異世界でもお前のパンチを見せてやれ!   作:Hetzer愛好家

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 大変お待たせしました。

 優花っちの戦闘スタイルが、大量のナイフ群を操りながら短筒で銃撃、または近接で斬撃なので基本的には詠唱がないんですよね。つまり無口だし無表情。何なら種割れしたみたいにハイライトオフの目してる。アニメなら映えそうだけど、小説だと表現が難しいです。

 単騎で超強敵と当たった場合のみ〝大量のナイフ操作〟〝銃撃と斬撃〟〝神代魔法行使〟を全て同時進行でやってもらう予定ですが、今はマックくんがいるので……。

……こうして描いてるだけでも、優花っちのエグさが分かってしまうね。バケモノだわ。

 今回は後半から優花さん視点で進行します。


独りじゃなくて、2人なら

 大空を駆ける無数の銀閃。

 

 凶悪な魔法を乗せた大量の銀羽が、先程の比ではない密度で飛来する。

 

 それをまず食い止めるのは、集中のギアを数段階上げた優花の繰るナイフだ。様々な種類のレーザーで銀羽を焼き切り、凍りつかせ、溶かし、そして叩き落としていく。それでも対応しきれない物は、百発百中の短筒の射撃によって撃ち落とされていく。

 

 合間に飛んでくる銀色の極光は、俺がスマッシュアッパーカットによって軌道を拳が向いた方向へ変換させているので、今のところ遠距離攻撃は一切こちらに命中していない。

 

 遠距離は厳しい。それならばと銀羽と極光を展開しながら距離を詰め、双大剣を近接で振り回すノイント。優花レベルの精度ではないにしても、近距離攻撃を行いながら銀羽でのオールレンジ攻撃を試みてるようだ。

 

 彼女の狙いは、俺である。

 

 合理的な判断だ。盾とアタッカーを両立している俺を落とせば、優花を殺すのにそう時間は必要ないのだから。

 

 無論、俺もそう簡単に死ぬつもりはない。

 

「頼むぞ優花!」

 

 銀羽や極光への意識を完全に切り、ノイントだけに集中する。

 

 空中では地上のように連打を行う事は難しいし、回避だってそこまで高速にとは行かない。単発か、単発に近い連携1つで奴の双大剣を捌かなければならない上、回避にも大きく気を使う事になる。故に、俺はノイント自身からの攻撃以外は全て優花に任せる決断を下した。

 

 残像を引き連れながら、次から次へと斬撃を繰り出すノイントに対して、俺は致命の一撃になり得る物だけは厳選して衝撃波で叩き落とし、他は引き寄せてからのスリッピングで回避しながら、何とかこちらが拳を捩じ込めるだけの隙を探し続ける。

 

 時折優花のナイフが俺とノイントの間を通過し、ノイントの攻撃のリズムを崩してくれている。その都度ノイントは銀翼を大きく動かして俺を近寄らせないようにして、どうにか間合いを侵略されないようにしているので、中々近寄れないのが現状だが。

 

 何とかして攻守を交代させなければなるまい。相手の流れを切り、こちらの流れを引き寄せなければ。

 

 何度目かの攻防の末、ノイントが壱之大剣を横に薙ぐ。そいつを1度も見せていない大きなダッキングで躱すと、好機とでも言いたげに奴は激烈な突きを弐之大剣で繰り出した。

 

「……ここだっ!」

 

 大剣の切っ先が、頬をほんの僅かに削り取る。そのぐらいに引き寄せてからのスリッピングから、一気に足場を踏み抜いて間合いを侵略する。

 

 スマブラマックの技では唯一、空中であろうと性能がほぼ落ちないスリッピングカウンター。俺が使用する場合も、その使い勝手の良さは変わりない。

 

 今回は普段以上にコンパクトな左アッパーで、奴の顎目掛けて反撃を繰り出した。形としてはカスタム必殺のコンパクトカウンターに近いだろう。その後の追撃がやりやすい点も含めてな!

