ハジメが錬成し、シアが叩く。シンプルだが強力だ。特に鉱物系に対しては。

 

 とは言え、2人でアザンチウム製の内部装甲を完全に破壊した上で、核が潜んでいるであろう心臓部を殴って機能を停止させるとなると、流石に厳しそうだ。俺も加勢しよう。

 

「そらよぉ!」

「ほげえっ!?」

 

 緑スウェットは偉大である。第三者の立ち位置から急襲すれば、ほぼ確実にバレないから。

 

 眼下のハジメとシアに視線が向いた瞬間を狙い、俺は顔面部にジョルトを叩き込んだ。もちろん、衝撃波や技能もフル活用済みである。

 

 ミレディの頭部が何だか愉快な感じにひしゃげたのを確認しながら、俺はハジメたちの前に着地した。着地の衝撃でかな〜り右腕痛えなオイ。

 

「うおっ、マックくんか! 本当にそのスウェットの効能高いな……」

「随分と助けられてるよ。それよりも、奴をどうやって攻略するかだ」

 

 チラリと後ろを見ると、遂に殲滅速度が再生速度を上回った魔法組がこちらに駆け寄ってきていた。

 

 仮にこちらへの支援に2人人員を割き、殲滅速度が落ちる事を考えるとなれば、そこまで時間は残されていない。また包囲される前に、決着を付けなければ。

 

 高速で思考を巡らせると、俺は打倒までのプロセスを組み立てていく。

 

「ハジメの錬成パンチ。それとシアの正面火力が鍵となる。魔法組は、無理のない範囲でミレディの動きを封じるのと、再生した騎士が出現したらそいつらを抑え込む。特にユエは、動きを封じるのに適任の氷結魔法を工夫次第では使えるはずだから、率先して頼むぞ」

 

 俺の作戦を速攻で理解したのは優花とハジメ。少し遅れて白崎とユエ。最後にシア。言葉足らずで申し訳なかったが、時間がとにかく惜しいのだ。

 

 皆から了承の声が出るのを聞く前に、俺は優花の操るナイフと共に最前線に躍り出る。

 

「片腕なのに、君は本当に良くやるねぇ〜! 普通なら、そのケガじゃ動けないと思うんだけどぉ〜」

「諦めが世界で1番悪いんだ。アンタが諦めるまで、俺は諦めないさ」

 

 この腕が片方だけでも残ってりゃ、俺は戦える。ボクシングの試合で、片腕片拳が使えない事はしょっちゅうあった。こんなケガ程度で止まるつもりはない。

 

「……ふ〜ん。それじゃあ、大言壮語じゃないか確かめてみようかぁ〜」

 

 途端に予兆なく飛来したのは、足場となっている岩石。動きは単調だが、その手数の多さは凄まじい。

 

 どうやら、精密動作をしないのであれば、かなりの数の物体をこちらに〝落とす〟事が可能なようだ。

 

 岩石群を全て破壊するには、俺の無事な腕がちょっと足りない。破壊は最小限に留め、鍛え上げた動体視力と体捌きで致命傷を避けていく。

 

 魔法組へ到達しそうな岩石だけは念入りに砕き、それ以外は回避という行動を取っているので、とても他の面子を気に掛ける余裕はゼロ。

 

 そしてその回避を狙い、ミレディからのヒートナックルがたまに飛んでくる。能力の低下も著しく、右腕が使えない状態なのを理解している優花のナイフがなければ、何度この身が砕かれたか分からないレベルだ。

 

「う〜ん、これでも仕留められないかぁ。ウサミミちゃんと白髪くんもまだ余裕そうだしぃ。みんなまとめて圧殺☆しちゃおうかな!」

 

 ウザったいミレディの声とほぼ同時に異変が発生する。ミレディ・ゴーレムが天井をジッと見つめているのだ。

 

 釣られて俺も天井を見て、表情筋を引き攣らせる。天井からハラハラと石片が落ちてくる様子が、とあるトラップの光景と重なったからである。

 

 すなわち、天井が〝降ってくる〟と。

 

 発動の妨害をしてやる。そう思ってミレディのところへ向かおうとするが、奴は後ろ方向に〝落ちる〟事により、俺よりも素早いスピードで後退。妨害は失敗に終わった。

 

