異世界でもお前のパンチを見せてやれ!   作:Hetzer愛好家

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鎧の砕ける音……鎧!?

「あ、ええっと……」

 

 困惑したハジメが武舞台で頬を掻く。

 

 白目を剥いて地面に倒れ伏しているのは、常日頃からハジメにダル絡みしている檜山だ。

 

 本日は、王都郊外で希望者のみが参加する、実戦を想定した対人の模擬戦である。ランダムで決められた人とペアを組み、1組ずつ武舞台で模擬戦を執り行う。

 

 模擬戦とは言っても、かなり実戦に近い形だ。武器も普通に扱う。怪我をすれば治癒師が治すのだが、酷いと骨折もするので相当激しい物だ。

 

 何の因果か、ハジメは檜山とペアにされた。当然、檜山はハジメの事を嬲るつもりでいたのだろう。薄汚く笑いながら、ハジメと馴れ馴れしく肩を組んでいた。

 

 しかし、結果はこの通りである。

 

 風属性に適性のある檜山は、適当な最初級魔法の〝風球〟数発で先制攻撃を仕掛けた。

 

 だが、ここ最近常に俺とトレーニングを行い、更には俺の最速ジャブをも目にしているハジメには、随分とトロい魔法に見えたのだろう。

 

 体勢を低くして真っ直ぐに突進し、〝風球〟を走りながらのスリッピングで全て回避。驚いた檜山が新たに魔法を作り出す前に、ハジメにとって最速の左ジャブで顔面を捉えたのだ。

 

 そこから右ストレートも繰り出すワン・ツーパンチで顔面を叩き、フラフラとする檜山を猛然と追撃。念には念を入れて魔法の杖は「〝錬成〟!」と叫びながら殴って無力化すると、顔面部へ左ジャブと右フックのラッシュを敢行。そのまま気絶させてしまった。

 

 初めて俺以外の人物と実戦を行ったので、どの程度で普通の人が倒れるか分からなかったのだろう。かなり呆気なく倒れた檜山を見て、ハジメは随分と困惑している。

 

 どうしたら良いのか分からず、オロオロしているハジメを眺めているのは少し面白いのだが、このまま放置しておくのも可哀想だ。

 

 俺も武舞台に飛び乗ると、ハジメの右手首を掴んで上に掲げた。

 

「勝者、南雲ハジメ!」

「えっ。ええ〜!?」

「何だ、まだ勝った実感がないのか? どう見てもレフェリーストップだろありゃ」

 

 やってみたかったんだよな〜、これ。誰かゴングも鳴らしてくれないかな? カンカンカーン! ってさ。

 

 本来ならある程度ラッシュをした時点で止めるべきだったり。まあ、俺も檜山は嫌いなので……仕方ないね!

 

 ハジメが。よりによって、あのハジメが。そんな事を考えてるのか、クラスメイトは口をアホみたいに開けたまま硬直している。

 

 唯一、武舞台から降りた瞬間にこちらへ駆け寄ってきたのは、クラス内どころかあの学校内でもトップクラスに美少女な白崎香織だ。

 

「凄い、凄いよ南雲くん! いつの間にあんな強くなったの?」

「あ、あはは。真久野くんとずっと鬼みたいなトレーニングしてたからね。少しは強くなれたかな」

「いやどう見ても少しってレベルじゃねえだろ」

 

 初心者であんな躊躇なく飛び込めるの凄いわ。度胸と勇気半端ない。

 

 さり気なく〝錬成〟パンチも実行しており、しっかりと魔法の杖を変形させてるところもポイント高いぞ。

 

「さて、あんな面白い試合を見せてもらったんだ。師匠カッコカリも頑張らないとなぁ」

「あ、次は真久野くんか」

「相手は天之河。まあ、死なない程度にやってくるわ」

 

 籠手を装着し、俺は武舞台に再度上がる。

 

 天之河は既に準備を終えたらしく、勇者専用のアーティファクトである〝聖剣〟を構えていた。

 

 この聖剣、光属性の性質が付与されており、光源に入る敵を弱体化させると同時に自身の身体能力を自動で強化してくれるという“聖なる”というには実に嫌らしい性能を誇っている。ちょっと面倒な武器だ。

 

「真久野。クラスメイトだからって容赦はしないぞ」

「おう。そっちがその気なら俺も全力でやるわ。骨折しても恨むなよ」

 

 剣も届かないぐらいの距離感でお互いに構える。

 

 奴の間合いである中から遠距離戦う必要はない。超近距離で腰を据えて打ち合いするのも愚策。なら、差し返しやパーリングからのヒットアンドアウェイ以外あり得ない。

 

 光源の範囲は半径1mぐらい。聖剣の間合いは更に広く見て半径2mあるかないか。

 

 俺は聖剣の届くギリギリの間合いまで入り、身体を揺らしてリズムを取りながら、天之河が動き出すのを待つ。

 

「……こちらから行くぞ!」

 

 動き出した天之河は、目にも止まらぬ速度で聖剣を振り回す。剣道部のエースなだけあり、その太刀筋はかなりの物だ。

 

 だが、それでも最速の拳よりは遅い。

 

 主にスウェーを駆使して剣撃を回避する。打突に関してはパーリングだ。

 

 何度目かのパーリングで、天之河が大きく体勢を崩したのを見て、俺は持ち前のダッシュ力を存分に発揮して飛び込む。

 

 ガードは間に合わない。剣や盾で、咄嗟に拳をガードするのはかなり難しいのだ。

 

「がっ!?」

 

 まずは1発。やや手打ち気味だが、確実に当てるべく放った左のストレートが天之河の顔を叩いた。

 