 

 ハジメ式のワン・ツーでノイントの頬を抉り、少しだけバランスが崩れたところで超近距離まで接近。空中での苦手ジャブを一呼吸の内に5発も6発も叩き込んで、高度を少しでも落としていく。

 

「小癪な攻撃ですっ」

 

 銀翼が俺を吹き飛ばすべく、何度も大きくはためいて暴風を起こす。

 

 風に逆らう事はなく、俺はフワリと気流に乗る形で上昇しながらクルクルと宙返りする。そこをすかさず、ノイントの繰る無数の銀羽が襲ってくるが、それらは全て〝天灼〟を吐くナイフが焼き落とす。高度を落としたのに合わせて、優花も降りてきたらしい。

 

 さっきのお返しだと言わんばかりに、〝破断〟を放つナイフ群がノイントの方向へかっ飛んでいく。凄まじい急制動を行いながら、水のレーザーを次から次へと奴さんに向かって吐くが、それをギリギリながらも双大剣で弾きつつ、その後隙を狙って飛来する他のナイフも掠めながら回避しているノイントは、流石〝神の使徒〟と言えよう。その肩書は伊達じゃないようだ。

 

 だが、優花もまた並の投術師ではない。俺が空中で体勢を整えたのとほぼ同時に数発の銃撃音が鳴ってから、俺のすぐ横を赤熱化した短筒が通過した。

 

 優花の意図を察した俺は、短筒より少し遅れてノイントの元へ向かう。

 

 鉛玉を事もなげに大剣で弾いたノイントだが、投げられた短筒には特段反応を示さず、軽く首を動かして躱そうとしている。が、それじゃあダメなんだよ。

 

 ハジメお手製の短筒は、ノイントの顔のすぐ近くで大爆発を起こした。投擲前に、火薬類をタップリと詰めておいたらしく、短筒のサイズからは想像もできないぐらいに強烈な爆発となっている。

 

 完全なる初見殺しは、深い手傷を負わせる事こそできなかったものの、奴さんを少しの間硬直させる事には成功した。

 

 顔を焼かれたノイントが爆風の中から、双大剣を振り回して出てきた頃には、もう俺は奴の眼前まで間合いを詰めている。

 

「っ、イレギュラー!」

「墜ちやがれクソッタレ!」

 

 繰り出したのはバリーブロー。大上段から拳を振り下ろす。重力魔法でベクトルを真下に変更した甲斐あって、脳天に拳の直撃を受けたノイントは、凄まじいスピードで墜落していく。

 

 冗談みたいなスピードで堕ちていくノイント。それを更に押し込むようにして、次々とレーザーだのナイフだのが彼女を襲う。何度も何度も爆発しながら、グングンと高度を下げるノイントに、俺は拳から重力魔法で下に落ち、再度ノイントとゼロ距離になるまで接近する。

 

 クルクルと回りながら急降下しているノイントと相対速度を合わせ、奴の胴体を踏んで押さえるようにして足を乗っけると、身を投げ出しながらの両拳ハンマーナックルで、奴の身体を文字通りメテオと化させた。

 

 両拳でのハンマーナックルな辺り、リトルマックの下投げに近い気がするが、格闘miiの空下にも似ている気がする。次回作の空下は、ルール的には明らかに反則技のオープンブロー辞めてこっちにしないかと言いたいが、下投げみたいなハンマーナックルも禁止技なんだよねぇ……。

 

 さて、メテオと化して高度を落としたノイントだが、遂には聖光教会の正面口付近に墜落した。

 

 これは少し厄介である。本来の予定であれば、全力隠蔽をした状態で教会内へ突入し、大迷宮の入口を探す予定だったのだが。よりによってノイントが正面口に墜落したので、教会はとんでもない騒ぎになっている。

 

 一旦ここで撤退し、ほとぼりが冷めるのを待ってから、別の機会に再突入する道もあるのだが。あいにく時間がない。

 

「正面突破しか、ないよなァ……」

 

 気乗りはしない。どこからどう見ても頭が狂っていらっしゃる奴の集団に突っ込むのは。

 

 ずっと目を逸らし続けていたが、いつかは必要となる人殺しという行為。それが必要になるかもしれないのだ。

 

 ノイント相手ならば、奴はあくまで造られた魂なき人形であるからと、無理やり自分自身に言い聞かせられる可能性はある。ボヤボヤしてると間違いなく殺される強さであるから、死なないために必死だったのだと。これは正当防衛だと、後から言い訳もできてしまうかもしれない。

 

 だが、教会の人間は違う。形は何であれ、人間なのだ。ごく普通の、生きている。ちょっとやそっとの数なら、この世界ではイレギュラーな力を持つ俺は殺されやしない。仮に俺から手を出せば、一方的な殺戮になるのは目に見えている。

 

 この力は、人殺しを成すための力ではない。その認識は、決して間違ってないと信じている。しかし、そうも行かない状況になりそうなのが、自分的には凄まじく億劫だ。殺すか殺されるのかの世界で、そんな事を考えるのは甘すぎるって分かってるのだけど。

 

 俺は、人殺しの業を本当に背負えるだけの精神力はあるのだろうか?

