異世界でもお前のパンチを見せてやれ!   作:Hetzer愛好家

51 / 129
 UAが50000を突破してました。ありがとうございます。投稿した話数も50を超えてましたね。これからもこんな感じでゆるっと頑張ります。

 今回は少し短めです。


神代魔法は特権階級

 階段を下っていくと、意外とすぐに行き止まりに差し掛かった。

 

 行き止まりの壁には、普通の魔法陣がただ1つあるだけ。

 

 周囲には何もないので、俺は覚悟を決めて魔法陣に魔力を流し込む。すると、定石通り魔法陣が起動。オルクスで神代魔法を手に入れた時と似ている、これまでの記憶を探られている感じが襲ってきた。

 

 何とも言えない気持ち悪さに顔を顰めていると、不意に魔法陣が強く輝いて視界を潰してきたので、思わず腕で目元を隠す。

 

 光はすぐに収まったようで、数秒もすると外の景色が分かるようになった。

 

 さっきとはまた異なる石造りの部屋。特段何か気になる物は見受けられない。

 

 いや、ただ1つだけ。この殺風景で味気ない空間で、一際存在感を放つ何かが眼の前にいる。

 

「……アンタは何者だ?」

 

 眼の前には、禿頭で身体が透き通っていて輪郭がボヤボヤしてる男の姿があったので、思わず俺はそう言葉にしてしまった。

 

 言葉を口にしてから、奴は罠かもしれないと思って構えそうになるが、短時間ながら観察して敵意がない事を悟ると、ほんの少しだけ肩の力を抜く。

 

 男は、こちらの存在を確認したような様子を取ると、無言で背を向けて歩き出した。

 

 手を変わらず握っている優花と1回だけ顔を見合わせた後に、俺たちは男を追いかけるように足を動かし始める。

 

 何か罠が襲ってくる可能性を考慮して、2人して警戒心を強めているのだが、一向に命を奪いに来る殺意は飛来しない。ただ男を追従するだけなのが、逆に不気味だと感じてしまうぐらいだ。

 

 最終的に俺たちは、小ぢんまりとした部屋に辿り着いた。広さは小学校の教室ぐらいか。そんなに広くはない。

 

 半透明の男は、俺と優花が部屋の中に入ったのを確認すると、流し目で地面を見やってからその姿を消した。

 

 男の視線を追うようにして地面を見ると、そこには精緻な造りの魔法陣があった。

 

「これは、そうだよな」

「神代魔法を習得するための魔法陣……」

 

 この形の魔法陣なら見た事がある。オルクスでも、ライセンでも。

 

 2人同時に魔法陣の中へ足を踏み入れると、途端に陣が起動。眩い輝きと共に、これまで以上に自分の深いところへ何かが入り込んでくる感触が襲ってきた。相当に不快感を覚えているのか、優花は大きく呻き声を出していた。自分に対してマイナスに作用する事柄への耐性が高い俺も、これには顰めっ面を浮かべている。

 

 ちなみに全く知らない感じではない。つい最近、優奈が俺の中に入ってきた時とそれなりに似ている気がした。

 

 優奈が入ってきた時は、今回のような不快感よりも窮屈さの方が大きかったので、全く同じとも言い切れないが。

 

 そう長い事、この気持ち悪い感じが続きはせず、すぐに神代魔法を脳へ直接刻む感覚がやって来たので、俺は一安心してしまった。

 

 さて、習得した神代魔法は……。

 

「魂魄魔法か。なるほど、こいつでミレディはゴーレムとして生き永らえていたんだな」

「魂に干渉できる魔法なら、この世ならざるナニカに対しても有効なのかしら」

「試す価値はありそうだ。取り敢えず、ドンピシャで今回は使えそうな神代魔法で良かった。こいつなら、俺でも何とか扱えそうだし」

「あれ、結構珍しくない?」

 

 魔法に対する適性が最下限をブッチしてそうな俺だが、神代魔法だけはどうも別のようだ。生成魔法に関しては絶対に扱えないと思うが、重力魔法に関しては歪な形ながら使えているので、特例も存在しているのだろう。

 

 神代魔法は特権階級★ドリャッドリャッドリャッ! と思わず言いそうになるのを我慢して、俺は軽く「偶然だよ偶然」とだけ告げる。

 

 部屋の中にあるのは、他には日記と攻略の証のみ。まずは日記を手に取り、パラパラと流し読みしていく。

 

 著者はラウス・バーン。神殿騎士の団長でありながら、解放者として戦った者らしい。

 

 魂を操る身でありながら、何故ミレディのように生き永らえなかったのか。懺悔混じりの言葉で綴られた文章を、早速習得した魂魄魔法を使いながら読み進める。〝魂に刻み込んで〟しまえば、流し読みでも忘れはしないだろう。

 

 魂とは形のない物だが、故に魔法では重要となる〝イメージ〟がやりやすい。特に詠唱を必要としない俺にとって、魂魄魔法は非常に扱いやすい魔法と言えた。

 

