デカグラマトンです、連邦生徒会対策室長をやってます   作:十文字マトン

155 / 222
水着サオリと水着ヒヨリ?
そんなキャラはなかった(?)


25. (空崎)(天空)〜後編

「「......」」

 

「うへ、お先にどうぞ~」同じタイミングで喋ったせいで同時に黙った後。ランニングマシンの音、自分の呼吸音、そして足音だけが聞こえる沈黙を破ったのはホシノの方...危ない、あと数秒待ってたらまた同時に喋る事になっていた。

 

「...渡されたシェマタの部品は、風紀委員会と万魔殿、それと正義実現委員会、エデン条約機構の立ち会いの元に破壊した」正式な報告はそのうちアビドスに送るから今言わなくてもいいのだけど、話題としては悪くない...多分。メイは何を話しても楽しそうに聞いてくれるから正直そこは良く分からない。

 

「うん? 思ったより慎重だね」少し前までならトリニティに知らせる事なく風紀委員会と万魔殿だけで処理できた。正式に平和条約を締結した今は相手にも今のゲヘナのスタンスとして雷帝の遺産を破壊する意志を見せた方がいい...と、メイに言われたので。まあ、トリニティにも雷帝を危惧する人も多いから安心させるのは悪くない。

 

「アビドスは直接雷帝の影響を受けていないから、彼女の遺産をよく知らないかもしれないけど...ゲヘナが『どんな勢力でも雷帝の技術を隠し持ったらゲヘナの敵として見なす』と宣言するくらい重要な物よ」

 

「あれって、そんなにやばい物なの? 確かに強い兵器ではあるけど、この前怪獣と戦った時も、何かみんな凄そうな兵器もってるなーって感じしたのに」

 

「アビドスが担当してるオデュッセイア方面は確か...レールガン艦【トリアイナ】か」

 

「そうそう、あのめっちゃでっかい船~」

 

 すでに風紀委員長から引退した身ではあるが、同じ情報収集に長けているシスターフッドと共にあの戦いを調べていた。全長百メートルを超える超大型レールガン...オデュッセイアが変な軍用艦を作るのはほぼ伝統のようなものだが、流石に今回は多少驚いた。あいつらはギャンブルと軍艦にしか興味がないから、多分作っても別に何に使う訳ではない。それに船である以上陸地の学校の領地を侵害する可能性もかなり低い。どちらかというとクロスグループの機械怪獣【メカペロロジラ】、ミレニアムの大型ロボット【ハブ】......そして、十文字アリスが使った謎の現象【アトラハシース】の方が危険性が高い。

 

 特にアリス、詳細は公開されていないが明らかに一個人が扱うには強過ぎた力。もしアリスが十文字じゃなかったらどんな手を使ってでも手に入れようとする勢力が居てもおかしくない。まあ、流石にキヴォトスのトップ企業と次期連邦生徒会長を敵に回したいアホはいないだろう。仮に居たとしても実行する前にメイに止められるはず...いや、敢えてアリスに遊ばせる可能性もあるかな? とにかくアリスの安全は保障されているからあんまり心配しなくていい。

 

「同等の技術ならキヴォトスにいくらでもあるけど、【雷帝の遺産】だけは残してはならない。雷帝が活躍した時期、自分の技術をオデュッセイアやミレニアムのように厳格に管理することはなく、むしろ各自治区にばら撒いてた...未だにその意図は不明だけど。今回のように雷帝にとって何のメリットもないのに廃棄されたシェマタを勝手に改造してアビドス砂漠に隠した。もしカイザーに見つかったら、あの攻防戦で使われるかもしれない」まあ、仮に使われたとしてもメイが居る限り大丈夫だと思うけど...()()()程度なら。

 

 雷帝の遺産の何がいけないかというと、あれは解析できないオーパーツではなく成熟した技術だということ。メイによると「無名の司祭や別の系統の技術を使ってなくて完全にキヴォトス現代技術の延長、でもちょっとだけオーバーテクノロジーに足を踏み入れてる。二年前のゲヘナは魔境かよ、こっわ」との事...最後のはいらなかったかな。

 

 その技術が洗練され過ぎているせいで、良くも悪くも「わかりやすい」。どの勢力の手に渡っても簡単に解析して自分の物に出来る。もしシェマタがカイザーに発見されたらすぐにその有用性に気付くだろう。

