異世界でもお前のパンチを見せてやれ!   作:Hetzer愛好家

48 / 129
 お待たせしました。


見てから回避余裕……かな?

「まず、あの祈祷師たちは妹さんを害する敵であり、今回の事件の黒幕の可能性が非常に高い人物です」

「え、はあ!? ちょっ、それって!」

「驚くのも無理ないですが、ひとまず話を聞いてください。妹さんに残された時間は、そう長くはありませんので」

 

 妹さんに危機が迫ってると判断したようで、ソウさんはすぐさま黙り込んだ。話の分かる人である。

 

「妹さんですが、こちらで応急処置を施したので数日は大丈夫でしょう。ですが、意味を裏返すと数日しか保ちません」

「そう、ですか……」

「ソウさん。私たちは、これから神山の方へ行ってきます。そこに行けば、妹さんを救う手立てを入手できる可能性があるので」

 

 神山。聖光教会の総本山とも言うべき場所だ。ミレディの教えてくれた情報が正しければ、そこにはかつて教会を裏切って解放者のメンバーに入った者が作った大迷宮があり。そこで入手できる神代魔法が、魂魄に関係する物のはずである。

 

 最速で神山の大迷宮に突入して攻略し、また最速で帰還しなければならない。正直言ってバカみたいにキツいのは予想できるのだが、これ以外に方法は見つからない。

 

「コースケさん。妹は、助かるんですよね……?」

「必ずや。最初に会った時にも、そう私は〝約束〟しました。絶対に助けます」

 

 不安は、ある。

 

 大迷宮は、ふと気を抜いた次の瞬間には命を落とす。そんな場所である。はたして俺に、また大迷宮を突破できるだけの力は。そして運はあるのか。不確定な要素だらけだ。

 

 それでも。それでも俺は、ソウさんに〝絶対に助ける〟とわざわざ口にして〝約束〟した。

 

「……分かりました。あの、コースケさん。どうか妹を……」

「ええ。でも、私が戻るまではソウさんが、妹さんの事を守ってくださいね」

「僕が、守る……」

「たった1人の家族である貴方が、1番に妹さんを守って。そして、誰よりも信じてあげてください。絶対に元の妹さんが、笑顔で帰ってきてくれるってね」

 

 見捨てられなかった。だから、己に楔を打ち込んでまでして精神的に追い込み、必死になって戦えるだけの理由を作った。

 

 あの時と違って、救える可能性はゼロじゃない。それに、この人まであんな辛い思いを。大切な人を早くに失って、胸の奥を掻き毟りたくなる。そんな思いをしなくても良い。避けられるなら、避けたいんだ。

 

 ソウさんの震える手をなるべく力強く握り、彼が心細いと感じないようにしつつ。俺は彼の後ろに座る妹さんの方を見る。

 

 小さく。本当に小さくだが、彼女は頷いた。今のは優奈……ではないな。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 夕方になり、人影がやや少なくなった時間帯に合わせて、俺たちは神山向けて出発した。

 

 ハイリヒ王国の城下町から神山まで、飛行機を使用すればそこまで時間はかからない。これが徒歩なり車なりだと、エベレスト級の山を走破しなければならなかったので、ハジメがいなければ早々に詰んでたのだが。

 

 手持ちの隠蔽技能はもちろんフル活用し、最大限見つかりにくいようにしている。人間なら目視で見つける事はかなり難しいだろう。

 

 あくまでも普通の人間ならの話であり、索敵に限界まで特化したバケモノだとか、それこそ人外だと流石に見破られるかもしれないが。しかし、見破られたところで何とかなる。そう信じ、速度を上げるべく魔力を流す量を増やした時だった。

 

「……ん、これは?」

 

 常に気配を感知する技能を展開しているお陰で、非常に鋭くなった第六感が、俺に脅威が迫ってる事を伝えてきたのである。

 

 飛行機にある内線で優花に尋ねてみれば、彼女もまた何かを感じ取ったようで、普段よりもそれなりに強張った声となっている。それでも即座にナイフ群を飛行機の外に展開しているのは、流石の判断力&決断力と言えよう。

 

 城下町で購入した普通の魔力回復薬を口にして、消耗した魔力を最大近くまで回復すると、改めて俺は〝気配感知〟と〝魔力感知〟を使用した。するとどうだ。まだ距離はあるものの、現時点でもハッキリ分かるぐらいに強大な魔力と。そして、ギリギリまで希薄となった気配が分かったのだ。

