異世界でもお前のパンチを見せてやれ! 作:Hetzer愛好家
導きの光が指し示している場所は、海底の岩壁地帯だった。無数の歪な岩壁が山脈のように連なっている。俺たちの乗る潜水艇が近寄りペンダントの光が海底の岩石の1点に当たると、ゴゴゴゴッ! と音を響かせて地震のような震動が発生し始めた。
その音と震動は、岩壁が動き出したことが原因だ。岩壁の一部が真っ二つに裂け、扉のように左右に開き出したのである。その奥には冥界に誘うかのような暗い道が続いていた。
「なるほど、海底遺跡と聞いていたからこんな感じで出現するとは思っていたが……ヒントがなければ絶対に見つけられんな」
「だね。こればかりはミレディに感謝だけど……うん、胸の奥底がムカムカする。完全に彼女の人柄だね」
アイツには何だか素直に感謝したくない。そんな表情がハジメの顔に張り付いている。まあ、気持ちは痛いぐらい分かるけどな。
それにしても、相変わらずのチャレンジ難易度である。並の輩では、この大迷宮に足を踏み入れる事すら叶わないだろう。
そもそもの前提として、メルジーネ海底遺跡に挑戦するためには、グリューエン大火山の大迷宮を攻略しなければならないので、その時点で並の輩である訳がないのだが。
その後も潜水艇は、突如襲ってきた魔物であったり、とんでもない激流を物ともせず突き進んでいく。一瞬だけ強烈な衝撃が襲ってきたが、すぐさまハジメが操縦して立て直した。どうやら、こんな感じの激流を経験するのは2度目らしい。
「大火山で、ちょっとね。けど、2度も同じ体験をするのは御免だよ。だから対策済みだ」
相当苦労したみたいである。
――先輩。ここ、円環状の洞窟になってるみたい。このままだと同じ場所を延々と回る事になりそう。星の形をした紋章……かな。それが刻まれた岩壁が5箇所あるから、ちょっと調べてみると良いかも
と、ここで優奈がそんな事を俺に伝えてきた。
どうやって外の状況を確認したのかは分からないが、まあ霊体だから何とかなるのかもしれない。そう考える事で疑念を封じ込め、俺はハジメたちにこの事をそのまま伝える。
「星の形をした紋章らしき物ある岩壁が5箇所。多分メルジーネの紋章だよね」
「ああ。更にランタンにまだ残っている光があると考えると、答えは自ずと見えてくる」
ハジメが潜水艇を操って岩壁に近寄ると、俺がフロントガラス越しにペンダントを翳す。すると、案の定ペンダントが反応し、ランタンから光が一直線に伸びる。そして、その光が紋章に当たると、紋章が一気に輝きだした。
ランタンを確認すると、さっきより溜まっていた光が減っているのが分かった。どうやら間違いないようだ。
互いに頷き合うと、無駄のないルートで岩壁に近寄ってはペンダントを翳すを繰り返す。答えが分かってしまえば話は早い。
5箇所の岩壁に刻まれた紋章全てに光を注ぎ終わると、RPGの謎解きが完了した時のように、洞窟の壁の一部が縦真っ二つに割れた。
そのまま先へ進むと、真下へ通ずる水路があったので、その方向に潜水艇をハジメが移動させる。すると、何の前触れもなく強烈な浮遊感が船体を包んだ。
いつものように爆速で優花をお姫様抱っこすると同時に、股間のフワッと感に耐える。まるでジェットコースターにでも乗っているみたいだ。
直後、ズシンッ! という凄まじい衝撃と共に潜水艇が地面に叩きつけられた。
「ぬ、う……!」
全身に力を込めて衝撃を吸収し、何とか倒れずにやり過ごす。人をお姫様抱っこしたままだと、普段の倍以上は踏ん張らないとなのだが、取り敢えず何とかなった。
ちなみに背中には優奈がしがみついている。霊体だからか重さが全くないのが不思議な感覚である。
「流石の足腰ね」
「自慢の足腰だからな」
俺たちの様子を見た他の女性陣が、さり気なくハジメにしがみついた状態で叩きつけられた事から目を逸らすように外を確認する。美女美少女に押し潰されてるハジメは少し面白かったが、笑ったらいけない気がした。彼は彼で苦労してるからな……。
外は、先程とは異なり地上のようだ。もう海中ではないようで、水の気配は微塵も感じない。
一足先に優花と共に外へ出る。水は足元にも見当たらない。ここは洞窟のような場所となっているようだ。何故か天井にはドーム状に海水のような物が広がっていたが。
「海底遺跡というより洞窟探検になりそうだな、これ」
「天井を魚が泳いでたら水族館ね。このまま水族館デートと洒落込むつもりで攻略する?」
「良いねぇ。それにしても水族館か。ペンギン辺りだと結構な数の人を呼び込めそうだな」
ガラス等は見当たらないに、全く水滴が落ちてこない不思議な光景である。
全員が潜水艇から出てきたのを確認すると、俺は優花と並んで前へ進む……直前に、俺がクロスアームブロックで〝聖絶〟を展開。優花が〝天灼〟を放つ小さな魔剣を飛ばす。
