異世界でもお前のパンチを見せてやれ!   作:Hetzer愛好家

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 ギャグを描いても、何故かすぐシリアスへ戻る謎。


再びハイリヒ王国へ

 イルワ支部長から直々に依頼を出されたハジメたちと、ドット秘書長から直々に調査の依頼を受けた俺と優花。それぞれ、行き先が異なるので別行動となる。

 

 ハジメたちの行き先は湖畔の町ウル。この世界でも有数の稲作地帯である。あと、数多くの腕利きの錬成師がここで修行を積んでるそうだ。特に腕の良い錬成師は、王国お抱えの錬成師となり巨万の富を得るとか。

 

 ちなみに稲作が盛んと聞いた俺と優花は、揃ってハジメに米のお土産を要求した。お米食べたいのである。なお、俺は優花の作るオムライスを食べたいとか言うもう少し別の理由もあるんだけど。

 

 パーティーの人数が増えた事で、バイクではなく車で移動するハジメたちを見送った俺たちは、新たにハジメが制作した移動手段に乗り込んだ。

 

 それは飛行機。重力魔法により、指定した方向へ落ちる事で実質的な飛行が可能となる、空の移動手段である。全方位に落ちる機能を使えばホバリングも可能だし、滑走路も不要なので、飛行機よりもヘリコプターの方が色々と近いかもしれない。

 

 なお、ハジメの戦闘思想がふんだんに詰め込まれているため、しっかりと隠蔽機能はあるし、武装は見た目以上に満載されている。そしてこれだけ超性能してながら、動かす原理は二輪や四輪と変わらない。魔力を流せばオールオッケー。

 

 空での移動を選んだ理由としては、この世界では空を移動する手段が魔法以外だとほとんどなく、警戒されにくいと読んだから。地上を移動する場合、隠蔽機能を利用してもふとした拍子にバレるリスクがどうしてもあるのだが、空はまずすれ違う事すら皆無。バレるリスクは最小限にまで減らせる。

 

 まだまだハジメとしては物足りない性能らしく、鋭意改良をしているそうだが。人間を2人、空を利用して運搬できるだけでも強すぎる。乗る際に、重力魔法で体重操作を行って少々軽くならなければならないし、動かす時にも魔力を使用するため、2重に魔力を消耗するのが欠点だが。一般人より遥かに多い魔力を保有する俺たちならば、そんな物別にどうって事ない。最も保有量が少ない俺ですら、常人の100倍は軽くあるんだ。余裕だ余裕。

 

 洗練された流線型のフォルムの飛行機は、音を鳴らす事なく静かに。しかし悠々と、かなりのスピードで大空を駆けて行く。

 

 フューレンから飛び立ち、ライセン大渓谷の魔力分解の効能が及ばない高度を飛行する事で難なく通過。魔力消耗を抑えるため、途中から速度を落として操縦しているが、それでも障害物ゼロによる時短効果は凄まじい。出発から2時間程度で、肉眼で立派な王城が確認できるぐらいの距離にまで到達した。

 

 今回の用事は、王城よりも城下町にある。なるべくクラスメイトと接触したくない俺は、取り敢えず城下町で情報収集をする事にしたのだ。

 

 城下町へ入るなら、他の町と同じく門でステータスプレートを提示したねればならない。直接侵入する事も可能だろうが、万が一があると面倒くさい。少し城下町から離れた場所で着陸すると、俺はごく普通の服装へ着替えた。

 

 特徴的なスウェット姿は、不要な正体露見に繋がる。隠密行動の必要がある今回に関しては、可能な限り正体を隠さなければならない。そこで出番となったのが、かつてユエがハジメとのペアルックにと制作した服である。

 

 これと言った特別な機能はないが、スウェットがデフォルトな俺が普通の服装をするだけで、十分な変装となるのだ。

 

 ちなみに優花も、やや暗めの色合いのウイッグ(茶髪)を装着し、服もその辺の市場で購入した一般の物を着込んでいる。見た目がほんのり優奈に似てるのが、ちょっぴり気になる点だ。美人は何でも似合うと再確認もしてるけど。

