異世界でもお前のパンチを見せてやれ! 作:Hetzer愛好家
「お師匠〜! 私、やりましたよぉ〜!」
「わわ、いきなり抱き着かないでよ!」
ウサギのようにピョンっとハジメに抱き着いたシア。それを見た白崎の背中からは日本刀を構えた夜叉が。ユエからは雷龍が見えた……気がした。
気のせいだ。多分、きっと。
極力気にしないようにしたいのは優花も同じらしい。それなりに回復して自力で立てるぐらいにはなった俺と共に、シレッと彼らに背中を向けると、倒れ伏しているミレディ・ゴーレムのところへ足を運んだ。
「俺たちの勝ちで良いな?」
「……ふふ、死体蹴りにでも来た?」
「んなわけ。それより、ここでアンタをぶっ壊しても、この後でまた話せるんだよな? なら、サクッと移動しちゃいたいと思ってな」
「意外とせっかちだねぇ」
「せっかち云々の前にあれ見てみろよ。この場に留まってると、間違いなく第2ラウンドが始まるぞ。流石に止めるのは面倒なんで、早くしてくれと急かしにきたんだわ」
止められなくはない。が、本気で殴らないと止まらない気がする。
「仲間内のプロレスにも限度はある。その言動と態度のアンタの事だから、何となく分かるんじゃないか? 理屈屋っぽいオスカー辺りには何度も窘められてそうだし」
「あ、あはは。耳が痛いかも……」
何やら思い出した事があるようで、ミレディには少し似合わない苦笑いが響き渡った。
「分かった。これから壁の一部が光るから、そっちに向かってね。その近くの浮遊ブロックを操って、私の本体がいる部屋まで案内するから」
「あいよ。すぐ行く」
ゴーレムに背を向けると、俺は未だに睨み合いが続いているハジメたちのところへ戻る。
ハジメはシアを引き剥がそうとしているが、とんでもない力でヒシとしがみついているようで、まるで動く気配がない。
白崎とユエも対抗するようにハジメに抱き着いてしまい、マジで終わりが見えなくなってきている。早いところこの場を収めなければ。
取り敢えず鉄拳で何とかしようと考えて、比較的傷が少ない左拳を握ろうとした。
だが、
「ケンは休んでて」
「……おう」
優花に休めと言われてしまったら、俺は動けない。恋人様の命令(お願いとも言う)は絶対なのだ……。
さて、優花さんはと言うと、ナイフを1本取り出して投擲。未だワッサワッサ動いているウサミミの先端の毛、ユエのアホ毛の先端、白崎の前髪を数ミリ。全てスッパリ綺麗にカットしてしまった。
ギギギッと油を差してない機械のような動きでこちらを見たシア。それと白崎&ユエ。ハジメもか。
「いつまでも遊んでないで、サッサと行くわよ」
幾分か低い優花の声音には流石に逆らえないようだ。まずシアが離れ、ユエも離れて、白崎は手を握ったまま。
「ひゃっ!?」
で、遠慮なく優花のナイフが白崎の顔面数ミリ手前で止まった。
「後でやりなさい。まだ攻略は終わってないのよ?」
「は〜い……」
なるほど、攻略中にイチャイチャするなと。
君、2人きりなのを利用して、大迷宮だってのに随分と器用にイチャイチャを仕掛けてきたよな? 俺も応えてるから何も言えんけどさ。
バレてない事を利用し、自分の事は全力で棚に上げるスタイル。こんな事をしているのも、実は早いとこ攻略を終わらせて、俺との時間を作りたいからとかないだろうか。いや、これは流石に自意識過剰すぎるよな……。
あ、優花さん目を逸らした。もしかしてマジだったりするの?
