「ライダーキーック!!」
正体不明のコスプレイヤー、仮面ライダーブラックと拳銃で武装し女性言葉を喋る謎のおじさん、レイブンが戦っている。
「凄い光景だな」
「凄い光景ですね」
夜蛾さんが言う言葉に私も同じ様な言葉で返した。だが、きっと、夜蛾さんと私に言った言葉の意味は違っているのだろう。
夜蛾さんの言う凄い光景と言うのは手に汗握る凄い戦闘が行われていると言う意味だろう。実際、飛び道具の持たないブラックは地面と下水道の壁や天井などを跳躍し一瞬のうちにレイブンに肉薄し接近戦を挑んでいる。対するレイブンはブラックが仕掛けた跳び蹴りを身をひるがえし避けるとトンプソン・コンテンダーと言われる拳銃を懐に入れると、その懐から変わりにナイフを取り出し、応戦している。正直私が目視できたのはここまでで後は何が起こっているのか分かっていない。故に私の感想は凄い戦いが行われていると言う事も勿論だがその凄い戦闘を絶賛不審者が行っている事への驚愕だった。
「トンプソン・コンテンダーは様々な種類の銃弾を撃てると言う機構を持つがその機構故、装弾数は1発に限定されている。今傑君に向け発砲したと言う事は、玉切れだ」
「だから、ナイフに変えた?」
「おそらくな、あとは単純にナイフの方が接近戦に向いている為だろうな」
「あのレイブンって人、接近戦強いんですか?」
「レイブンが接近戦に強いと言うのは聞いた事が無い。と言うか、あれはレイブンじゃない」
「レイブンじゃない?」
「ああ、レイブンは通称ワルプルギスの夜の主要メンバーの1人で他のメンバーと同じく魔女を自称している。そして、奴が起こす様々な事件やテロでの目撃情報も女性だったと言うものが多い。何より、あの男がレイブンだったのなら……弱すぎる」
「そうですか? ごりごりの近接型に見えるブラックさんと対等に渡り合ってると思うんですけど」
「いや、恐らくあの男はただ操られているそこら辺のごろつきだ。本物のレイブンなら近接戦になる前に片が付いているはずだ」
「そんなに強いんですか」
「ああ、だが、操っている男だけでもここまでの近接戦闘が出来るとは、貴重な情報だ。どうにかしてこの情報を持ち帰りたいな」
そんな事を夜蛾さんと話しているとブラックの蹴りがレイブンに操られているであろう男の腹に決まり、男が大きく後退した。いや、格闘技が好きでそう言った番組をよく見ている私には辛うじて分かった。男はわざと後ろに飛びのいたんだ。ブラックと距離を取るために、そして、すかさず追撃をかけようと拳を振り上げ走り出すブラックに対し、男はさっき懐にしまったトンプソン・コンテンダーを構えた。
男が構えたトンプソン・コンテンダーの銃口の狙う先、そこには私夏油傑がいた。
私は先ほど私の命を刈り取る直前まで行った拳銃を向けられながら思った。一瞬一秒が大事な場面で、玉切れの拳銃を第三者に向けるなんて、何を考えている。
「っ!!」
しかし、私の思いとは違い、ブラックは振り上げた拳をたたみ自身の顔と胸を守ると横に跳び私に向かっているトンプソン・コンテンダーの射線を塞いだ。
なぜだ!? せっかくの追撃のチャンスを逃すブラックに眉を顰める私の耳に、ドンと言う先ほど聞いた銃声が届いた。
「がっ!! はあっ」
おそらく、トンプソン・コンテンダーで撃たれたのだろブラックは大きく後退し、地面に仰向けに倒れた。
「流石、正義の味方。私の狙いに気づけても、庇える選択を出来る奴はそうそういない。弱者救済。弱きを助け強きをくじく。全く、感動的ね……しかし、それが貴様の弱点になる」
「馬鹿な。玉切れのはず」
「構築術式だ」
私の思わず言った言葉に夜蛾さんが答えるように言った
「そう、今使ったのは構築術式。呪力を物質に変える術式。まあ、コスパが悪すぎて構築した弾は魔弾じゃなくて通常弾でしたが、威力は……十分でしょ」
男はそう言いながらトンプソン・コンテンダーを中折れさせ、弾丸を装填した。
「術式の開示か。まずいな、これで奴は更に何発か銃弾を構築できるようになった筈だ」
「そうね。でも、これでお終いよ」
そう言うと、男は銃弾を装填したトンプソン・コンテンダーの中折れをカシャリと直すと銃口を私にゆっくりと向け言った。
銃声が響いた。