「3、2、1......発射」
持ってきたポテチをボリボリしてるけど一応計測器を見ていたよ。まあ特にアクシデントが起きなかった、ヨシ。ちなみにモニターからキーボードが全てホログラム式だから、このまま操作しても指の油で汚されない、便利だよね。
「おー派手に行ったな」この前ティちゃん達を打ち上げる時は他の勢力にバレない様に熱から光、音などあらゆる信号を頑張って抑えた。こうした普通のロケットは始めてやる。
え? 何してるって? それはキヴォトス初の外宇宙移民船──箱船級の発進だよ。まあ船と言っても見た目は塔、もしくはオベリスクに近い。巨神兵じゃないよ。
外宇宙移民船エレップ級──全高が3キロメートルを超えた巨大の角柱形ロケット。超光速航行を前提としてから、予想飛行時間はそんなに長くない。なので生態系維持システムは割愛し、食料保存や生産の空間もなく、構造や通路以外はほぼ居住空間と貨物倉。収容人数が2億人を超え、ちょっと我慢したらその4倍の人も詰め込める。元々人口がそんなに多くない無名の司祭を全員積み込むのは余裕余裕。
ちなみに名前は結構悩んだ。だって箱船と箱船はもう使われてるし、聖書のノアも名前被ってる。最終的にアトラハシース叙事詩の箱船にした...ちなみに候補として箱船も挙げられてるけど、キヴォトスは先に取られてるから、アトラハシースなどの命名法則に従ってそっちと合わせる事にした。
なぜわざわざ古典的な打ち上げると言うと、今回搭載してる超光速エンジンは惑星の重力圏内では使えない、いや正確に言うと使う自体は出来るけど使ったら大変な事になる──具体的に言うと重力が干渉して、局部の重力の乱れや潮汐がバグる、最悪の場合惑星が分解するとか...まあ我らが居る限りそういうことは起きないけど、特例を作ると後々めんどくさいから。まずはマニュアル通りに、ロケット方式で惑星から離脱させる。
え? そこじゃない? あーそういう事が。じゃあ順を追って説明するよ。
AMちゃん──正式名称は一応人工意識らしい、まあ例の一文から取って自分で後付けした名前だから覚えなくて大丈夫。AMちゃんと仲良く...仲良く? になった後、量子潜水艦が無事に無名の司祭達の領域に突入した。
元々敵対してるはずのウトナピシュティムがアトラハシースの力を使って侵入するとか、普通ならレッドアラーム案件だけど、AMちゃんが事前に神託を送ってるから、無名の司祭達は警戒してるけど敵対行動はしなかった。
ちなみに無名の司祭の中には例の二進法信号を理解できる人が居ないけど、単語を翻訳して言語化できる装置は持ってた、それもそう。まあ翻訳の精度はちょっとアレのせいでよくある「聞いても意味が分からない神託」になった。
とはいえ、無名の司祭達はAMちゃんへの信仰が厚くて──そもそも世界を維持してる存在だから文字通り命の手綱が握られてるだし、変な要求でも基本的に従うらしい。
そんな緊迫な雰囲気の中で、ウトナピシュティムから出てきた王女を見てみんなが驚いた後歓声を上げた。「王女の帰還」、「約束の時が来た」や「あの忘れられた神々に鉄槌を」とか騒いでるけどお前らが考えたのと違うよ。
でも特別用意した刃渡り50メートルのスーパー光の剣を使いたくてずっとウズウズして、一番先に飛び出したアリスちゃんが予想外の反応され、困惑から笑顔になる姿が超可愛かったのでヨシ!