 歯がゆい思いはしながらも、俺は全速力で魔法組のところへと戻った。幸い、ゴーレム騎士は動いていないし、再生もしてないようだ。天井の巨岩を操るために、1度ゴーレム騎士たちへの操作権を捨てたのだろう。

 

「スウッ――」

 

 呼気を整える。切り抜けるために。

 

 ハジメとシアは、ここから少し離れた場所で足を止めて、何とかこの場を切り抜けようとしている。助力を請うのは無理だろう。

 

 拳銃を使って優花と白崎が少しでも岩石を減らそうとしてくれているが、これだけでは難しいだろう。手数が足りないのだ。それこそ、ユエの殲滅魔法が使えるなら、もう少し楽に行ける可能性はあったが……。

 

 いや、できない事をこの場で夢想しても仕方がない。俺はサクッと思考を切り替えると、残された唯一の武器を構えた。

 

 轟音と共に降り注ぐ巨岩群。1つの重さが、ざっと見ても10トンはありそうな雰囲気だ。

 

 弾を限界ギリギリまで撃ち続け、短筒も爆発させて数を減らしてくれた優花と白崎のお陰で、少しは数が減っている。何とかできるかもしれない。いや、何とかしなければならない。

 

 片腕でも。漢なら、やらなければならない時がある。

 

「オ"オ"オ"ラ"ラ"オ"ラ"オ"ラ"オ"ラ"ァ"!"」

 

 左拳だけでのラッシュを敢行。〝集中強化〟の効果もあり、片腕のみで放つラッシュであるにも関わらず、相当数の衝撃波が拳から飛び出しては巨岩を粉微塵にしていく。

 

 手数の足りなさは否めないが、それでもこちらに〝降ってくる〟巨岩をそれなりの数取り除く。やはり全てを粉砕するには至らなかったが、これで少しは生存への道が開けた。

 

 ここからは、直接の打撃で巨岩を捌いていかなければならない。

 

「絶対に俺の近くから離れるなよ、お前らァ!」

 

 超強化された肉体であってもなお、凄まじい重量を感じる巨岩を、俺は片腕1本で次々と破砕し、あるいは弾き飛ばしていく。

 

 アンチエアナックルやスマッシュアッパーカットが巨岩に炸裂した際の摩擦熱で、優花が仕込んだ〝火種〟が起動し、俺の拳が燃え盛っているが。それを気にする事なく腕を動かし続ける。

 

 巨岩を防ぐ度に、無事だった左腕からもビシビシと肉が弾け飛びそうな音が鳴り響き、頭の奥からもグググッと張り詰めた弦が切れそうな悲鳴が聞こえる。呼吸も苦しいし、垂らしたままの右腕の痛みも悪化している。正直、こんな状況でもなければとっくに倒れているだろう。

 

 それでも戦うのは、ハジメが大切に思ってる人を傷つけたくないってのが1つ。

 

 そして、優花を守るためだ。

 

 変則的な戦いを行ったツケで、左腕から確かな疲労を感じている。だが、フル無視した。

 

 そうやってガムシャラに巨岩を弾いていると。少しずつ、頭の奥から冴え渡る感覚が広がっていく。

 

 どうやら、左腕まで潰れてしまいそうな状況に陥っている事で、魔力による技能発動の阻害ができないぐらい、〝逆境強化〟が顕現しようとしていた。

 

 自動で〝闘神〟も発動するので、強制的にあの狂気スペックになる反面、使用限界時間まで肉体を振り回すと、確実にダウンを喫するのは明白だ。

 

 使用限界時間は、1分弱。発動させるなら、一瞬でこの後戦闘を終わらせないとである。

 

「……四の五の言ってらんねえなァ!」

 

 限界を超え、極限に至る決意を固めると、自身の枷を全て取り払った。

 

 回復効果はないので、右腕は相変わらず動かない。しかし、そんな事が気にならないぐらいのスピードと破壊力で、俺の左拳が打撃を繰り出す。

 

 1度燃え盛る拳が命中するだけで、その余波で連鎖的に巨岩が砕けていく様子は、何と冗談じみた光景か。

 

「ッシャア!!」

 

 ひたすらに。ただ愚直に。拳を振り続けた事で、遂に降り注ぐ巨岩がゼロになった。在庫切れらしい。

 

 濛々と粉塵が舞い散る中。俺の壊れた右腕に、直接触った人物が現れた。

 

「ごめん、2秒だけ待って!」

 