 

 なお、念には念を入れるために、オスカー作の認識阻害メガネも着用している。さり気なく凄まじい性能のアーティファクトなのだが、超性能を発揮する事には多分ならないだろう。

 

 門番に隠蔽工作が済んでいるステータスプレートを提示して難なく城下町へ入り込んだ俺たちは、早速情報の収集をそれぞれで開始した。

 

 ドット秘書長から受け取った依頼書には、一時的に行方不明となってから、帰還こそ果たしたものの様子がおかしくなった人物の名が、分かっている限りでズラリと記載されている。簡単な身辺情報もあるので、まずはこれを参考に聞き込み調査からだ。

 

 依頼書と共にドット秘書長から受け取ったギルド職員の証であるブレスレットを提げながら、俺は適当なカフェに入って軽食を口にしつつ、周囲に耳を傾ける。

 

 耳に入ってくるのは、基本的にどうでも良い話題ばかり。野郎の与太話。マダムの井戸端会議。当然だが、中々お目当ての話題は……。

 

「そーいや、お前の妹さん大丈夫か? 一時期、消息を絶ってたろ」

「ん、ああ。何とかな。今は家でゆっくりしてる。ただ……」

「何だ、浮かない顔して」

「いや、何と言うか。機械みたいなんだよ。最初はよっぽど怖い目に遭ったのかと思ったんだが。1週間もずっと様子が変わらないから、流石に心配でな」

 

……何たる偶然。奇跡。

 

 ドンピシャで、お目当てとなる話題を話す人を見つけた。年若い男が2人。同い年ぐらいか?

 

「失礼。その話、詳しく聞かせてもらっても?」

 

 いきなり話に入った事で、当然ながら怪訝そうな表情を話していた男2人は浮かべたが。ギルド職員の証を見ると、すぐに表情をほんのり緩めた。

 

「もしかして、ギルドの方でも調査を?」

「ええ。報告件数は少ないながらも、明らかな異常事態。しかし、ギルドの中枢は動こうとしないので、個人で動こうとしたのですが。中々失踪した本人と接触する事はできない。どうした物か。そう思ってたんですけどね……」

 

 普段は絶対に使わない言葉遣い。胸の奥がムズムズする。

 

 ドット秘書長が定型文を考えておいてくれなかったら、早速ボロを出しそうだった。

 

 口の端はヒクヒクしているが、あくまで平常心。会話を続けるぞ。

 

「実際に何が起こっているのかすら、ギルドは把握できていません。そこで、1つ頼みたいのですが。あなたが構わないのでしたら、妹さんとお話しする時間を頂けませんか?」

「妹と、ですか」

「無理にとは言いません。ただ、現状の把握さえ完了してしまえば。ギルドも重い腰を上げて、本格的な調査に乗り出す可能性は高くなるでしょう。今は自分1人ですが、人手が増えれば。原因究明と問題の解決にまで到れる確率は間違いなく上がります」

「なるほど。そう言えば、他にも何人か家族の様子が変になったと話してたな。向こうは夫が対象だから、かなり気を病んでいる……」

 

 おっと、更に調査できそうな人がシレッと増えたな。幸先良すぎるわ。

 

「分かりました。ただ、日を改めてもらっても良いですか? 3日後ぐらいにでも」

「……オッケーです。了解しました。それでは3日後、このカフェでまたお会いしましょう」

 

 3日後。それまでに、可能な限り情報を集めるべきだな。優花の方も何か進展があるかもだし。

 

 たった今、又聞きも含めて得た情報だけでも大きな進歩である。機械みたい。重要な情報になりそうだ。

 

「あ、ギルドの職員さん。お名前を聞いても?」

「名前、ですか」

 

 リトルマックの名は使えない。真久野ケンの名も、あまり使わない方が良いだろう。

 

……しゃーなし。少し名前を借りるか。

 

「コウスケ・トリウミ。コースケとでも読んでください」

 

 異世界人ならば、絶対に分からないであろう声優ネタだ。ちなみに声真似もできます。

 

 あれ、そう言えばクラスメイトにも、コースケって奴がいたような……?