 

 列車砲の量産はまだいい、どうせ鉄路がないと他の自治区への侵攻に使えないから。問題はその技術を列車砲ではなく他の兵器に転用された場合、もっとめんどくさい事になる...雷帝が自分の技術をばら撒く理由も自分の技術が他人の手によってさらに進化するのを期待しているからかも。だから私とマコトは雷帝の技術を使った物なら、本人が作ったか技術を転用して作ったかを問わずに絶対破壊すると決めた。

 

「うへ、メイちゃんが簡単に手放したからそんなに大した物じゃないと思ってたよ」

 

 列車砲シェマタ──昔のアビドス生徒会とネフティスグループが秘密裏に建造した...正確に言うと建造しようとした超兵器。技術的に実現不可能と判断され廃棄されたが、どこかでその情報を知った雷帝が放置されたシェマタを完成させて運用可能な兵器にした。幸い、そのことはアビドス生徒会やネフティスグループ、さらに当時砂漠の所有者であったカイザーグループを含めて誰にも知らされなかった。単純に雷帝が完成させた後興味がなくなったのか、わざと放置して誰が一番先に見つけるのを楽しんでいたのかは本人しか分からない。

 

 放置されたシェマタは、クロスグループの砂漠横断鉄路プロジェクト再開に伴う現状確認の時見つかった。普通の企業や学校ならこれ程の兵器を発見したら自分の物にしたがる、最低でも解析したいだろう。今までも雷帝の遺産を他の勢力から回収するときは苦労した...主にマコトが。しかし今回はメイ...クロスグループ側から「元の設計の方が好きだから別にいらない」と良くわからない理由で雷帝の技術を使った部分──動力と主砲の発射機構を含めて列車砲にとって一番重要な部分をゲヘナに返した。

 

「...あの人にとって雷帝の技術の価値はせいぜいコレクション程度でしかないのだろう」

 

 何せ、雷帝の技術は危険ではあるが「高い破壊力」や「強力なエネルギー源」など、方法と原理はともかく結果はまだ「現代技術の延長」。対してメイが持ってる技術、私が知ってるほんの一部でも既に効果だけで意味不明なレベル。天体の自転と公転を直径数センチの物に内包するとか聞いても意味わからなかった。そんなメイにとって雷帝の技術は珍しい物というだけで戦略的な価値はそう高くないだろう。

 

「まあね、その雷帝ちゃん? の物を使わなくても作れたね...あれ? ()()シェマタは大丈夫なの?」

 

 核心の物を全部抜き取ったあと、ほぼ車体しか残らなかったシェマタはクロスグループによって再建造された。もう廃棄して新しいのを作った方が早いはずなのに、メイに聞いたら「見た目は好きなのでこのままで」...らしい。その結果は人による運転以外にもAI自律と遠隔操作を切り替えできる高速列車砲【シュヴェラー・シェマタ】が完成した...メイはやっぱり自動化させるのが好きね、この前ラーテが貰ったプログラムは万魔殿の戦車隊が引くほど優秀だったらしい。

 

 主砲に関しては雷帝のプラズマ砲から元の設計であるカノン砲に戻した。対応した砲弾最大射程480キロメートルロケット補助推進弾...砲弾自体は車内に厳重にロックされており、アビドスの承認がないと自律AIも使えないと聞いている。逆に言うとアビドスの領地を侵害する敵が居たら直ぐにも1トン以上の爆弾が飛んでくることを意味する。

 

「雷帝の技術さえ使われなかったらゲヘナは関与しないわ、自治区の武装権はキヴォトス共通宣言と連邦生徒憲法に保障されているから。雷帝の技術に関してはゲヘナから流出した物だからこそ権力の主張が出来る...それでも回収するのは大変だったけど」

 

 雷帝の遺産のいざこざは特定の技術に対してだから、少し強引な手段を使っても「学校間の紛争」で収める。しかしゲヘナが他の学校に武装の解除を強要するとなると話が変わる。連邦生徒会からの非難は実質のデメリットがないから別にいいとして、ゲヘナを攻撃出来る名目を探してる勢力が居たら「憲法を違反したゲヘナを制裁する」とかで校際連合を組織してゲヘナに戦争を仕掛けるのもありえない事でもない。

