異世界でもお前のパンチを見せてやれ! 作:Hetzer愛好家
赤銅色の世界。
【グリューエン大砂漠】は、まさにそう表現する以外にない場所だった。砂の色が赤銅色なのはもちろんだが、砂自体が微細なのだろう。常に一定方向から吹く風により易々と舞い上げられた砂が大気の色をも赤銅色に染め上げ、見渡す限り一色となっているのだ。
また、大小様々な砂丘が無数に存在しており、その表面は風に煽られて常に波立っている。刻一刻と表面の模様や砂丘の形を変えていく様は、砂丘全体が〝生きている〟と表現したくなる程だ。照りつける太陽と、その太陽からの熱を余さず溜め込む砂の大地が強烈な熱気を放っており、四十度は軽く超えているだろう。舞う砂と合わせて、旅の道としては最悪の環境だ。
普通の旅人がそこを通るなら、地獄その物であったに違いない。
しかし、俺たちはこの世界にとってのバグ枠でありイレギュラーの集団だ。この程度の環境は、快適に突破できるだけの術を持っている。
古くより、乗り物の発達が人類の進化を大きく促進している。その理由は様々だが、1番の理由は行動可能な範囲が劇的に広がる点にあるだろう。
その要因としては、シンプルなスピードもそうだが、移動手段の環境も大きく影響している。長時間の移動でも、どれだけ快適に過ごせるかが非常に重要なのだ。
この世界において、魔力駆動四輪と魔力駆動戦闘機の移動スピードと、常に快適に保たれる内部環境はまさに革命的な物である。通常は地獄とされる道も、難なく突破できてしまう。
俺と優花は現在、ハジメの手によって凄まじいレベルアップを果たした魔力駆動戦闘機に乗り込んでいる。眼下はハジメたちの乗る四輪が疾駆している状態だ。
通常、砂塵の混じった風が吹き荒れる中を、装甲が比較的薄い飛行機で突破するのは利口な考えではない。しかし、そこは歩く奇想天外なアイディアの宝物庫であるハジメの手によってレベルアップした戦闘機。地球産の物とは一味違うのである。
「優花、後方に損傷はないか?」
『全く問題なし。それにしても流石は南雲って感じだよね、これ。素材に付与した重力魔法の設定を弄って、不要な物体だけが逸れるようにするって、どんな発想力してるんだろ』
「同意だな。少なくとも俺には思いつかん」
おそらく、魔法のエキスパートであるユエの協力もあって完成した逸品なのだろう。魔力を流した者が指定した方向へ戦闘機が進むのとは別に、進行の邪魔となる不純物は自動的に逸れる設定にするなんて、まず実行しようとは思えない。
その過程でどうしても形を変えなければならなくなったようで、以前の前翼型が特徴的だった流線型のフォルムからは一新され、カモメの翼を逆にしたような主翼(逆ガル翼)が特徴的な無骨なデザインに変化した。ハジメ曰く、魔王閣下と呼ばれた偉人が乗り回した爆撃機を参考にしたので、コンセプトは戦闘機より爆撃機に近いと聞いたが、俺にはイマイチ分からんかった。ミリタリー分野は詳しくないのだ。
武装はかなり変化しており、後方にも〝雷光〟が発射できるようになっていたり、後付けする形の対物ライフルがそれぞれの主翼に装備できたりと、火力面は相当に強化されていた事に関しては素直に喜んだ。対物ライフルがどう見ても大量破壊兵器〝ジェネシス〟の形をしてる事には頑なにツッコミを入れず、3つのパーツに分けられているのを見ても黙っていたけど。
見た目の大幅な変化はあれど、操作感は全く変わらない。最高速度がかなり向上しているようだが、フルスロットルにする必要が今はないので、四輪と同じぐらいのスピードでノンビリ飛行中である。