 

 只者ではない。魔力の強さと気配の薄さから、対象は間違いなく強者であると嫌でも分かる。

 

 操縦桿を強く握り、神経を限界まで鋭敏化させたのは、完全に無意識の行動であった。限界ギリギリの反射速度が試される。そう感じたのである。

 

 スマブラ的に言うならば、内部遅延の激しい状態でチャージショットを見てからジャスガして、更にその上からガード読みでK.O.をパナす。それぐらいに高難易度な事をしようとしている。多分。

 

 数度の深呼吸。心音が喧しく感じるぐらい、深く深く集中した俺は。ピカッと遠くが光った瞬間にギアを上げて、流れる時間がゆっくりになるのを感じながら、操縦桿へ魔力を一気に流し込んだ。

 

 瞬間、飛行機では確実に不可能である直角への急降下を、機体の向きを一切変える事なく行った。その数瞬後に、頭上を銀色の極光が通り抜ける。

 

 間近で攻撃が通り抜けるのを見て分かった事だが、この極光は凶悪な技能を纏っているのが分かった。優花の展開していたナイフが数本極光に当たると、命中した箇所からサラサラと砂状に変換して地へと堕ちていくのを見るに、分解効果のある攻撃と見て間違いないだろう。

 

 面倒極まりない。俺の肉体ならば、〝分解〟を纏った攻撃を受けても気合と強靭な肉体で耐えられるだろうが、それでも深手を負うだろう。少なくとも強烈な痛みは感じるので、精神的にはゴリゴリ削られる。そう何度も、無策に受けられる技ではない。

 

 操縦桿を引いて重力魔法を操り、2度直角に曲がる事で方向転換。攻撃が飛来した方角を向くと、攻撃を開始するためのスイッチを入れる。

 

「〝雷光〟!」

 

 ワンワード詠唱で発動した〝雷光〟は、一直線に極光を放った〝敵〟に向かって飛来した。

 

 この距離で反撃が来るとは思ってなかったようで、極光を放った奴は〝雷光〟の直撃を受けたのが、遠目からでも良く分かった。その隙に敵の方向へ一気に〝落ちる〟事で、こちらの得意とする距離まで詰め寄る。

 

 大したダメージは負わなかったのか、〝雷光〟の直撃で発生した煙を何かで一気に振り払った敵は、大きく翼のような物を羽ばたかせると同時に、こちらに向かって細かい銀色の何かを連射した。

 

 距離を詰めた事で敵の様相が少しずつハッキリしてきたのだが、どうも銀色の翼が生えていて、ワルキューレのような甲冑を着込んでいる女のようだ。そこから飛来したのは、さっき見た極光と同じ気配がする無数の銀羽。細かい動きが苦手なこの飛行機で、全てを回避するのは至難の業である。

 

 もっとも、こちらもただ黙って攻撃を受けるつもりは毛頭ないけど。

 

「優花ぁ!」

 

 繋ぎっぱなしの内線に向かって叫ぶ。俺の命運は、優花の操るナイフ群に預けた。

 

 真っ直ぐ行けば確実に避けられない銀羽は、飛行機から放つ〝雷光〟で無理やり正面から相殺して突破。〝雷光〟が撃てない、いわゆる死角から接近する銀羽は、銀羽以上に予測不能な動きを行う優花のナイフ群によって、次から次へと叩き落とされていく。

 

 それでも翼の端っこが銀羽によって削られていく。が、構わず突撃を続ける。重力魔法の効力が続いている限りは、どれだけ破壊されようとも飛行機は墜ちない。それに、その場で止まったら間違いなく集中砲火で捌き切れずやられる。動け、とにかく動け!

 

 銀羽は絶え間なく撃ち出されているが、時間が経過するにつれて優花のナイフ群の動きに変化が現れる。敵の癖を読み、より最適に近い動きをナイフに命じる事で、銀羽を殲滅するスピードがどんどん増していってるのだ。

 

 翼端への被弾も激減し、正面への道が開けた事で一気に距離を詰めたところで。敵は銀羽をこちらに飛ばすのを止めると、自分の元へ回収してしまった。

 

 何が起きたのか分からなかったが、すぐさま俺は顔を引き攣らせる。銀羽が次々と集まっていき、巨大な魔法陣を形成しているのが分かったからだ。

 

「優花、脱出だ!」

 

