異世界でもお前のパンチを見せてやれ! 作:Hetzer愛好家
パパとなったハジメを連れて冒険者ギルドに行くと、そこには先んじて集合していた仲間の姿があった。
1人初めましての美女がいたが、おそらくハジメが言っていた新しい仲間なのだろう。敵意は全く感じない。
久しぶりとなる仲間への挨拶はそこそこに、俺たちは幾分か歳を食ったように見えるイルワ支部長とドット秘書長の案内で、奥にある応接室へと通された。
「さて、今回の騒ぎだけど……虫の数程に乱立している裏世界の組織でも有数の規模を誇るフリートホーフが、たった数時間で完全な壊滅状態に陥ったと言う物だ。報告によれば死者は出てないみたいだけど、再起不能となって何かしら障害を残した構成員が後を絶たない。で、何か申し開きはあるかい?」
「俺はハジメに頼まれた事を遂行しただけだ。再起不能は計画的に、そして徹底的にやった。2度と普通に生活を送れないようにな」
「僕は身内に手を出されそうになったので、反撃に転じただけです。申し開きもクソもないですね」
「はぁ~~~~~~~~~」
お互い反省の色はゼロである。後悔も何もない。
「まぁ、やりすぎ感は否めないけど、私たちも裏組織に関しては手を焼いていたからね……今回の件は正直助かったといえば助かったとも言える。彼らは明確な証拠を残さず、表向きはまっとうな商売をしているし、仮に違法な現場を検挙してもトカゲの尻尾切りでね……はっきりいって彼らの根絶なんて夢物語というのが現状だった……ただ、これで裏世界の均衡が大きく崩れたからね……はぁ、保安局と連携して冒険者も色々大変になりそうだよ」
「まあ、下手に手を出したり勢力を広げようとしたら、俺たちが再起不能をプレゼントしに来るぞって通達でもしておけば良いんじゃね? 俺なんかは帝国内で有名人だし、ハジメたちも今回の騒動で力は誇示できてるし。抑止力にはなると思うぜ」
「だね。一応、見せしめも兼ねて2度と手出ししようと思わせないために大暴れしたし……ギルドお抱えのパーティーって扱いにしちゃって大丈夫ですよ」
「おや、良いのかい?」
遠慮した発言こそしているが、キラキラと期待で輝く瞳までは誤魔化せていない。まあ、見込める効果が凄まじいから仕方ないけどね。
ハジメは苦笑いしながらも頷いて、何故こんな提案をしたかの理由を答えた。
「一方的に僕たちの要求を通すってのも後味悪いですし。それに、散々お世話になってますから。持ちつ持たれつですよ」
俺もまた、ボンクラ共の件で随分と世話になっている。これで恩を少しでも返せるなら、反対する理由は全くない。
「それなら、遠慮なくそうさせて貰うよ。他の組織の台頭を防げるなら、願ったり叶ったりだからね。その代わりと言っちゃあれだけど。保安局や各方面には、今回の件で荒波を立てないように口利きしておこう」
ほら、早速見返りが来た。自分の要求ばかり通していたら、間違いなくなかった未来だろう?
「ひとまず騒ぎの件についてはここまでにしようか。もう1つ、大切な事があるからね」
「ミュウについて、ですね?」
現在進行系でハジメに抱っこされているミュウは、いきなり自身の話題が出てきた事で、ビクリと身体を揺らした。
「こちらから提示できる案は2つだ。まずは、保安局に預ける形の正規ルートで母親の元へ送還させる方法。そしてもう1つは、ギルドからの依頼と言う形を取って、ハジメくんたちに送還を任せると言う物になる」
「え、僕たちが引き取って良いんですか? 公的機関に預けるのが筋だと思うんですけど」
「ああ、問題ない。何せ、その公的機関が今回は爆破を受けて色々とドタバタしているんだ。それならば、君たちに任せてしまう方が手っ取り早いと僕は判断するよ」
なるほど、確かに合理的である。
他の理由として、既に冒険者ランクが〝金〟であるハジメたちと、帝国で名声を上げている俺が送還する方が、公的機関を利用するよりよっぽど安全という事らしい。
ついでにこの機会を使って、俺と優花の冒険者ランクも〝金〟にしてしまう事で、この判断の正当性をよりアピールするとも教えてくれた。俺としては、この提案を断る理由は全くないので、ハジメの判断に任せる事にした。
「お師匠様……」
「シアさん、安心して大丈夫。ミュウもだよ。そんな不安そうな顔はしないで。助けに行くと決めた時から、旅の同行を許すって決意してたからさ」
「! ありがとうございます! 絶対、絶対にこの娘は守ってみせます!」
「パパ――!」
「おお、よしよし。僕もこの命を懸けて、ミュウの事を守るからね」
さっきは〝パパ〟と呼ばれる事に対して随分とゴネていたが、この順応性の高さである。流石はハジメ。
なお、ミュウの爆弾発言によってハジメの嫁候補たちが一斉に騒ぎ始めて会話が出来ない状態になってしまったので、すかさず俺が話を引き継いだ。
「そんな訳でイルワ支部長。彼女の事は、俺たちが責任を持って母親の元へ送還するよ」
「うん、彼女とその家族が安心できるようによろしく頼むよ。それじゃあ、依頼書の手配と君たちのランクを〝金〟にする処置をするから、少しだけ待っていてくれ」
