異世界でもお前のパンチを見せてやれ!   作:Hetzer愛好家

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ハジメたちが世話になった町らしい

 ハジメと女性陣がやんややんやしてる間。俺と優花は、ふと彼らを見つめている複数の視線に気がついた。

 

「……アンタたち、何見てんだよ」

「ひっ!?」

 

 泉の近くでハジメたちを見ているのは2人。片や素朴な可愛さのある女の子。片や……女性の格好をしたガチムチのお兄さん、かな?

 

 優花の顔が猛烈に引き攣ってる。まあ、見るだけで色々と削られそうな感じはあるしね。

 

 で、それより後ろには馬車があり。その馬車の周囲には、今にもハジメに飛びかからんと嫉妬を目に宿す男の冒険者たちと、それを冷めた目で見る女の冒険者がいた。

 

「あら、あなたはもしかして、あの子たちのお知り合いかしらん?」

 

 ガチムチオネエお兄さんからの矛先がこちらに。全力で表情筋を操作する。

 

「ええ、まあ、はい。仲間です。大切な」

「あらあらあら! じゃあ、シアちゃんのお師匠様のお師匠様ってもしかしなくてもあなたね!」

「んと、シアの師匠は多分ハジメで。ハジメの師匠は……ああ、自分っすね」

 

 師匠と弟子って関係じゃないから、すっかり失念していたが。そうか、ハジメ目線からすれば、俺は一応師匠ってポジションなのか。

 

「アンタは?」

「アタシはクリスタベルよん。ここから1日ぐらいの距離にあるブルックの町で、服装屋を営んでいるわ。そこの子たちとは知り合いなの。以後、よろしくねん!」

 

 バチコンと強烈なウインク。俺は……耐えた。

 

 白崎、ユエ、シアの知り合いなら邪険に扱う必要はないだろう。多分、きっと。

 

「もしや、町に行く途中だったのか? それなら、俺たちもついて行きたいんだが……」

「構わないわよん。どうせなら、アタシたちの馬車に便乗する?」

「ご厚意に甘えよう」

 

 ブルックの町とやらは、確かハジメたちが一時滞在していた町の事だ。俺も興味がある。

 

 手に入れたアーティファクトやら、重力魔法やらの鍛錬の時間も欲しいので、俺は迷わずクリスタベルの誘いに乗った。

 

 俺とクリスタベルが話している声で、やんやしてたハジメたちもこちらに意識が向いたようだ。改めて彼らに説明すると、やはり俺と同じ考えだったらしく、特に否定もなく了承された。

 

 シアが服を着替えたのを確認してから、一同で馬車に乗り込む。俺と優花は、何故か女性の冒険者と一緒の馬車に乗せられた。どうして(FX顔)。

 

「あ、もしかしてリトルマックさんですか? ほら、帝国の拳闘大会で優勝した!」

「え、そうだけど。俺ってかなりの有名人なん?」

「それはもう! 辺境の町であるブルックにもその噂は届いてますよ!」

 

 マジか。俺、まだ対外的には〝神の使徒〟のままだけど、問題はないのだろうか。

 

「って事は……! お隣の女性は彼女さんですよね!」

「んえ、私!?」

「拳闘大会の活躍は、全て正確に伝わってますから! リトルマックさんの優勝に貢献した姫君として!」

 

 勝利への貢献、してるな確かに。キスで。

 

 玉なしの意気地なしバイアスくんとのやり取りも伝わってるなら、優花の存在が知れ渡っているのも当然の事である。

 

「女の敵みたいな皇太子を、恋人の姫君を守るために圧倒的な力でねじ伏せて勝利した英雄様! ほんっと格好いいです〜! あの、実は私2人の事を推しカプとして見ていて! もし良ければ、サインもらえたりしません?」

「そんぐらいなら」

「……私も、良いけど」

「やった〜! 家宝にしますね!」

 

 英語でリトルマックと書く俺と、実家の店舗名と共に名前を達筆な字で書く優花。この世界においては異国語でしかない文字たちだが、特に気にした様子もない。

 

 その後も馬車は、温かな日に照らされながら穏やかに町へと向かう。魔物の襲撃もなく、随分と久しぶりに俺たちはゆっくりとした日を過ごすのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 帝都とはまた違った、温かで柔らかい活気。ブルックの町は、そんな雰囲気でいっぱいである。

 

 馬車から降りた俺は、一旦ハジメたちと別れると、冒険者ギルドの方へ向かった。

 

 と言うのも、ハジメが「冒険者登録をしておけ」と口にしたからである。そう言えば、帝都のギルドで登録はしてなかった。登録しておけば、後に役立つ可能性があるとの事だったので、やらない手はない。

 

 素材の換金もついでに行うつもりで、俺と優花はギルド内に足を踏み入れた。

 

 カウンターには大変魅力的な……笑顔を浮かべたオバチャンがいた。恰幅がいい。特に線が細いユエなら2人分あるのでは?