 ここで無理には攻めず、一旦引いて身体を揺らしながら様子見に入る。

 

 天之河は、一撃ぐらいではそう大きく崩れはしない。そう読んでの引き行動だ。

 

「くうっ!」

 

 だが、想像より遥かに打たれる事に慣れてないのか。一撃受けただけで、天之河の攻撃がやや直線的になった。

 

 無論、剣での攻撃にしては速い。が、直線的だと避けやすさも倍だ。

 

 スウェーでの回避を減らし、比較的動きが小さく隙が少ないスリッピングでの回避を主体に切り替える。

 

 横薙ぎはダッキングで躱す。打ち下ろしは流石にスウェー。袈裟斬りはスリッピングで皮を切らせて回避、と同時に左ロングアッパーで反撃しながら懐へ入った。

 

 回避と同時に前進攻撃。スリッピングカウンターだ。綺麗に左拳が天之河の顎を捉える。

 

 そして跳ね上がった顔に、俺は追撃として右の打ち下ろしを叩き込む!

 

 感触的に、頬骨が軋む感じがあった。いつも通りだ。

 

 蹈鞴を踏む天之河。これはかなり効いたな。

 

 光源によるデバフも面倒なので、俺はここで勝負を決めに行く。

 

 これ以上痛い箇所を増やすのも可哀想なので、俺は狙いを鎧で守られたボディに定めた。

 

 左足を大きく踏み出し、地を這うほどに低い体勢から、両足が浮き上がるぐらい一気に空を目掛けて拳を突き上げる!

 

 ボディアッパーなので形は普段と少し違うが、俺の必殺ブローであるK.O.アッパーカットだ。

 

 顎に入れば確実に砕けるし、ボディに入っても当たりどころによっては選手生命を簡単に絶つレベルの破壊力がある。

 

 どうやら防具を装着していても、その破滅的な威力の軽減はあまり上手く行かなかったようだ。

 

 天之河の身体は大きく吹き飛び、武舞台から真っ逆さまに墜落してしまった。

 

「あ、やっべえ……」

 

 加減はしたつもりなのだが、こんなに威力が出るとは思わなかった。あれか、ボクシンググローブより遥かに破壊力が出る籠手の装着が要因か?

 

 悲鳴を上げながら駆け寄る女子生徒たちをよそ目に、俺はそそくさと武舞台から降りた。

 

 俺の事をハジメといつの間に来ていた園部が出迎えてくれたが、何とも言えない表情だ。

 

「……やっぱ真久野くん強すぎない? あれ大丈夫なの?」

「魔法がなければ再起不能な気がする。いやでも、ここは言い訳させてくれ。まさか防具で守られているボディでも、あんな威力出るとは思わないやん」

「それ、真久野が普段から倍以上体重差がある人と戦ってた影響じゃない?」

 

 ああ、園部。それはごもっともだわ。倍以上の体重差があるボクサーを一撃で倒せるパンチが、同じぐらいの体重の人が耐えられる道理がなかった。

 

 早く戦いを終わらせる事で頭がいっぱいで、すっかり抜け落ちていたぜ。テヘッ。

 

「無事だと良いんだけどなぁ……」

 

 結論から言えば、天之河は無事だった。

 

 回復魔法凄い。一応、本当に一応骨折がゼロだった分、治りも一瞬だった。凄い痛そうだったけど。

 

 ちなみにボディアッパーを受けた鎧は、しっかりヒビが入っていたそうだが。しかし、そこは勇者の専用装備。しっかり自動修復してくれている。

 

 ファンタジー様々な結果に終わった。

 

「明日から、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要なものはこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ! まぁ、要するに気合入れろってことだ! 今日はゆっくり休めよ! では、解散!」

 

 訓練が終わったタイミングで伝えられれたこの事項に関してだけは、ファンタジーしてんじゃねえぞと言いたかったが。




 この後2人でチョコバーをいっぱい食べました。

※マックくんの技紹介
★K.O.アッパーカット
…文字通りの必殺ブロー。左足を大きく踏み出して地面スレスレに身体を屈めてから、強靭な足腰腕を最大限利用した全身全霊全力の右アッパーカット。生身で食らったら体重差関係なく快音と共に骨が砕け散る。え、グローブなし? 更には籠手装備? 死ぬだろ普通に。

 クッソ低い位置から放たれるので、使われるだけで視覚から一瞬消える上、シンプルに上段攻撃へのカウンターとして使われる。後はガンダッシュからブッパをキメたり、誘い水の左ジャブをガードさせてから放ったり。ちなみに世界大会で初めてお披露目された時は、あまりに破滅的な威力から無差別級のボクサーの頚椎まで酷く損傷させてしまい、グローブの改造やドーピング使用を疑われた。当然ながら不正はないです。

 現在は全ボクサーが目指すべき理想のフィニッシュブローとして認識されており、今日も真似しては足腰腕の肉断裂を起こすボクサーが絶えない。何でマックくんは怪我なしに打てるんですかね(すっとぼけ)。

 スマブラでもこの技を当てるのが非常に上手い。特にラストストックやビハインド時のK.O.は必中と称される。%的にビハインドでも、余裕でメンタル有利を取れるヤベー人性能と、20%から死ぬヤベー技性能も相まって凶悪すぎる。

マックくんの新たな恋人候補

  • 〝初恋枠〟優奈ちゃん
  • 〝妹枠〟ルウちゃん
  • 〝大穴枠〟恵里さん
  • ハジメくんの嫁候補以外のクラスメイト
  • アルテナを始めとする亜人族の皆様方
  • 〝英雄〟に嫁ぎたい帝国住まいの方々
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