「……ん? 四輪のスピードが上がったな」
眼下を走る四輪が、不意にスピードを上げたので、俺は訝しがりながらも下を見守る。
時間はそう空ける事なく、四輪の後ろを掠めるような形で砂色の何かが大口を開けて姿を現した。俺の知る所のサンドワームと似ている。あんなに大きいのは初めて見たが。
それが2匹、3匹と数を増やしていく。どうやら、一足先にハジメはサンドワームの奇襲を察知して、一気に四輪の走行スピードを上げたらしかった。
「少し遠くにも、サンドワームの群れが見えるな。あれは……何かを囲って旋回してる。何で?」
悪食で知られているサンドワームが、獲物を前にしたと仮定して。囲いはしたが、捕食を躊躇うなど普通ではないと思うのだが……。
いや、考えるのは後回しだ。すぐさまハジメたちが危機に陥る事はまずないが、制空権を確保している現状を徹底的に利用するべきだろう。
「優花、少し揺れるぞ!」
『はいはい。後方は任せて大丈夫だから、前方を滅してね』
一気にスピードを上げ、サンドワームの後方から急襲する。
風切り音でサンドワームはこちらに気が付いたようだが、流石に雷速に超反応できる程の俊敏性はないようだ。
「っしゃ行けや〝雷光〟!」
機銃口に設置された魔法陣から放たれた数発の雷により、血飛沫を上げてサンドワームが倒れ伏した。一応、数発の〝雷光〟を受けても即死はしなかったようだが、すれ違った瞬間に後方からまた雷が発射された事で、完全に息の根が止まった。
低空は危険なので、すぐに機首を持ち上げて上に〝落ちる〟事で急上昇。その後ろをサンドワームが追従するが、口内を優花が発射した〝雷光〟によって蹂躙され、志半ばで命を散らす。
一挙2匹を仕留めた所で、ハジメの繰る四輪にも動きが出る。ドリフトでバック走に切り替えると、四輪に内蔵された兵器群を解放したのだ。
まず飛び出たのはロケット弾。鮮やかなオレンジ色の火花を散らしながら、サンドワームの口内へ飛び込んでいく。
呆気なく1匹を爆殺し、地中に逃げ込んだ個体は執拗に追跡して、地上へ引きずり出すべく容赦なしにロケットをぶち込む傍らで、顔を覗かせたのは数本の機関銃。それぞれがグリグリと銃口の向きを変えながら、サンドワームの肉体を削っていく。たまらず地中に逃げようとすれば、待ち構えていたロケット弾によって地上に炙り出され、そのまま機関銃でハチの巣。どうしようもない。
それでも機銃やロケット弾の射程外に逃れられたサンドワームは数匹いて、一目散にこの場を離れていく。まだ少し遠い距離で、相変わらず何かを囲って旋回しているサンドワームたちと合流するつもりのようだ。
逃がすつもりはない。機首をサンドワームの方へ向けながら、俺は独りごちる。
「あ、そうだ。今のうちに追加された武装は全て試しておかないと……な!」
特定の箇所に集中して魔力を流すと、左右の主翼に懸架された対物ライフルたちの銃口が、独特なチャージ音を鳴らして蒼く染まっていく。
プロペラによって蓄えられた風力エネルギーを魔力に変換し、それを対物ライフルの起動スイッチとして用いる仕組み……らしい。大量の魔力を対物ライフルに仕込まれた魔法陣に流す事で、怪物の咆哮を目覚めさせる一助となる。
「……よっしゃ行け!」
十分にチャージしたと感じた俺は、対物ライフルの発射スイッチとなるボタンをポチッと押した。
途端に、対物ライフルの銃口が強烈にスパーク。視界を一瞬だけ完全に白色で染め上げると同時に、耳を劈く轟音と共に蒼色の極光が放たれた。
