異世界でもお前のパンチを見せてやれ!   作:Hetzer愛好家

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 今回は優花さんsideで進行します。

 ずっと語ってきた、優花さんは超万能の全距離に適性があるアタッカーの描写をやっとできました。

 参考にしたのは某白い悪魔in天パ。


貴方が闘神なら、私は

「ケンの予想通り、王国内に直接侵入する魔人族と魔物が現れたか……」

 

 無数のナイフを操り、姿を見せた瞬間に魔人族は手足の腱と舌を切り裂いて無力化。魔物は素っ首を飛ばしていく。

 

 私以外にも、王国内でバラバラに待機している仲間たちがいるので、取り敢えず市民が大量に殺されるような事態には至っていない。しかし、個々の強さがそれなりにあるのと、数がやけに多いが懸念点だ。

 

 いやまあ、私含めて人外組は全く問題ないが。クラスメイトたちの対応が追いつくかが心配なのである。この世界基準で見れば確かに強い方だが、あくまでスペック通りの強さしか発揮できない。更には、実戦の機会も私たちと比べれば圧倒的に少ない。ちょっと頼りないと感じているのが正直なところである。実戦経験が豊富なメルドさんや、ルウちゃんを守るためなら悪魔にも修羅にもなれるソウさんの方が、私としてはよっぽど頼もしい。

 

 侵入した魔人族を最低でも無力化か、最悪の場合は殺さなければならない点も心配だ。不殺で終わらせられる技量があるとも思えないので、おそらく殺してしまう方がクラスメイトにとっては最良の択だろうが。人を殺す覚悟がどの程度できているのか、正直未知数である。中途半端な覚悟だと、多分あっという間に返り討ちだ。そのぐらい、魔人族側の覚悟が決まりすぎている。

 

「……それにしても、至る所から空間を飛び越えて出てくるな。1人2人の使い手だけで何とかなる物ではなさそうだけど」

 

 魔法のエキスパートであるユエでも、無数にゲートホールを開くのは至難の業である。だが、魔人族の軍勢は特定の箇所からではなく、様々な場所から姿を現している。それが不思議でならない。

 

 何か、フリードやサンドマンとは別の敵が潜んでいる。自然とそんな思考になる。

 

 警戒レベルを引き上げ、〝小さな魔剣シリーズ〟を取り出した瞬間。私は、言葉にするには難しい嫌な感じを覚え、全速力でその場から飛び退いた。

 

「っ、新手か」

 

 さっきまで私が立っていた場所には、拳で叩き割られたかガラスかのような砕けた空間がある。以前、アンカジで見た物と似ているような気もするが、別物だと私の本能は告げていた。

 

 その予感は正しく、割れた空間から現れたのは、私は初めて目にする〝白い手〟だ。

 

 似たような物は、以前エリセンで戦った事がある。だが、即座に別物だと判断したのは、ゲラゲラと喧しく品性のない笑い方をしていたからである。どこか厳かな雰囲気を持っていた白い手……ケンと南雲はマスターハンドと言ってたか。奴とは正反対だ。その他の要素も含めて。

 

 どこまでも狂気的な雰囲気を持つそれに、敢えて名前を付けるなら、クレイジーハンドだろう。

 

 身に纏う空気は、辺りを斬り裂くかのように鋭い。かつてオルクス大迷宮で戦った魔物たちに近しい戦闘力を持っていると、私の直感は告げていた。それも、階層が下の方の魔物だ。野放しにしたら、確実に甚大な被害が出る。

 

 故に、倒れるかどうかギリギリのラインを攻める形で集中力を引き上げた。

 

 〝瞬光〟を発動させると、魔力で身体能力を向上させてから地面を蹴る。

 

 その勢いで、虚空からエネルギー光球を取り出した個体に急接近。反応するよりも先に、短筒で10連射した。

 