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

優花side

 

 ケンの顔色が優れない。さっきまでの、強大な戦力を味方にした時のような心強さを感じさせる物ではなく、等身大の男子として弱々しく悩んでいる。そんな表情だ。

 

 緑色のスウェットを羽織り、顔が見えないようにフードも被っているが。チラリと見えただけでどんな顔をしてるか分かるぐらい、私は常にケンを注視しているらしい。

 

 何に悩んでいるのか。それは、ここ最近ずっと彼の頭を悩ませている、人殺しをするか否かという議題だろう。

 

 殺人が悪い事なんてのは分かってる。どう足掻いても、正当化させちゃいけない行為だって事も。だが、こうやって明確に命を狙われた以上、そんな綺麗事やお題目を守っていられるかって話だ。

 

 ハッキリ言うが、ずっと綺麗な手でいる事は無理だ。日本へ戻りたいのであれば、その過程でいつかはこの手を汚さなければならない。この殺すか殺されるのかの世界ではなおさらであろう。

 

 それでもこうして悩んでいるのは、ケンが本当に優しい人間だから他ならない。格別に甘い優しさが、いつか自分をも苦しめた末に殺すと分かっていても、だ。

 

 そんなケンが私は大好きなのだが。それだけでやっていける程に甘い世界でないのもまた事実である。

 

「ケン、ちょっと良い?」

「……手短に頼む」

 

 どこか素っ気ないケン。どうやら、あくまでも自分1人で抱え込むつもりらしい。

 

 本当にこの人は、誰かに甘えるって行為が下手くそだ。辛いなら辛いと言えば良いのに、頑なに自分だけで抱え込もうとする。

 

 かつて、彼から「お互い助け、助けられて」とか言ったのに。どこまでも自分の事は後回しで、他者優先なのだ。

 

 こうなると、ケンの口から直接「何が苦しいのか」を聞き出すのは難しいだろう。戦闘が継続している以上、なおさらと言える。

 

 こちらから、一気に本質に切り込んでしまった方が良さそうかな。

 

「殺す殺さない問題。ずっと悩んでるんでしょ?」

「……何でもお見通しか」

「恋人だから。それと、私もあの教皇に魔人族を討ち滅ぼせと言われた時からずっと、悩んでた事だし。何ならフリードとサンドマンに出会ってからは、悩みが大きくなる一方だったのよね」

 

 魔人族と言っても、魂なき人形とは違って自分の意志で生きている。造られたと自称していたミスター・サンドマンも、自分の中で決めたポリシーに沿って行動している。命令待ちの人間なんかよりも、よっぽどサンドマンの方が人間らしい。

 

 召喚されてすぐの頃、あれだけ教皇には魔人族はバケモノであると聞かされていたが。実際会って目にして、教皇の言葉がどれだけ誇張表現だったのか分かってしまったが故、一層私は悩む羽目になったのだ。

 

 自分と同じ姿形をしている生物を、本当に殺せるのかと。

 

 結論から言うと、独りじゃとても心が壊れてしまうという物だった。とてもではないが、あれだけの罪業を独りで背負うのは無理である。

 

 そう、独りなら。

 

「独りで全部、罪業を背負わせる訳ないでしょ」

「……何だって?」

「ケンだけに人殺しの罪を背負わせるつもりはないって言ってるの」

 

 2人でなら、違う。

 

 言葉を聞いてこちらを振り向いたケンの顔には、普段ほとんど見られない表情が浮かんでいる。目をいっぱいに開き、全力で驚愕を表していた。

 

「優花。それは……」

「何よ。私が手を汚したくないから、全部ケンに人殺しを任せる女だって思ってた?」

「い、いや。流石にそんな事は考えてない。全面的に信用してる恋人を、そんな目で見る程に俺は落ちぶれちゃいないよ。だが……良いのか?」

 

