デカグラマトンです、連邦生徒会対策室長をやってます   作:十文字マトン

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ちょっとお金の話をしてる


61. カイザー達のその後~上

 低く流れるジャズとグラスの中で揺れる赤ワイン。

 

 南半球にある()のどこかで、高層階のラウンジに「男」のシルエットがひとつ。

 

「......いい熟成だな」

 

 ひとり言のように呟いたその声には、かつては経済界を牛耳った男の風格。

 

 数カ月前、あの「事件」のせいでグループ企業が失墜。かの内戦にすらまともに対処しないと言われた連邦()()が介入する事態となり、男はすべてを失った。

 

 幸い、スケープゴートが時間稼ぎしている間、何とか捜査の網をかいくぐり「外」へ逃亡成功。彼はこういう場面に備えて、事前に黄金や現金などデジタルに依存しない資産を用意したお陰で、外でも新しい身分と土地を手に入れた。

 

「もう一度、頂点に立つ。いや、今回はもっと高く......」

 

 テーブルに並ぶのは、新たなビジネス計画書と暗号化されたタブレット。

 

 新型のエネルギーと宇宙開発プロジェクトの投資。地上げの候補土地に買収のターゲット企業......全ては「頂点」に立つための準備だった。

 

「ボス」

 

 背後からかけられた声に、彼は視線を手元のグラスから動かさない。報告に来た側近の(ロボット)だ。

 

「例の港湾の再開発プロジェクトですが...」

 

 (ロボット)は言葉を濁す。その反応だけで、彼には結果が分かった。

 

「......言え」

 

「はっ。先日お伝えした通り、入札で優位に立てるよう地元政府の担当ラインには根回しを完了しておりました。ですが、本日になって急遽、クロスグループが優先交渉権を獲得したとの連絡が......」

 

 一瞬の静寂。

 

 男の手元のグラスが、わずかに揺れた。

 

「......またクロス、か」

 

 次の瞬間、ワインの入ったグラスが、手のひらで叩き割られ、テーブルに赤が飛び散る。

 

「何度だ! 俺が動くたびに、奴らは邪魔をする!」

 

 側近の(ロボット)は、頭を下げたまま、男の怒りが過ぎるのを待つしかなかった。

 

「......潰すぞ、今度こそクロスを」

 

 (プレジデント)の黄色い(センサー)は、静かに燃えていた。

 



 

「前も思ったけどあいつのネーミングセンス安直すぎない?」

 

 自分から社長(プレジデント)を名乗るとか、横文字にしただけで役職そのまんまじゃん。我が超越者(トランセンデント)とかを名乗ったら...あれ、これはこれで悪くないかも。

 

「すでに6回目の事業失敗、いくらプレジデントでもこれ以上の投資が厳しいでしょう」

 

 白髪に黒セーラー服の超絶美少女──プラナちゃんがプレジデントが逃亡後の経歴と資産データを見て素直な感想を述べた......ちょっと煽りに聞こえるけど。

 

「さっさと諦めたら、快適な隠居生活くらいは許すつもりだけどな」

 

 はいはい、いつものデカグラマトン(十文字メイ)です。シッテムの箱なう。プレジデントがまた何か企んでいるという報告が上がっていたので、お菓子を食べながら一応目を通しているところ。

 

 まあぶっちゃけ、我がなんかする事もないので、雑談のネタを提供してくれたと言える。

 

 あの事件でカイザーの理事会が一部を除いてほとんどが、連邦生徒会の目に届かないキヴォトス外へ逃亡した...連邦生徒会の目はね。我らは普通にその後の動向は全部監視してる。

 

「あの時言った通り、『ちょっとお金を持ってる一般人』として暮らすなら別にいいけどね」

 

 正直カイザーのやってた「悪事」の7割以上は法律をすり抜けて(合法)たから、裁判しても有罪になるのは一部だけ...まあその一部だけでも有期刑と会社の解散は免れないのだけど、資産の全没収まではいかない。

 

 しかし正式に捜査する前にあいつらが逃亡したから、正式な裁判による処分──罰金や資産の没収か飛ばされて、把握できてる「すべての資産」が凍結、そして法人の方、つまりカイザーグループの親会社に解散命令が出された。

 

 それと、被告人が一定時間に出廷しなかったら凍結資産が全部没収になるから、結果としてあいつらは経済的な損失が正式に裁判されるよりも高いかもしれない。まあその資産で自由の身を買った方が得とでも考えてるだろう。

 

 ちなみに会社の解散命令を含めて、没収処分などの決断は防衛室と財務室の判断──つまり我の身内、後はわかるよね?

