異世界でもお前のパンチを見せてやれ! 作:Hetzer愛好家
その後も俺たちは、順調に下の階層へと降りていった。
勇者パーティーは言わずもがな、他のクラスメイトも十分にチート性能を持っている。苦戦は1度もしなかった。
無論、騎士団の完璧なサポートあってこその順調な攻略である。迷宮で1番恐いのはトラップであり、場合によっては致死性のトラップも数多くあるそうだ。
それを騎士団は、トラップ対策として〝フェアスコープ〟という物を扱って対応していた。これは魔力の流れを感知してトラップを発見することができる便利な道具だ。迷宮のトラップはほとんどが魔法を用いたものであるから8割以上はフェアスコープで発見できる。ただし、索敵範囲がかなり狭いのでスムーズに進もうと思えば使用者の経験による索敵範囲の選別が必要だ。
チートパワーを持つクラスメイトと騎士団の尽力。この2つが完全に噛み合った事で、俺たちはあっさり下の方へ行けたのである。
「よし、お前たち。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ! 今日はこの20階層で訓練して終了だ! 気合入れろ!」
一流か否かを選別する良い判断材料となる20階層。ここで戦うのは、勇者パーティーに加えて俺とハジメである。
とは言っても、俺とハジメは特に勇者パーティーとあれこれ話している訳ではない。
「ねえねえ、見てよ。実戦でレベルが一気に上がってるんだ」
「おお、本当だ。てか魔法系統以外のステータスだいぶ伸びたんだな」
「〝錬成〟も連続して行えるようになったから、更に戦いの幅が広がるかもだよ」
「良いねぇ。強くなってきたじゃん」
こんな感じで、基本2人で話をしているだけである。
ちなみにハジメのステータスは以下の通りだ。
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:7
天職:錬成師
筋力:40
体力:50
耐性:20
敏捷:35
魔力:25
魔耐:25
技能:錬成・格闘術・言語理解
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全体的にステータスが上昇しており、更には新しい技能まで追加されている。
基本的に技能=才能であり、増える事はないらしいのだが、その常識を覆してハジメは俺と同じく〝格闘術〟の技能を手に入れていた。
まあ、ステータス値の割に高い破壊力を有すパンチを放っているのだから、習得していてもおかしくない事だったのだが。それでも新たに才能が開花したとも言えるべき事象だ。念のためメルド団長にも報告すると、それはもう驚いていた。
「才能を新たに開花させると技能が増える。これはとんでもない偉業だし大発見だぞ!」
ここ数日で、無能と称されていたハジメが急成長を遂げている事に、メルド団長も上機嫌である。
まあそもそもの話、錬成がなければ武器の修復ができないのだから、元からハジメは無能と呼べない存在だけどね。
どいつもこいつも、俺含めて大多数が戦闘に役立つ天職だから気がつかないバカも多かったのだろうけど。
取り敢えずハジメに謝罪してほしい。無能と蔑んでごめんなさいって。
見てみろよ、今の南雲ハジメ。非戦闘系天職の技能ですら戦闘に活かす真の天才だぞ?
何故かクラスメイトからの好奇の視線は一向に止まないし、何なら憎悪の籠もった物まであるのが本当に解せないのだが。
そうこうしているうちに、俺たちは20階層の最奥まで辿り着いた。
最奥はまるで鍾乳洞のようにツララ状の壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしていた。この先を進むと21階層への階段があるらしい。
せり出す壁のせいで大きく横には広がれない。それとなく俺は団長と共に先頭に立ち、拳を構えながら前方を睨む。
「真久野くん」
「何だ?」
不意に肩を叩いたハジメに、前方から目は切らずに応答する。
前方の壁が微妙に違和感を覚えるので、俺は立ち止まった。団長も立ち止まる。
「次、魔物が出現したらまた肩を叩くからさ。そこから僕が3秒数えたら、思いっきり前にジャンプしてくれる?」
「……何か、面白い策があると見た。分かった、その案に乗ろう」
俺がそう答えた直後、前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。壁と同化していた体は、今は褐色となり、二本足で立ち上がる。そして胸を叩きドラミングを始めた。どうやらカメレオンのような擬態能力を持ったゴリラの魔物のようだ。
「ロックマウントだ! 二本の腕に注意しろ! 豪腕だぞ!」
団長の声が響く中、ハジメが俺の肩を叩く。
「行くよ。1……2……3!」
カウントに合わせて膝を伸展させ、3カウントで俺はジョルトブローの踏み込みを行った。
その瞬間である。
「うおっ!?」
地面が波立ち、滑り台の要領で俺を前方へと押しやったのだ!