奥に引っ込んだイルワ支部長と、それに追従するドット秘書長。残されたのは俺たちだけである。
ハジメ側の騒動が鎮火するにはもう少し時間が必要っぽいので、ノンビリ気ままに待つとしようか。
「ケン」
「うん?」
「日本に戻れて、高校を卒業したらさ。その……ね?」
「……ゆっくり、これから2人で将来設計を立てような」
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諸々の準備が完了し、俺たちはフューレンを出発した。
ギルドを出る直前にイルワ支部長から、ホルアド支部の長に手紙の届け物を追加で頼まれたので、行先はひとまずホルアドである。
寄り道にはなるが、本来ならグリューエン大火山の攻略に向かう予定だったので、その中継地点に位置するホルアドに寄るのは別に手間ではない。
その移動に利用するのは、ハジメの手によって改良された魔力駆動四輪である。見た目が明らかに大きくなっており、8人乗りが余裕で可能なサイズになっていた。荷台も使えば、更に人を乗せる事も可能らしい。巨大化に合わせた武装の強化は、何か凄い事になっていた。全自動でガトリングがガシャコン! と出てきたのには流石に笑ったね。
さて、フューレンからホルアドまで全速力で車を飛ばせば、数時間で到着するのだが。その間黙っているのもアレなので、俺はハジメたちがイルワ支部長の依頼をどのように達成したのかについて聞く事にした。
「んー、最初はただの行方不明者の捜索で終わると思ったんだけどね。まず、宿泊しようとした場所に畑山先生とクラスメイトたちが居たよ」
「ああ……まあ、先生は持ってる天職が天職だから、各地を巡ってるんだろうな。偶然鉢合わせになるのは運が良いのか悪いのか」
「畑山先生には色々聞かれたよ。ほら、対外的には僕と香織って行方不明者のままじゃん? マックくんが事前に僕らの無事を伝えてなかったら、もっと大騒ぎだったと思うね」
苦笑いが抜けないハジメくん。相当に面倒だったようだ。
「で、それをテキトーに乗り切って翌日は本格的に調査を。そう意気込んで出発したは良いけど、移動スピード的に足手まといな先生たちまで同行されてね。その時、車のサイズが小さいと感じたから、突貫錬成で改造した。山を捜索する時なんかは、もう移動が遅すぎるから放置してたけどね」
「何て言うか、ご愁傷様だったな」
「幸い、捜索依頼が出てた人は生存している状態で見つけられたから良かったよ。まあ、その後に新しく仲間に加わった……いや、あの時は操られていたティオさんに襲われたんだ。彼女、伝説とされる竜人族でね。強かったよ、中々に」
「しかし勝った、と」
にわかにティオがハァハァし始めた。俺と優花はギョッとするが、ハジメは素知らぬ顔をしている。
「慣れた方が良いよ。彼女、僕に完膚なきまでに負けた事で、洗脳こそ解けたけど変な扉を開いちゃったみたいでさ」
「……何したんだお前」
「ちょっと振り向き魔人拳をね」
「あっ……」
空中じゃないだけ温情か。
……魔人拳に辿り着くまでの過程で、いっぱい魔王の技を受けたのも少なからず影響してそう。
「まあ、変態とは言え味方としては心強いよ。その後、ティオさんを操っていた〝クラスメイト〟が魔物を6万体操って襲撃して来た時も、相当数魔物を削ってくれたし」
「ちょい待ち、いきなり情報の密度がギチギチすぎる。え、クラスメイトが魔物を操って襲撃?」
「魔人族側に寝返って、畑山先生を殺そうと画策してたんだ。まあ、向こうからしたら相手が悪かったけど」
前衛担当の魔王ハジメとシア。
後衛担当の白崎、ユエ、そしてティオ。
うっわ無理ゲーだしクソゲー。前衛だけでもかなりのクソ度合いなのに、後衛がチートすぎるわ。
加えて、先生と同行しているクラスメイトも後方から援護しているのだとすれば、ちょっと魔物群が可哀想になってくる。
こうなると、魔人族側に寝返ったクラスメイトの末路が気になってくるが……。
「魔物を操っていたクラスメイトは、どうなった?」
「クラスメイト……清水幸利は、死んだ。致命打を見張りであろう魔人からの魔法によって負って、そこから1度は蘇生したけど。最終的には、トドメを僕がこの手で刺した」
ハジメは言う。清水幸利は、もはや更生の余地はなかったと。
1度は、ハジメが白崎に頼んで蘇生させたらしい。助命を懇願した畑山先生に預けておけば、更生するかもしれないと考えたようだ。
しかし、清水幸利は。その日の晩にやらかした。
「シアさんを見て、欲を暴走させた。洗脳しようとしたんだ。偶然、僕が近くを通ったから彼女の身には何も起こらなかったけど」
とんでもない罪人であっても、1度は更生のチャンスを与えた優しい〝南雲ハジメ〟ではなく。清水幸利の所業に対し、冷酷無比な〝魔王〟と化した彼は、公衆の面前に奴を引き摺り出した。
そうして始まったのは、一切の弁明を認めないハジメによる、死刑を執行するためだけの裁判。
反論はしたし、保身に走りもしたのだろう。だが、一切をハジメは聞き入れなかった。
