異世界でもお前のパンチを見せてやれ!   作:Hetzer愛好家

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 後半、少しだけ視点が変わります。ご容赦ください。


俺にとっては天啓だ

 グリューエン大火山の内部は、想像よりも遥かにとんでもない場所だった。

 

 まず、マグマが宙を流れている。重力が全く仕事をしていない様子は、ライセン大迷宮のブロック群を思い出すが、その時の光景とは比にならない衝撃が俺にはあった。空中をうねりながら真っ赤に赤熱化したマグマが流れていく様は、まるで巨大な龍が飛び交っているようだ。

 

 また、当然、通路や広間のいたるところにマグマが流れており、迷宮に挑む者は地面のマグマと、頭上のマグマの両方に注意する必要があった。

 

 しかも、何の予兆もなく壁から時折マグマが噴き出るオマケ付き。天然のブービートラップである。

 

 幸い、俺たちには〝熱源感知〟の技能があるので、予兆を目視で確認するより遥かに高精度で、かつ高速でマグマの動きを察知できる。この技能がなければ、大幅に攻略スピードは低下していただろう。

 

 ちなみにサウナのような暑さが常に襲ってくるのもこの大迷宮の特徴なのだが……気温調節機能があるスウェットが大活躍しているので、熱で思考力が奪われる事態には陥っていない。

 

 記録上では、これまで挑戦した冒険者が生きて帰れたのは7階層まで。そこまであっという間に下っていく。途中、小さな静因石がチラホラと見られたが、サンプル兼見本として極少量回収した物以外は無視している。

 

 チマチマ取っても意味がない。開拓されている採掘場よりも、手つかずの穴場で一気に回収してしまった方が、急ぎを要する今回においては得策だ。

 

 さて、全く躊躇う事なく8階層に繋がる階段を駆け下りていき、その先もなる早で走破しようと考えていた俺だが。この極限環境で、基本的にはまず見られないであろう人影が目に飛び込んだので、思わず足を止めてしまった。

 

「あれはっ……」

 

 知っている人影だから、尚の事驚いた。何故、お前がここに居るんだ。

 

 そこまで大きい声を出したつもりはなかったが、人の声など聞こえる環境ではない大迷宮においては、異質の音として1発で捉えられるらしい。知っている人影は、ゆっくりこちらを振り返った。

 

「……何故、マック坊やたちが」

「何で、サンドマンがここに!?」

 

 互いの声が重なった。考える事は、お互いに全く同じだったのだろう。

 

 俺の目には、かつて帝国で拳を交えたミスター・サンドマンの姿があった。

 

 流石のサンドマンも、俺と優花が姿を現した事には酷く驚いているらしい。彼らしくない、目を見開いた表情を浮かべている。

 

 しかし、先に冷静さを取り戻したのはサンドマンであった。すぐに目を細めて口を開く。

 

「ここでマック坊やたちを始末する事になるとはな」

「っ、簡単に始末されてやる程に甘くはねえよ。サンドマン、お前は……確かご主人の名はフリードだったか。そいつに命じられて、グリューエン大火山内にある大迷宮の調査でもしてるのか」

「内部の構造、試練の内容。そしてあわよくば、俺の神代魔法の習得。こんなところだ」

「……冥土の土産に教えてくれるって奴かい? あいにくだが、俺はそう簡単に死ねる身体じゃないぞ」

「無論、理解はしている。だが、周囲がマグマの状況では、お前がどれだけ頑丈であっても関係ない。突き落とせば良いだけの話」

 

 激突は避けられないか。ここで時間を浪費する訳にもいかんので、最速で無力化するしかない。

 

 長らく切っていた〝身体強化〟の技能を発動させ、確実にサンドマンの意識を刈り取ろうと構えた俺は。グルリと真後ろを向いたサンドマンと全く同じタイミングで、スマッシュストレートの衝撃波を放った。

 

 拳を振り抜くとほぼ同時に、俺の目の前が紅蓮色の炎で染まる。何者かが、やや遠くから火炎放射を仕掛けてきたようだ。

 