 

「うぇー法律とかおじさんは分からないよー」

 

()()()()の事のためにも少しは勉強した方がいいわ」

 

 これまでまともな自衛能力を持ってなかったアビドスも今や下手に手を出せない武力を確保した自治区の仲間入りだ。そしてゲヘナの地熱発電や原子力より遥かに効率がいい電力施設も出来ているらしい。これで横断鉄路が完成したら環境、エネルギー、軍事と交通が揃う。あとは例のアリウスが治安維持組織として配置されたら自治区としての機能はほぼ完璧。前とは全然違う形ではあるが、アビドスの復興は目に見えている。

 

 復興とは管理の難易度が上がる事をも意味している。これまでのアビドスは広いだけで固定住民が百人もないような自治区だったから、アビドスの生徒会である対策委員会は万魔殿よりは風紀委員会のような実働部隊に近い組織構造で対応できていた、しかも少人数の。これから実働部隊はアリウスが担当になるから、対策委員会も相応の上部組織になる必要がある。トップである小鳥遊ホシノと梔子ユメももちろん政治や法律に関しての知識がないといけない。

 

「その時はヒナちゃんに助けを呼ぶとしよっか〜」

 

「私もまだ勉強途中だから、呼ぶならメイの方がいいわ」多分メイも数年間アビドスをサポートする予定だろうし。

 

「でもほら、メイちゃんに頼むのはちょっと恥ずかしいというか...」

 

「...それはちょっとわかるけど、ならなおさら勉強した方がいいのでは?」メイの能力は疑いの余地がないけど...なんというか、迷惑をかける可能性があると考えると頼むのにちょっとだけ抵抗がある。もちろん本当に必要な時なら素直に頼んだ方が結果的に迷惑にならないのは知ってるけど、出来る限り心配させないように自分でも処理できるようになりたい。それに...その、褒められたいので。

 

「ヒナちゃんはまだ若いから。おじさんはもう年だから新しい物を勉強するの大変だよ~」

 

「...年、同じよ」

 

 小鳥遊ホシノ。二年前からその存在を知って、去年でさらに彼女の事を調べたが、実際会ってこうして話すようになったのはつい最近の事。二年前と比べたら別人と思えるくらい変わっている。もちろん高校生なら二年もあれば肉体が成長するのは珍しい事ではないが、そういった変化ではない...むしろ体格と見た目自体は全く変わっていない。

 

 全体的にのんびりをした雰囲気、「おじさん」という謎の自称、意外と不器用な手先、常に他人に察せられないように気遣い、言動は適当に見えるが実はかなり真面目。人の前でも遠慮なくメイに甘えるメンタルは少し羨ましいものではあるが、思ったより普通の女の子だった...やはりその強さはどこからくるのか分からない。もちろん戦闘での強さではなく心の方面。

 

「...それで、何か用?」

 

「いやーそんなに大した事じゃないけど...最近のヒナちゃんって、何かずっと私に何か聞きたい事ありそうな気がしたけど、気のせいかな?」

 

「...そんなに分かりやすかった?」

 

「まあね、毎回熱い視線向けられるから。メイちゃんという世界で一番かわいい彼女を持ってるヒナちゃんじゃなかったらおじさんにその気にあるのと勘違いしちゃいそう」

 

「それ、自慢にも聞こえるよ」

 

「それは自慢したくなるよーヒナちゃんも同じでしょう?」

 

「...分かるけど! そ、その...流石にちょっと恥ずかしい」

 

「懐かしいね、おじさんが若い頃もそんな感じだったよ〜」

 

「だから、年が同じ...」

 

「で、何を聞いたいの? おじさんが知ってる物なら答えるよ?」

 

「...気を悪くするかもしれないけど、それでもいい?」一度ランニングマシンを止めて、小鳥遊ホシノに正面を向けた。それなりにデリケートな話題なので相応の態度をとらなきゃ。

 

「うん? いいよいいよなんでも言って。おじさんのメンタルは女子高生と違ってそんなに繊細ではないよ」私の行動を見たホシノもマシンを止めた。

 

「だからあなたも女子高生...まぁいいわ。小鳥遊ホシノ、あなたはどうして、大切な人を失っても心が折れなかったの?」

 