 飛行機内ではマズイ。そう判断した俺は、優花に脱出を促すと、自身も飛行機から飛び出て指輪の中に回収。空中に降り立つと、優花の前に陣取った上で衝撃波が飛ぶタイプの籠手を装着すると、その流れでいつもの構えを取った。

 

 後方にいる優花も、一瞬にも満たない時間で無数のナイフを取り出すと、俺たちの周囲をグルグルと不規則な動きをさせながら周回させる。

 

 そのタイミングで、敵の魔法陣の形成が完了した。

 

「〝劫火浪〟」

 

 鈴の音が鳴るように美しい、しかし絶対零度の冷たさを持つ女の声と共に、炎の津波がこちら目掛けて飛んできた。

 

「畜生がっ。魔力足りるか分かんねえな……!」

 

 身体能力を強化する技能を維持するのにも、当然ながら魔力をジワジワと消耗していく。この一瞬で回復薬を取り出して口にしたとは言え、飛行機の操作によって既にかなり魔力を消耗している俺にとって、あの炎の津波を防ぎ切れるだけの魔力があるか、ちょっと不安なところだ。

 

 いや、魔力が切れたところで〝闘神〟があるので、魔法を乗り切るだけだったら何とかはなるだろう。が、〝闘神〟は言わばセフィロスの片翼状態やカズヤのレイジ状態であり、1度発現したら今日中の再利用はほぼ不可能だ。切り札とも言える択なので、大迷宮攻略まで可能な限り温存しておきたい。

 

 頭が痛くなるレベルの魔力操作が必要となるが、技能でギリギリまで強化したスマッシュストレートを何発も打つ事で魔法を乗り切り、かつ魔力をミリ残しにしないとである。

 

 訪れる熱波に構う事なく、俺はその場でフルホールドの体勢を取る。まずは右拳から魔力を流して筋力を強化。炎の津波がこちらの前髪を焼く寸前まで来たところで、俺は空に足場を作り出して強烈に踏み込みながら、一撃目のスマッシュストレートを放った。

 

 強化されたスマッシュストレートの一撃は流石に凄まじく、空気を震わせるぐらいの衝撃波を拳から打ち出すと、1発で炎の津波に大穴を空けてしまった。だが、それもすぐに塞がろうとする。

 

 優花が操る氷結式のナイフ同士を連結させた上で巨大な氷の壁を生み出したり、〝破断〟や〝天灼〟を撃ってくれるナイフを2本柄の部分で連結し、最大出力で斉射しながら高速回転させて壁のような物を作ってくれているお陰で、どうにか炎の津波がこちらを呑み込む事態にまではなっていないが、それも長くは持たないだろう。

 

 すぐさま次のスマッシュストレートを放つ。次は左拳。ホールドはなし。ここからはスピード勝負だ。すぐに右からスマッシュストレートを出し、その次の瞬間には左からもスマッシュストレートを打ち出しながら前進する。それに合わせて、優花の操るナイフ群も少しずつ前に移動する。

 

 作戦は単純明快。リトルマック定番のスマッシュ連打で炎の津波に穴を空けながら前進し、この魔法を放っている女をぶん殴るだけだ。

 

 ちなみに作戦を優花には伝えなかった。てか、伝える余裕がなかった。それでも俺が求めている行動を取っている優花さんマジで神。後でたくさんお礼しなきゃ。

 

 そのためにも、絶対に生きて帰らなきゃなァ!

 

 実情はかなりギリギリで、コンマ数秒でも遅れたらあっという間に炎の渦に飲み込まれてしまいそうな状況だが。そんな中でも俺は、口角を吊り上げて一層強く空中に生み出した足場を踏み抜く。

 

 何発打ったか分からないが、体感時間にして1分と少しが経過した時。こんな時であっても変わらずに展開されている〝気配感知〟が、喧しいぐらいに憎い存在を知らせてきた。

 

「やっと見つけた、ぞ……!」

 

 一際強く、スマッシュストレートを放つ。すると強烈な衝撃波が炎を薙ぎ払い、術を行使している女の姿が露わになった。

 

「なっ、魔法の中から!?」

 

 それ見ろやっこさん、無表情がデフォっぽい顔面を面白いぐらいに歪めやがった。

 

 驚きながらも実に素早く後退しようとする女。だが、そんな奴の背中を、そこらの刃物よりも遥かに鋭利な水のレーザーが切り裂いた。

 

 何か女が言うよりも先に、優花の操るナイフ群の追撃が飛ぶ。〝天灼〟で女の着る甲冑の胸部を焼き、更に氷結式のナイフを命中させて瞬間凍結させる。

 

 科学の授業で習った事なんだが、熱した金属を急激に冷やすと、一気に脆くなるんだこれが!