 3発はエネルギー光球に命中して爆発を起こし、残りはクレイジーハンドの全身を穴だらけにしていく。更に爆発寸前の短筒に火薬類を詰め込んでから投擲すると、そのまま後ろを振り返らずに、様々な神代魔法が付与されたアーティファクトナイフを手にして次の個体へ突進した。

 

 断末魔の叫び声と爆音。そして真正面で構える奴とは違う個体が背後から何体も迫るが、一切私は振り返らない。そもそも振り返る必要は、全くないから。

 

 私の目は、顔面にある2つだけではない。

 

 ナイフたちがクレイジーハンドが放ったミサイル、爆弾、蒼色の火球、地面に向けて放つレーザーを〝天灼〟と〝爆裂式〟で相殺し、本体を動けなくするべく直接斬り裂き、凍らせ、そして焼いていく。それと同時に、クレイジーハンドが超速で伸ばしてきた指を私自身がアーティファクトナイフで切り払う。

 

 指を切り落とされて苦悶の声を上げるクレイジーハンドに、爆薬が多めに詰められた弾丸を数発突き刺して消し飛ばすと、真上にアーティファクトナイフを投擲してから新しい短筒を手に取り、銃口を敵がいる方向にノールックで向けて何度も何度も引き金を引いた。

 

 起爆寸前となった短筒はすぐさま投げて複数体を巻き込み、瞬時に取り出した次の短筒で確実に仕留めていく。また、短筒と拳銃共に装填はあらかじめ外に出してある弾丸を〝投擲術〟で操って高速で弾込めをしていく事で、限りなくタイムロスをゼロに近くしていく。そうすれば、絶え間ない超速連射が可能となる。

 

 投擲後、自我を持っているかのように機敏に動き回り、次々と神代魔法の力でクレイジーハンドや魔物を血祭りに上げていくアーティファクトナイフと、1ダース単位で分隊を編成して魔人族を無力化し、時には仲間の援護を、またある時には市民を守る盾ともなるその他のナイフと小さな魔剣シリーズも忘れてはいけない。

 

 このハイリヒ王国内であれば、どこであっても私の力が及ぶだろう。

 

 脳に過剰な負荷をかける事になるので、無策であれば長続きしない事が欠点ではあるが、魔力の吸収に加えて時折カロリーバーを食べる事で脳に糖分を回し、簡単には倒れないようにしている。まあ、仮にエネルギー切れになったとしても、ケンのようにど根性を発揮すれば何とかなるだろうが。

 

 その後も無感情に、襲い来るクレイジーハンドと他所の魔人族や魔物と同時に戦闘を続けた。途中、明らかに私を大きな脅威と認識したらしいクレイジーハンドたちが、集中してこちらを狙うようになってからも、尚も変わらず捌き続けていたのだが。

 

「……数がかなり減ってきたかな」

 

 ボソリ、そう呟く。

 

 そう感じさせるぐらい、クレイジーハンドの数が目に見えて減ってきた。

 

 魔物と魔人族の勢いはまだ止まる様子が見られないが、現状最も脅威となるのはクレイジーハンドである。事も無げに排除しているように見えるだろうが、奴が放つ攻撃はどれも当たりたくないと思わされる物ばかりだ。故に、近接戦闘はなるべく避けている。

 

 それと、動きが奇っ怪すぎて一般市民は見るだけで腰を抜かしそうである。地面を蜘蛛のように這って動いたり、激しくのたうち回って周囲を破壊したりと、かなりやりたい放題だ。あと、たまに冷静にグーパンしたりビンタするのが、余計に混乱を生む原因となっている。回避方法もノータイムのテレポートなので、撃破には回避先を読む必要があるのもちょっと面倒くさい。

 

 だが、私の排除に躍起になりすぎたな。割れる空間の数が一気に減り、姿の見えるクレイジーハンドはもう僅かしかいない。

 

「……そこっ!」

 

