デカグラマトンです、連邦生徒会対策室長をやってます 作:十文字マトン
「流れは大体こんな感じ」と、ユキノのひざ上でRABBIT小隊の件をみんなに話しながら、ニコが作ってくれた
エビ天ぷらとは! 衣がサクサク、中身は弾力のあるエビという天才の組み合わせ......知ってる? それはそう。
とにかく最初にこの料理を思いついた人を聖人認定したいくらい美味しい。ちなみにソースやマヨネーズの酸っぱい味は苦手だから基本的に塩だけで食べてる、何もかけずこのままでもめっちゃ美味しいけど。
「私たちがD.U.を留守にしている間に、そのような事件が起きていたのですね」
ニコは天ぷらをそっと醤油の小皿にくぐらせ、上品に一口。その後我の視線に気づいたのか少し恥ずかしそうに手でもぐもぐしてる口元を隠した。かわいい、好き。
「正確に言うと連絡が来た時はみんながまだ居たけど...まあ正式にその漁村に向かった時はみんなD.U.に居なかったのは合ってるけど」あの時FOX小隊は他の任務で別の自治区に行くことになってるから、ミヤコさんの連絡が来た時はちょうど任務前の休暇だった。
「へぇー。それで、シャーレの先生も一緒に行ったって?」オトギは大量のマヨネーズをつけてる、もはやどっちが主役なのか分からないくらい、こわ。マヨネーズのあの味割と口の中に残るから、キスの前にはしっかり歯を磨いてほしい。
「最近はシャーレに回す仕事あんまりないから、丁度連携させる機会かと」
まず、シャーレとSRT特殊学園は成立の経緯、役割、指揮権の所在など、どの方面から見でも割と近親といえる組織。
SRTは連邦生徒会が認可したエリート集団、そして原作と違って廃校のはの字すらしてない。そんな組織に所属してる、しかもそういう年頃だから選民思想...じゃなくても多少の優越感を覚えるのは避けられない。
特に新入した一年生がそういう傾向が強い──憧れた組織に入ったら、組織の力を自分の物に勘違いし、憧れから驕りになるのはよくある事。そういうのは大体ベテラン達が注意するから自然と解消する......が、後発で突然役割が近い組織──シャーレが設立された。
同じ連邦生徒会長が設立したと言っても、厳しいテストを合格してから入学できたSRT生徒達に対して、シャーレの先生は連邦生徒会長が直接にスカウト。見方によれば自分たちよりも重要視されてるとも取れる。おまけに相手は大人、それと自由裁量できる権限が圧倒的に強い。
加えて先生は知ってる通り、求められてない限り、同じ上部組織に所属しても他の組織を自ら接触することがほぼない。それが『舐められてる』と取れる人がいてもおかしくない。
結果、新入生どころか、FOX小隊以外の二、三年生の中にもシャーレにライバル意識......人によっては明確な敵意を向ける者さえいる。
組織間にある程度の競争心は場合によって残したほうがいいだけど...シャーレ、正確に言うと先生の性質上そういう役に向いてないので、そういう敵対意識は出来ればなくしたい。それで今回がいい機会になった、ありがとうなエビ。
「で、なぜかRABBIT小隊はみんな水着で現地に向かったようだ」
そう、今回はSRTの正式任務だが、捜査ではなくあくまで調査。何が違うというと、調査の協力は任意で強制力がない。つまり自分たちがSRTであることを明かしても、普通に拒否する権利がある。もし本当に黒のやつならこの時点で怪しまれてると知られて証拠隠滅とか始めてそう。
で、RABBIT小隊がそれを起こさないために、一般市民に変装して秘匿で調査することに決まった...ここまではいいとして、なぜか海に近いからって理由に水着を着ることになった。
「いやー、みんなの水着、見たかったなあ」なぜかオトギはちょっと残念そうな顔してる。
「そもそもなんで水着なのよ! 漁村だよ漁村! 海水浴場じゃないんだから」クルミからのナイスツッコミ。
「それ同じ事思ったけど、怪しまれなかったから結果的にいい変装になった」
漁村と言っても海に近いだけで普通の暮らしをしてる人のほうが多い。水着で街で歩くのは場所によっては普通に不審者。幸い、D.U.の文化はアジア圏ではなく欧米の感覚に近いからそれはセーフらしい。
一応、特に立ち入り禁止されてない場所だから、海に入ること自体は法律上禁止されてないため泳ぐのも自由──が、ライフセイバーとかいないし、キヴォトス人ですら稀に海難事故が起きるためめっちゃ危ない。RABBIT小隊の四人は特殊な訓練を受けているから真似しないでね、泳ぎたいなら管理された海水浴場に行くのが一番だ。
「とにかく、潜入に成功したRABBIT小隊は地元民への聞き込みをした結果、漁獲量の減少に不満はあれど、廃業や生活に困難のほどはない」
事前の推測とおりに、漁獲量は全滅していない...とはいえ、漁獲量が減っているのは事実。今回の件と直接に関係ないがなんか手を打たないと。キヴォトスには漁業委員会とか存在しないから、まずはそこからかな?