 

「コースケさん、どうかお願いします。妹の異変を国王様に訴えても、まるで取り合ってくれない。あなたが言ってた通り、ギルドも動いてくれない。そんな中でもこうして動いてくれているコースケさんが、最後の希望なんです」

 

 手をキツく握り締めている。ただ妹を心配するにしては、かなり大きな感情を持っていそうなんだが。その理由は、もう1人の男の方が教えてくれた。

 

「こいつさ。家族が妹しかいないんだ。父も母も、小さい時に亡くしてる」

「それはまた……」

「俺からも頼む、職員さん。親友として、こいつがこれ以上悲しむ姿は見たくないんだ」

 

 絶対の保障はできない。が、したくなる。

 

 ああ、チクショウ。オスカーの時と言い、これと言い。本当に弱いな、俺は。

 

「〝約束〟しましょう。この異変の解決を」

 

 こう口にしてしまったからには、もう逃げられない。

 

 逃げ道を自ら塞いだのは。目の前で強く拳を握る男の姿が、誰かさんと重なったから。

 

……優花には、また甘えてしまうかもしれんなァ。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 夜。適当な宿を選び、優花と同じ部屋で寝転がっているのだが。どうも眠気が来ない。

 

 既に優花は疲れから眠っている。彼女の方も良い塩梅に情報を集められたようで、初日にしては順調すぎるぐらいの成果が上がっている。

 

 なお、腕には柔らかい何かが全力で当たったままの睡眠姿勢。鋼の意思がなければとっくにゴールインしてるわこれ。

 

 優花の頭を撫でているだけで、相当に心労は癒されるののだが。それはそれとして、今後への不安は拭えない。

 

 メガネを外すのも忘れた状態で、ただ天井を眺める。耳元に優花の寝息が当たって色々アレなのは無視。とにかく無視。これを意識したら終わる。

 

「どーしたもんかな」

 

 いやホント。眠れないし、異変の解決方法も思いつかんし。長期戦にはあまりしたくないんだけどなァ。

 

 こんな時、いつもなら外でシャドーボクシングするんだけど。優花がいるから動けません。てか力入らねえんだわ。主に耳への吐息と柔らかい例のブツのせい。

 

 このまま限界を迎えて気絶するように眠る。それ以外の方法がないので、ウンザリしながらその時を待つ。

 

「……ん?」

 

 そんな時である。視界の端に、何かが見えたのは。

 

 思わず片手でメガネを外し、何かが見えた方向を向くが。そこには何もない。

 

 前もあったなこれ。

 

 メガネを再度装着すると、また視界の端に何かがチラチラ。今回は、メガネを介さないと認知できないらしい。

 

 少しため息。そして、自ら見に行こうとするのを諦める。

 

「今回は動けん。彼女を起こすのは嫌なんだわ」

 

 確信はないが、ずっと誰なのかを予想はしていた。

 

 まあ、知ってる女の声ってだけで候補はかなーり絞られるけど。ちょっと信じがたいんだよねぇ。

 

 とは言え、いつまでも不明な存在ってのはモヤモヤする。ここは賭けに出てみますか。

 

「君も分かってくれるだろ? 隣で幸せそうに大切な人が寝てたら、誰でも起こしたくなくなる。なあ……」

 

 優奈さんよ。

 

 静寂が訪れる。変わらないのは、優花の寝息ぐらいか。

 

 1分が、1時間ぐらいに感じる。どのぐらい黙ってたのかは分からないが、数分はこうしてたかな?