 真後ろにテレポートしてきた個体をノールック射撃で怯ませ、ナイフ群でトドメを刺してからその場を離れる。すると、私がついさっきまで立っていた場所から複数本の指が空間を割りながら伸びてきた。

 

 即座に〝爆裂式〟で粉砕すると、またその場を飛び退いて背後からグーパンしてきたクレイジーハンドを拳銃で撃ち抜きながら、真横からビンタしてきた奴に起爆寸前の短筒を投げて追い払って、逃げる先を予測して置き撃ちした〝天灼〟で焼き払う。

 

 同時に、他の場所で戦うクラスメイトやソウさんの背後から迫る攻撃をナイフで防いでから、ノータイムで反撃を行って命を脅かす物を最速で排除し、いつの間にかフリード&白竜とタイマンで戦闘しているユエの魔法攻撃に合わせてナイフから〝螺炎〟と〝緋槍〟を飛ばし、地上で暴れようとする魔人族たちを潰していく香織、シア、ティオの援護をする。ナイフの分隊を操り、こちらから攻め入って魔物を次々と刈り取る作業も同時進行だ。

 

 ナイフを介して得られる膨大な情報の数々を、1つの脳で完璧に処理するのは実に疲れる。〝天歩〟の最終派生技能である〝瞬光〟を使用し続けた事で、本来なら目覚める事のない固有技能の習得に至ったとしても、だ。現に、私の目からは超集中の代償として、血が涙のように溢れ出ている。

 

 しかし、これで良い。初動で大損害を与えれば、魔人族の軍勢の動きは大きく鈍るから。

 

 飛び道具を滅茶苦茶に撃ちながら接近してくるクレイジーハンド3体を、周囲に被害が出ないようにナイフで無力化してから、再度手にしたアーティファクトナイフで纏めて真っ二つに両断すると、私はその場を離れてソウさんの援護に向かった。

 

 ナイフでサーフボードのような陣形を形成し、刃に足を乗せて数キロを1分ちょっとで移動していく。無論、移動の間も魔物や魔人族の気配を感じれば拳銃で撃ち抜いて無力化するし、仲間への援護もクオリティを一切下げる事なく実行する。

 

 途中、気を抜いたら集中が切れそうなぐらいに頭が痛んできたが、ついこの前手に入れた再生魔法を躊躇いなく使用。脳を幾分か〝再生〟して倒れるまでのタイムリミットを先延ばしにした。魔力が尽きない限りは、この繰り返しで何とかなる。まだ大丈夫だ。問題ない。

 

 ソウさんの背後から、気配を薄くして忍び寄ろうとしているキメラのような魔物を蹴り倒しながら着地すると、私に気がついた魔人族数人の手足を次々と拳銃で撃ち抜いて無力化。更に投げナイフを3本投擲し、地面からモグラのように顔を出した魔物の眉間と眼球2つに突き刺して何かするより先にあの世へ叩き落とした。

 

「ユナさん!」

「無事……みたいですね。良かった」

 

 所々傷を負ってはいるが、まだまだ元気そうな姿を見せているソウさんに少し安心する。

 

 ケンから〝集中拳打〟と〝浸透破壊〟ができる能力が付与された予備の籠手と、〝衝撃吸収〟が可能な服一式を借りているとは言え、如何せん敵の数が多い。無傷で倒し切るのは至難の業だろう。

 

 それでも致命打を徹底的に避け、長時間1人で格上相手に戦えている彼の力量には感服する。本当に一般市民なのだろうか。

 

「ルウちゃんは」

「無事です。家の周りに、ユナさんが魔力そのものを遮断する結界を作ってくれたお陰ですよ。僕自身も、この結界には助けられてばかりです」

 

 家の中に転移されたら困るという理由で、南雲の扱うクロスビットの持つとある機能から着想を得た〝魔力遮断〟の結界は、バッチリ効果を発揮しているらしい。ユエとの協力で完成した〝魔力遮断〟が付与されたナイフたちは、今もソウさんたちが住む家の周囲に展開され、不可視の結界を張り続けている。

