デカグラマトンです、連邦生徒会対策室長をやってます   作:十文字マトン

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Q.装着時にポーズをとる必要は?
A.(機能的に)必要ではないけど必要でもある。


8. あまねく奇跡の始発点〜中編

──それは、もう一つの可能性の世界。

 

 アビドス廃校対策委員会──数億の借金を背負いながらも毎日楽しく頑張っている部活...しかしそれはもう過去の事。

 

 全ての始まりは、対策委員会の顧問である先生が爆発に巻き込まれて意識不明の重体となったこと。まるでそれをきっかけとしたようにキヴォトスの各地で様々奇妙な事件が起きている。その結果、五人だった対策委員会は今では砂狼シロコの一人しか残ってない。

 

 残されたシロコはそれでもみんなとの思い出があるアビドス高校を守らんと一人で頑張っていた。しかし、シャーレの先生にもう蘇生の見込みがない(二度と会えない)というニュースが最後の生きる理由を奪った。シロコにとって自分とこの世界を繋ぐ最後のものであった先生が居なくなったら、自分はこの世界に残る理由がなくなる。

 

「そうか...私は、苦しむために、生まれてきたんだ」

 

 それは絶望ではなく、心の死である。肉体はまだ生きているがそれも時間の問題。守るべき物も、生きる理由も失ったシロコは、静かに(終わり)を受けようとした時......ソレが、現れた。

 

 ソレは黒のように虹のように、全ての光も逃れない漆黒の(名状しがたい色を輝く)球体。【果て無き虚空】、【窮極の原型】──キヴォトスでは【色彩】と呼ばれた非存在が、キヴォトス(物質世界)に顕現した。この惑星を覆うように錯覚するほどに眩しく光る異光は目視だけでも気が狂いそうだが、美しくて目が離せない魅力が感じられる。

 

「【色彩】が、ついに降臨した──」

 

「【色彩】を導いたことが、【苦しみ】なのか【死】をもたらすのかは分からぬ──だが、これで最後」

 

 どこからぞろぞろと現れた全身が白装束で仮面を覆われた謎の人物。それは太古の戦争で破られ、時代に淘汰されるべき旧支配者(名もなき神)の崇拝者──【無名の司祭】。彼らはシロコを気にせずに、まるで勝利を宣言しているように見える。

 

「【忘れられた神々】をこの世界から追放できるようになった...この世界に、終焉を呼び寄せられるのだ」

 

「名が無いために呼ばれず、呼ぶことが出来ない故に存在しない【名もなき神】のように、お前たちも同じ結末へ向かうだろう」

 

「数多の危険があったが、色彩を引き寄せられたのは僥倖だった」

 

「全ての時空から【忘れられた神々】を消滅させねば、我々の運命を再開することが出来ぬ」

 

 しかしソレにとって、自分を引き寄せようとする存在は特別に興味を惹かれないくだらない物にしかならない。そして彼らは知らない、外なる神を召喚した凡人はどのような結末を迎えるのかを。

 

「ふむ、この生物がシロコと呼ばれる個体で間違いないよね?」

 

「?」

 

 シロコの隣には一人の少女...のようなモノが現れた。その虹色に輝いてる長い髪は同時にに全てを吸い込む黒でもある。着ている黒いドレスは宇宙を連想させるように星々が明滅してる。五官と四肢は人間(生徒)と同じように見えるが、誰であろうとソレを見た瞬間に「まともなモノではない」と知る。

 

 外なる神(色彩)を引き寄せた張本人である無名の司祭達ですら心臓が握り潰されたような恐怖を感じる...そして同時に理解した(アイデアロールに成功した)──目の前の少女を姿をしたソレは【自分達の原型】、【まだ生まれていない未来の世界で無名の司祭と呼ばれる理不尽の実体】である事と、ソレが天上にある虹色の球体と同一である事を。

 

「......」数人の無名の司祭がそのまま気絶して倒れた...しかし変に発狂せずに意識を失うことができた彼らは幸運だと言えるだろう。

 

「色彩ちゃん、この方はシロコさんで間違いないです」

 

「それは良かったです。立てますか?」

 

 その少女からは二種類の声が発されているが、口は全く動かずにいる。完全にロボットのような顔ならまだしも、見た目が人間なのに無機質に感じられて不気味さをさらに増している。

 

「う、うん」少女が差し出した手を掴んで、何とか立ち上がった。その感覚は懐かしく、まるで初めてホシノ先輩と会った時のような。

 

「加減できる自信はあんまりないが、ティファレト教官が生物では耐えきれない情報を代わりに処理するので心配要りません」

 