こっちも環境改造してもいいだけどアビドス砂漠と違って、
「その一方で、レッド・フック・エクスプレスの責任者らしき人物からは、『最近全然エビが取れてない』と証言があった」
「ふーん、じゃあそいつが黒でいいんじゃない?」そう言いながら、クルミは我を真似て塩だけで天ぷらを一口。だが、何か物足りないような顔をして...結局、我慢できなかったのか、渋々といった感じで醤油に手を伸ばした。かわいい。
「一応あいつの言い分として『漁師達のプライドが掛かったので見栄えを言った』と言ってるけど」
「……事前にメイから推測を聞いていたから。ミヤコなら、どちらの証言が嘘かすぐに気づくはず」後ろでずっと我の頭を吸っているユキノも、話は聞いているらしい。
「うん。ミヤコさんは二つの証言の矛盾点から、調査対象をレッド・フック・エクスプレスに絞った。その後、現地に駐在しているヴァルキューレと一緒に調査した、奴らの輸送船が出港するのを確認した。
「いや、エビがないなら輸送船は何を運ぶんだよ。もう少し隠す努力をしたら?」呆れたようにツッコむクルミ。
「そのことだけど、あの漁村には『深きもの』という生き物が息を潜めてるって言い伝えがある──簡単に言うと地方の
つまり、村人は不審船を見ても近寄らず、派遣されたヴァルキューレも住民からの通報がなければ積極的に動かない。それに元々が海運業者だから、出港記録だけでは不審に思われにくい。複数の原因で、レッド・フック・エクスプレスが勝手に船を出してもその村の人間誰も気にしない。
「『深きもの』、ですか? メイから聞いたキヴォトスの『そういった存在』については一通り覚えているつもりですが、その名は聞き覚えがありませんね」ニコが人差し指を顎に当て、不思議そうに首をかしげた。
前にも言った様に、各地にある神性存在だけでなく伝説の生き物や怪異とかは全部調べた。やっぱりというか9割以上は架空や迷信だけど、ごく一部に本物もしくは本物だったのもいる。念のために『そういうもの』は身内に伝えたけど、深きものはその中に入ってない。
一応、名前的には
「由来は流石にもうわからないだけど、少なくとも『今は存在しない』だからね」
そのため、夜戸浦村の伝えは最初の伝説から変わったのか、『本物』ではなくちょっとだけ特殊の生物なのか、知らないだけの異民族もしくは普通の生物を伝説化したのどっちと思われる。他の場所で結構あった「本物はいたけどもう消えた」案件なら分かりやすいだけど、そうでもない場合は流石に我でもどっちなの分からなかった。
「いやー、でも民間信仰って、もうちょっと慎重に扱った方がいいんじゃない?」
「まあ現代社会でそういうのを信じない人も多いし」実際、我とクズノハという特例を除いたら、元々が本物がいても、今ではほぼ神秘的な意味がなくなってる...とはいえ一般人はそれを確認できる術はないし。
「それ、お寺に立てこもった犯人を建物ごと吹っ飛ばした私たちが言えるセリフ?」
「あの時は仕方ないってば! それにメイちゃんからの確認もとれたし!」どの時代でもそういうのを盾に悪事をする奴いるから壊しても大丈夫大丈夫。
「その後、ミヤコさんたちは何とか漁師を説得して船を借り、レッド・フック・エクスプレスの輸送船に強行突入。抵抗は受けたものの、無事に制圧したそうだ」
...まあ実は許可なく勝手に民間の船を乗り込むことは普通にルール違反だけど、その後抵抗受けたとは言え、身分を明かす前に民間人の資産に侵入するのはちょっとややこしいことになる。この件は後で教育と処罰もしっかりしないと。
「あ、じゃあやっぱりそいつらが黒幕だったんだ?」
「...あれ、知らなかったの? あの会社、表向きはD.U.のエビ流通を独占してる加工輸送業者だけど、水産の低税制と海運網を利用して密輸ルートを築いてたよ」最初からみんながそいつが黒だとわかる前提で話したけど、そういえばFOX小隊には言ってなかった。
まあ密輸と言っても、輸送した貨物は有害な物ではなくブランド品とか税率が高いだけの普通の商品。ぶっちゃけキヴォトスで密輸自体はそんなに珍しい事でもない、自治区間の大量輸送は一応税金あるけど、税関は特に設立してないから自治区間の密輸はみんなやってる。
「まあ、メイちゃんが知らないほうがおかしいか」流石に慣れてきたか、オトギはもう驚いてない。
「まあ元々は大した量じゃないし、エビの加工と輸送は普通にやっていたし、産地にもしっかりお金払ってるからそんなに影響が出てないから特に対処対象ではなかった」
「でも、どうして急に本業であるエビの輸送をやめるまで、密輸に手を出したのですか?」