 

 結界内では魔力が扱えなくなる関係上、素の身体能力でしか戦えなくなるのだが、これが初見殺しとして実に凶悪な性能を発揮する。魔物はただの獣に成り下がるし、人間族より多い保有魔力ありきの戦いをする魔人族には大きな混乱を強いる事ができるのだ。

 

 ちなみに、ユエの手によってソウさんとルウちゃんのみは〝魔力遮断〟の効果から外されている。とんだクソゲー製造機だ、この魔法は。

 

〝優花。真正面からの敵はもうちょいで全滅する。少ししたら、王国内に戻るよ〟

 

 ケンからの〝念話〟によって、この戦いの終わりが見えてきたので、一層私は気を引き締めてナイフたちを繰る。

 

 だが、常に展開されている〝気配感知〟が、こちらに猛烈なスピードで向かってきている物体を捉えた事で、私は眉を顰めた。

 

 気配は2つ。どちらも、私が知っている物だ。

 

 まずは1つ目。私とソウさんの目の前に、凄まじい勢いで墜落してきた。地面を何度かバウンドし、ようやく止まった頃には、グロッキー状態となって動けなくなっている。

 

 そしてもう1つは、地面に墜落した者を追いかけて来たようだ。音を立てず、静かに地面に降り立つ。

 

「……まさか、勇者を追いかけた先にお前が居るとはな」

「同意ね。どこかに必ず潜んでるとは思ってたけど、まさか彼と戦ってたなんて」

 

 地面に転がる〝勇者〟を一瞥してから、私は彼を圧倒したのであろうサンドマンに目を向けた。

 

 以前よりも遥かに練り上げられた闘気は、自然と身を固くしていく。ソウさんに至っては、震えながらも何とか立っている有り様だ。それでも必死に深呼吸をして、少しずつ落ち着こうとしている努力は大したものである。

 

 ひとまず、ソウさんのためにも時間稼ぎをしようか。

 

「強くなったのね、サンドマン」

「マック坊やを超えるための努力は惜しまん。フリード様が直々に強化を施してくれたのもあるが」

「素の身体能力なら、もう彼と同じぐらいかな。フリードは確か、魔物を生み出す神代魔法の使い手だったと思うけど……彼の力量も増してるって事か」

「魔人族の歴史の中でも、フリード様は類を見ない強さをお持ちだ。そんな中でも常に更なる高みを目指し、日々精進なされている。ここ最近は、強くあるための理由が魔人族の未来のためではなく、お前の仲間への〝憎悪〟による物なのが、少々気になるところだがな」

 

 南雲たちへの憎悪だろう、おそらく。サンドマンと関わる機会はそこそこ多かったが、フリードとは1度しか戦闘していない。何なら、私は顔を見た事しかない。

 

「まあ、恨むなら好きなだけ恨めば良いんじゃないかしら。で、サンドマンは何故勇者と戦闘を?」

「たまたま、侵入したポイントの近くを守っていたのがこいつだった。だが、勇者とは思えないぐらい弱く、そして脆いな。持っている能力だけは大したものだが、精神的に脆すぎる」

 

 ピクリと、サンドマンの言葉に天之河が反応する。

 

 彼にとっては聞き捨てならない言葉なのだろうが、私にとっては違う。ただ黙って、サンドマンの言葉に耳を傾ける。

 

「脆い精神で、自身が持ち得る能力全てを発揮できる訳がない。宝の持ち腐れだな」

「……れ」

「皆を守る、皆のために戦うと連呼していたが、そんな脆く弱い精神でよく言えたものだ。寝言は寝て言え」

「だま、れ。黙れ……!」

 

 聖剣を杖のようにしながら、天之河が立ち上がった。

 

 それとなく、私はソウさんの近くに立つ。彼が完璧に立ち直るまでに、もう少しだけ時間が欲しい。

 

