Pastel*Palettes feat.ゲゲゲの鬼太郎〜BanG Dream!ガールズバンドパーティ!外伝〜   作:キプkeep

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今回は彩ちゃんたちが鬼太郎たちのゲゲゲの森にやってきてます!
この小説はpixivに投稿しているものを加筆修正しています。


第三話「ゲゲゲの森、鬼太郎親子の過去」

富士の樹海。

青木ヶ原樹海とも呼ばれる富士山の北西に存在する森で、コンパスが狂うことからかつては一度入ると二度と抜け出せない森とされていたが、現在ではキャンプ場なども作られ、観光やピクニックも楽しむことができる観光地となっている。

この樹海の上空に無数のカラスの群れが飛んでいた。

よく見るとそのカラスたちは綱を持っており、その綱を束ねてブランコのように座っている鬼太郎がカラスたちに運んでもらっていた。

これは鬼太郎たちの移動手段であるカラスヘリコプターで、鬼太郎の後ろにはねずみ男や彩たちパスパレの面々もカラスヘリコプターに乗って移動していた。

 

「どうだい?カラスヘリコプターは?」

「ど、どうって言われても〜!」

「スリルありすぎますよ〜!」

 

彩と麻弥はあまりの高さにかなり震えており、イヴも必死に落ちないように綱を掴んでいる一方、日菜だけは楽しそうにしていた。

 

「全く近頃の若者はなってないね〜」

「それにしても、どうしてカラスたちが私達の体重を支えながら飛べるのかしら?」

 

疑問に思った千聖が質問すると、目玉おやじが説明する。

 

「このカラスたちは妖力を持った化けガラスじゃ。人間界に住むカラスたちとはだいぶ異なるんじゃよ」

「そ、そうなんだ…ところでゲゲゲの森って、あとどのくらいで着くの?」

「もうすぐだよ」

 

彩の質問に鬼太郎が答えると、カラスヘリコプターはゆっくり降下し始める。

地面に足がつくくらいの高さにまで降下すると、鬼太郎たちはカラスヘリコプターから降りて役目を終えたカラスたちは飛び去っていく。

 

「ここがゲゲゲの森?」

 

日菜がそう呟くと、鬼太郎は日菜の疑問に答える。

 

「いや。ここはまだゲゲゲの森の出入口だよ。ゲゲゲの森に入るには普通の方法では入れないからね」

 

そう言いながら鬼太郎は妖怪オカリナを取り出してその音色を奏でると、森の奥から鬼火が現れ、その鬼火は以前、夜叉の事件で夜叉を倒すために駆けつけた海月の火の玉だった。

 

「あっ、この間の」

「お〜、鬼太郎はん!ゲゲゲの森に帰ってきたんか!お?そこの人間の姉ちゃんたちは?」

「僕の友達さ。みんなをゲゲゲの森に連れて行こうと思ってね。海月の火の玉、ゲゲゲの森に案内してくれ」

「お安い御用や!」

 

海月の火の玉は先頭になって進み始め、鬼太郎たちも海月の火の玉について行く。

しばらく歩き続けていると、急に霧が現れ、周りの視界が悪くなる。

常に燃えていて目立っている海月の火の玉だけが目印であり、彩たちも迷わないように鬼太郎たちについて行くと、霧が晴れて視界が露わとなる。

目の前に広がっていたのは先程の富士の樹海と似ているものの、少し様子の異なる広い森だった。

上を見上げてみると、木々の隙間から美しい青空が見えており、空気も先程の樹海よりも澄んでいるように感じていた。

 

「ここが…ゲゲゲの森…?さっきの森とあんまり変わりないけど…?」

 

彩がそう呟きながらあたりを見回したその時である。

森の中から何者かの視線と気配を感じており、それにいち早く気づいたのは千聖だった。

 

「!誰かいるの!?」

 

千聖の言葉に全員が驚いた次の瞬間、森の中から何かが現れる。

 

「バケバケ〜!人間だバケ〜!」

 

森の中から現れたのは古い唐傘に魂が宿った付喪神系統の妖怪、傘化けであった。

彼に続いて森の中から豆腐を持った人間の子供に似た妖怪、豆腐小僧と河童に似た妖怪、がんぎ小僧。

更に、風呂場の垢を舐め取る妖怪、あかなめにイワナの頭を持つ僧侶のような妖怪、岩魚坊主が現れた。

 