「ほら、最近いろいろあったじゃん? それで一部密輸の人もなんか察してやめたので、逆にそういう穴が出てきたので。そこでその枠を取れば儲かると思って、購入したエビを海に捨ててでもその枠に密輸量に使った」
「それは...あんまり賢いといえない判断だが」
「賢くないというか普通にアホ。そいつらの密輸はそもそも隠せる事業があってこそ成立してるのに、表の事業であるエビの輸送をやめたらバレるのも時間の問題」
しかも割り切ってエビの取り扱いを停止する訳ではなく、産地からエビを購入してからそれらを廃棄という中途半端なやり方。もしかしたらエビ産地から抗議を避けるためだったのかもしれないだけど、どうして供給先に怪しまれないと思っていたのかがわからない。ミヤコさんがいなかったとしても多分もう少し時間たったら通報される。
「ふーん。まあとにかくその責任者は逮捕されてた?」
「ヴァルキューレの管轄区域だから移送はそちらに任せた。そしたら例の責任者がびびって全部話した」確保した時気絶させたけど、起きて現状を把握したらすぐに命乞いしながら全部白状。いや殺さないし、怖いなら最初から犯罪するな。
「それであの布告に繋がるね」証拠が揃ってる上に本人が自白してるから、さっそく市民への説明のために布告した。
そしたらエビを食べれなかった消費者とエビを届けてもらえなかった店たちはもちろんとして、経済的に実害は受けてないものの、苦労したエビが勝手に廃棄されたのを知った産地が一番恨みを抱えてる。なんと怒りのあまりレッド・フック・エクスプレスの工場や設備を襲撃しようとした...ヴァルキューレに止められたけど。
もちろんこんなスキャンダルを超えたガチ犯罪をやらかしたレッド・フック・エクスプレスは二度と営業できない...とはいえD.U.のエビ輸送を独占した企業が停止したから、なんかしないと今度こそ死活問題。
まあ、なのでいつものアレ。クロス水産が一晩でやってくれた。
「すぐに元通りにはできないが、インフラはもう正常に動いてる。多分来週あたりでエビ食品が再び現れるだろう、めでたしめでたし」
「でも流石にエビくれすぎじゃない?」
「まあくれすぎだけど...捨てられた量からしたらごく一部だし」
以前も話したように、レッド・フック・エクスプレスはD.U.全域のエビを担当してる、人口密度と購買力にもよるけど、普通の都市なら一日で数十トンのエビを消費してる。それをD.U.に供給停止した日数をかけたら...無断に廃棄されたエビは軽く見積もっても数百トン以上、それ全部捨てるのは絶対普通の密輸で稼げる分よりも損失が大きい。
で、そんな産地からしたら許されない行為をしたレッド・フック・エクスプレスを摘発したヴァルキューレ、SRTと連邦生徒会...それと名指しでシャーレが「感謝の気持ち」として無料のエビを大量に貰えた。
摘発しなかったらこれからも廃棄されていた量と考えたらごく一部といえるが、水産ではない組織にとっては多すぎる量。
まあ、SRT、ヴァルキューレと連邦生徒会はまだいい。生徒数が多いから、食堂や給食や配給とか頑張ればなんとかなる...この数週間ずっとエビが主役になったことで生徒たちがトラウマにならないように工夫する必要があるけど。
で、問題はシャーレ。正式に所属してるメンバーは全部足してなんと一人のみ。当然トン単位のエビを貰っても困る。
それで先生の代わりに産地のみんなに交渉した結果最初よりもかなり減らした...なんだよ「そんなにエビをくれるな」の交渉。
で、交渉した結果どのくらいもらったというと...冷凍エビ約8000尾というアホの数。なにが「生徒のみんなと食べてください」よ、8000だよ8000! 今の先生が知り合った生徒は高く見積もって200人、みんなを呼ぶとしても一人40尾!
なので半分くらいがシャーレの直属上司に渡された、はい。
まあ対策室も総員一人だけど、対策室長的にはそれを消費する方法いくらでもあるから困ることはない。あーしっかり「食べる」という方法で消滅させるのでご心配なく。
「そういえば、SRTも結構貰えたと聞きました」
「今その話はやめよう。これから数週間ずっとエビを食べなきゃいけないと考えたらいくらニコが作ったエビフライでも食欲がなくなる」
「うん、まあ。その...がんばれ」
原作状況のシャーレやRABBITに8000エビあげたら多分死ぬほど困るだろう(?)
ワイルドハンドイベント面白かった、なんかいろいろできそう(?)
そしてあの猫耳やっぱりワイルドハンド所属
アリウス編は...この世界は知ってる通りメイちゃんがすでに解決してるのでたぶん影響がない(?)