1キロ程度先で2つの極光が1つに集束する様子を尻目に、俺は必死に反動によって安定性が損なわれた戦闘機の操縦を行う。最初はホバリングのような機動を取らせてその場に留まろうとしていたのだが、強すぎる反動によってどんどん滑るように後退していき、合わせて照準もブレてしまう。そこで敢えて前に戦闘機を動かす事で、照準がブレないように調節してやると、これが上手くハマった。
極光が命中したサンドワームは、鮮血すら残さず文字通り消し飛んでいる。それも、命中した箇所から融解するようにして。完全に、かつて戦ったヒュドラの極光である。軽くスライドするように横移動してやれば、顔を出していた大量のサンドワームが全て跡形もなく消滅する有り様だ。
強力すぎるとはまさにこの事である。無闇にブッパしてはいけないタイプの武装だ、完全に。
地面を見れば、白衣を着込んで倒れている男性の姿があったので、その念を俺は一層強くした。余波で消し飛んだなんて結果になったら、おそらく当面は立ち直れない。
対物ライフルの破壊力に戦慄しながらも、俺は突然の異常事態に驚き逃げ出した残りのサンドワームを殲滅しにかかる。人が倒れている以上、ハジメと似て心優しい白崎が助けに行く事は明白なので、周囲の安全を確保しなければ。
高度を一定で保ったまま、下方に向けて雷を何発も落としてやれば、地中を移動しているサンドワームがビックリして地上に顔を出す。そこに接地起爆型の爆弾をわんさか投下して一網打尽にした。
絨毯爆撃を行ってサンドワームを駆除している間に、四輪は倒れている人のとこへ辿り着いたようで、白崎が真っ先に飛び出て診察らしき事を行っている。
既に息絶えた奴が何かの魔法か超音波によって集めたのか、依然としてサンドワームは群れを成して地上のハジメたちを付け狙っている。車内に残っているであろうユエとティオが魔法で、白崎の近くにいるハジメとシアが拳で射程範囲内のサンドワームをボコっているが、やや殲滅スピードが遅い。
彼らがここで死ぬとは全く思っていないし、傷すら負わないだろうと信じてはいるが、車内には幼子のミュウが待っている。戦いを長引かせて、彼女を不安にさせてしまうのは良くないだろう。
「地上に降りるぞ優花」
『了解』
即座に俺は戦闘機から飛び降りた。優花も外に出たのを確認してから指輪へ収納しつつ、衝撃波が飛ぶ籠手を装着する。
フリーフォール中もサンドワームは容赦なくこちらに牙を向けるが、優花の操るナイフ群が接近を許さない。
着地までの数秒で、軽く6匹は滅した優花をお姫様抱っこで受け止めると、俺は流れるように頭を撫でてからラッシュを繰り出した。
面制圧に適したラッシュによって飛ばされる衝撃波は、不幸にも食らってしまったサンドワームの身体を、マシンガンにでも撃たれたかのように蜂の巣にしていく。
流石に後方は死角となっているが、そこは優花がカバーするので何も問題ない。鳴り止まない無数の風切り音こそが、優花の繰るナイフ群が奏でる死の行進曲。聞こえてる間は、間違いなく守護されていると認識して問題ないだろう。
殲滅力の高い俺と優花が援護に入った事で、サンドワームの群れは笑えるぐらいのスピードで数を減らしていく。抵抗すら許されず、片っ端からあの世へ叩き込まれる様は、もう可哀想だと思わせるぐらいだ。
「〝錬成〟!」
ハジメが錬成パンチで、数匹をまとめて奇っ怪なオブジェクトへ変える。
「ア〜タタタタァ! ですぅ!」
どこで覚えたんだその掛け声。そうツッコむ間もなく、シアは百裂蹴りで確実に1匹ずつ滅している。フォックスの百裂攻撃も、極めたらあんな感じに血の噴水を発生させられるようになるのかね?