取り敢えず事情聴取を後でした方が良いかもしれない。
「ほら、行くわよ」
我先にと、いつの間にか光っている壁の方へと歩き出す優花。俺も後に続く。その後ろを、更にハジメたちがゾロゾロと追従する形だ。
全員が同じ浮遊ブロックに乗ったタイミングで、ミレディの言葉通りにブロックがひとりでに動き出す。事情を知らないハジメたちは驚いているが、それでブロックから落ちるなんて事はなかった。落ちたら落ちたで面白かったんだけどな、な〜んて。
ブロックは10秒もかからず光る壁の前まで進むと、その手前5メートル程の場所でピタリと動きを止めた。すると、光る壁は、まるで見計らったようなタイミングで発光を薄れさせていき、スっと音も立てずに発光部分の壁だけが手前に抜き取られた。奥には光沢のある白い壁で出来た通路が続いている。
俺たちの乗る浮遊ブロックは、そのまま通路を滑るように移動していく。どうやら、ミレディ・ライセンの住処まで乗せて行ってくれるようだ。そうして進んだ先には、オルクス大迷宮にあったオスカーの住処へと続く扉に刻まれていた七つの文様と同じものが描かれた壁があった。ハジメ達が近づくと、やはりタイミングよく壁が横にスライドし奥へと誘う。浮遊ブロックは止まることなく壁の向こう側へと進んでいった。
くぐり抜けた壁の向こうには……
「やっほー、さっきぶり! ミレディちゃんだよ!」
ちっちゃいミレディ・ゴーレムが手を振っていた。
ポカンとしているハジメたちを放置して、俺もミレディに手を振り返す。ニコちゃんマークの顔面が何だか憎たらしいが、努めて冷静に言葉を発する。
「よう。こっちが本体?」
「そうだよぉ~ん。あの凄く……おっきいです☆な騎士ゴーレムは試練用のゴーレムちゃんだからねぇ」
「限りなくアウトだぞそれ。てか何で知ってんの……?」
頼むから女性の声で、その語録を発さないでもらいたい。
「まあまあ、そんな事は良いじゃん! それよりもぉ、オーちゃんからのメッセージが気になるなぁ?」
「あー、先に神代魔法を手に入れるのはダメか?」
「ダメ! 今のミレディさんは、オーちゃんのメッセージ以外に興味ないんですぅ〜!」
「面倒くせえ!」
ホントに面倒くせえなこいつ。
だが、このままデパートのお菓子売り場で駄々をこねる子供ムーブをされるのはもっとメンドイ。早々にこちらから手を打ち、事態の収拾をした方が良さそうだ。
ため息を深く吐きながらではあるが、俺は指輪をミレディの方へ翳しながら、オスカーから託された言葉を口にする。
「オスカーから伝えてくれと託された言葉はこれだ。〝永遠に等しい時が過ぎたとしても、たとえ魂だけになろうと、必ず君を迎えに行く。今度は、僕が君を見つける〟」
「え、その言葉っ!?」
ミレディが何か言うよりも早く、指輪が強烈に光り出した。
ただ懐中電燈が光ったとかいうレベルじゃない。太陽光を、瞼の裏にまで直視させられている。そんな気分だ。
光に耐えられず、目を閉じてしまったのとほぼ同時に、何かが指輪から離れていく。そんな感じが、俺の指先から伝わってくる。
「――ありがとう。勇気ある攻略者」
「えっ」
聞いた事のある声だ。かなり前のように感じるけど、実際は1ヶ月も経過してないぐらい前に聞いた、映像の中だけで耳にできるはずの声。
光が完全に収まり、目を開けた俺の前には。吸い込まれてしまうぐらいに真っ黒なローブと、それと全く同じ色の傘を手にした、黒縁のメガネをかけている青年が立っていた。
「嘘、だろ。アンタ、まさか……」
「やあ、実際にこうやって話すのは初めましてだね。もっとも、僕は一方的に君を見ていたのだけど」
「あり得ないっ。そんな、だって皆はとっくのとうに、あの世に行ったはず。生きてるはずがっ」
「……ミレディ、君には随分と長い間、寂しい思いをさせてしまったね」
指輪から出現した男は、あの記録映像と全く同じか、何ならそれ以上の柔和な笑みを浮かべている。
「俺の記憶に間違いがないなら。俺が痴呆になってないなら。アンタは、オスカー・オルクスだな? オルクス大迷宮の最深部。住処で白骨となっていた」
「寸分の違いなく、僕はオルクス大迷宮の創設者にして、解放者の一員であるオスカー・オルクスだ」
「死んだんじゃ、なかったのか。あの白骨の遺体は間違いなく……」
「うん、僕の物だよ。ただ、〝前の肉体の成れの果て〟ってだけなんだけど」
「前の肉体……?」
俺の認識と思考が全く追いつかない。
前の肉体の成れの果て? じゃあ、現在進行系で言葉を発している、目の前の存在は何だ?
