デカグラマトンです、連邦生徒会対策室長をやってます 作:十文字マトン
「門主様! 話は聞いたのだ! 本当に申し訳ないのだ!」ドアを勢いよく開けて飛び込んできたのは、灰色の髪と大きなネズミ耳を持った少女──山海経錬丹術研究会の部長、薬子サヤだった。
「貴様が! 門主様と姉貴を変な薬を飲ませようとしたのは!」
──そしてそれを阻むのはスーツを着てる玄龍門の構成員。今でも銃を取り出しそう...いや、すでに数人が銃を構えてる様子から見るとかなり怒ってるのが分かる。
「落ち着け、ミスだと言っておるじゃろ? それに毒見役も発見出来なかったから此方にも落ち度がおる」そしてこの場を支配するカリスマは放つチーパオを着てる女性は、玄龍門の門主である竜華キサキ。
「とにかく、今すぐに身体の検査と解毒薬の制作をするのだ」
「執行部長をあんな可愛らし、ではなく、あんな酷い姿に変える薬を盛った錬丹術研究会を門主に近づけるわけないだろ!」
「ほかの被害者がいるのだ!? と、とにかく今すぐ解毒薬を用意するのだ」
「なんか大変な事になったね、もぐもぐ」剣呑な雰囲気になってからずっと黙った少女が口に出すと全員が一瞬の沈黙を訪れた。その少女の身分だけでなく、その行動にもインパクトがあるため。
「......」「......」
「あの、ぼく様から言うのもなんだが、この場面で食べ続けるのはどんな神経なのだ?」
「ん? スープ以外は混じってないし、他の料理は安全だから食べないと勿体ないじゃん」金属の様に銀色輝く長い髪を持つ少女──十文字メイが騒ぎの中でずっと料理を食べている。
「ふむ、若返りの秘薬、のう」流石にキサキも初めて聞いた秘薬に多少驚いたようだが、まったく表情に出なかった。
「そうなのだ、担当の部員が肌を美容する秘薬と肌を若返りの秘薬を間違ったのだ」そんな無表情のキサキの対面で必死にいろいろのフラスコで調合してるは、めっちゃ申し訳なさそうなサヤさん。
我も直接見るのは初めてだけど、一応錬丹術研究会の「自称錬丹術」の内容を把握してるが...それ、錬丹術よりは錬金術に近いかな? しかも設備も結構近代化してるからもう普通に化学と言っていい気がする。
錬金術の目的である「
──まあ貴金属の錬成は今のキヴォトスでも出来なくはないけどね!
実は地球の近代まで不可能と言われた黄金の錬成は普通に出来てる。粒子加速器によって水銀から陽子を一個外せたらなんと不思議、そのまま黄金になる。
...まあ地球より数世代進んでたキヴォトスの技術力を持ったとしても、水銀を黄金にする行為はコストとか比べて効率が死ぬほど悪いからやる意味がまったくないけど。
話が逸れた、とにかく過去の錬金術は物質の変化を観察し、試行錯誤を重ねながら理論を構築しようとしたから、未熟ながら一応「科学」と言える。それに本物の神秘が存在してるキヴォトスでは稀に「本物」が誕生する、例えばカイやサヤさんとか...どっちも錬金術ではなく錬丹術を名乗ってるけど。
元々の錬丹術は仙術由来なもので、
簡単に説明すると物を燃やすのは燃料と酸素が必要だけど、分かりやすい燃料だけ使って空気がない空間で火を起こそうとしてる事。
まあここまで聞くとなんか胡散臭い物だと思われるが、由来はともかくその結果を雑に言うと「薬材を混ぜて
こっちもこっちで化学の前身といえるが...使う素材や錬成の方法は全部経験から推測してるから、相対的に嘘というか
過去の錬丹術研究会もそのくらい雑な部活だけど、長い歴史でしっかり進歩したら結果、やっぱりというか化学に収束した。それと本人があんまりしないけど、丹薬以外の物も作れるからますます錬丹術のイメージと離れてる。まあ普段作るのは薬で、最終目的が不老不死の秘薬ならそのまま錬丹術を自称してもいいかな。
現にサヤさんが若返りを実現してるし、カイの「仙丹」ももう少しで完成するから。とっちも本物の不老不死にはまだ遠いだけど、明らかに普通の化学を超えてるので、キヴォトスの錬丹術は間違いなく本物。
まあカイの仙丹はちょっと体に過激すぎるから普通の人は飲むと寿命が逆に減っちゃうし。それに本物の「仙人」を目指すのは、先ほども言った通り錬丹術だけでは達成できるはずがない。なのでカイの仙丹は薬効を耐えたとしても「長命」くらいだけで成功とはいえない...それはそれで凄いと思うけど。
「なんでそんなややこしい名前にするの?」と、それはそれとして、丹薬の名前がややこしいだよ。なんだよ肌を若返りの秘薬。
「こっちも最初は肌を美容するための『肌を若返りの秘薬』として作れたのだが、実際使ってみたら体まで若返る効果があるのを発覚したのだ」
「めっちゃすごいけどネーミングを直した方がいいよ!」
あはい、いつもの
〔メイ様は元から幼女と思いますが〕
〔だから良いです!〕〔わかる〕どういうこと??