 サンドマンも俺が持っている籠手と似たタイプの物を装備しているようで、奴の拳からも強烈な衝撃波が飛ぶ。

 

 バケモノのような衝撃波が重なり、局地的な暴風を発生させるまでに至った事で、火炎放射は俺たちに届く事なく露散した。

 

 俺たちを襲った下手人の姿は、火炎放射が消えて少ししてから姿を現した。マグマによって身体を構成している……いや、マグマアーマーか。マグマを身に纏っている牛が、下手人の正体である。

 

 マグマ牛は、自身の固有魔法であろう火炎砲撃をあっさり無効化されたことに腹を立てたのか、足元のマグマをドバッ! ドバッ! と足踏みで飛び散らせながら、突進の構えを取っている。

 

 こっちに来るならありがたい。迎撃は俺も優花も得意分野である。

 

 と、ここで俺に天啓が舞い降りた。

 

 猪突猛進と言った様子で突進して来たマグマ牛を、視認が極端に難しい左の打ち下ろしで難なく迎え撃ったサンドマンの前に出て、バウンドしたマグマ牛の頭部にホールドしたスマッシュストレートをブチ込んで粉砕してから、俺は口を開く。

 

「提案だ、サンドマン。大迷宮攻略の間だけ、停戦協定を結ばねえか?」

「ほう。寝言は寝て言って欲しいのだが」

「寝言にしても、妄言にしても、俺からしたら天啓レベルの提案なんだがな。それに、お前にとっても大きなメリットがある」

「……言ってみろ」

「最速での攻略を目指す俺たちと協力する事で、お前はすぐに神代魔法を手に入れられるし、いち早く大迷宮の情報をフリードとやらに渡せる。力を欲してる奴は、大迷宮の情報なら一刻も早く手に入れたいだろうさ。そのまま攻略に乗り出すだろうし」

 

 ハジメたちとフリードがバッティングしてしまう可能性はあるが、彼らなら撃退できると信じての提案である。

 

「お前1人でも、時間をかければ大迷宮の攻略は可能だろうな。だが、どれだけ時間を使う? 魔人族と人間族との関係が見るからに悪化してきていて、いつ戦争が起こるか分からない現状で。魔人族からすれば、今すぐにでも数の利を覆せる可能性の高い、強力な神代魔法の使い手を欲してると思うが」

「むう……確かに一理はある。だが、お前は人間族だろう。わざわざ魔人族が有利になる条件を出す必要性はないと思うのだが」

「人間族の味方って訳じゃないってのがまず1つ。それと、俺個人を神代魔法の使い手が狙ってきたとしても、勝てる自信があるってのが1つだ」

 

 基本的には日本へ帰る事優先だから、仮に人間族と魔人族の間で戦争が起こったとしても、俺はどちらの肩を持つつもりは今のところない。

 

 襲われたら相応に反撃するだろうし、ハッキリ仲間だと認識している人が窮地に陥っている時は、相手が何だろうと全力で戦うだろうけど。何ともまあ、自分勝手だなとは思う。

 

 勇者(笑)が俺の物言いを聞いたら、怒髪天を衝きそうだな。

 

「で、どうする? 俺からすれば、ここでお前と争う理由はないから、提案を断るならすぐにでも攻略に戻るが。急いでるし」

 

 攻略スピードを上げるって意味でも、サンドマンの力を借りられるなら相当心強いんだけど。さあ、どう出る?