 白崎の声を聞き、俺は2秒キッチリ心の中で数える。

 

 右腕からビキッバキッと鳴ってはいけない音が聞こえてきたが、痛みは感じない。

 

「……はい! これで傷は最低限塞いだよ!」

「マジでナイスプレーだ白崎! さっすが召喚組の中でも1番の癒術師だなァ!」

 

 無茶をすれば、また傷は開いて使えなくなるだろうが。もう2発ぐらい打てるなら十分だ。

 

「シアッ。それにハジメェ、仕留めるぞ!」

 

 先陣を切って走り出す。瓦礫の山々を抜けると、すぐ後ろから気配が2つ。ハジメとシアの物だ。しっかり無事で何よりである。

 

 更に、俺の横を水のレーザーが追い越してミレディ・ゴーレムの元へとかっ飛んで行く。

 

 どうやら、あの攻撃を受けてもなお途切れない戦意には流石のミレディも引いてるようで。やや焦った様子で、水のレーザーには構う事なく俺にヒートナックルを叩き込んできた。

 

 真っ先に俺を排除すれば、作戦が立ち行かなくなる。そうなれば勝ちを拾える。ミレディはそう考えたようだ。

 

 なら、俺が負けなきゃ良いだけなんだがな。

 

 真っ直ぐ飛来したヒートナックルは左のジョルトでパーリング。足場ミサイルや騎士ミサイルは到達前に空中スマッシュストレートの衝撃波で破壊。反動は無理やり抑え込み、更に前進する。

 

「ほんっとネズミみたいにすばしっこいねぇ! そろそろ体力的にキツイと思うんだけどなぁ?」

「戦闘はスタミナ切れてから本番だっつーの!」

 

 ミレディは、やや上昇してから赤熱化を強めた上で俺の方へ〝落ちる〟と、最大限の勢いを付けて強烈な打ち下ろしを俺に叩き込んでくる。着弾点は、俺がもう数歩行った場所だ。

 

 俺は着弾点が分かっても足を止めない。むしろ大きく踏み出すと、身体を限界まで沈み込ませる。

 

 今度はタイミングを外さない。

 

「デリャア!」

 

 地から天へと突き上げられた右拳は、今度は俺が想定したタイミングでミレディのヒートナックルと激突した。

 

 さっきと似た光景だが、まるで異なる結末へと至る。

 

「うわわっ!?」

 

 ミレディ・ゴーレムの右腕が、轟音と共に吹き飛んだ。その余波で、ミレディ・ゴーレムの身体も軽く浮き上がる。

 

 俺はその間に着地と飛翔を行い、ミレディの身体に取り付いた。

 

 無言で拳を振り上げると、俺は上半身のバネのみでスマッシュストレートを左右交互に繰り出す。

 

 凄まじい音を響かせながら、強烈な拳打によってミレディは後退していく。念の為、インパクトの際に腕をドリルのように捻りながら殴った甲斐もあり、今やミレディの表面装甲は完全に穴が空いてしまっている。

 

 それでも依然として内部のアザンチウム製の装甲は無傷で健在であり、余裕の態度をそこまで隠さないミレディだが。足場となっているブロックに叩きつけられた瞬間に発せられた詠唱と、発動した魔法の効果には驚愕の声を上げた。

 

「凍って! 〝凍柩〟!」

 

 その言葉と共に、ミレディの背後にあったブロックが背中を巻き込んで凍りついた。

 

「なっ!? 何で上級魔法が!?」

 

 ユエがすっごく。それはもう凄く凄い工夫した。それだけだ。

 

 水のレーザーを放つ水属性中級魔法の〝破断〟をミレディ・ゴーレムの背面部やブロックに付着させる事で、発動に必要な魔力の量を軽減したのである。

 

 本来、この環境ならどんなにチート魔法使いのユエでも上級魔法は難しいらしいのだが。流石は魔法のエキスパート。実に頭の良い方法で、難問を突破してくれた。

 

「ハジメ、やっちまえ!」

 

 ここまでが下準備。本番はこれからだ。

 

 ハジメが俺と入れ替わりでミレディに取り付くと、スパークを強めた右拳を彼は振り上げた。

 

「行くぞ、〝錬成っ〟!」

 

 頼もしい文言と共に繰り出されたハジメ渾身の右ストレートが、ミレディ・ゴーレムの内部装甲に叩きつけられる。

 