ほんの少しだけ遅れて、頭上や前方から切断力の高そうな水のレーザーや、手裏剣のようにかっ飛んできたヒトデ型の魔物が大量に襲ってきた。
だが、こちらに動揺は一切ない。冗談を飛ばす余裕を常に保ちながらも、敵を即座に探知できるだけの気配読みも並行して行ってる。相手方からすれば奇襲のつもりだっただろうが、俺たちには通じない。
ティオが頭上に向かって、水のレーザーを相殺しながらブレスを飛ばす。すると、ポロポロとフジツボのような魔物が零れ落ちてきた。生理的嫌悪を覚える魔物であるが、地面に落ちるよりも早く優花の繰る魔剣が〝天灼〟を放って消し飛ばした。ナイスである。
手裏剣ヒトデも、障壁に突き刺さったまま動けないでいる。頭上から降り注いでいた水のレーザーが完全に止んだタイミングで、俺は障壁を解いてバリアバーストを行って弾き飛ばした。
一旦逃げようと全速力で後退するヒトデ型の魔物たち。しかし、ハジメと白崎が凄まじいスピードで早撃ちと高速装填を繰り返した事で、それすら叶わず息絶えていった。
その後も魔物が次々と襲いかかってきたが、尽く殲滅していく。
「……それにしても弱くないか?」
保護色で伸縮性のあるハサミを持つカニや、至近距離で爆発して針を飛ばしてくるウニを叩き潰しながら、そんな事を呟いた。
ハジメたちも同じ事を考えていたらしく、首を傾げたり疑問の声を上げたりしている。
いや、実際のところは弱すぎるって訳ではない。やけに物理攻撃に耐性がある魔物が増えてきているので、俺が何回か殴らないと粉砕できないぐらいの頑丈さはあるのだ。内部から爆散させれば話は別なので、あまり困っちゃいないが。
魔法による攻撃なら一撃で粉砕できているが……しかし、さっきのクリオネの印象が大きすぎて、どうも弱すぎるように感じてしまうのである。
「んー……もしかしたら、コンセプト的に魔物を倒す事はあまり重要じゃないのかもね」
「ハジメ、その心は?」
「まず、大迷宮に挑む前提として、まずはあのクリオネを討伐。そして海中へ突入する訳だけど、本来なら潜水艇なんてないから、強力な結界術と高度な水流操作、そして酸素の供給を強いられるでしょ? この時点で相当に魔力は消耗させられると思うんだ。で、今度は物理耐性の高い魔物の大量出現。魔法には弱いっぽいから、そっちを多用する事になる。そうなると、また魔力を消耗する。結果、常に魔力切れと隣合わせの、超ギリギリの戦いを強いられるんじゃないかな?」
「ああ、なるほどな。魔力がスカスカの状態ならこのぐらいの強さの魔物でも十分に脅威になり得るのか」
「まあ、僕たちの魔力量は並じゃないし、装備も充実してるから全く問題ないんだけどね。内からパァン! しなくても、最悪の場合僕なら黒傘や魔王プレッシャーがあるし」
そう言って、実際に魔王プレッシャーを放つ事で魔物の心臓に異常を起こし、次々と殺していくハジメ。実に魔王である。
シアは魔力を纏うか、魔力衝撃波があるので何とか戦えるし、俺も〝纏雷〟やダイナマイトアッパーカットで使う〝火種〟を使用して魔法攻撃が一応できる。ただ、効率はガタ落ちだろう。
ハジメの話を聞いて、シアはちょっとだけしょぼくれてる。
「大迷宮のコンセプト的に置物にされちゃうの、ちょっと悔しいですぅ」
「そう言うなって。俺たち物理特化の人間は、ライセン大迷宮と真反対のコンセプトの大迷宮にはとことん向いてないのは当然の事だ。だが、そんな中でもやれる事はある」
「……ですねぇ。でも、皆さん魔法の扱いがお上手なので、基本的に出る幕なくないですか?」
「それはそう」
魔法組の耐久力に問題があれば、俺たちはタンク役として活躍もできるだろうが。みんな異様に耐久力あるからな。仮に傷ついても、前衛で戦える最強のヒーラー白崎が常にスタンバイしてるし。
……前衛も張れるヒーラーとか相手に絶対したくない。白崎の場合、ハジメとタメ張れるレベルに拳銃の扱いが上手いし、パルテナみたいな棒術までマスターしてるしで隙がなさすぎる。
ハジメがガノンドロフなら、白崎はパルテナか。そう言えばあったな、パルテナとガノンがタッグを組んで登場するイベント戦。
タコ……いやシャコだな。足が沢山生えている魔物を爆炎で包み込んだ白崎と、動けなくなったところを紫炎を纏った拳でブチのめすハジメを見て、そんなアホな事を考えられるぐらいの余裕がある。安心感が半端ない。
その後も、やはり物理攻撃への耐性が高いと思われる魔物たちを、一切の躊躇なく蹴散らしていく魔王と女神。優花のナイフ群やユエとティオの後方支援、そして俺とシアも前衛に立って戦っているのもあるのだろうが、ハジメと白崎の突破力が高すぎて無茶苦茶なスピードで進んでいく。