とんでもない勢いで飛翔した俺は、最後方のロックマウントが立つ場所まで一気に移動した。
後で説明してもらおう。そう決めると、俺は一気に右拳を真下に振り抜く!
「グガアッ!?」
見るからに頑丈そうだったが、普段の数倍は勢いに乗ったジョルトブローには耐えられないらしい。
何なら、俺もドン引きする破壊力が出た。ロックマウントを縦に寸断してしまったのである。
「……マジかぁ」
真っ二つに割れたロックマウントを見て、思わずそう漏らした。
こんな面白い連携技まで可能とか、錬成の可能性マジで凄いな。
大迷宮での訓練が終わったら、色々と連携技を考えてみるのも楽しそうだ。
ロックマウント数体の腹部をストレートで粉砕して吹き飛ばしながら、そんな事を考える。
ちなみに吹っ飛んだロックマウントは、天之河たちがキッチリ処理してくれている。背中を預けるに値する、実に心強いクラスメイトだ。
奇襲を仕掛けた甲斐あってか、あっという間にロックマウントはラスト1体になってしまった。
闇雲に振り回している豪腕をダッキングでスルリと躱して背後に回る。
ノソノソと俺の方を振り向いた時にはもう遅い。既にこちらは、スマッシュストレートの準備を終えているのだから。
「ハッ!」
哀れ、ロックマウントは腹部に大穴を空けながらぶっ飛んでいき、そのまま最奥の壁に突き刺さってから崩れ落ちるのだった。
動かなくなった魔物に用はない。俺はロックマウントの亡骸に背を向け、ハジメの隣に戻った。
「おーいハジメぇ。そんな面白い連携技を考えたんだったら、もう少し早めに教えてくれや」
「あはは、ごめんね。上手く行くかは未知数だったからさ」
「おい実戦初投入なのかよ。とんでもない度胸だな?」
「それは真久野くんもじゃない? 何をするか分からないのに、アッサリ僕を信用したじゃん」
「面白そうな事が起こると思ったからな」
主に錬成パンチのせいである。あまりにクリエイティブな発想だったから、ハジメ=クリエイティブで面白い戦いをしてくれると言う謎の方程式が俺の中で組まれているのだ。
折角なので、その流れで新たな連携技を考えようとする。だが、白崎が不意に声を上げた事でお流れとなった。
「……あれ、何かな? キラキラしてる……」
その言葉に、全員が白崎の指差す方へ目を向けた。
そこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。まるでインディコライトが内包された水晶のようである。白崎を含め女子たちは夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。
「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」
何でも、貴婦人方には大変人気があるようだ。結婚時に贈る宝石としても需要があるらしい。
宝石に大した興味を持たない俺は、メルド団長の説明を聞いても特に心惹かれる感じはしなかった。
「綺麗だし、女子に人気が出そうなのも分かるが。その良さまでは分からんな……」
「真久野くん、基本的にボクシングかスマブラにしか興味を持たないもんね」
「おお、良く分かってるじゃないか」
こんなだから女縁がないんだけどな!
……自分で言ってて悲しくなってきた。
取り敢えず、今日の訓練はここで終わりだ。サッサと帰路につくが良かろう。
そう思い、ハジメに「帰ろうぜ」と言った俺だが。
「だったら俺らで回収しようぜ!」
檜山のバカがそんな事を言ったので、言葉を呑み込む事になってしまった。
トラップの有無を確認していない場所へ、勝手に行くのは絶対に禁止。その約束を忘れたのか、あの野郎は!
