異世界でもお前のパンチを見せてやれ! 作:Hetzer愛好家
翌朝。少し早い時間に目が覚めた俺は、まだ寝ているハジメを起こさぬようにして外に出た。
美しい朝日が目を焼く。空気も美味い。
「く、ああ。清々しい、とても良い朝だっ」
軽く伸びて背筋を解す。
世界が変わっても、朝日の美しさは相変わらずか。
そう思いながら、俺は懐のステータスプレートを取り出す。
オルクス大迷宮に出発する前に、現在の自身のステータスを確認しておきたかったのだ。
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真久野ケン 17歳 男 レベル:10
天職:拳士
筋力:250
体力:130
耐性:280
敏捷:290
魔力:15
魔耐:15
技能:格闘術[+集束拳打][+浸透破壊]・物理耐性・言語理解
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魔法関連が壊滅的に低いのだが、それ以外のステータスは満遍なく伸びている。
ちなみに覚えている限りで、全体で総合的なステータスを見ると、俺のはクラスメイト内で2番目か3番目ぐらいに高い。1番目は天之河だ。
俺にはまるでない魔法に対する適性もあるのだから、そりゃ当然とも言えるか。
まあ、余計な鍛錬を行わずに、ただ拳の研鑽だけすれば良い点は非常に楽である。
それに、だ。ステータスの数値はあくまで参考程度にしかならない。実戦で真に重要なのは、いかに恐れる事なく渦中へ飛び込めるか。これに尽きるのだ。
殺し合いなんぞした事はない。が、それに近しい事はやっていた。他の人たちと比べれば、俺は幾分かアドバンテージがある。
「やるしかねえな。この拳で……!」
何となく朝日に向かって拳を突き出す。
キラリと朝日で輝いた俺の拳は、いつも通り鉄塊のような形をしていた。
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時間にして午前10時頃。俺たちは、騎士団に連れられてオルクス大迷宮の正面入口のある広場に集まった。
まるで博物館の入場ゲートのようなしっかりした入口があり、受付窓口まであった。制服を着たお姉さんが笑顔で迷宮への出入りをチェックしている。何だかテーマパークに来たみたいだ。テンション上がる……かな?
周りには多くの露店が展開している。人の出入りが多いこの場所は、商売するには非常に都合の良い場所らしい。
だが、そんな入口付近の騒がしさとは裏腹に。大迷宮内は、真逆の静寂に包まれていた。
縦横5メートル以上ある通路は明かりもないのに薄ぼんやり発光しており、松明や明かりの魔法具がなくてもある程度視認が可能だ。緑光石という特殊な鉱物が多数埋まっているらしく、【オルクス大迷宮】は、この巨大な緑光石の鉱脈を掘って出来ているらしい。
そのまま暫く歩くと、不意にドーム状の大きな広間に出た。
何やら気配を感じて立ち止まる。それとほぼ同時だった。
壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出てきたのだ。
思わず前に出てしまい、誰よりも先行する形になってしまう。それを見て、メルド団長は素早く指示を飛ばした。
「よし、ケンとハジメがそのまま前に出ろ! 後衛は香織、鈴、恵里で行く! 交代で前に出てもらうからな。今のうちに準備しておけ! あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、大した敵じゃない。冷静に行け!」
にわかにザワつくクラスメイトたち。王都郊外の模擬戦の結果を知らぬ者は、俺はともかくハジメ? と言いたそうな雰囲気である。
ハジメが最前線に出る事に対し、何の疑いも持たずにいるのは俺と白崎、後は園部ぐらいか。
クラスメイトの声をまるっと無視して、ハジメは俺の隣に立つ。
「初の実戦、だね」
「ああ。初の実戦だ」
少し声が震えているハジメ。
大丈夫か。そう問おうとしたが、止めた。ハジメの身に纏う空気が変化したからだ。
「大丈夫さ。真久野くんよりはずっと怖くないから」
「……おいおい。そいつは褒めてるのか?」
まあ、こんな軽口叩けるなら余裕か。
そう思い、俺は両拳を顔の前に構えてスタートを切った。
強烈なまでの前傾姿勢。軽くしゃがんだぐらいの頭の高さで、俺は真っ直ぐ突っ込む。
それに合わせて、ラットマンと呼ばれた魔物たちも結構な速度で飛びかかってきた。
灰色の体毛に赤黒い目が不気味に光る。ラットマンという名称に相応しく外見はねずみっぽいが……二足歩行で上半身がムキムキだった。八つに割れた腹筋と膨れあがった胸筋の部分だけ毛がない。まるで見せびらかすように。
すっげぇキモいデザインだな!