 大迷宮の攻略条件を最後に記されていたラウスの日記を読み終えた俺は、音が鳴らないよう静かに元の場所へ戻した。おそらく今もこの部屋のどこかで見守っているであろう解放者が、神代魔法の習得者に対して失望する事がないように。

 

「……ラウス・バーン。アンタ、凄い葛藤しながら生きてたんだな」

 

 大迷宮の攻略条件は、〝神に靡かない強い意志〟である。神殿騎士と解放者との間で揺れ動き、そして多くの葛藤を抱えながらも、最終的には狂った神を討ち滅ぼす決意をしたラウスだからこその攻略条件と言えよう。

 

 基本的に解放者に対して敬意を払っているつもりの俺だが、こうして人となりを知ると、より一層強く尊敬したくなる。葛藤を抱えながらも足を無理やり踏み出した、似た者同士として。

 

「……ケン。そろそろ」

「ああ、そうだな。行こうか」

 

 ゆっくり語らえたら良かったんだがな。きっと、ラウスとは良い話ができただろう。

 

 だが、今は成さねばならぬ事がある。俺たちの帰還を、今か今かと待っている人が居るのだから。

 

 攻略の証を手に取ると、途端に室内が輝きを増していく。どうやら転移させてくれるらしい。

 

 視界が完全に白色に塗られる直前。風のように何かが、耳元を通り過ぎた。そんな気がした。

 

「足を動かしたなら、もう止めるな。私のように、右往左往するのは時間の無駄だから」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 光が晴れると、俺たちは隠し階段があった広間に立っていた。既にエヒト像は元の位置に戻っており、外からは何かがあるようには見えない。本当に、巧妙に隠してあるんだなと改めて感じる。

 

 クルリとエヒト像や絵画に背を向けると、俺は優花と手を繋ぎながら広間を出た。足は止めず、振り返りもせず。

 

 物音1つしない教会を抜けると、すぐに俺たちは飛行機に乗り込んだ。

 

 多分、考えてる事は同じだろう。あの場から一刻も早く離れたかったのは俺だけじゃないはず。

 

 音もなく飛行機は離昇し、夜空の中へ吸い込まれていく。空高くに昇ってしまえば、誰も視認する事はできない。

 

 念入りに来た時よりも高度を上げて、安定飛行に入ったところで、内線から優花の声が聞こえてきた。

 

『ねえ、今話せたりする?』

「ん、別に問題ないぞ。安定飛行に入ったから、しばらくは一定量魔力を流すだけだし」

 

 内線越しでも何となく分かる。優花の声が震えている事が。

 

 多分だけど、俺の声も震えてるな。

 

「緊張、切れてしまったな」

『……うん。今になって、手の震えが止まらない。胸の奥も苦しい』

「俺もだ。操縦桿を握って操るタイプの飛行機なら、多分真っ直ぐ飛べないぐらいだよ」

 

 この拳に、未だハッキリ残っている人を殺した感触。人の命を狩る感覚は、骨を砕くとのは全く違った。魔物を狩るのともまた異なる、唯一無二の感覚である。こんな唯一無二はこれっぽっちも嬉しくないが。

 

『射殺は、魔物と対して変わらなかったわ。ナイフを操って命を奪うのも。だけど、直接手持ちのナイフで切り裂くのは全然違ったの。道具を使ってないケン程酷くはないと思うけど……』

「人殺しの感覚に良し悪しなんてないさ。近距離で殺ってしまえば生身が抉れる感触は伝わるし、血飛沫だって身体のどこかに付着する。鉄の臭いも鼻に残って消えない。断末魔の声は耳から離れない。遠くから殺ったら、その瞬間は何ともなくても、必ず後から人殺しの業が重く伸し掛かってくる。それこそ今みたいにな」

 

 衝撃波で人の命を奪った時の感覚は、無に近かった。魔物を殺った時や、対人戦闘で無力化するのと大差ない。

 

 だが、今になって事の重大さを脳が理解したが故に、俺は胸を激しく掻き毟りたいぐらいの息苦しさを感じている。

 

 直接手を触れて命を奪った行為は言わずもがな。感触もだが、死ぬ間際の顔までしっかりと脳に焼き付いているさ。

 

「正直、こうやって口を動かしてないと今にも気が狂ってしまいそうだ」

『……うん。私もよ』

「これからも人を殺す時が来るのかと思うとさ。ひたすらに、理由もなく叫びたくも……」

 

 喉の奥が締まって言葉が続かない。気がつけば、俺は涙を流していた。

 

 無理にでも平静を保って、優花を励まそうとしたのが裏目に出たらしい。

 

 そうだよな。俺、確かに人を殺したんだよな。それもいっぱい。何人殺ったんだっけ。数えられないや。

 

 数え切れないぐらい多くの人生をこの手で奪った罪業を犯した事に対して、後悔はゼロかと言えばそうでもないのが現状だ。同時に、人殺しを成したのがベストな選択だったと囁く俺も確かに存在している。

 