「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」
聞こえてないふりをして、檜山はどんどん奥へ進んでしまう。
居ても立っても居られなくなり、俺は全速力でスタートを切った。
だが、スタートが随分と遅くなってしまったので。騎士団の1人が切羽詰まった声を出したのとほぼ同時に、檜山は俺より早くグランツ鉱石の元へ辿り着いてしまった。
「団長! トラップです!」
「ッ!?」
瞬間、檜山がグランツ鉱石に触れた。触れてしまった。
檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。グランツ鉱石の輝きに魅せられて不用意に触れた者へのトラップだ。美味しい話には裏がある。世の常である。
魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。まるで、召喚されたあの日の再現だ。
「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」
メルド団長が叫び、クラスメイトもワタワタと動き出したが……間に合わない。
一瞬にして光が広がり、視界が潰れたと同時に浮遊感。空気が変わったのを認識すると同時に、俺はドスンと地面に落とされた。
「チィッ、転移させたのか!」
この短時間で、見知らぬ場所へと転移させる。神代の魔法は常識外れすぎる。
俺たちが転移させられた場所は、100mぐらいはある石橋の上であった。横幅も広く、10m前後はあるように見える。ただし手すりなんて物はない。万が一足を踏み外せば、深淵広がる奈落の底まで真っ逆さまだ。そんな橋の中心部に、俺たちはいた。
後方には登る階段。前方には延々と先に続く通路。どちらを目指すべきかは明白だ。
「お前たち、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」
団長の指示が飛んだ事で、やっと動き出したクラスメイト。だが、大迷宮のトラップがこの程度で終わる訳がなく。結局撤退は叶わなかった。
階段側の橋の入口に現れた魔法陣から大量の魔物が出現したからだ。更に、通路側にも魔法陣は出現し、そちらからは一体の巨大な魔物が……
その時、現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルド団長の呻く様な呟きがやけに明瞭に響いた。
「まさか、ベヒモス……なのか!?」
後方側に大量に設置された小さな魔法陣から出現した、数えるのも面倒なぐらい大量の骨格だけの体に剣を携えた魔物〝トラウムソルジャー〟だ。しかし、この骸骨よりも遥かに目の前の魔獣とも言うべき魔物の方がヤバそうである。
体長は10メートル級で四足。頭部に兜のような物を取り付けた魔物だ。最も近い既存の生物に例えるならトリケラトプスだろうか。ただし、瞳は赤黒い光を放ち、鋭い爪と牙を打ち鳴らしながら、頭部の兜から生えた角から炎を放っているという付加要素が付くが……
あれが団長の言う〝ベヒモス〟だろう。
「団長!」
俺の声で正気に戻った団長が、矢継ぎ早に指示を飛ばす。
「くっ、アラン! 生徒たちを率いてトラウムソルジャーを突破しろ! カイル、イヴァン、ベイル! 全力で障壁を張れ! 奴を食い止めるぞ! 光輝、お前たちは早く階段へ向かえ!」
応答の時間すら惜しい。俺は即座に、階段側の方へ走り出した。天之河が何か言ってるが、気にしてられん。
パニック状態に陥っているクラスメイトも多い。このまま放っておくと、必ず全滅してしまう。
「ハジメ、俺が最前線に立つ すぐに騎士団の人も合流するから、ハジメとの2人で中心になってクラスメイトを何とか落ち着けてくれ!」
「わ、分かった!」
助走をつけてから飛び上がり、何人かのクラスメイトの肩を踏んで一気に最前線へと躍り出る。
最短効率でトラウムソルジャーを潰さなければならない。
出し惜しみはなしだ。俺は空中からジョルトブローで急襲し、ひとまず1体を地面に叩きつける。
次いでボディ狙いのストレートを繰り出し、骨が折れるかどうかギリギリの加減でぶん殴る。すると、骸骨の身体が猛烈な勢いで後方にぶっ飛び、勢いが死ぬまでの間何体ものトラウムソルジャーを粉砕していった。
落ちた剣も有効活用。あいにくマトモに使える物ではないので、飛び道具としてだが。
剣の投擲でまた数体、トラウムソルジャーが後ろに下がる。
倒せなくても良い。動きを止められれば、それで。
ここで奴らを1体も通す訳にはいかない。この身体が滅びようとも。
全滅させる、何て事は無理だ。しかし、数人が正気に戻れるだけの時間稼ぎ程度なら。大量の魔物相手だとしても、何とかなる。
根性勝負だ。得意な事は、存分に発揮すべき!
「さあ来い! 俺が相手だ!」
籠手同士をガチリと鳴らし、俺は構えるのだった。
※マックくんの技紹介
★スマッシュストレート
…スマブラではアーマーのゴリ押しで大変悪名高い横スマッシュ。もちろんこのマックくんも使用します。
一瞬仰け反るぐらい振りかぶってから叩き込む右ストレートで、マックくんが放つストレートの中では2番目に威力が高い。ちなみに1番は気合いストレート。
仰け反った瞬間に左半身で攻撃を受け止め、そこから怯む事なく中に入っていく……怯まずストレートを振り抜く。何が言いたいって、こいつだけ現実世界でもスーパーアーマー完備してるって事。ヤバい。
マックくんのど根性と大変相性が良く、体重が倍以上の相手の攻撃も根性で耐えて殴り勝つ。当然ながら破壊力は高いので、これ一撃で試合が決まる事もある。クソ技では?
何がタチ悪いって、これだけの攻撃性能がありながら、高速のスウェーやスリッピングからも飛ぶ可能性があるって事である。切り返しにも使えるとか聞いてねえぞ。
更に更に。しっかり派生技としてスマッシュアッパーカットとスマッシュボディフックが存在している。この2つの解説はまた後ほど。
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