混乱の極みに達した俺よりも早く、それらしい答えを導き出したのは。俺たちの中では思考回路がオスカーに最も近いハジメだった。
「もしかして、人体錬成? それとも、限りなく人体に近い肉体型のアーティファクトを錬成したんですか?」
「お、頭の回転が速いね。って、そうか。君は僕と同じ錬成師だから、その答えに至るまでも早いか」
どうやらハジメは、ドンピシャで答えを言い当てたらしい。
「僕の身体は、様々な神代魔法を付与した上で、限界まで人体の体組成で構成されたアーティファクトだ。そこに、僕の残留思念を定着させた。今のミレディと、ほぼ同じ存在だね」
「あれ、ミレディさんの身体ってオスカーさんが作ったんじゃないんですか?」
「あの当時は、人体錬成を行う術を持ってなかったんだ。皆が大迷宮に潜伏して、かなり経ってから確立した技術だからさ。ホント、何回試行錯誤したか……」
アーティファクトとは思えないぐらい、非常に人間臭い動きをするオスカー。いや、それもそうか。人体を錬成してるんだから。訳分からんけど。
てか、すっごい簡単に人体錬成したとか言ってるけど。絶対にそんな簡単に言うべき事柄じゃねえだろ。
「そんな禁忌に触れるまでに、生成魔法と錬成を極めた理由って……」
「ミレディに会うためだよ。僕の用意した試練を乗り越えた者が現れて、あの日から止まっていた時間が動き出した時に。少しでも、彼女の助けになりたかったから」
……そうか。彼は、ただ1人の女性のために。禁忌とも言える魔法に手を出してでも、助力したいと考えたのか。
今の今まで黙っていたミレディが、ここに来てようやく口を開く。
「オーちゃん。ううん、オーくんなんだよね?」
「うん。初対面でいきなり新妻の3択を仕掛けられた挙げ句、延々と付き纏われて遂に陥落したオーくんだ」
「ちょ、それを今ここで言う!?」
「で、陥落時に〝地獄の底まで付き合う〟とか言っちゃった錬成師だよ。 ……ヤンデレ扱いしやがって、全く」
「あ、アハハ。ミレディさん、流石にその話をぶり返されると思ってなくてかなりダメージ負ってるよ……」
すげえなオスカー。あのミレディを。そう、〝あの〟ミレディを手玉に取ってる。
「で、かなり時間はかかったけども。約束を守った僕に、何かないのかな?」
「……遅すぎてミレディちゃん、他の人に乗り換えちゃうかもっ☆」
「よろしいならば戦争だぶっ壊してやらぁ!」
「ちょちょちょいストーーップ! オーくんなら1番分かってるでしょ壊れたらヤバいの!」
「うん、もちろん知ってるよ? でも壊したって問題ないよ。作れるから」
「まま待って! ミレディちゃん、こんな強引なプレイはちょっと恥ずかしいからって腕取れたぁ!?」
なにこれ?(ゴロリ)
痴話喧嘩でも見せられるんですかね。
「天井のシミ数えてたら終わるからね。ちょっとだけ待ってておくれ」
「それ完全に犯罪者の文言だってば! あ、ちょっ。肉体が崩れて……へっ!?」
あら不思議。ミレディ・ゴーレムの肉体が輝いたかと思ったら、半透明の金髪美少女と新たな肉体が……ホワアアアッツ!?
待て待て待て待て! そんな軽い感じで人体錬成行っちゃうん!? もっとこう、厳かで手出しできない神聖な何かを感じるのではと思ってたんだけど!
最後に半透明人間を鷲掴みにし、新たな肉体だと思われる何かの心臓部に直接ズドン。んな乱暴に行っても大丈夫なんか魂みたいな奴だろアレ。
「はい、完成したよ。鏡で見るかい?」
「……うっそ、ミレディちゃんだ。全世界が震撼し崇め称える絶世の美少女まんまだぁ」
「その口調も変わってないようで何よりだよ」
「オーくんはドライすぎませんかね」
「作ったの僕だし」
「そうだった。じゃあ、ミレディちゃんのあんなところやこんなところを……」
「後から色々と言われるのも面倒だから盛っといたよ。小さな砂丘から進化してる」
「おい何公衆の面前でんな事告げてんだでもグッジョブオーくん愛してる!」
……帰ってもよろしい?
魔改造オスカー・オルクス。あとハイパーミレディちゃん。ありふれ零のオスカーさんもミレディを結構ぞんざいに扱ってるシーン多くて笑ってしまった。でも、時折えぐい反撃行くから素晴らしい。ホントにオスカー好き。
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