異世界でもお前のパンチを見せてやれ! 作:Hetzer愛好家
折角タグにスマブラSPがあるんだから、もっとスマブラしなきゃ。
「……これで最後か。長かったような、短いような」
宮殿の入り口に立った俺は、誰ともなくそう口にした。
あれから、随分と精神をすり減らしながらではあるが、何とか保護した魂を見送る事ができた。どの別れも心に来る物があり、流せる涙がそろそろ尽きてしまいそうである。
最愛の妻や子、恋人、兄弟姉妹との別れが、途轍もなく心を抉られる物だったのは当然であるが、個人的には親友との別れが最もメンタルを削られた物だったりする。
交わす言葉は短く。しかし、様々な思いを込めて互いの拳を突き合わせて。頷き合って、保護した魂は穏やかな表情で消えていった。俺、心が通じ合っている的な情景を見せられるとすぐに泣いてしまいそうになるんだよ。ハジメとの別れはこんな感じになるのかと想像してしまったり、優花や優奈の事をどうしても考えてしまうから。
だが、それもここで終わりだ。
保護した魂はあと数人分。その全てが、最後は領主であるランズィに礼を言いたいと俺に頼んできたのである。
俺はまだ、そこまで深くランズィと関わりを持っている訳ではない。だが、そんな自分ですらも心から信頼されて、そして愛されている領主なのだと分かる。
顔パスで宮殿内に入り、ランズィの執務室に案内された俺は、軽く深呼吸して優花の頭を撫でてから、ノックして戸を開けた。
「む、マック殿か。鎮魂行脚はひと段落したのかね?」
「ここで最後だ。領主殿に、最後に礼を言いたいと頼んできた魂を連れてきたよ」
驚くランズィの手を取り、早速魔法を行使する。
身体の中から次々と魂が抜けていき、ランズィの前へ姿を現した。同時に、常に感じていた胸付近の圧迫感が完全に消え去った。魂を保護したり、スピリットのように取り憑かせていると、どうしても胸付近に強い圧迫感が出るのだが、今回は保護した量が多かったので結構苦しかった。
ぶっちゃけ心臓病だった頃を思い出すレベルだったり。割とトラウマをほじ繰り返されてるのは内緒だ。
涙ながら口々に「ありがとう」と告げる魂と、それを見てやはり涙を流しながら頷くランズィを、俺は黙って見守る。
本当に愛されているし、国民を心から愛している理想の領主だ。救えなかった事に対し、何度も謝ろうとするランズィをすぐに止め、逆に「救おうとしてくれてありがとう」とノータイムで皆が返している。ここまで国民に愛されている領主を、俺は見た事がない。
日本、アメリカ、韓国。どの国であっても、トップを痛烈に批判し、更には揚げ足を取る層というのは大なり小なり存在していたのを知っているからこそ、ここまで愛される国のトップは稀有に感じるのである。
さて、しばらくランズィと話していた魂たちだが、やがてその姿が徐々に薄れてきた。そろそろ時間のようだ。
この場にいる誰もがそれを理解しているようで、実に穏やかな表情を浮かべる魂たちと、大粒の涙を流すランズィ。表情は違えど、心に去来する感情はおそらく同じだろう。
――領主様。どうかこれからも、民をお守りくださいね
――目に見えなくとも、私たちは必ず見守っていますから
――アンカジも、領主様も。いつまでも健やかで輝かしい歴史を刻めますように、心よりお祈り申し上げます
いよいよ目を細めても姿の視認が難しくなってきた。ランズィは言葉こそ返せないぐらいに涙を流してはいるが、大きく何度も頷いて了承の意を見せている。それを見て、魂たちが浮かべる表情が更に柔らかくなった事に気がついたのは、俺と優花ぐらいか。
完全に見えなくなってしまう直前。俺の耳は、確かに魂たちからの声を捉えた。
――ありがとう
ランズィから手を離し、目を伏せる。もう、俺の力でも視認する事はできないから。
恨み言の1つや2つ、吐かれても良かったのに。どの魂も、俺に呪言をぶつけてくる事はなかった。
いっそ、手酷く罵ってくれた方が楽になれる。そう思ってしまうぐらいに。今回ばかりは、彼らの優しさが毒にも薬にもなっているのだ。
捻くれている自分の気質を自嘲するべきなのか。それとも、強く責めるべきなのか。俺には、もう分からない。
「……マック殿。優花殿。そして、今は不在だがハジメ殿、香織殿、ユエ殿、シア殿、ティオ殿。最後に、ミュウ殿も。貴殿らから受けた多大なる恩を、私は決して忘れる事はないだろう。どうか、アンカジを代表して礼を言わせてくれ。我が国は、貴殿らによって救われた」
「たとえ、数は少なくとも救えなかった人がいても。アンタは、礼を言ってくれるのか?」