「大切な人が襲われて、強い怒りを覚えたのもある。でも、畑山先生が救いの手を差し伸べたのに、1日と保たず欲に負けた事に対しての怒りが特に強かった。畑山先生以外の人は、再び罪を犯す寸前だった清水幸利が死ぬ事を強く賛同したのも後押しして。最期は僕が、黒傘で頭蓋から両断したよ」
「……そうか」
「畑山先生だけは、最後まで完全に納得はしてなかったけど。でも、手を下した僕を憎み続ければ、それが生きる糧になるかなとも思ってさ」
優しすぎる男である。ハジメは。
だから、惚れる人が後を絶たない。
だから、すぐに壊れてしまいそうなハジメを支えたいと思わせる。
「同時に人殺しの罪業を背負う事になったけど。まあ、いつか来る日が早まっただけだね」
「人殺しの罪業、ね。それはハジメだけが背負う罪ではないさ。俺もまた、沢山の十字架を背負う事になった罪人だ」
少し驚いたように、こちらをハジメは見た。
そうだよな。中村と檜山は、死んでいる訳ではないもんな。話を聞かなければ、知らないままだろう。
「人を殺したのは、ハジメだけじゃないって事だ。俺も、そして優花も。同じく罪人だよ」
「園部さんも……そっか。本当に大変だったんだね」
それぞれ、背負う十字架は異なる。何故なら、殺した人が違うから。
しかし、背負う罪が重い事には変わりない。
「あまり、1人で抱えるなよ。辛ければ、大切にしている人にしっかり気持ちを打ち明けろ。ただでさえ優しいお前は、壊れてしまったら終わりだからな」
「マックくん……」
「白崎、ユエ、シア、そして新しくティオ。言い方は悪いが、頼れる人がこんなにも居るのに、利用しないのはもったいないと思わんか? それに……ミュウだって、パパが辛そうにしてるのは見たくないもんな?」
「みゅ! パパにはずっと優しくニコニコして欲しいの! 辛そうに笑うと、お姉ちゃんたちも悲しそうなの……」
「だ、そうだが?」
俺以上に、1人で抱え込む傾向のあるハジメだ。すぐに吐き出せた俺とは違って、上手い具合に隠せてしまえる精神力の強さも持っている。苦笑いがデフォルトだから、仮に悩んでいても非常に分かりにくいだろう。
唯一、ミュウだけは普通の笑顔と違う事を悟っていたようだが。幼子の人を見る目は馬鹿にならないな。
「……ホント、敵わないなぁ」
「どっかの誰かさん曰く、俺はお師匠様らしいんでな」
「はは、お師匠様だよ。僕にとっては、戦闘面でも、人間的にもね」
少し、ハジメの顔に付いていた険が取れた気がする。その後のケアは、嫁候補とミュウに任せるとしよう。
話していると時間の経過は早いもので、もうすぐホルアドである。遠目ながら、懐かしい土地が見えてきた。
また一悶着ある予感はするが、何とか乗り切ろうではないか。
1人ではなく、皆でな。
民意を得た上で執行に踏み切る魔王ハジメくん。原作では何かと対立していた神殿騎士も、今回ばかりは死刑に大賛成してます。だって惚れた愛子の身が絶対危ないし。
原作以上に残酷な結末となりましたが、致命傷を清水が負った段階で殺しに走る性格ではないのが今作のハジメくんです。先生の善意を踏みにじり、更にシアを襲われた事で1度は完全にキレましたが、冷静さはギリギリ失っていません。最後の最後まで、更生の兆しだけでも見せてくれと思ってました。
まあ、結果が醜い自己保身と逆ギレで、遂に切り捨てる決意をした訳ですが。
さて、ハジメパーティーを相手にするのはクソゲーオブクソゲーである事が発覚しましたが、ここにマックくんと優花っちが加わる事を忘れてはいけません。
マックくんが前衛に入れば、ハジメくんとシアが苦手とする面制圧が格段に楽になります。ハジメくんが作った兵器とタメを張るレベルかそれ以上に、マックくんが歩く超兵器なのが本当に良くない。
前衛と後衛の間に優花っちが入れば、魔法組の守護と前衛のサポートを同時に行えるので、安定性が激増します。出血を強いられる点で見ればハジメくんと相性抜群ですし、ナイフに気を取られると対応が追い付かなくなるマックくんやシアとの相性も抜群ですので、前線は地獄でしょうね。
マックくんの新たな恋人候補
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〝初恋枠〟優奈ちゃん
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〝妹枠〟ルウちゃん
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〝大穴枠〟恵里さん
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ハジメくんの嫁候補以外のクラスメイト
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アルテナを始めとする亜人族の皆様方
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〝英雄〟に嫁ぎたい帝国住まいの方々