 無数の十字架を背負う覚悟はしていた。凄まじく重たい背負い物になるとも理解していた。だが、想像より遥かに重たい十字架群に俺は押し潰されそうで。それを必死に耐えるために、苦しくても声にならない声を出そうとしていた。

 

 内線から聞こえる優花の声も途切れ途切れ。こんなところまで似てしまったのか、俺たちは。

 

 ソウさんたちが待つ家まで、真っ直ぐ向かえばそこまで時間はかからない。一刻も早く家に向かわなければならない以上、寄り道は厳禁だ。

 

 罪業に潰されないように、無理にでも深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。気を狂わせる時間も、心を壊す時間も暇もない。

 

 俺は独りぼっちじゃない。それだけを頼りに、崩れかけていた精神を徐々に立て直していく。その様子は、かつて魔物肉を食らった時と奇しくも似ていた。

 

 あの時も今回も、優花との繋がりが俺の心を寸でのところで支えてくれている。

 

 決して頑丈ではなく、指先で触れただけで粉々に壊れてしまいそうな状態ながらも、心を繋ぎ止めた俺は顔を上げた。

 

 風防ガラスに写った俺の顔面は、それはもう酷い有り様だ。涙を流した跡が葉脈のように広がっており、幽鬼の類の顔と表現されても差し支えないぐらいである。

 

 思わず苦笑すると、ほんのり顔面の悍ましさが和らいだ。うん、これならきっと大丈夫。ソウさんに会っても心配される程度で済むな。

 

 眼下にはハイリヒ王国の城下町がボンヤリと見える。ここからは垂直に降下していくだけで良いだろう。

 

 回復薬を飲んで魔力を補給した俺は、飛行機に流す魔力の量を調節して緩やかに機体を降下させていく。

 

 下を見て着陸までの時間を計算すると、俺は改めて内線に向かって口を開いた。

 

「優花、返事はしなくて良いから耳だけ傾けてくれると助かる。15分ぐらいしたら城下町に着陸するから、それまでに外へ出られる準備をしてくれ」

 

 返事が返ってくるとは全く思ってなかった。だから、わざわざ耳だけ傾けてくれと口にしたぐらいだ。

 

『……ありがと、ケン。優しいところ、大好き』

「っ――!?」

 

 だからこそ、とんでもねえ質量と湿度の言葉が飛んできたのには死ぬほどビックリした。思わず言葉にならない言葉が喉から出てきたぐらい驚いたわ。

 

 結果、着陸するまで悶々とする羽目になった。主に優花への愛おしさから。

 

 音もなく飛行機が着陸したのを確認すると、俺はコックピットから飛び出した。そして、複座から降りたばかりの優花を強く抱き締める。

 

「血の臭い、気にならない?」

 

 ちょっと震えた声の優花を、俺は再度抱き締める。

 

「気にならない。俺の方こそ、血の臭いがこびり付いてないか不安だ」

「ケンの匂いしかしないよ。別に、血の臭いがしても気にせずこうするけど」

「そりゃ俺も全く同じさ」

「……うんっ」

「なあ、もう少しだけこうやってても良いか」

「私からお願いしたいぐらいよ」

 

 ソウさんの元へ行く時、俺はリトルマックでも真久野ケンでもなく、コースケ・トリウミになる。あれは俺であって俺ではない。

 

 せめて今だけは。真久野ケンという1人の人間として、恋人の優花と密着していたのである。

 

 互いに強く抱き合い、1つの影となった俺たちを、夜空の星々だけが見守っていた。




 感情乱高下。

 破綻してないからこそ余計に辛い。壊れられない理由があるから、更に辛い。そしてお労しい。

 それでも立ち上がれるから、マックくんも優花さんも強いです。何でもかんでも独りよがりの勇者(笑)じゃこうは行かないと思います。

 さて、魂魄魔法を手に入れた事でマックくんが随分とパワーアップしたので、魂魄魔法によって新たに出来るようになった事を下に記載していきます。

・魂の有無を判別可能。恵理の魔法で行動パターンを再現した傀儡を目にしたら一瞬で違和感に気がつく。
・拳に魂を籠める(物理)事で自分の思いを相手の魂へダイレクトで響かせられる。起動スイッチは気合いストレート。
・対象の魂を殴って奪える。奪った魂は自身の糧となり、寿命が延びる。ソウルスティール。起動スイッチはスマッシュボディフック。
・対象の魂を殴って破壊できる。魂を破壊されると死亡する。ソウルブレイク。起動スイッチはスマッシュストレート。
・対象の魂を殴って修復できる。ゴールド・エクスペリエンスと似てるかも。起動スイッチはラッシュ。

 実は魂魄魔法さえ習得してれば神にも牙が届くのがマックくんです。

マックくんの新たな恋人候補

  • 〝初恋枠〟優奈ちゃん
  • 〝妹枠〟ルウちゃん
  • 〝大穴枠〟恵里さん
  • ハジメくんの嫁候補以外のクラスメイト
  • アルテナを始めとする亜人族の皆様方
  • 〝英雄〟に嫁ぎたい帝国住まいの方々
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。