異世界でもお前のパンチを見せてやれ!   作:Hetzer愛好家

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 実生活が忙しくて中々執筆が進みませんが、色んな事柄によってモチベは未だ維持した状態です。やはり、評価されるというのは嬉しい事ですね。


一夜明けて

 集合時刻となり、俺は優花と共に王城へ向かった。

 

 その途中で霊体の優奈と合流できたので、何をしていたのか聞いたのだが。王城へ入る前に聞いておいて良かったとまず思うぐらいに、大いに驚かされた。

 

 覚醒したであろうハジメが仕留めたはずの檜山が、より強大な力と妄執を持って復活した事もかなりビックリしたが、それ以上にそんな状態の檜山を無傷で難なく対処してしまった優奈の方に俺は驚いた。

 

 曰く、無限に再生する能力を得ていたので、その源となる魂を一欠片も残さず粉砕したとの事である。俺も魂魄魔法を使えるし、魂の破壊もできるからこそ分かるのだが、壊せはしても一欠片も残さないってのは文字通り神業である。俺はできない。

 

 で、それだけの事をやっておきながら、一切魔力反応がなかった点も見逃せない。彼女は魔力を持っていないそうなのだが、それに近しい力は保持しているようで、そちらを使ったと教えてくれた。力の正体までは流石に聞き出せなかったが……。

 

 取り敢えず、俺の預かり知らぬところで生まれた新たな脅威を、未然に対処してくれた優奈には頭が上がらないので、めっちゃお礼を言った。お願い事があれば何でも聞くとも。

 

――んー、じゃあ優花お姉ちゃんとのイチャイチャを、これからも存分に見せて欲しいな!

 

 思わずズッコケたのは言うまでもない。

 

 優奈から改めて何か個人的なお願いがないか聞くと決め、俺たちは王城へ入り、リリアーナ姫の部屋まで足を運んだ。

 

 部屋には既に、魔人族の軍勢を押さえ込むべく、前線で指揮を取りながら戦ったメンバーが集結している。

 

 ハジメの嫁さん候補に関しては、ひとまず白崎だけが姿を見せていた。どうやらハジメの回復を並行して行うつもりらしい。

 

 永山パーティー以外のクラスメイトは、ひとまず八重樫だけが来たようだ。一応犠牲者は出てないと教えてくれたが、怪我人が多いので、1番傷が軽かった彼女が来たとの事である。

 

 なお、最も怪我が酷いのは天之河だそうだ。それもそうか。俺が団長のいる方向へ投げる前から、何で生きてるのか分からないぐらいの深傷を負ってたし。

 

 ま、それでもブン投げたけど。何があっても死なんやろのノリだ。勇者補正あるし簡単には死なんでしょ。てか、エヒトが死なせないだろ。

 

 ちなみに投げられた天之河をスーパーキャッチしたメルド団長はと言うと、かなり元気そうな様子である。消耗こそしているが、クラスメイトたちと比べると経験の差で勝っているみたいだな。流石の一言である。

 

「全員揃いましたね。それでは、各自何があったかの報告を行いましょうか」

 

 目元を赤く腫らしたリリアーナ姫が口火を切る。泣いていたのか、さっきまで。

 

 適当な順番で各自何が起こり、そしてどのように対処したのかを淡々と報告していく。

 

 まず、王国内の死傷者の数はそこまで多くない事が報告された。倒壊した建物の数は馬鹿にならないが、それでも無駄に一般人が死ななかったのは良かったと言えるだろう。

 

「反面、ハイリヒ王国の重鎮の多くは、何かに操られるようにして魔物の大群へ突っ込んでいきました。その中には、お父様も……」

「リリィ、無理しないで」

「……ありがとう、雫。ですが、今は事実を淡々と述べるだけの時間です。悲しむのも、悼むのも後にしましょう」

 

 強い。そう思わせるほどに、リリアーナ姫は気丈な態度を取る。同時に、脆いとも。

 

 リリアーナ姫と仲が良い八重樫のお陰で今は何とかなっているが、しばらくの間は彼女を1人にしない方が良さそうだ。

 

 それとなく八重樫に視線を送ると、彼女は気がついて1つ頷いた。これで良し。

 

「僕は檜山と戦って、そして殺した」

 

 重苦しい雰囲気が蔓延しそうになったが、敢えて空気を読まずに、ハジメが口を開いた。

 

 畑山先生は、何か言いたそうな顔をしているが、一旦口を噤む。ウルの町の件もあるので、そう簡単には割り切れない事だろう。それでも最後まで聞こうとする姿勢を貫ける辺り、どこまでも先生である。

 