「はい! おまかせあれ!」

 

「...?」シロコが疑問を口に出す前に、少女の手から『何か』が伝わって来た。一瞬だけ痒い感覚が走ったあと、全身の怪我が治った。それだけじゃない、頭の中に存在しないはずの知識が増えている...それは【魔術】という不可思議な事象に関する知識。いくらアビドス高校に入学する前の記憶を持っていないシロコでもこの現象とその知識の異常さは分かる...しかし同時に、()()()()()()()()()()()()()()も脳に入ったので特に疑問もなく受け入れることができた。

 

「どうですか?」

 

「ん、これなら先生を助けられる?」シロコの怪我だけでなく右目の視力も回復したため、右目に纏った包帯は既に意味がなくなった。その包帯を解きながら突然手に入れた知識をまとめている。

 

「そうなります」

 

「一応お姉様からのアドバイスとして、まだ生命として生きている先生はともかく、他の方はシロコさんが本物の崇高(死の神)になってから助けるのがおすすめだそうです!」

 

「ん、我慢する」側からみたら全く意味不明な内容だったが、関連した知識は全てシロコにインストールされていたため自然に理解出来ている。

 

「我が()によると、シロコさんの本質である死の神(アヌビス)は生者を冥界(あの世)に送るではなく、むしろ死した者たちを守護する存在。そして死者を蘇生する事も理論上出来る...らしいです」*1

 

「わかった」

 

「では早速行きましょうか...そうですね、これもあげますか」少女の手から銀色の鍵のような物をシロコに渡した。

 

「おー、銀の鍵ですね! 私達の転送とは原理が全く違いますね!」

 

「でも一回見ただけで()に解析されましたよ?」

 

「お姉様は基準にしない方がいいと思います!」

 

「ま、待てー」シロコを連れてここから離れようとした少女を見て、気絶してない(正気度ロールが成功した)無名の司祭が引き止めの言葉を出した瞬間...その場で倒れた。

 

「ん...何をしたの?」突然出現した謎の集団に対して、シロコは特に興味を持っていなかったが、明らかに異常な技術を行使されたようだから気になってきた...正確に言うと()()方法を使ったのかに興味を持ったようだ。

 

「待って欲しいらしいのであげただけですよ、三日くらい」

 

「...?」

 

「色彩ちゃんさぁ...意識だけ残してなんも出来ない状態で三日も過ごしたら普通の生き物は発狂するよ?」

 

「ええ、知っています。うるさいのでやりました。我の事を直視するのはぎりぎり我慢できますが、あんな舐めた感じで話かけてくるのは不愉快でした。それに()の頼み事を邪魔する真似は流石に耐えられませんでした」この色彩と呼ばれた少女にとって、特別なシロコはともかく興味がない()に邪魔されるのは不快だったらしい。

 

「それは...めっちゃ分かります!」

 

 色彩が何をしたというと、話かけてきた無名の司祭の感覚を完全に遮断して意識だけハッキリさせた状態を72時間維持するようにした。体の感覚は残っているが、まぶたや目ですら動かす事を許されない。そして絶対時間が進んでいないため音と光も届かず、情報の収集を五感に頼る存在ならまさに無に直面する事になる。地球上での実験によると、無音無光の状態で15分もすれば幻聴が始まるらしい。それを72時間も続けたらどうなるのかは無名の司祭だけが分かることだろう...まだ「分かる」という概念を持っているなら。*2

 

「そうか。じゃあ行こう」シロコはそれに対して特に感想を持たなかった。先生が意識不明になる前のシロコなら関係ない人にももう少し心配を向けるかもしれないが、色々経験した後の彼女はそんな余裕を持っていない。

 


 

「ん...出来た」

 

「知識を持ってるとはいえ、すんなり出来ましたね。流石シロコさん!」

 

「確かに素質を感じます」

 

 有名人であるシャーレの先生が入院したという理由だけで最近色々注目されていた病院、その先生が居る病室に唐突に光る門が現れて、そこから二人が出てきた...先程まで砂漠に居たはずの色彩とシロコだった。

 

「お、お前らも先生を見に来た生徒か? 面会は全て拒否したはずなのにどうやってここにぐぅーーー」先生の延命が放棄されたと聞いて先生に会いに来る生徒や抗議する生徒が後を絶たない、ここの警備が堅牢なため病室まで侵入された事はないが、ちょうど居合わせた医者である猫の市民が不法侵入した二人を見て驚いてる。しかし何か言おうとした途端にその場で寝落ちした。