「ケン。こっちの殲滅は終わったわよ」
「はっや。じゃあ残りは……」
俺の目に映る個体だけか。
ラッシュのスピードとパワーを1段階引き上げた。人体が食らったら粉微塵になるぐらいのパワーを持つ拳が、雨あられとサンドワームたちに突き刺さる。
蜂の巣になる方が遥かにマシって言い方は変だとは思うのだが、そう感じさせる程にサンドワームは悲惨な姿へ早変わりしていく。
最終的に、俺たちへ襲い掛かったサンドワームは、全て不毛な大地へなけなしの養分として還る事になった。
「ハジメくん。この人の様態なんだけど……」
俺たちが殲滅戦を行っている間、眉1つ動かさずに診察と応急処置を完遂した白崎が、患者の様態について話し始めた。
「毒性のある何か……おそらく液体を飲んで、魔力の暴走を引き起こしてたの」
「魔力暴走……王国で訓練してた時、本で読んだ事がある症例だね。それと、魔物肉を初めて食べた時の症状とも似ている。肉体を維持できる限界を超えた魔力が、内から圧迫して臓器や血管を破壊していく…だっけ?」
「うん。加えて今回は、体外への魔力放出が不可だった。取り敢えずの応急手当で、対象の魔力を強制的に体外へ抜き取る上級魔法を使ったから、症状は落ち着いたけど……」
依然として体内に異常を抱えたままであり、何かの拍子に再発症する可能性が高い。そう締め括った白崎は、形の整った眉をハの字にした。
空気感染する事はないと先に調べてくれていたので、俺たちがすぐさま同じ症状に悩まされる心配がないのは安心したが、このまま未だに倒れている男を放置する訳にもいかない。
ハジメ曰く、この男が着ている物は【グリューエン大砂漠】最大のオアシスである【アンカジ公国】の特徴的な服装らしい。そのアンカジに何かあったと仮定して、中継地点にする予定地がとんでもねぇ危険地帯になっていると考えると、何か対策を取った方が良いだろう。
ひとまず、男を涼しい車内に運んで目が覚めるのを待つ事にした。ずっとこのクソ暑い中で待つのは、流石の俺たちでも気が滅入る。
話を聞き出してから、これからどうするか。それをゆっくり考えようではないか。
にしたって、大砂漠で早速トラブル発生である。何かに呪われているんじゃないかと疑りたくなるぐらい、この世界に来てから常に面倒事に巻き込まれている気がするんだけど?
もし神の悪戯なら、一生恨むからな。
たとえエヒトじゃない、真の神様であっても。
もうちょっとスマブラ要素あった方が良いと思った結果がこれ。中々に酷い。
戦闘機だから、スターフォックス組の乗ってるアーウィンにジェネシス載せたみたいなイメージです。なお、通常兵装は無限MP仕様のライデイン。ドラグーン乗り回しながらジェネシスブッパのイメージでも良いと思います。
※アーティファクト紹介
✬魔力駆動戦闘機(改良型)
…ハジメ=魔王様→せや、マックくんたちが使う飛行機も魔王閣下御用達の爆撃機にしてやろう!
言うまでもなく参考にされたのはルーデル閣下が使用していたJu-87スツーカである。アンサイクロペディアが嘘をつけないと匙を投げたルーデル閣下愛用の機体と調べれば、多分すぐ出てくる。
変更点は重量制限の緩和、最高速度の増加、不可視の重力魔法バリア、武装である。
重量制限→300kgまでオーケーに。これは武装の変更が影響している。
最高速度→300kmhから450kmhに強化。新幹線より速い。
不可視の重力魔法バリア→目玉ポイント。設定された物体を逸らす。反発する磁力が常に張られているイメージ。決して万能ではなく、ハジメくんとユエさんの手であらかじめ設定された物しか逸らせないし、設定上限も3つと多くはない。しかし、強力無比に変わりはなく、初見殺しの極みとも言える。
武装→新たに後部銃座モドキが設けられ、後ろにも〝雷光〟を撃てるようになった。また、外付けの懸架武装として対物ライフル〝ジェネシス〟を主翼に1つずつ装備できる。これのせいで重量制限を大幅に引き上げる事になった。ちなみに発射には、プロペラで蓄えた風力を魔力に変換して使用する。
ちなみに、ジェネシスから放たれる極光は、ヒュドラの物を参考にユエさんが製作したオリジナル魔法です。
マックくんの新たな恋人候補
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〝初恋枠〟優奈ちゃん
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〝妹枠〟ルウちゃん
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〝大穴枠〟恵里さん
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ハジメくんの嫁候補以外のクラスメイト
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アルテナを始めとする亜人族の皆様方
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〝英雄〟に嫁ぎたい帝国住まいの方々