「人為的に無茶苦茶な強化をされていたよ。最終的には、マックくんに近いステータスになっていたと思う。勝てたのは、運による部分も大きいかな」

「……今のハジメに、そこまで言わせるのか」

「ヤバかったよ、めっちゃ。片目貫かれたし、肩は動かなくなるし。マックくんが、すぐに香織を向かわせてくれなかったら、今頃僕は隻眼隻腕だろうね。何なら死んでるかも」

 

 あの時、ハジメがヤバいかもという直感を信じて良かったようだ。

 

 勝てる勝てない問題もそうだが、仮に勝てたとしてもあの爆発的な魔力放出だ。間違いなくあの後ぶっ倒れていたと思う。そこを狙われたら、ハジメであっても助からない。

 

「マックくんは、中村さんと戦ったんだよね?」

「ん、ああ。無力化して、今は眠らせた状態で収納している。少し前に王国を騒がせた失踪事件の黒幕だから、生きて罪を償わせようと思ってな」

 

 リリアーナ姫に目線を送ると、彼女は少し考えてから頷いてくれた。

 

「本来であれば、彼女は〝神の使徒〟ですから、軽い事情徴収を受けて無罪放免となるでしょう。しかし、トップであるイシュタル教皇を失った聖光教会はマトモに機能していませんし、ハイリヒ王国も当面の間は細かな点に目を向けられなくなる程に慌ただしくなります。真久野さんに、全てを委任してもよろしいでしょうか」

「俺は構わない。ただ、彼女は死んだ方がマシだと思うぐらいの裁きを受けるだろうが。それでも良いんだな?」

「……罪人は、どのような身分であっても公平に裁かれるべきですから。それに、彼女が犯した罪業の数々は、全て私の耳に入っています。ただ極刑に処すだけでは、納得せず暴徒と化す国民も多いはずです」

「上がゴチャゴチャしてる時に暴徒が無数に現れたら、それこそ国家存亡の危機だな。 ……うん、任された。ひとまず、被害者遺族への謝罪行脚から始めるよ」

 

 二重の意味で俺に任せたいという意思を読み取った俺は、改めて了承した。

 

 その後も、報告が続く。

 

 騎士団総出で戦ったり、クラスメイトで束になっても勝てず、優花の援護によって何とか倒せた魔物の話がほとんどだったが。

 

 ほぼ全ての戦場を同時に援護し、勝利の糸口を作った優花への評価がうなぎ登りである。元から評価は限界突破してるけど。

 

 当の優花からは、マスターハンドとは似て非なる存在を多数確認したとの報告があった。それを彼女は仮称クレイジーハンドとしていたが、多分それ正式名称である。ハジメと優奈も、名前を聞いた瞬間に軽く吹き出しそうになっていた。

 

 魔人族と共謀して王国を襲ったクレイジーハンド。これは、魔人族側に〝闇の化身〟がいると考えて良さそうだ。

 

 裏から魔人族を操っているのか、それとも共闘関係なのかは、今後しっかり探っていく必要がある。対の存在も間違いなくどこかに潜んでいるはずなので、最優先でこれから対策を考えなければならない。

 

 なお、王国のアレコレは、リリアーナ姫や畑山先生、そしてクラスメイトたちに丸投げである。ハジメは壊された大結界の修復をするらしいが、それ以降は深く関わる事もないと告げていた。

 

 本来なら神山にだけ足を運びたかっただろうに、わざわざ俺の頼みを聞いて駆けつけてくれたのだ。俺に口出しする権利はない。当然、他の人たちも、だ。

 

 クラスメイト、特に八重樫は一瞬何か言いたそうな表情を浮かべた。だが、日本に住んでいた頃であったり、異世界へ来たばかりの頃、天之河の言葉に踊らされた負い目があるのだろう。あるいは、近くにいながら止められなかった負い目か。

 

 空が白み始めるまで、俺たちは報告と今後の方針について話し合っていたが。結局、クラスメイトとハジメがマトモに会話する事はなかった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 ソウさんの家へ戻った俺は、優花と一眠りしてから早速中村の件について動き始めた。

 

 念の為、ルウさんの面倒を優花に見てもらっている。下手に彼女のトラウマを刺激するような事態は避けたい。

 

「なるほど。ルウを襲ったあの偽祈祷師に罪を償わせるため、敢えて生かしたんですか」

「ええ。ひとまず彼女は、自我こそハッキリとありますが、自分の言う事に逆らえない状態です。敢えて言葉を選ばないなら、奴隷のような感じですね。被害者や遺族全員への謝罪行脚で自身の犯した罪を自覚し、一生涯背負って償い続けると彼女が考えるようになったら、解放するつもりです。その前に、自我が盛大に壊れるかもしれませんけど」