「ちょえ、アザンチウムが分解されてるっ!?」

 

 その言葉の通り、ハジメの錬成パンチが突き刺さっている箇所から半径1メートル内は、アザンチウム製の装甲がハラハラと砂状になって分解されているのが、遠目から見ても分かった。

 

 通常の錬成パンチは、大雑把に鉱物を変形させる事で鈍らにしてしまうか、人体を内部から破壊する技だが。どうやら長い時間をかけて魔力を浸透させる事によって、鉱物を最小単位にまで分解する事も可能なようだ。

 

 格闘術の派生技能〝浸透破壊〟である程度時短になるにしても、長く魔力を浸させる関係で、本来なら戦闘では扱えない代物だが、身動きが取れず、抵抗手段も絶たれた巨大ゴーレム騎士が相手なら使用可能だと踏み切ったらしい。

 

 10秒も経過すると、アザンチウム製の装甲が、一部だけスッポリと抜けてしまったかのような状態になってしまった。

 

 それを確認したハジメが退避するとほぼ同時に、優花が投擲したシンプルな杭が飛来。アザンチウムを失って丸裸となった核に、ドン引きしたくなるぐらい正確に突き刺さる。

 

 あの杭は、オスカーの住処で訓練していた時に、ハジメが〝圧縮錬成〟によって生み出した物である。4トン分の質量を直径20センチ全長1.2メートルの杭に圧縮し、更に表面をアザンチウムでコーティングした代物だ。

 

 実は、本来であればハジメの制作したロマン兵器〝パイルバンカー〟から射出される杭なのだが、優花の〝投術〟を使用すれば兵器なしに運用可能と知ったハジメが、彼女用にいくつかプレゼントしたのである。

 

 大質量かつ大重量の物体を、魔力の分解作用が激しい状況下で投擲するのは少し辛かったようで、優花は肩で息をしている。だが、その瞳は死んでいない。むしろ、その杭を目指して一目散に驀進するウサミミを見て、勝ちを確信しているようだった。

 

「シアさん! マックくんも!」

「おんどりゃあああ!!」

「いよっしゃ、任せとけ!」

 

 大槌を手に、自由落下に身を任せて降下するシア。その瞳には、一撃必殺の決意が宿る!

 

 そんな彼女より少し後に合流した俺もまた、自由降下を始める。

 

 シアと俺が何をするのか悟ったミレディだが、息をさせる暇もない連携に、逃げる時間はゼロ。一瞬だけ逃げようとする素振りを見せるも、すぐに止まった。

 

ドゴォオオ!!!

 

 大槌の炸裂した破滅的な音が鳴り響く。更にダメ押しで、俺はシアの大槌を押し込むようにして、全身全霊手加減なしのスマッシュストレートをブチ込んだ。

 

 アザンチウムの装甲がない今、杭は何の抵抗もなく奥深くへ突き刺さった。

 

 その勢いは止まる事なく、一直線に急降下していったミレディ・ゴーレムが地面に叩きつけられると、奴の瞳から光が消えた。激突時の衝撃で、完全に核が破壊されたらしい。

 

 ピクリとも動かない事を確認してから、俺は力を抜いた。

 

 途方もない疲労感が身を包み、ぶっ倒れてしまいそうになる。だが、俺たちを追って地面に着地した優花が、すぐさま俺に肩を貸してくれた事で、地面をベットにする事態は避けられた。

 

「マックくん、ナイスファイト! 僕たちの勝ちだ!」

 

 ハジメの突き出された拳に、俺も拳を突き出して合わせる。

 

「……ああ、勝った!」

 

 ライセン大迷宮最後の試練が、攻略した瞬間であった。




 大体この辺やろ! で弱点の核周辺の表面装甲を破っちゃうマックくん。そして対ミレディ・ゴーレム特効持ちのハジメくん。ライセン大迷宮の特性をほぼ無視できるシア。メタキャラが多すぎ問題。

マックくんの新たな恋人候補

  • 〝初恋枠〟優奈ちゃん
  • 〝妹枠〟ルウちゃん
  • 〝大穴枠〟恵里さん
  • ハジメくんの嫁候補以外のクラスメイト
  • アルテナを始めとする亜人族の皆様方
  • 〝英雄〟に嫁ぎたい帝国住まいの方々
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