 

「......ん、なるほど、こんな感じね」

 

「え? もう魔術を使いこなせてる? ティ達は結構練習したのに!?」

 

「こちらが先生と呼ばれる生命ですか? シロコ」 

 

「ん、間違いない」延命が放棄されたとはいえ、すぐに生命維持装置を止める訳ではないため、今の先生はまだ生きている...とはいえ喋るどころか、目ですら開けない状態。

 

「ふむ? 申し訳無いですがこの程度も治療出来ないですか? ()なら魔術や権能を使わずとも治せると思いますが」

 

「だからお姉様を基準にしない方がいいって!」

 

「そうですか...ではシロコ、やってみなさい」

 

「うん...先生、すぐに助けるから」シロコは優しく先生の手を握ったあと、魔術の行使を始めた。

 

 シロコが色彩にインストールされた知識には様々の呪文を含まれている。【魅了】、【門の創造】、【魔力の付与】、【鍵なるものの忘れられた唄】......そして【癒し】と、【復活】の呪文も。

 

「"......しろ...こ?"」まるで死体の腐敗を逆再生したように、先生が欠損した部位とプレートに固定された顔が元に戻り、すぐに意識も戻った。

 

「先生...先生!!! うあああぁぁぁああーーーー!!」先生の声を聞いた途端、シロコは感情を抑える事が出来ずに号泣し始めた。

 

「"シロコ? どうしたの?"」先生は戸惑いながら、身体に付いてる器具を外してシロコの頭を撫でた。

 


 

「落ち着きました?」

 

「ん...ごめん」

 

「"色彩が助けてくれたんですね? ありがとう"」先生は特徴的なヘイローを持ってる少女の名前を聞いたとき、アリウス自治区でのベアトリーチェという大人の行いを思い出したが、それとは関係ない娘だと考えた。

 

「感謝するなら我が()に感謝...」

 

「色彩ちゃん、ここは素直に感謝を受けた方がいいですよ!」

 

「なるほど、その感謝を受けます」口が動かないままに自分と会話するのは確か珍しいが、キヴォトスだからって受け入れた。探したら同じことをやってる生徒が居てもおかしくない。

 

「"シロコ、マフラーどうしたの?"」シロコは特に怪我がないか、服がボロボロでいつも着けてるマフラーを着けていないと気ついた。

 

「......なくした」

 

「でしたらホシノ義姉様じゃないホシノさんを生き返らせる時に新しいお揃いマフラーを買いに行こう!」

 

「"いい考えだとおもい...生き返る!?"」

 

「あっ...うん。ホシノ先輩のヘイローが、壊れた。でも生き返らせる方法も覚えた。今はまだ出来ないけど、頑張る」

 

「"ホシノが...私が寝てる間に、ごめん"」

 

「ん、大丈夫。これから一緒に頑張ろう」

 

「シロコ、後の事は頑張ってくださいね、何かあったら呪文で我を呼んでもいいですよ」

 

「うん、色々ありがとう、この鍵、大切にする」色彩からくれた銀色の鍵は今ネックレスとしてシロコの首に着けている。見た目はただのアクセサリーだが、太古の教義より貴重な物でもある。しかしそれと関係なく、恩人からくれた物だから以前のマフラーと同じくらい大切にするとシロコが決めた。

 

「では我はこれで帰ります」色彩はスカートを摘まんでお辞儀をしたあとその場から消えた、まるで最初から居なかったように。

 

「"謎が多い生徒だったな..."」

「"ではシロコ、これからやる事が多いので、手伝ってくれる?"」

 

「ん、もちろん」

 

 こうして、また一つの可能性が違う運命に歩き始めた。

*1
アヌビスは大衆文化中の死神と違って、生者の命を奪うではなく死者の魂をオシリスの裁きの間に送るのが仕事。さらにオシリスをミイラから復活させた事もあることから「命を奪う神」とは真逆の神

*2
これは間違いなく邪神、なお結構手加減をしている




先生(天使外装)とプレナパテス(サイボーグ)に続き、シロコ(銀の鍵)爆誕!!
犬に嚙み殺させることはないのでご安心を!

魔術って?
魔術です。

メイちゃんの壊れ具合はみんな知ってるけど、こいつも大概ですね。むしろ人の心を持ってない分もっと危ないかも。

...シロコに魅了の呪文をあげるの大丈夫?
ん、大丈夫に決まってる

色彩→シロコ(銀の鍵)
友達に頼まれてペットを世話する感覚

色彩→むめの...?
誰?
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