「ゆっくりで構いません。少しずつ、戦う準備をしてください」

「恩に着ます、ユナさん。ルウのためにも、必ず立ち直ってみせますので……」

 

 目を閉じて精神集中を始めたソウさんに、それとなく魂魄魔法を使用する事で援護しながら、天之河とサンドマンの様子をジッと伺う。

 

 皆への援護は一旦止めだ。この先の事を考えると、申し訳ないが援護をする余裕はない。

 

「俺が、俺が守るんだ! 戦って、守らなくちゃいけないんだ! これ以上、大切な仲間を死なせないためにも、俺が……!」

 

 途端に、天之河を中心に強大な白金色の魔力が沸き上がる。彼の魔力は純白色だった気がするが、どうやら超強化によって色が変わったらしい。神々しさは以前の数割増しである。

 

 かつて、オルクス大迷宮で感じた時の物よりも遥かに大きく、猛々しく、荒々しい。絶体絶命のピンチ前にして、隠されていた潜在能力が解放されていく様子は、まるでおとぎ話の〝勇者〟そのものだ。

 

「〝限界突破〟で底上げしたステータスを、〝覇潰〟で更に乗算した。これで、もうお前には負けない!」

「……そうか。口だけで終わらないと良いな」

 

 両者が構えるのを尻目に、ソウさんの方を見た私は、全てのナイフを回収してから再生魔法を全身に行き渡らせる。

 

 ソウさんは、天之河の膨大な魔力の奔流を受けても、全く動じずに精神集中を続けていた。

 

「ソウさん」

「もう大丈夫です。いつでも行けます」

 

 その言葉に頷くと、激突して互いに攻撃を打ち合う天之河とサンドマンから目を切らぬまま、極限まで集中力を高めていった。

 

 一気に景色が色褪せていき、不要な音も聞こえなくなっていく。目尻と鼻から先程の比ではない量の血が流れ出ていくが、それを気にせず集中のギアを更に上げた事で、劇的な変化が私の中で訪れる。

 

 額に稲妻が奔ったような感覚と同時に、〝投擲術〟の対象としている物体全てを、私の四肢を操るかの如く自在に、そして微細に動かせるようになった。

 

「〝禁域解放・瞬光〟」

 

 固有技能〝禁域解放〟。私が選んだ固有技能、あるいは派生技能の効力を、魔力が尽きない限り永続で5倍に引き上げるという物だ。

 

 〝禁域解放〟を使用した場合、効力が上昇した状態に乗算する形になる。

 

 今回のケースだと、〝瞬光〟によって3倍となった知覚能力が、更に追加で5倍の補正が掛かる状態になる。〝瞬光〟の特性上、〝天歩〟とそれに連なる派生技能の効力上昇もあるため、戦闘能力の向上度合いは計り知れない。

 

 爆発的に跳ね上がった知覚能力で、戦闘の経過を正確に捉えた私は、何も言わずに拳銃を構えた。

 

 私と、ソウさんの出番は近い。あと、数分後だ。

 

「くっ、〝天落流雨〟!」

 

 一条の閃光が天を衝き、それなりの高度で破裂するように飛び散ると、豪雨のように光属性の魔弾が降り注ぐ。

 

 こちらへの被害をあまり考えていないのか、平気で私たちの元にも魔法が降ってくるが、私とソウさんに当たりそうな物に限り数メートル前で撃ち落としていった。幾つかは魔力を吸収し、継戦能力の維持を行う事も忘れない。

 

 サンドマンも、その場から下手に動く事なく光属性の魔弾を拳で弾いている。手数重視なのか、威力はそこまで高くないようだ。

 

 それを見た天之河は、聖剣に光を〝収束〟させていく。無数の流星が尾を引きながら聖剣に集う様は、中々に幻想的だ。だが、途端に降り注いでいた光属性の魔弾の雨が止んだので、サンドマンが猛然と殴り掛かる。

 