「えっ? あーユメ先輩の事?」

 

「そう...梔子ユメはあなたにとって、とても大切な人。それなのにどうして彼女が亡くなった後もアビドスに残っていたの? どうして一人になっても頑張れたの?」ホシノと知り合いになってまだそんなに長くはないが、親しい人や仲間の死を気にしない人ではないはず。

 

「うへ、何を聞きたいのかはちょっと理解した。うーん、一番大きな原因はまず、私がユメ先輩の死を受け止めてきれていなかったからかな? いや自分でもどうにかしてたと思うよ? もう目で見て、手で触って確認して、頭ではユメ先輩が死んだ事を認識したのに、何故かそれを現実ではなく悪夢だと思ってた...まあ、結果的にこの『信じない』気持ちがユメ先輩を助けたんだけどね」

 

「...なるほど、精神を守るための現実逃避ね」事実を直視しないことを良く思わない人も居るかもしれないが、私はそう思わない。実際、その現実逃避をしたホシノは自暴自棄にならずに、自分の学校を守り抜いた。それを他人に何か言われる筋合いはない。

 

「それからは...ほら、もし私が逃げたら、ユメ先輩が見たら失望するかなーって」

 

「失望する?」

 

「そう。ヒナちゃんの場合は...ほら、もしメイちゃんが何も言わずにちょっとだけキヴォトスから離れた事にしよう。ちょっとだけ会えないからってヒナちゃんが自暴自棄になったら、メイちゃんが戻った時失望...あの人が誰かに対して失望するのは想像出来ないけど、流石にちょっと悲しむんじゃないかな? だから一年でも十年でも、また会う時のために頑張ってみた。バカだよね? もう亡くなった人なのに」

 

「そうか...分かった。やっぱりあなたは強いのね」

 

「うへ、それ程でもないよ。少し前まで毎日悪夢を見てたし、たまにユメ先輩が生きてる夢も見たけど、起きた時に現実との差で毎回吐きそうになった。もしメイちゃんが居なかったらどうなってたのか想像もしたくないよ、なんか私がめっちゃやらかした世界(可能性)もあるってメイちゃんから聞いたしね」

 

「それでもあなたは頑張った。別の世界(もしもの話)は関係なく、ここにいるあなたが頑張った...小鳥遊ホシノ、私はあなたのような強い人になれない。今の話も、もしメイが消えたら、例え戻る可能性があったとしても私は絶対立ち直れない...だから、そんな事をさせないように頑張る」

 

「それはおじさんも同じだよ〜と言うか最近毎日メイちゃんと通話してるから、もし本当に会えなくなったらおじさんもどうにかなるかも」

 

「フフ、そうね......ではホシノ、これからも一緒にメイの隣...かなり長い付き合いになると思うから、よろしく」初めてのホシノと会った時と逆で、今回は私から右手を差し伸べた。

 

「うへ、ヒナちゃんも、改めてよろしくね」ホシノも右手を出して、私と握手をした。

 

 ありがとう、私の(ライバル)よ。これで完全に吹っ切れた...私はあなたのようにはなれない。しかしなる必要もない、いまこうしてメイと仲良くなったのは他でもなく、【私】だから。

 


 

「あのー? どういう状況?」ケイちゃんによって『あと5時間寝る』作戦が粉砕されて起こされたあと、ニコが朝食を用意してる間になぜか朝の運動を終わえてシャワーも浴びた後のヒナとホシノに囲まれて左右から抱きつかれた、なんで? めっちゃいい匂いしてるからいいけど!!

 

「メイちゃん、好き♡」「わ、私も...メイ、大好きよ」そして何故かずっとこんな感じで謎の競り合いをしてる、でもこの二人の間の雰囲気は悪くはなくむしろ前より仲良くなった気がする。しかもヒナは普段、二人きりじゃない時はこんな積極的じゃないのに、一体何か起こったの!?

 

「えへへ、我も二人の事大好きよ♡」まあでも楽しそうだからいいっか!




おもったよりホシヒナじゃなかった(?)


何でも自動化されるメイVS何でもプラズマを使う雷帝

Q.自分の過去を全て受け入れるメイは過去を受け入れない人をどうも思ってる?
A.その「過去を受け入れない」という結果も全て我が認める!
なんだこいつ?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。