 

 ガチリと。時計の針が動いた音が、まず静寂を破る。遠くから、日付が変わった事を伝える鐘の音が聞こえた。

 

 夜闇も深くなりつつある。本当に君なら、夜が深くなればより強くなれるだろう。

 

――バレちゃったか

 

 光が目の前で集束していく。それは少しずつ、人の形となっていった。

 

 ライセン大迷宮を探していた時にも見かけた光の人だ。しかし、今回はどうも毛色が違う。

 

 以前は、完全に光の人と言える様相であり、性別や特徴が見るだけでは分からなかった。しかし、今回は違うのだ。

 

 輪郭が光で縁取られてるとは言え。分かる。顔が、体が。

 

「はは、何年ぶりだ……」

 

 年月を数えてみれば、大体2年ぐらい。そこまで長くはなかった。が、随分と久しぶりに感じる。

 

――私は、ずっと近くで見てたよ?

 

 そうかい。そう、か。

 

 ああ、ダメだこりゃ。涙が止まらん。

 

 ストレートな髪の毛も。やや垂れている目も。俺はかなり久しぶりに見たよ。写真を見ると、ある程度は吹っ切れた今でも泣きそうになるから。

 

「フェアじゃねえのよ、ったく。 ……随分と久しぶりだなァ、優奈」

 

――うん、久しぶりだね。ケン先輩




 マックくんがスーパーパイロットやミスタと同じ声優と聞いた時はビビった。

 オスカーお手製のメガネだからね。魂魄が見えてもおかしくないし、話せても変じゃないよ(アホ)。

 仲良くない他人には真久野と。特に仲の良い友人には愛称のマックで呼ぶように頼み、恋人(未遂込)には本名で呼ばせる男。それが真久野ケン。

※アーティファクト紹介
✬魔力駆動試作戦闘機
…本来ならかなり後の方で飛行艇が出るんですが、2人乗りの飛行機ぐらいなら現時点でも行けるだろ精神で登場。ハジメくん(と作者)のこだわりで、局地戦闘機震電みたいな形になってます。ちなみにプロペラは風力発電の機構。機体を飛ばす事に干渉はしません。

 飛行は重力魔法に依存してるので、垂直に上がる事も落ちる事も可能。滑走路必要なし。

 武装は重量の増加を防ぐために、発射ボタンに魔力を流してワンワード詠唱する事で、機銃の発射口に見立てた穴や日の丸代わりに刻まれた魔法陣から〝雷光〟が発射されます。参考にしたのはオスカーの黒傘。また、機体の腹には簡易宝物庫が仕込まれてあり、直通回路に魔力を流せばそこからわんさか接地で起爆する爆弾が投下されます。

 最高速度は300kmhぐらい。ちな、オリジナルは750kmhぐらい。オリジナルより遥かに遅いですが、馬車が高速の移動手段とされるトータスではバカみたいな俊足。基本的に障害物ゼロの空を、この速度で移動したらあっという間にどこへでも行けちゃいますね。

 その他の機能としては、〝気配遮断〟が当然のように仕込まれている事。それと、風力発電で得た電気は〝雷光〟の威力向上に役立ちます。機内は高度を上げても常に一定の気温に保たれる点も強い。

 欠点は、魔力消耗の激しさ。あと重量制限の存在。理論上は100kgまで乗せられますが、念のために重力魔法で体重を操作して減量しておかないと、事故が起こる可能性が高くなっちゃう。真後ろへの攻撃も不可。一応、後方も確認できる風防にはなってますが、〝雷光〟は上下と前方一直線にしか撃てません。

 あと、旋回や回避は苦手です。何せ飛ぶのではなく落ちてるので、急激な方向転換は不得意。操縦桿はあるので、ある程度は動かせますし、急上昇と急降下は超得意ですけど。

マックくんの新たな恋人候補

  • 〝初恋枠〟優奈ちゃん
  • 〝妹枠〟ルウちゃん
  • 〝大穴枠〟恵里さん
  • ハジメくんの嫁候補以外のクラスメイト
  • アルテナを始めとする亜人族の皆様方
  • 〝英雄〟に嫁ぎたい帝国住まいの方々
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