異世界でもお前のパンチを見せてやれ!   作:Hetzer愛好家

64 / 129
 今回は短めです。爆速戦闘機が登場した1番の理由は、今回の展開を作るためだったり。


最速で攻略してやる

「う、あ……ここ、は?」

「! 目を覚ましたんですねっ。良かったぁ……」

 

 胸を撫で下ろす白崎を、意識を取り戻した男がまるで女神でも崇めるかのような目で見やる。

 

 死の淵から何とか現世へ戻って来れた直後なので、まだハッキリとした意識ではないのか大きな要因だとは思うが。命の恩人がこんな美人だったら、まず最初に「女神かっ!?」と思ってしまうのは仕方のない事であろう。

 

 まあ、それを面白くないと感じてるのか、ハジメくんは魔王スマイルを浮かべて男を見やってるが。怖え。

 

「さて、無事に目を覚ました事ですし。何があったか、一言一句丁寧に教えてくれますか?」

「ヒエッ」

 

 独占欲を発揮してると白崎は捉えたのか、ニマニマを隠しきれない表情である。いや止めろよ。

 

 幾分かハジメの圧に怯えた男だが、俺が「気にしないで良いから話してくれ」と助け舟を出した事で、何とか口を開いてくれた。

 

「まず、助けてくれた事に礼を言う。本当にありがとう。あのまま死んでいたらと思うと……アンカジまで終わってしまうところだった。私の名は、ビィズ・フォウワード・ゼンゲン。アンカジ公国の領主ランズィ・フォウワード・ゼンゲン公の息子だ。君たちは一体何者なんだ?」

「俺は……マックだ。こいつらは全員仲間。一部〝神の使徒〟が混ざってる。あと、冒険者ランクは〝金〟だ」

「何っ!? ま、まさか〝神の使徒〟に〝金〟ランク……! おお、神よ……!」

 

 驚いた事に、ビィズと名乗った青年はとんだ大物だったらしい。アンカジはエリセンより運送される海産物の鮮度を極力落とさないまま運ぶための要所で、その海産物の産出量は北大陸の八割を占めている。つまり、北大陸における一分野の食料供給に置いて、ほぼ独占的な権限を持っているに等しいという事だ。単なる名目だけの貴族ではなく、ハイリヒ王国の中でも信頼の厚い屈指の大貴族である。

 

 そんな大物からしても、こちらの〝神の使徒〟という大層な身分であったり、冒険者ランクを告げると非常に驚いた様子であった。神に祈り出したのは、まあこの世界ならではの光景と言うべきか。

 

 話しの続きを促すと、ビィズは一気に神妙な面持ちになった。よっぽどな事情があるらしい。

 

「私も罹っていた病だが、実はここ数日程でアンカジ全土に大流行しているのだ。身体を内から破壊していき、数日以内に命を落とす。そんな恐ろしい病が……」

「魔力暴走、だったな? それが大流行してると。しかも一国全体か」

「既に医療院は飽和状態。患者を救うために必要な〝静因石〟のストックは、あっという間に底をついた。更には水もだ。病の発生源がアンカジの生活を支えるオアシスだった事もあって、我が国は深刻な水不足に陥っている。このままではライフラインが完全に止まり、病に罹っていない国民たちの命までもが危うい。直ちにハイリヒ王国へ救援申請を直接出すためにも、強権を発動できる私が護衛を連れてアンカジを出たのだが……サンドワームに襲われ、更には私までもが病を発症してこのザマだっ」

 

 ビィズは力なく、自身の膝を叩く。どうやら彼は、国民思いの人柄をしているようだ。

 

 さて、チラリとアンカジを救うために必須な物として〝静因石〟と言う石が出た。こいつの効能はシンプルで、魔力を鎮静化すると言う物だ。粉末状か液に混ぜる等して体内に取り込む事で、その効果を発揮する。

 

 この静因石だが、回収できるのがグリューエン大火山内の大迷宮と、アンカジから北方にある岩石地帯のみと、かなり貴重な物だったりする。貴重物質の消耗を強いられる病の流行と、そもそも回収難易度の高い静因石が治療に必須な事が、今回は相当に厄介なようだ。

 

 アンカジからグリューエン大火山なら、そこまで遠い場所ではないのだが、半端な冒険者では火山を囲む砂嵐すら突破できない。熟練の冒険者ならば砂嵐を突破して、大迷宮に突入して何とか回収する事は可能だが……残念な事に、頼みの綱の熟練冒険者たちは病に倒れているとの話だ。

 

 そして北方の岩石地帯だが、これは片道で1ヶ月は必要な距離にあるため、早急な対処が必要な現状においては選択肢に入らない。

 

 残された道は、ハイリヒ王国からの救援物資だけである。それも、こうしてビィズが道半ばで倒れてしまった事で、オジャンとなった。

 

「……君たちに、いや、貴殿たちにアンカジ公国領主代理として正式に依頼したい。どうか、私に力を貸して欲しい」

 

 そう言うと、ビィズは深々と頭を下げた。

 

 公国領主代理と言う立場は、そう簡単に頭を下げて良い立場ではない。それは多分、彼自身が誰よりも分かっているだろう。それでも、こうして躊躇いなく頭を下げたのは……もう、言うまでもなく誰でも理由が分かるだろう。

 

 決断を下すのは、俺かハジメだ。俺たちに全員の視線が集まる。

 

 ユエとティオはハジメの決断に従う態度。白崎とシア、そしてミュウは何とかして助けてやりたいと言う思いが目に見えて分かる。優花は、いつも通りか。

 