 

 そーいや、ボクシングのジムには「痩せたい!」と志して通ってた人もいたな。吐くレベルにキツい筋トレで、泣きながらも引き締まった体になってたっけ。

 

「……常日頃から筋トレの事を考えてるのかい? そんな可愛い子を侍らせておいて」

 

 どうも顔に出ていたようで、受付のオバチャンにジト目でツッコミを入れられてしまった。

 

「あながち間違ってないから耳が痛い。それでたまに不機嫌にさせてしまう」

「何やってんだい。男は鍛錬をして強くなるのも大切だけど、女の子を蔑ろにしちゃいけないよ?」

「へい。肝に銘じておきますよ」

 

 最近はなるべく意識してるので、そんな事はほぼないのだが。最初の頃は、鍛錬に夢中になるあまり、優花が不機嫌になってかなり大変だったのを思い出した。

 

 オバチャンの忠告をわざわざ否定する必要もないので、俺は素直に頷く。冒険者たちは「あ~あいつもオバチャンに説教されたか~」みたいな表情でこちらを見ている。彼らが帝国の冒険者と比べても大人しいのは、この受付のオバチャンの存在が大きいのかもしれない。

 

「さて、じゃあ改めて、冒険者ギルド、ブルック支部にようこそ。ご用件は何かしら?」

「冒険者登録と、素材の換金をお願いしたいっす」

「登録と換金ね。冒険者の登録には1000ルタかかるよ」

 

 幸いな事に、金は潤沢にある。1000ルタぐらいなら、2人分払っても問題はないのだろう。

 

 あらかじめ指輪から簡単なカバンに移しておいた金を取り出し、俺と優花の登録費用と、ついでに必要らしいステータスプレートを隠蔽工作した上でオバチャンに手渡す。

 

 そこまで時間が経過しないうちに、オバチャンは俺たちのステータスプレートを持って戻ってきた。

 

 プレートを受け取って確認すると、天職欄の横に職業欄が出来ており、そこに〝冒険者〟と表記され、更にその横に青色の点が付いている。

 

 青色の点は、冒険者ランクだ。上昇するにつれ赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金と変化する。ちなみにこの色は、この世界における通貨の色と全く同じであり、値段の数え方は下から1円、10円というように上がっていく。つまり、だ。

 

「青ランクなら、お前は1円……この世界じゃ1ルタか。1ルタ分の価値しかないって事かァ」

 

 趣味悪いなマジで。誰だよ考えたの。

 

 余談であるが、戦闘職のない人間が上がれる最高ランクは黒だ。普通よりも遥かに拍手喝采されるそう。戦闘職持ちが金になるよりも祝福されるらしいので、みんな我武者羅に頑張ってるらしい。

 

「男なら頑張って金を目指しなよ?」

「まあ、死なない程度には。死んだらそれこそ……」

 

 チラリと優花を見る。優花っち、ムスーっとした顔で俺をじ~っと見てる。今日も俺の恋人は可愛い。

 

 冗談はさておき、彼女は可愛い……じゃなくて。死んでしまったら、どれだけ優花が悲しむか。それを想像するだけで心が痛くなる。

 

「まあ、それも大事さね。若いうちに未亡人なんて目も当てられない」

「そゆ事っす。買取もこっちで問題ないんですっけ?」

「構わないよ。あたしは査定資格も持ってるから見せてちょうだい」

 

 受付以外の仕事も難なくできるスーパーウーマン。この上なく優秀である。

 

 下手にオルクス大迷宮の下層で手に入れた素材を出すのもアレなので、無難にライセン大渓谷で仕留めた魔物の牙、骨、魔石といった素材を取り出し、カウンターの受け取り用の入れ物に並べていった。

 

「ほほう、これはライセン大渓谷のだね? あそこは魔法が使えないから、人によっては厳しい場所だけど……」

「まあ、自分は拳士ですから。それに彼女も、近接戦闘の心得はバッチリなんで」

 