 

 優花が足止めしている間に距離を詰めた俺は、凍りついた甲冑にスマッシュストレートを叩き込む。

 

 すると、破滅的な音を鳴らしながら胸部を守る甲冑が砕け散り、女の身体も大きく後方へとぶっ飛ばされた。

 

 逃がすまいと優花が通常のナイフを操り、女の四肢を狙ってコントロールする。が、流石に立て直しが早く、女はどこからか大剣を2つ取り出すと、目にも止まらぬ速さでナイフを叩き落とした。

 

 僅かな隙間時間に指輪から例の超回復する水を出して飲み、魔力を完全回復させた俺は改めて敵である女と真正面から向かい合う。

 

「……不意打ちをしたにも関わらず、無傷で切り抜けるばかりか、こちらに傷を負わせますか。やはり貴方たちは危険すぎます。主の命をも脅かしかねない」

 

 女は相当にこちらを警戒しているようだ。微かに声が震えているのが分かる。

 

「お前は、誰だ。名乗らずに不意打ちってのも悪くはないが、こうして対面した以上、流石に名前を名乗るべきじゃないか?」

 

 それを見て少しだけメンタル有利を感じた俺は、挨拶前のアンブッシュは1度のみの忍者を思い浮かべつつ、そんな事を告げた。

 

 無論、ただ名乗らせたい訳ではない。生まれた僅かな時間で、戦う準備を万全にしたいのだ。

 

「……ノイントと申します。〝神の使徒〟として、主の盤上より不要な駒を排除します」

 

 ノイントと名乗った女は、僅かに口の端っこを歪めながらも。しかし、冷酷無比な声音でそう告げた。

 

 途端に溢れ出す銀色の魔力光。こちらにかかるプレッシャーは、魔力の光が増すのと比例して大きくなっていく。

 

 ハジメやどこかの勇者が扱う〝限界突破〟と似ている。これは、最初から手加減なしの本気で来るという事か。

 

 対する俺たちは、彼らのように〝限界突破〟は扱えない。いや、俺は〝身体強化〟があるにはあるが、倍率はそこまでだ。基礎ステータスが高いとは言え、単体で行けるのかはぶっちゃけ分からん。

 

……1人なら、迷いなく〝逆境強化〟を使用する作戦を立ててたな。最高の支援役が隣にいるから、そんな考えには至らなかったけど。

 

「奴を地上に引きずり下ろすぞ」

「ケンの土俵だもんね。援護は任せて」

 

 ほら。こんなに短いやり取りでも、俺のやりたい事をすぐに察してくれる。何なら、心強い言葉まで残してくれる。これが俺の恋人なんだぜ? 素晴らしすぎるだろ。

 

 ニヤリと笑い合うと、ノイントの方を向く。そして、

 

「「やってみせろ、木偶人形」」

 

 宣戦布告だ。




 次回は最初から全力のノイントVSマック&優花

 最近、大技を乗り切るのにラッシュばかりだったので今回はスマブッパにしました。これぞリトルマック。

 ちなみに今回、マックくんと優花さんそれぞれで神業をシレッと連発してます。

↓マックくんがやらかした事↓
・光速の砲撃を〝見てから〟回避。
・開始直後に超遠距離狙撃。
・上下運動と前進のみの飛行機で攻撃魔法を駆使しながら弾幕を突破。
・炎の津波をスマブッパだけで乗り切る。

↓優花さんがやらかした事↓
・時速300kmの飛行機以上の速度で無数のナイフを操作。
・不規則な動きをして迫る銀羽を、それ以上の変態機動でナイフを操って叩き落とす。
・炎の津波をレーザーっぽい物が出せるナイフを2本連結させ、高速回転させる事で即席のビームシールドみたいにして防ぐ。
・一瞬で甲冑を破壊する。
・追撃のため、先読みレベルのスピードでナイフを操る。

 ついでのように以心伝心。恋人が求める最適な行動をノータイムで実行しちゃう。

マックくんの新たな恋人候補

  • 〝初恋枠〟優奈ちゃん
  • 〝妹枠〟ルウちゃん
  • 〝大穴枠〟恵里さん
  • ハジメくんの嫁候補以外のクラスメイト
  • アルテナを始めとする亜人族の皆様方
  • 〝英雄〟に嫁ぎたい帝国住まいの方々
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。