「当然だ。アンカジ公国の存亡の危機を、貴公らの尽力によって最小限の被害で終息させる事ができたと、領主である私は判断する。無論、〝必要な犠牲〟と言う物は存在しないし、私自身は誰1人として愛する国民を死なせたくはないがね。未曾有の流行病ともなれば。それも、国の滅亡の恐れまである代物ともなれば。どうしても、命を落とす国民をゼロにする事は難しい。不可能とまで言い切ってしまっても良いだろう」
「……そうかい。ゼロか100かで考えてしまっていたから、思わず聞いてしまったが、うん。アンタがそう言ってくれるなら、救えなかったと自分を責めすぎない努力をするよ」
ひと思いに暴言で責められたい気持ちと、誰かに「責めるつもりはない」と明確な形で許されたい気持ち。双方が心の中で大きな波となり、せめぎ合っては精神を削っていく。
多分、分かりやすく浮かない表情を浮かべているのだろう。優花にはそっと手を握られるし、ランズィからは苦笑をされるし。昔から素直な表情筋を、今日ばかりは恨む。
そのままの状態で少しの間ランズィと談話してから、俺は優花と手を繋いだ状態で宮殿を去った。時刻は既に昼過ぎ。高々と昇って地上を照らす太陽を眩しく思いながら、少し遅めの昼食を取るついでに託児所へ預けているミュウを迎えに行こうとした。その時である。
バリィン!
何かが割れるような音が、大きく鳴り響いた。
音の感じは、食器を落として割ってしまった時の物と類似している。しかし、明らかにそれではないという事も同時に察せた。音は地面からではなく、上空から聞こえてきたのだ。空で食器が割れてたまるか。
音がした方向をすぐさま向く。
「何だ、ありゃ……」
「空が割れている!?」
優花の言葉通り、俺たちの目線の先には割れたようにしか見えない空があった。
いや、空と言うには低すぎるかもしれない。少し観察すると、アンカジ公国を覆うドーム状のバリアの内側に、まるで叩き割られたかのような〝割れた空間〟が存在しているのが分かった。
毒々しい鮮血にも似た赤色の空間が、その奥には広がっている。どう見てもマトモではない。
……いや、それだけじゃない。その空間に、何かが潜んでいる!
見た目は獰猛な亀と言ったところか。爬虫類的な瞳孔に加え、無数のトゲが生え揃った甲羅のような物を背負っている。禍々しくネジ曲がった角や、どう見ても殺意しか感じない程に鋭い爪と牙まで生えており、亀と認識するより先に〝怪獣〟と思わせる風貌だ。
俺はこの怪獣の事を、何故だか良く知っている。
理由は単純。日本に住んでいた頃、スマブラでその姿を見た事があるからだ。
「ギガクッパだと!?」
そう、ギガクッパである。
クッパの最後の切りふだとして見る機会が多いだろうか。人によっては、灯火の星であったり過去作のボス戦なんかで目にする事もあるだろう。
いや、その情報はぶっちゃけ何だって良い、今この状況においては。
何故ギガクッパがこの世界に突然姿を現したのかも気になる。だが、それ以上に気にすべき点は。
「このままじゃ、周辺の町に大きな被害が出る……!」
どう見積もっても、ギガクッパは10メートル近くある上に、体格もガッシリしている。縦にも横にも広い。このまま奴が、あの割れ目から飛び出してきて、何も対策を取らずに着地させたらどうなるか。考えたくもない。
「優花、あの怪獣を町に影響なく着地させる事は可能か?」
「重力魔法を使えば何とかなるかもしれない。それとは同時進行で、ランズィさんに国民の速やかな避難を呼びかけてもらわないとよね」
「ああ。幸いな事に宮殿は近いから、俺がダッシュでランズィに伝えてくる。それまでこの場を頼むぞ」
「分かった。急いでね」
俺が走り出したのとほぼ同時に、一際大きな破裂音が鳴り響き、耳を劈く咆哮が聞こえてきた。どうやら、ギガクッパでも難なく通れる大きさの空間の割れ目が生まれたようだ。
領主館の扉を開け放ち、階段を駆け上る最中に窓からチラリと見えた光景は、完全にあの赤色の空間から飛び出したギガクッパと、それを抑えるようにして飛来する無数のナイフ群である。
「何とか頑張ってくれ、優花……!」
恋人と町の人の無事を祈りながら、俺は戸をブチ破るぐらいの勢いで執務室へ飛び込むのだった。
空間を割って登場する怪獣ってのは、ウルトラマンAの超獣の出現と被る部分がありますね。某ハンドも空間を割る芸当ができるので、あまり違和感は起こっていない……と信じたいです。
マックくんの新たな恋人候補
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