 嘘は何も言ってない。

 

 オバチャンも俺の言い分に納得したらしく、特に何も言及せずに査定を行った。

 

 査定された結果、提示された金額は20万ルタちょうどである。

 

「これで良いかい? 中央ならもう少し高くなるだろうけどね」

「いえ、これで大丈夫っすよ」

 

 全く悪い金額ではない。お金には元々余裕もあり、この場で並外れた巨額を得る必要もないので、俺は提示された金額を了承する。

 

 渡されたお金をカバンに入れていると、オバチャンがふと何かを思い出したかのように、俺に尋ねてきた。

 

「もしかしてだけどアンタ、帝国で大暴れしたって噂されるリトルマックかい?」

「あれ、知ってたんですか。いかにもリトルマックですけど」

 

 その瞬間。ギルド内に滞在していた人たち全員が、一斉に椅子を蹴倒すぐらいの勢いで立ち上がった。

 

「え、そんなに有名人なの俺って」

「あー、まあ有名人ね。だけど、それよりも気になってる事があって」

 

 女の冒険者から聞いてはいたが、思ってたより有名らしいな、リトルマックは。

 

 だが、このオバチャンは帝国で暴れたリトルマックというよりかは、もっと別の認識をしているようだ。

 

「実はね。帝国でリトルマックが大暴れしてるって話を聞いた時に、随分と大きな反応をしてくれた子がいたんだよ」

「……ウサミミを連れた白髪の男女と金髪の女の子?」

「あら、やっぱりお知り合いだったのね。そう、リトルマックの名を聞いた時に、白髪の男の子が『マックくん!?』って叫んでたから、何か親しい関係にあるのかなって思ってたのよ」

 

 なるほど、それなら納得。確かにリトルマックの名を聞いて、間髪入れずマックくん呼びでもすれば、誰でも親しい間柄であると疑うだろう。

 

 そう言えば、ここを紹介する際にハジメたちは、随分とこのギルドの受付嬢さんにはお世話になっているみたいな事を告げてたっけ。

 

 何かの用事でギルドへ訪れた時に、偶然俺の噂を聞いて驚いてしまったのだろう。

 

「知り合いが他所の国で変に噂されてたら、そりゃあ誰でもビックリしますわ」

「やね。優しい子だから、知り合いがどこで何をしてるか心配もしてたみたいだけど……」

「……後でアイツに謝っときます」

「そうしなさいな」

 

 この感じだと、手紙が届くまで随分とタイムラグがあったようだ。おそらくだが、俺の手紙が届くよりも前に拳闘大会のアレコレを知ったと見える。

 

 詳しい報告もまだだったし、謝罪ついでに何があったか全部話そう。今日中に。

 

 オバチャンからハジメたちが滞在している宿を聞き出した俺は、急ぎ足で優花と向かうのだった。

 

 ちなみに初速こそ急ぎ足に相応しいスピードだったが、すぐに優花に手を引かれて通常よりゆっくりの速度で歩く事になった。お散歩デート、再び。




 その夜。

「え、マックくん最風を使えるの!? じゃあ新しい即死コンボルートを何個か考えよう!」
「既に即死連携あるのに、更に増えるのか……」
「いや言葉通りの即死連携じゃなくて、無力化に特化した即死コンボをね。最風ダイナマイトアッパーとか理想的すぎる即死コンボじゃない?」
「男を無力化するのに最適な即死コンボ……」

 金的粉砕☆ムーブ定期。他にもリアルに死なない程度の即死コンボが次々と生み出されたそうです。

 一方、女子サイド。

「優花ちゃんってマックくんとどこまで進んでるの?」
「キスまでだけど……」
「……嘘。絶対に最後までしてる」
「いやホントだって。欲がゼロって訳じゃないらしいんだけど、今はその時じゃないからって言われてるわ」
「ケンさんって優花さんの事が本当に大切なんですねぇ〜」

 自然と上がるマックくんの株。誠実な人柄はどこでも大人気。

マックくんの新たな恋人候補

  • 〝初恋枠〟優奈ちゃん
  • 〝妹枠〟ルウちゃん
  • 〝大穴枠〟恵里さん
  • ハジメくんの嫁候補以外のクラスメイト
  • アルテナを始めとする亜人族の皆様方
  • 〝英雄〟に嫁ぎたい帝国住まいの方々
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