 

 ソウさんは、腕を組みながら難しい表情を浮かべて考え込んでいる。

 

 最終的にルウさんは助かったが、彼の胸中には晴れる事のない強烈な怒りと憎しみの炎が未だ燃えている。直接手を下した檜山と、その元凶である中村。そして、ルウさんを守れなかった自分自身に対して、である。

 

「……コースケさん。偽祈祷師と、会話をする事は可能ですか?」

「もちろんです。仮に奴が襲ってきても、すぐに私が止めますね」

「頼みます」

 

 指輪に魔力を流し、中村を外へ取り出した。その際に「〝起きろ〟」と命令した事で、すぐに彼女は目を覚まして跳ね起きる。

 

 中村はソウさんと俺の存在を認知すると、目をキュッと細めた。

 

「……何さ?」

 

 脱兎の如くこの場から逃げ出す事も考えたようだが、すぐに諦めたらしい。少なくとも今は、俺から逃れる術はないと認識したようだ。

 

 ソウさんはそんな中村を見て、何度か深呼吸をしてから口を開いた。

 

「貴女に、聞きたい事があったので」

 

 落ち着いた口調で。しかし、瞳の奥に宿した憎悪の炎は絶やす事なく、ソウさんは中村を見つめる。

 

 憎まれようが、恨まれようが気にしていないのか。中村の口の端は冷たく笑ったままだが。

 

「ルウを殺し、僕を殺して……いや、僕以外にも多くの命を奪ってまで、何としてでも手に入れたい男がいたと、彼から聞きました。その男について、教えてくれますか」

「はあ?」

「人道から外れてでも手に入れたい男の、どこを貴女は好きになったのか。男の概要は既に聞いていますが、貴女がどんな風に想っているのか。それが、気になったので」

「ハッ、光輝くんの良さを知らないなんて、君は本当に可哀想な人だねぇ。良いよ、特別に答えてあげる」

 

 そうして始まった、中村による「ボクの光輝くん」談話。

 

 ご丁寧に、一目惚れした時の事からベラベラと熱っぽく話す中村を、ソウさんは凪いだ目で黙って見ていた。

 

 曰く、顔が好きだと。均整で男前、加えて甘さを感じさせる顔面が。

 

 曰く、王子様のような立ち振舞が好きだと。無論、自分にだけ向けられた物が、であるが。自分だけに向けられた事は、一目惚れした時の一瞬だけだと言うのにな。

 

 曰く、彼は優しいから特別を作れない。だから、男の周囲に群がるゴミ共を排除しなければならない。

 

 その後も、熱に浮かされた表情で天之河を語る中村。ソウさんが口を挟まなければ、そのまま永遠に喋り続けそうな勢いだった。

 

「……良く分かりました。もう結構」

「おや、ボクはまだまだ語れるんだけど?」

「これ以上、敢えて聞く必要はないかと」

 

 いつの間にか、ソウさんの瞳から憎悪の炎が消えていた。代わりに浮かんだのは、深い哀れみの感情である。

 

「さっきから貴女は、表面上の部分についてしか口にしていない。男の概要部分にしか触れていない」

「何だと?」

「もっと、男について掘り下げができるかと思ってました。ですが、貴女が口にするのは、表面上の事ばかりで内面的な物は1つもない。元々、男を形成する情報自体が薄っぺらいのか、それとも貴女に見せてない内面が数多くあるのかは、或いは両方なのかは分かりませんけど。ただどちらにしても、貴女は可哀想な人だと思いますよ、僕は。前者なら単純に男を見る目がないし、後者なら貴女は哀れすぎる。表面上の優しさしか好きになれず、しかもその優しさを独占する事で愛欲を満たそうとする貴女が、ね」

 

 口をパクパクさせる中村。あまりにも無礼な言い方をするソウさんへの怒りと憎しみが、急激に増していったからなのか、言葉が出てこないらしい。

 

 ただ、言いたい事は何となく分かった。

 

「お前に何が分かる」だ。

 

 分かるはずがない。彼女は他人だから。いや、まず微塵も奴の思考回路自体を分かりたくないのだが。

 

「大事な妹を襲って傀儡人形にした上で、僕の命を奪おうとした事は、多分一生許せません。貴女の顔を見る度に、僕は底なしの怒りと憎しみで胸がいっぱいになるでしょう。でもね、この気持ちを晴らすために、貴女を心ゆくまで殴り飛ばそうとは思えない。生き様が、精神性が、歪んだ愛し方しか知らない貴女が哀れすぎて。殴る気が全く起きません」