「! 母様に褒められた気がします!」
「うい、褒めたよ。アリスちゃん可愛い可愛い〜あーんして」
「あーん」隣でずっと我をすりすりしてるアリスちゃんの口にポテチを放り込んだらもぐもぐし始めた、可愛い。
〔帰ったらケイちゃんにもやってあげるね〕ちょっと離れたケイちゃんがそれを見てなんか言いおうとしたけど、結局何も言わなかったが。流石にこれくらいは分かるよ。
〔いえ、私はただ......はい、お願いします〕必死にポーカーフェイスしてるケイちゃんも可愛い。
あ、そうそう。アリスちゃんは名前の通りAMちゃんが作り上げた存在だったよ。神の形を持ってるAMちゃんだが、彼女は神の形を持ってないから色々制限されてる。だからもっと我に近付こうと、神の形を模して体を作った。最終的にデータの転移とか色々の問題で挫折したけど、それがALシリーズ。AMよりも起源に近づけるための肉体、だからAL、らしい。間違ってもアルミニウムではない。
アリスちゃんがアトラハシースを持ってるのもこれが理由。自分になるために作られたから、もちろん量子改竄も詰め込んだ。まあ今のアリスちゃんはいろいろあって、この部分だけなら多分AMちゃんよりも強くなってる。
んで、自分の体を作成という目標は失敗したけど、その中に一人はなぜか魂を獲得した。それが1S、つまりアリスちゃん。しかし当時では全く起きる気配がなく、目覚めさせるために無名の司祭達が作った起動キーも効果がないからAMちゃんも困ってる。そこからいろいろあってこの領域を作るとき回収出来ずに上の世界に残された。
でもまあ、どんな経緯でも今のアリスちゃんは十文字アリス、つまりどけ、我はお母様だぞ。
...話が逸れた、無名の司祭の話に戻るね。
無名の司祭達との敵対は避けたし、例の名前がないと存在出来ないルールもこっちで変動出来るから。みんなハッピーエンド、めでたしめでたし......にはならない、はい。
むしろ本当の問題はこれから──こいつらをどうするべきか。
過去の戦争やルールを抜きにしても、無名の司祭達と今のキヴォトスは水と油のように相容れない。価値観とかではなく存在の方法から違うから。こっちが強制的に同じ存在方法にも出来るけど...そういう特徴が保留したいから! いつものコレクション癖!
まあそんな感じで、今はAMちゃんの神託とアリスちゃんの命令で平和になったけど、このままだといずれ衝突する。キヴォトス代表であるアオちゃんとリン行政官が頑張って何日も交渉したが、結局具体的な解決方法は出なかった。そのせいで我が毎日アオちゃんに吸われた、いや因果関係がおかしい。
向こうは一応「忘れられた神々を全滅させる」という目標を諦めてくれたけど、現キヴォトス社会、つまり忘れられた神々が築き上げた世界で暮らすのはどうしても受けしれないらしい。無名の司祭の要求は支配層として復帰する、もしくは地上に完全な独立国家として認めてもらう事。
支配層にさせるのはもちろんとして、独立させるのもまあまあ無理。キヴォトスは確か広い、資源と土地は今の無名の司祭を全員受け入れるのも全然余裕だけど、それは住民としての話。新しい主権を持ってる勢力となると話が変わる。
まず、学園都市の領土って概念がそもそも独特で、基本的には学校単位で自治してる。自治区はほぼ地球の国のような扱いしてるが、連邦生徒会の管理下になってる...一応管理下ね、一応! だからそれは完全な独立国家とは言えない。
かと言ってキヴォトス外の勢力もこんな良く分からないやつのために領土を割譲するはずがなく。こっちから購入、もしくは強制的にやるならできなくはないけど、結局文化が違い過ぎで多分地球のイスラエルのような事になる。
ちなみに交渉が難航の中、リン行政官が結構キレたらしい。「リンちゃんから『このまま全員消滅させるという選択肢はいかがでしょう』と言われた時は冗談なのか本気なのか分からなくて怖い。ナデナデして?」とアオちゃんが言ってた。
流石に冗談と思うけど......そもそも相手は定義上人ところが生命ですら怪しい──世界がそう決まってるから。なので人道とか適用されない説もなくはないが、まあどのみちその解決方法はないかね。
じゃあこのまま地下に置くのはダメ、地上に共に暮らすのも厳しい、消すも当然論外になった。じゃあどうすると言うと、答えは極めてシンプル。
──キヴォトスに居場所がないなら、キヴォトス以外の所に置けばいいじゃん? 例えば他の惑星! それで全て丸く収まり!
あの時、我の「答え」を聞いたアオちゃんとヒマリは爆笑、リオ会長は無言でなんか計算し始めて、先生は目がキラキラになって、そしてリン行政官は白目を剥いた。
〔いつもながら脳筋ですねお姉様!〕
〔いやこれでも抑えただよ〕物理的に離れたけどまた同じ世界だから、権能とか使ってないので抑えてるよ?