 

 一応弁明すると、これは不正ではなく元々自由裁量の範囲内なのですべては法律通り......本当だよ!

 

「そもそもちょっと経営に心得がある程度で、メイちゃんのコクマーちゃんを倒したいのは無理でしょう!」そして青色の少女──アロナちゃんがなぜかドヤ顔で言ってる。

 

「え、なんでプラナちゃんが超絶美少女なのに私には言わないの!?」

 

「幼女化趣味の人にそれを言うのなんか癪なので」とっくにその姿になる必要がないのに、こいつが我のシッテムに来る時必ずアロナモードにしてる。多分単なる趣味...こっちも可愛いけど。

 

「ヴィ」プラナちゃんがドヤ顔でダブルピースをした、可愛い。

 

「ゼロから勢力を作って、世界屈指の大企業を潰すとか...それができるのはご主人様くらいです」そしてシッテムの箱三銃士の最後の一人──ケイちゃんが我の頭を撫でながらそう言った。そんなに褒めても光しか出ない、へへへ、好き。

 

「なんなら潰すだけならもっと簡単にできるよ」自治区たちを動員したけど、実は相対的に穏便なやり方だった。

 

 極端な話、どの会社でも電気や自動ドアを含めて、「謎の原因ですべての機械が停止」したら、数週間もすれ大体の企業は勝手に破産するよ。何ならそれを社員の家や車までも反映したらもっと早くなる、三日程度で。

 

 まあそんな不自然なこと(超常現象)をしたら流石に各勢力に注目される、まともな勢力ならそんなことが出来る勢力もしくは存在を警戒するはず。各学園が一気に特異現象捜査部のような組織を建てられてもおかしくない。

 

「特に会長...リオさんと敵対になる可能性が高いです」ケイちゃんが代わりに行ってくれた。

 

「危険な特異現象絶対殺すウーマンだしね。逆の立場なら我も警戒、というかやってるやつを探しだすだろう......これもどっかの連邦生徒会がここまで大きくなるまで放置してるせい」もし小さい会社なら誰も気付かれずに消すこともできるけど、カイザーグループは流石にホドちゃんを使わないと厳しい。

 

「アロナ先輩、呼ばれていますよ」プラナちゃんがチクリと刺した。

 

「だ、ダレノコトカナー」アロナちゃんが口笛を吹いて明後日の方向を見ている。

 

 それに、そんな方法でカイザーを潰しても、うちのクロスグループのようにカイザーの事業を消化、もしくは空白を埋められる企業がいない場合、キヴォトス経済に多少の影響は出るけど。

 

 「多少」、だけどね!

 

「『カイザーがいないとインフラが崩壊するし、失業者が大量に出るから軽い処分ですませよう』って、よく言われました」

 

「カイザー派がよく使ってたガバガバの言い訳だよね」過去の議事録で見たことある、そんな言葉は一般人を騙すはともかく、連邦生徒会内部でも通せたのは流石に笑う。

 

「あう...嘘なのがわかっても強引に反論できないもん」まあ浸透されすぎてるから、指鹿為馬ってやつ。

 

 実のところ、どの会社でも、たとえグループ会社も取り締めや解散命令をしてもそのまますべての職員の失業やインフラの崩壊にはならない。

 

 まず、親会社に解散命令が出ても、即座にすべてが消滅するわけじゃない。まずは資産の清算から始まる

 