 

 いつの間にか哀れみと侮蔑の色に染まっていたソウさんの顔は、どこまでも冷たく恐ろしい。

 

 ひたすら冷淡に笑うソウさんに気圧されたのか、中村がほんの僅かだが後退る。そしてそれを認識して、思いっきり舌打ちをした。

 

 今の彼女から見たソウさんは、明らかに格下である。身体が自由に動く状況であれば、羽虫を潰すように、実に簡単に命を奪う事ができるだろう。

 

 そんな彼に、圧倒的強者であるはずの中村が怖気づいた。

 

「コケに、しやがって……!」

「おや、図星でしたか。それに対して暴言を吐く事しかできないとは、一層哀れだし惨めですね。一体、どんな育て方をされたらこんな歪んだ人間性が芽生えるんです? 親がマトモではなかったか、それとも……」

「っ、黙れェ!」

 

 最大級の地雷を踏み抜かれた中村が、我を忘れてソウさんを殺そうとする。

 

 灰銀の翼を背中から生やし、莫大な魔力を解放して。塵の一欠片も残さず消してやると怒りを爆発させた中村に、俺はただ一言。

 

「〝動くな〟」

「ふざけ、るなあアアァ――!」

 

 ピタリと身体の動きが止まる。しかし、それでも構わず前へ前へと進もうとする中村の全身には、ビキビキと無数の血管が浮き出ていた。

 

 身体を動かす事はできないが、力を込める事は一応可能である。もっとも、それ以上の事は起こらないし、無闇に力を込め続ければそのうち筋断裂を引き起こすので、徒に自身を傷つけるだけだが。

 

 それでもお構い無しに力を抜かない中村の節々から、勢い良く血飛沫が飛ぶ。無駄に高い再生能力がすぐさま傷口塞いでいくが、またすぐに手酷く開いてしまうぐらい、延々と力む。力み続ける。

 

 ソウさんは、その様子を見ても特段何か表情を変える事もなく、中村に背を向けた。

 

「ソウさん。もう、良いんですか」

「ええ。殴る価値もない哀れな人間と、いつまでも同じ空気を吸いたくないので」

「分かりました。 ……どうか、ゆっくり休んでください」

 

 軽く笑ったソウさんは、そのまま家の方へ入っていった。

 

 まだ、ソウさんの瞳の奥から、完全に憎悪の炎が消えた訳ではない。だが、随分と下火にはなった。

 

 これでほんの少しだけだが、安心できる。仮に放っておいたら、彼はより一層自罰的になり、自分自身を延々と傷つけ続けただろうから。

 

「さて……次行くか」

 

 未だ暴れようとする中村に、冷ややかな声で「〝脱力〟」と命じて強制的に地べたへ寝かせた俺は、目だけ動かして睨みつけてくる彼女にニッコリ笑いかける。

 

「これでも、彼の対応は相当に優しい部類だからな?」

「なん、らと……」

「これ以降は、被害者が帰ってこなかった家庭へ向かうから、身を持って知ると思うぞ。冷たい言葉だけで済ませた彼が、どれだけ優しかったのか。 ……いや、むしろキツく感じる可能性もあるな。殴られた方がマシと思うかもしれん」

 

 慄いた様子を見せる中村の首根っこを掴む。

 

 無論、彼女はほんの僅かに抵抗する事すら許されない。ダラリと脱力した状態で引きずられるのみである。

 

「ま、精々頑張れ。なあに、終わりはしっかりあるから心配するなよ。 ……前も言ったが、全て終わるまでは、肉体的にも精神的にも死ぬ事は絶対に許さないけどな」

 

 謝罪行脚は始まったばかりである。少なくとも今日だけで、過半数の被害者遺族の元へ足を運ぶつもりだ。

 

 終わりがあるとは言ったが、その道程の果てしなさに、既にエクトプラズムが口から抜けそうになっている中村だが、それを許さず手で掴み取り、叩きつけるようにして元の鞘に収める。

 

 肉体的にも精神的にも死ぬ事は許さないを実演してやった事で、一層深く中村の瞳に絶望の色が広がるが、無視して俺は次の目的地へ向かうのだった。




 謝罪行脚の終着点は、勇者(笑)との対面です。彼はどんな反応するのやら。

マックくんの新たな恋人候補

  • 〝初恋枠〟優奈ちゃん
  • 〝妹枠〟ルウちゃん
  • 〝大穴枠〟恵里さん
  • ハジメくんの嫁候補以外のクラスメイト
  • アルテナを始めとする亜人族の皆様方
  • 〝英雄〟に嫁ぎたい帝国住まいの方々
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