「もんしゅさま~これあげます!」と、となりの緑髪の幼女はなんか紙で折った銃をキサキに差し出した。
「ほう、これはなかなかじゃ。流石じゃのう、
「えへへ」
──そして見たら分かると思うけど、執行部長の近衛ミナさん
〔なんですって!?〕いやお前は知ってるだろ。
どうしてこうなったというと、キサキがそろそろ山海経を他の学校と交流会をやりたいので、我に意見を求めた──と言うのはいつもの建前で遊びに来た。連絡だけならネットで十分だし。
で、いつも通りにキサキがいっぱい料理を用意してくれたのでもぐもぐしたら、特製薬膳スープが出された。何でも、錬丹術研究会が作った「美容効果がある成分」を入れた特製スープらしい。ちなみに薬膳スープ特有の苦みがなくて結構おいしかった。
が、中の効果は美容ではなく...いや美容とも言えるが? まあ強すぎるだけで一応美容ともいえるか。具体的に言うと肌と内臓だけでなく、肉体そのものが若返り出来る効果を持ってた。しかも効果が発揮するまでに少し時間が掛かるので、事前に毒見をしたミナ執行官が異変を感じた時、我とキサキはすでにスープを飲んでいた。
そう、去年のカイ事件で山海経内では結構騒いだから、玄龍門もその脅威を完全に把握してないとはいえ、他の学校よりも毒という物に警戒心が増えた。あれから門主に渡すものは厳密に検査することが決まった。
...一応普通の毒対策は一通り教えたけど、カイのアレはイレギュラー過ぎて現存の毒対策は正直対応できそうにない。とはいえ普通の毒は対応できるはず──毒は基本的に致命しないけど、キヴォトス人でも消費期限切れの物を食べたらお腹が壊れるから多少警戒して損はない。
で、それと全く関係ないところで、ミナさんが最近見た映画で出てきた
毒見は簡単に言うと、要人に出す料理を先に食べて、しばらく経ってその様子を見て安全かどうかを判断する古典的な手法。即効性の毒ならそれで分かるけど、遅効性のやつに対しては無力。昔もそれを気付いたので廃止されたし。それにミナさんに渡る時はすでに検査済だから、そもそもやる意味がない...とはいえ、本人が楽しそうだからキサキも許した。
その結果は大体の場合はキサキに出す料理を先に食べる食いしん坊のような事になったけど、今回も発症するのが遅いだからミナさんが幼女になったとき我とキサキはすでにスープを飲んだ...9割わざとだけど。
「こんな姿になったミナは新鮮じゃ」喜ぶミナさんを見たキサキがめっちゃ穏やかな表情になった、我と二人きりの時と違うけどなんか見覚えがある表情。
〔お姉様がアリス様を眺める時の表情ですね!〕あー納得した。つまり娘を見たときの表情か。
「ここ、変わろうか?」多分抱っこしたらもっと喜ぶと思ってミナさんに提案した。
「...だいじょうぶ!」なんかめっちゃ迷った結果遠慮した。自制できるのも偉いだけど、甘える時は甘えた方がいいと思うよ。
ネバーランドでつかまえては多分裏で発生済(?)
メイちゃんが若返りしたらどうなるの...?