 天之河は必死の形相でサンドマンからのパンチを回避し、時には殴られながらも何とか耐え抜くと、完全に光が収束して神々しく輝く聖剣を突き出した。

 

「〝天爪流雨〟!」

 

 直後、突き出された聖剣から無数の流星が砲撃の如く撃ち放たれる。

 

 光速で飛翔する流星の全てを躱すには至らず、幾つかはサンドマンに直撃。すると、流星はクラスター弾のように何度か弾けながら強い衝撃波を生み出した。

 

 距離がある私たちは問題ないが、至近距離で受けたサンドマンの視界は潰されているだろう。現に、彼の身体には傷1つないが、目はキツく閉じられている。

 

「これでトドメだ、バケモノめっ! 万翔羽ばたき 天へと至れ 〝天翔閃〟!」

 

 振り下ろされる、先程とは毛色の異なる強烈な光を宿した聖剣。聖剣からは、光のエネルギーが刃として発射され、サンドマンを真っ二つに斬り裂かんと一直線に進む。

 

 普通ならば、これで仕留められる。目潰しからの本命は、悪くない戦法だ。

 

 あいにく、サンドマンは普通ではないが。

 

「甘い」

 

 まだ目は閉じたままだが、サンドマンは当たり前のように飛ぶ斬撃を回避。そして爆発的な踏み込みを見せると、聖剣を振り下ろした事で体勢が悪い天之河の懐へ入って強烈なアッパーカットを繰り出した。

 

 咄嗟にガードしようと聖剣を翳した天之河だが、呆気なく聖剣は弾き飛ばされて彼の手を離れた。急ごしらえのガードで、サンドマンのパンチを防げる訳がない。

 

「お前はつまらん。寝てろ」

 

 そう言って繰り出された、凄まじいスピードの打ち下ろし2発をマトモに天之河は受け、グラリと地面に崩れ落ちた。

 

「……次はお前だ、女」

 

 ソウさんは眼中にない、か。

 

 まあ、好きにしたら良いだろう。

 

「たった1度でも、貴方は彼の心に傷を負わせた。その落とし前は取らせてもらう」

 

 彼にとって脅威となるのは、ケンだけではない。

 

 私も脅威となり得るバケモノだって事を、しっかり身体で覚えて帰ってもらおうか。




 今回起こった出来事一覧
①正面から攻める魔人族の軍勢が壊滅状態に
②クレイジーハンド出現。そして全滅
③王国内に直接転移した軍勢も人力マルチロックする優花のせいで割とボロボロ
④ユエがフリードと戦闘
⑤勇者とサンドマンが戦闘。2度目の超覚醒を勇者が起こすも敗北。勇者も弱くはないんだけどね
⑥優花が〝人〟ではなくなる

 情報量が、多い……!

 次回はまたマックくん視点。奴ら、再び。

※優花さんの技紹介
★固有技能〝禁域解放〟
✪選択した技能の効力を5倍にする
…同じ名前の技能を真の神の使徒も持っていますが、あちらの物は擬似的な〝限界突破〟のような効力を発揮するのに対して、こちらはマックくんの〝闘神〟のような効果を持ちます。

 習得経緯は、〝瞬光〟の使いすぎで脳が変異したから。新人類や真人類みたいな感じ。

 対象とする技能によって差はありますが、多方面の性能が上がる〝瞬光〟をチョイスした場合なら、本気のマックくんと互角に渡り合える戦闘力を発揮します。

 弱点は、発動によってステータスが直接上がる事はない点と、選択した技能の魔力消費量が大幅に増加する点ぐらいでしょうか。

マックくんの新たな恋人候補

  • 〝初恋枠〟優奈ちゃん
  • 〝妹枠〟ルウちゃん
  • 〝大穴枠〟恵里さん
  • ハジメくんの嫁候補以外のクラスメイト
  • アルテナを始めとする亜人族の皆様方
  • 〝英雄〟に嫁ぎたい帝国住まいの方々
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