やがて俺たちは、水の壁のような場所まで辿り着いた。特にガラスのような物は見当たらないが、潜水艇が通れそうなぐらいの大きさがある。手を突っ込んでみれば、無対抗に水没する。見た目は巨大な水槽のようなのだが、何とも不思議な光景だ。
奥を見渡せるような明るさではないので、何があるかサッパリ分からない。生身で飛び込むのは危険だろう。
そんな訳で再度潜水艇に乗り込み、水の壁へ突入する。本当にハジメ作のアーティファクト様々だ。
そうして音もなく暗流の中を進んでいくと、球体状水中空間に辿り着いた。
「えっ、何あれ!?」
その空間に出た途端、ハジメが大きな声を上げる。
少しハジメの声を出すタイミングが遅ければ、俺が大声を上げていただろう。
目の前に現れたのは、黒一色で塗られた中型クルーザーである。こんなところにクルーザーがいる事自体が何かおかしいのだが。この船には、至る所に刻まれた攻撃魔法の陣や無数のアーティファクトよりも、更に特異な点があった。
「水に触れず、浮いてるのか!?」
そう。薄い膜のような物に覆われた状態で、水に一切触れる事なく浮いていたのである。水中を移動する手段は潜水艇と刷り込まれている俺たち日本人からすれば、目の前の魔装潜闘艇の異質さに仰天するのは無理もない。
もっとも、ユエたち異世界人もこの魔装潜闘艇の凄まじさには驚いているようなので、とんでもないオーバーテクノロジーで制作された物には変わりなさそうだ。
「相変わらずあのメガネヤバすぎるな……」
こんな代物を制作できるのは、あのハイパー鬼畜メガネしかいない。
で、だ。まさかこのヤベー魔装潜闘艇に勝てって訳じゃないよな?
ハジメが作った潜水艇も、異世界からすればとんでも兵器だらけではあるのだが。ちょっとアレには勝てる気がしない。
「おいハジメ……」
「分かってる。今の潜水艇で、アレに勝つのは不可能だ。誰よりも僕が理解してるよ」
良かった。比較的彼は冷静にこの状況を分析できているらしい。
「だけど、現時点で僕の技術力が、あのオスカー・オルクスにどの程度通用するか興味はある!」
前言撤回。冷静どころかパッション全開であった。
あの無理ゲー製造機と思われる魔装潜闘艇を見るに、多分破壊ではなく耐え凌ぐ事が目的な気がするのだが。ハジメくんは殺る気満々だ。
……しゃあない。何にせよ激突は避けられないだろうから、こっちも打てる手は打っておくべきだな。
「ユエ。戦闘機に付与された重力魔法の設定を弄って、水を完全に弾く事はできるか?」
「んっ、3つ全ての設定を揃えたらできると思うけど……まさか」
「そのまさか、だ。優花と出る」
「……分かった。無理はしないで」
標的は多い方が良いだろう。ターゲットが分散されるから、より生き残りやすくなる。
即興ではあるが、目の前のアーティファクトが理論上は可能だと証明している。色々と工夫をすれば、今の俺たちも何とか再現できるはずだ。
チューニングを開始したユエとほぼ同時に、ハジメが獰猛な笑みを浮かべながら魚雷を発射した。マジで真正面から戦うつもりらしい。
「ハジメ、ユエのチューニングが終わるまで何とか持ち堪えろよ!」
「合点承知! っと、めっちゃ揺れるから気をつけてね!」
そう言った瞬間に、ハジメは潜水艇を急速潜水させた。どうやら魔装潜闘艇からの攻撃が来たらしい。
ついさっきまで潜水艇がいた場所を、無数の〝雷光〟が突き抜けて行ったのを見て、俺は顔を引き攣らせるのだった。
あまり意図して描いてなかったですが、本作の香織さんがあまりにもスマブラのパルテナ要素だらけなので今後は白崎香織≒パルテナで行きます。
ちなみにパルテナ要素はメインが光属性、強力な火属性魔法も使える、障壁を張れる、棒術、〝女神〟と言われる程の容姿、原作では天使の翼が使える等です。魔王ハジメとの対比としても、中々良い感じに思えますがどうでしょうか。
マックくんの新たな恋人候補
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〝初恋枠〟優奈ちゃん
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〝妹枠〟ルウちゃん
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〝大穴枠〟恵里さん
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ハジメくんの嫁候補以外のクラスメイト
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アルテナを始めとする亜人族の皆様方
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〝英雄〟に嫁ぎたい帝国住まいの方々