……少し遅れて、ハジメも普通に走って前に出てきた。
最速で前線に到達した俺は、左ジャブで1番手前のラットマンの動きを止める。そして矢継ぎ早に全力の右ストレートを繰り出し、ラットマンをぶっ飛ばす事で後方の奴らも纏めて粉砕した。
発生4Fのワン・ツーパンチ。こいつを実現できてしまうのだから、異世界って凄い。
ぶっ飛ばされた事で生まれた隙間。そこを縫うようにして、ハジメも前に出る。
ハジメはセオリー通りに数発左のジャブを放って牽制。1体には命中して怯み、後退り。拳の命中を嫌って立ち止まったラットマンは、すかさず俺が横からハンマーパンチを連打して進行ついでに数匹叩き潰す。
その光景を見て怯えたラットマンをハジメは見逃さず、お得意となりつつある左ジャブからの右フックで1体を撃破した。
更にパンチの勢いを利用して地面に触れたハジメは、朗々と詠唱して己の武器を発揮する。
「〝錬成〟!」
途端に、地面から踏み台にはうってつけな足場がせり出す。
それを踏み台に、俺は更に奥へと切り込んだ。
左足で踏み込み、ハンドボールを投げるようにして全身全霊右のジョルトブロー。対空しようと飛び出た数匹のラットマンと、真下にいた奴を纏めて俺は叩き潰した。
一瞬生まれる空白部分。そこで俺は、数多のスパー相手を昏倒させてきたK.O.ラッシュを繰り出す。
「オラオラオラオラァ!」
千にも万にも見える拳の雨は、次々とラットマンの顔面を、体表を奇妙なオブジェクトへと変えていく。
ハジメも負けていない。俺の死角となる背中側に立つラットマンを、次から次へと殴り倒していったのだ。
「〝錬成〟! 〝錬成〟! 〝錬成ぇ〟!」
無論、秘策の錬成パンチを使用して。
殴られたラットマンは、体内から歪な形の刃を生やして息絶えていた。
ちなみに刃を生やして息絶えたラットマンは、そのまま殴り飛ばされる事で凶悪な飛び道具と化していた。ハジメくんマジでやる事がエゲツない。
気がつけば、後衛組の攻撃が始まる前に、ラットマンは全滅していた。
途中から詠唱の声は聞こえなかったので、こちらの戦いぶりに思考が固まってしまったのだろう。
「ハジメ、怪我はしてないか?」
「はあ、はあ……ふう。大丈夫、無傷だよ。真久野くんは……まあ、怪我してないよね」
「怯えるボクサー相手に怪我もクソもないさ。ま、何はともあれやったな」
ハジメと拳を突き合せる。
最上階の、最弱モンスター相手。だがしかし、勝利は勝利だ。
まだ拳に、ラットマンを潰した時の感触が残っているのだが。取り敢えず、勝てて良かった。
「おいおい、本当に凄いな2人共! ケンはともかく、ハジメまでこんなに成長しやがって! 模擬戦の結果は聞いていたが、本当に強くなったな!」
「い、いえいえ。真久野くんのお陰ですよ」
「ハジメが努力した結果でもあるな」
ワシワシと髪の毛を撫でてくるメルド団長。少し痛いが、悪い気は全くしない。
「にしても、錬成パンチ中々に凶悪だなぁ」
「取り敢えず通用しそうで良かったよ。あ、でも魔力管理はしっかりしないとね。僕、保有魔力の量が雀の涙ぐらいしかないし……」
「ま、いざとなれば俺のを譲渡するわ。俺も雀の涙程度しか持ってないけど」
「はは、その時になったら頼むよ」
クラスメイトから飛ぶ様々な視線。それを無視して、俺たちは隊列の方に戻るのだった。
マック使いなら1度は通るDA擦り。3回ぐらいまでは普通に擦る。魔境帯に到達しても擦る時は擦る。
※マックくんの技紹介
★K.O.ラッシュ
…スマブラで言う百裂攻撃。ボクシング界隈だとフィストレインとかマシンガンブローとか殺人ラッシュとも言われる。締めに強烈なロングアッパーをぶち込む事も。
発生1Fの左ジャブから派生する“準”必殺ブロー。1発の破壊力は当然低いが、そこはアホみたいなスピードと技術でカバーしているのがマックくん。多くのスパー相手や同体重のボクサーたちを一瞬でアザだらけにしてトラウマを植え付けた。こんだけヤバい技なのに準必殺ブローである。他の必殺ブローが規格外だから仕方ないね!
特徴として、ラッシュを仕掛けながら前進が可能。オラオラしながら前に進めるため、制圧力は無敵のスタープラチナ並みに高い。マックくんの機動力で放たれるスタープラチナのオラオララッシュに君は耐えられるか?(無理難題)
余談だが、どこかの脳筋空手部が装着しているアーティファクトをマックくんが身につけてラッシュを放つと、それこそマシンガン並みの衝撃波の壁が敵を目掛けて飛来する。スマブラのリトルマックが飛び道具を持ってはいけない理由ここにあり。
マックくんの新たな恋人候補
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〝初恋枠〟優奈ちゃん
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〝妹枠〟ルウちゃん
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〝大穴枠〟恵里さん
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ハジメくんの嫁候補以外のクラスメイト
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アルテナを始めとする亜人族の皆様方
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〝英雄〟に嫁ぎたい帝国住まいの方々