 全面的に信用してる恋人って部分でニマニマしそうになるが、ここはグッと我慢である。

 

「良いも悪いも、この世界に召喚されてすぐの時に約束したでしょ。何か辛い事があったら、お互いに助け合おうって」

「それはっ……そうだけどさ。でも、これは……」

 

 言い淀むケンを少しだけ静かにさせるために、私は隙だらけの彼の唇に人差し指を当てる。

 

「私が、ケンの力になりたいの」

「ゆ、う……」

「絶対に、独りで全てを背負わせはしない。辛そうなケンを見てるの、私は嫌だから」

 

 今度こそ静かになったケンを、優しく胸元に抱き寄せる。

 

 少しだけ震えていた彼の身体は、数秒もすると平常の状態に戻った。

 

 優しい手つきで私の手を握り、顔を胸元から離したケンは、どこか透明感のある声で私に問う。

 

「覚悟は、あるんだな?」

 

 無論。1つだけ頷けば、ケンも応えるように頷くと、いつの間にか〝極色彩〟に染まった瞳でこちらを見やった。

 

 その瞳の、あまりにも浮世離れした美しさに、今度はこちらが絶句する。

 

 私の動揺を、ケンは特に気にした素振りを見せずに、ノイントが墜落した辺りをジロリと睨む。

 

「……行こう。あの子と、優奈が待ってるから」

 

 私の身体から少しだけ離れた途端、ケンから虹色のオーラが爆発するように噴き出した。

 

 凄まじい力の奔流に呆気に取られていると、ケンがこちらをチラッと見てきたので、慌てて私は頷くと、彼の手を握って下へと降りていく。

 

 教会の正面口に辿り着くまでの間。ケンも私も、ただの一言も口にしなかった。私がケンの変化に大きく動揺し、更に圧倒されていたから。

 

 何かある。何か、凄い事が起きる。その予想は、良い意味で私の想像を超える形で実現する事になった。




 スマブラキャラをインストールした主人公が虹色のオーラを身に纏い、極色彩の瞳に変化する。妙だな……?

 今回初めて描写した技は以下の通りです。
・コンパクトカウンター(Forカスタム必殺技)
・メテオハンマーナックル(下投げと格闘miiの空下を合成)

 空中戦であるが故に、普段よりやや弱体化気味のマックくん。敵が敵なので、いつものようにスマブッパする訳にもいかんので、唯一性能が落ちないカウンターを軸に戦ってます。

※マックくんの技紹介
★スリッピングカウンター(派生含む)
…そういや紹介してなかった。コンパクトカウンターが出たのでこれを機に紹介。スマブラでは復帰面で世話になりまくってます。あと復帰阻止にも。

 攻撃を受けたと見せかけるぐらいギリギリでスリッピングし、その後大きく踏み込んで左アッパーを叩き込む技。本作においては倍率で返すみたいな仕様ではないが、攻撃した側が体勢を崩したところにパンチが刺さるので、威力は普通に高い。

 派生技として、踏み込みとパンチを小さくした代わりに追撃へ繋げやすいコンパクトカウンター。そして〝縮地〟を使用して接近する、対魔法用のダッシュカウンターがある。

 マックくんの攻撃への見切りがアホみたいに上手いのもあって、本世界のボクシング界ではK.O.アッパー、横スマの次に恐怖の的となっているヤベー技。十八番扱いされるぐらいには有名なので、プレッシャーで手を出せないボクサーが多数。なお、尻すぼみしてるとガン攻めされて死ぬ。

 ちなみに、超々至近距離に限って〝必殺〟となる〝K.O.カウンター〟が存在する。コンパクトカウンター以上に踏み込みが小さいが、繰り出すのはFor版のK.O.アッパー。パンチの種類を認識される前に拳が突き刺さる、文句なしの必殺ブローである。

マックくんの新たな恋人候補

  • 〝初恋枠〟優奈ちゃん
  • 〝妹枠〟ルウちゃん
  • 〝大穴枠〟恵里さん
  • ハジメくんの嫁候補以外のクラスメイト
  • アルテナを始めとする亜人族の皆様方
  • 〝英雄〟に嫁ぎたい帝国住まいの方々
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