「パパー。たすけてあげないの?」

「……僕は、ありふれた錬成師であって万能な魔法使いではないんだけどねぇ」

 

 そうは言いつつも、優しくミュウの頭を撫でるハジメの表情を見て、俺は心を決めた。

 

「ハジメ。先にみんなを連れて、アンカジに向かってくれ。ライフラインを当面の間は確保できるだけの水と、患者たちを治療を並行して行うのは、多分お前たちの方が適任だ」

「分かった。マックくんと園部さんは……」

「大迷宮を最速で攻略してくる。静因石も取れるだけ取ってくるよ」

 

 一刻の時間も惜しい今、手分けして事に取り掛かるべきだろう。幸い人手は足りてるので、何とでもなるはずだ。

 

 優花と目配せして互いに頷き合うと、ハジメから静因石の見本を受け取り、軽くグータッチしてから外へ飛び出した。

 

 ここからは時間との戦いだ。可能なら1日以内で攻略を終えてしまいたい。

 

 こんな時には、超速飛行が可能な魔王印の戦闘機が大いに役立つ。

 

 共に乗り込むと、軽く高度を取ってから目的地の方に機首を向け、魔力を一気に流し込んだ。

 

 戦闘機は急発進し、一瞬にして最高速まで到達。砂色の空を切り裂くようにして飛翔していく。

 

「最高速で飛ばせば、ここからは……1時間もないか」

 

 紙の地図で大体の位置を把握し、到着時間の計算を終えると、俺は操縦桿を強く握って前を見る。戦闘機からすれば超低空とされる500メートル付近を飛行してるので、場合によっては目の前に出現したサンドワームを速攻で処さなければならない。感知系の技能をフルに発動させながら、戦闘機を最高速で飛ばすだけの魔力を流すのはそれなりにシンドいが、今回は致し方ないだろう。やるっきゃない。

 

 早速数100メートル先で頭を出したサンドワームを〝雷光〟で狙撃しながら、俺は一段と集中力を跳ね上げるのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 飛行開始から45分。眼前に現れたのは、巨大な渦を巻く大砂嵐である。

 

 まるで、巨大な積乱雲が渦巻く某天空の城みたいだが、俺はその大砂嵐に一切の躊躇なく戦闘機を突っ込ませた。

 

 この世の地獄と思えるような光景が目に映るが、全く気にしない。確かに徒歩移動なら大変だろうが、俺たちには関係ないからな。

 

 重力魔法のお陰で、暴風が真横から吹き荒れても一直線に戦闘機は進んでくれる。操縦ミスの心配はない。真正面を防ぐようにして姿を現す魔物だけに気を配れば、減速なしでかっ飛んで行けるのだ。

 

 無論、砂嵐によって視界は最悪だ。一寸先も目視では確認が不可能である。だが、見えずとも感知系の技能があれば位置の把握ぐらいはできる。

 

「……見える。そこっ!」

 

 某白い悪魔のように気合の声と共に引き金を引けば、少し先で不用意に顔を見せた魔物の血肉が辺りに散らばる。

 

 猛烈なスピードで飛行しているので、すぐ横を通過した際の風で散った魔物がいるのは……まあ、不幸な事故だったよと言っておこうか。

 

 数多の冒険者を阻んだ大砂嵐だが、戦闘機は1分程度でボバっと抜け出してしまった。450kmhは伊達じゃない。

 

 砂嵐を抜けた先は、さっきまでの光景が夢だったのではと錯覚するぐらいに静かである。ただ悠然と、エアーズロックにも似たグリューエン大火山が鎮座するのみだ。

 

 大迷宮の入口は頂上にあるので、飛行機を前に移動させるのを止めると、ヘリコプターのように真上へと滑らせていく。かなり急斜面となっているので、一介の冒険者程度じゃまず入口への到達すら難しそうだな……なんて呑気に考える。

 

 さて、頂上が目と鼻の先になったところで、俺と優花は全く同じタイミングで機体から飛び出した。阿吽の呼吸すぎて、お互い苦笑いだ。

 

 一瞬だけ茹だるような熱気が俺たちの肌を焼くが、すぐにハジメ作のスウェットを着込んで解決。そのまま戦闘機を回収しつつ、俺たちは頂上へ降り立った。

 

 辿り着いた無造作に乱立した大小様々な岩石で埋め尽くされた煩雑な場所だった。尖った岩肌や逆につるりとした光沢のある表面の岩もあり、奇怪なオブジェの展示場のような有様だ。砂嵐の頂上がとても近くに感じる。

 

 そんな奇怪な形の岩石群の中でも群を抜いて大きな岩石があった。歪にアーチを形作る全長10メートルぐらいの岩石である。

 

 アーチ状の岩石を怪しく思い、退かしてやればその下から大迷宮へと続く階段が出現した。ビンゴだ。

 

「行くぞ」

「うん。 ……チュッ」

「っ!?」

 

 優花からキスが来た。

 

 軽く額を押さえて頭を数回だけ振って煩悩退散。そのまま俺たちは大迷宮へ足を踏み入れるのだった。




 器用にイチャつくのはいつも通り。もはや呼吸。イチャイチャしながらも最速攻略を目指す気狂いさも、多分ハジメくんたちなら何の違和感も持たないかと思います。

マックくんの新たな恋人候補

  • 〝初恋枠〟優奈ちゃん
  • 〝妹枠〟ルウちゃん
  • 〝大穴枠〟恵里さん
  • ハジメくんの嫁候補以外のクラスメイト
  • アルテナを始めとする亜人族の皆様方
  • 〝英雄〟に嫁ぎたい帝国住まいの方々
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。