 

「………攻略中だけだぞ。神代魔法を手に入れ、大迷宮の外に出たら、俺とお前たちは敵対関係だ」

「敵、ね。まあ好きにすりゃ良いさ。よし、そうと決まれば早速行くぞ」

 

 この間、ナイフを操ってシレッと静因石を回収してくれていた優花に礼を言ってから、俺は先行して走り出すのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 サンドマンside

 

 相変わらず、不思議な人間だ。そう思いながら、俺はマック坊やの後ろを追従する。

 

 俺は、フリード様の手によって生み出された人型の魔物と表するべき存在だ。攫ったであろう適当な人間族の胎児に御業を行使し、様々な魔物の強い部分のみを取り出しては定着させ、最終的に成人ぐらいの知恵と肉体に急成長させられて生まれたと聞いている。

 

 素材が人間族の胎児だからなのか。俺は、他の魔人族よりも人間族に対する悪感情が薄い。酷い者だと人間族と同じ空気を吸ってるだけで嘔吐する魔人族まで居るのだが、その中で俺の人間族に対する認識と言うのは、かなり異質な物であった。

 

 とは言え、あくまでも俺はフリード様の所有物。悪感情が薄いとは言っても、フリード様に命じられたら人間族を殺す事に躊躇はない。創造主のフリード様に逆らう事など、まず有り得ないと脳に刻み込まれている。

 

 そのはず、であった。

 

 何の冗談なのか。全く笑えない部類だろう。だが、俺はこうして人間族と肩を並べて大迷宮攻略に乗り出そうとしている。

 

 以前、帝国でマック坊やに文字通り圧倒されたフリード様は、発見次第すぐに殺せと俺には命じていた。恋人である女の方も、邪魔するなら殺せとも。

 

 何故その命令に逆らい、大迷宮内だけの約束とは言え。いや、そもそも約束を交わす事自体がおかしい。

 

 分からない。分からない。

 

 そう言えば、帝国でマック坊やに負けた時も。俺は何故か、嬉しく思ったのも謎のままだ。

 

 普通、負けたら悔しくて仕方がないはずである。フリード様のように、特定の対象を強く憎む事もおかしな話ではない。おかしいのは、多分俺の方だろう。

 

 マック坊やに出会ってから、分からない事知らない事だらけだな。

 

「教えてくれるのか、坊や……」

 

 誰ともなく呟いた俺の言葉。それは、誰の耳にも入る事なく消えるはずだった。

 

「聞いてみたら? あの人なら、拳に何かを乗せて教えてくれるかもしれない」

 

 俺は声の主を思わず見る。

 

 女は、俺を見ず縦横無尽にナイフを四方八方へ当然のように飛ばしながら、言葉を続けた。

 

「少なくとも彼は、アンタの事を嫌いじゃないよ。聞いたら教えてくれると思う」

「……何故だ。何故、あの男は異物を簡単に受け入れられる」

「さあ? 恋人の私でも分からない。けど、アンタを気に入ってるのは知ってる。その理由も、何となくだけど想像はできるよ」

 

 大迷宮に来て初めて、女は俺の事を真っ直ぐ見た。

 

 こいつ、こんなに強い目を持つ女だったのか。

 

「彼は。ケンは、自分に追いつく可能性がある強い人が好きなの。自身がとんでもない次元の強さになってしまったからこそ、なんだろうけど」

「強い、人……」

「まあ、取り敢えず拳で語り合おうとでも言ってみたら?」

 

 それっきり、女は俺から目線を外した。

 

 拳で語り合おう、か。

 

 俺にも、拳で語れるだけの強さがあるのだろうか?




 変成魔法ってどこまでやれる物なんでしょうか。有機物への干渉と語られてはいますが、果たして人型の魔物は作れるのか。一応、対局の位置にある生成魔法を扱うオスカーが人体錬成してるので、ワンチャンはありそうですけどね。

 サンドマンのステータスは現在オール7000ぐらい。魔物らしく魔力を操れるし、無詠唱で魔法を使う事も可能です。色々強化していけば、現状でも10000を超えるステータスで戦えます。ぶっちゃけ勇者より強い。

マックくんの新たな恋人候補

  • 〝初恋枠〟優奈ちゃん
  • 〝妹枠〟ルウちゃん
  • 〝大穴枠〟恵里さん
  • ハジメくんの嫁候補以外のクラスメイト
  • アルテナを始めとする亜人族の皆様方
  • 〝英雄〟に嫁ぎたい帝国住まいの方々
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