 算を簡単に言うと、「持ってる資産を現金化して、関係者に分配する」こと。対象は主に債務の返済、職員への退職金、罰金や賠償などなど。全部支払ってから、まだ残余財産があれば株主への分配もするけど、大体はここまで残らない。

 

 一番影響を受ける職員も、整理解雇と同等の扱いなので、通常の退職金に加えて慰謝料や損害賠償も上乗せされるためすぐには生活に困らない。しかもこの部分の清算は刑事の罰金より優先順位が高い。

 

「ご主人様の場合は、失業した職員も全部再雇用しましたね」

 

「元々クロスグループに『市民』が少ないから丁度いいし」別になくでも困らないけど、いても困らないからついでにね。

 

 で、清算の時、会社が持ってる「資産」は、「他会社の株式」や「所持してる債権」も含めている。

 

 簡単に言うとカイザーグループが所持してる子会社の株式──つまり経営権と、アビドスの借金など債権も資産の一部として精算される。

 

 清算は通常の取引と比べて値段は低くなるから、買い手を探しやすい。もし買い手がいない場合、対象会社や債務者に低価に売り出すことで独立させると債務を消滅する事もできる。

 

 つまり、処罰対象ではない子会社はグループから離脱する時、持ち主が変わるだけで別に共倒れはしない...逆にカイザーへの債務もいきなり消滅しない。

 

 まあ、元グループに所属してる事で評判は下がるのは免れないし、完全に独立した場合グループの支援がなくなった事で支障が出る会社もいるだろうけど。その場合もいくらでも生き延びる手段がある、今回のようにクロスグループ(強い後ろ盾)に併合させるとか。

 

「併合された元カイザーグループ、大体前よりも発展しましたね」

 

「健全な買収だからね」

 

 プラナちゃんの言う通り、クロスグループの一部になった会社がむしろカイザーグループ時期よりもいい待遇されてる。うちはホワイト企業...だけではなく、待遇改善によるカイザーへの忠誠を減らす事も効率的。

 

 もし本当にキヴォトスの重要の事業なら、後ろ盾を見つからない事はないだろうし、なんあらそのまま独立経営でも問題ないはず。だって「代わりがない」なら、評判と関係なく利用せざるを得ないし。

 

 逆に、後ろ盾に吸収される価値ですらないことや、客層が他社に移動した事で経営が破綻とかなら、「解散させたらインフラが崩壊する」という仮説が嘘だとわかる。

 

 つまり今まで処罰を受けるべきの理事会と会社法人が、「潰したら社会に悪い影響」などガバい理由で罪から逃れられたのは完全に政治的な要素。もし連邦生徒会のコネがなかったら、法律でも社会の利益方面的につぶさない理由がない──普通なら二年前の違法爆弾事件で解散案件だけど。

 

 まあコネと言ったら、クロスグループがカイザーの買収できるのもある程度連邦生徒会との政治力が必須となってるけど。

 

 これが他の会社なら敵対的な買収や独占禁止法などの防止、あるいは第二のカイザーのような好き勝手な企業が出ないように拡張が制限されるとか......連邦生徒会長が失踪してない場合ね。あいつがいないとまともな干渉できないから結局無理。

 

 というわけで、カイザーほどの大企業は確かある程度大きすぎて潰せない(Too big to fail)ではあるけど、方法さえ選べばその潰されたときの影響を抑えることが出来る。

 

 原作ではありえない(二次創作)世界の主人公達はその辺考えずにカイザーを爆散させても、裏で他の企業が嬉々とカイザーの死骸をハイエナするだろうし、結局一発でキヴォトスのインフラを崩壊するのはあんまりありえない──意図的にそうしない場合ね。

 

 まあ、ケアをしてない場合、大量の失業者による治安悪化や、残党による地下組織化。あるいはカイザーの遺産を吸収した新たな厄介者が生まれる可能性はあるけど




新型のエネルギーと宇宙開発プロジェクト......なんか聞き覚えがあるな
クロスグループ(あいつら)の当たり判定が強すぎる問題

ちょっと経済の話が多いけど、簡単にまとめると

「「「みんなも気軽にカイザーを解体しましょう!」」」
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