「よ、妖怪!?」

「人間がここに何しに来た!?」

「出て行けなめ!」

 

妖怪たちが彩たちを追い出そうとしていると、鬼太郎が彩たちの前に立つ。

 

「待つんだみんな!この子達は僕の友達だ!僕がゲゲゲの森に連れてきたんだよ!」

「なんだ鬼太郎の友達か〜」

「それならいいや。じゃあな〜」

 

鬼太郎の友人だということがわかった妖怪たちはその場から立ち去って行った。

 

「び、びっくりした〜…!」

「すまない…ここに人間なんて滅多にこないからみんな驚いちゃって…」

 

鬼太郎が彩たちに謝罪したその時、森の奥から誰かがこちらへと近づいてくる。

 

「おぉっ!誰かと思えば鬼太郎じゃないか!帰ってきたのかい!」

 

森の奥からやってきたのは老婆のような姿の妖怪で砂を操る能力を持つ妖怪、砂かけばばあである。

 

「久しぶりだなおばば。あっ、紹介するよ。新しい友達でアイドルバンドの彩ちゃんたちだよ」

「は、初めまして!彩です!こっちが千聖ちゃんに日菜ちゃん、麻弥ちゃんとイヴちゃんです!」

 

鬼太郎に紹介された彩は挨拶をし、千聖たちも紹介する。

 

「おぉー!よく来たのう!鬼太郎にこんなめんこいガールフレンドが出来るとは思わんかったの〜。ささ、鬼太郎の家に案内してやるぞ!みんな待っとるぞ!」

 

砂かけばばあはそう言って彼らの先頭を進み、鬼太郎たちもついて行く。

しばらく歩き続けていると、池に囲まれた場所にある巨木に作られたツリーハウスが見えてくる。

 

「あれがキタローさんのお家ですか?」

「わぁー!すっごくおしゃれ〜!」

 

彩とイヴが鬼太郎の家を見て目を輝かせていると、砂かけばばあが家に続く道である橋の前に立つと家に向かって呼びかける。

 

「おーい!鬼太郎が帰ったぞ〜!」

 

砂かけばばあが大声で呼びかけると、鬼太郎の家の扉代わりの藁を捲って一人の少女が飛び出す。

一見するとリボンを付けた人間の少女だが、その大きな目はまるで猫のようである人間と妖怪のハーフの少女、ねこ娘である。

 

「鬼太郎!お帰り!」

「ねこ娘。僕のいない間、留守番ありがとう」

「鬼太郎の為ならこれくらい朝飯前よ♪…って、誰その子たち?」

 

鬼太郎に礼を言われて笑顔になるねこ娘だったが、彩たちを見た途端警戒する。

 

「この子達は僕の友達のガールズバンドたちだよ。紹介するよ。僕の仲間のねこ娘だ」

「丸山彩です!よろしくねねこ娘ちゃん!」

「フシャーーッ!!」

 

彩が挨拶をした途端、ねこ娘は目を金色に輝かせ、無数の牙を剥き出しにした化け猫顔になる。

 

「どひゃあっ!?か、顔が!?」

 

麻弥がそれを見て驚くと、ねこ娘は怯んでいる彩たちに凄む。

 

「アンタたちね!鬼太郎をたぶらかしたのは!?だから鬼太郎もおやじさんも全然帰ってこなかったのね!」

「えぇっ!?ちょ、ちょっと〜!?」

 

勘違いをしているのか、ねこ娘が今にも襲いかかりそうな様子で彩たちにそう叫ぶと、鬼太郎が慌てて止める。

 

「ご、誤解だよねこ娘!ねずみ男が妖怪絡みの事件を起こしてたから帰れなかったんだよ!」

「ちょっ?!鬼太郎ちゃん!?」

「やっぱりアンタだったのねー!カーッ!」

 

敵意をねずみ男に向けたねこ娘はねずみ男の顔をひっかく。

 

「ギャー!やめてくれよ〜!」

「すまないみんな…ねこ娘は怒るとあぁなるけど普段は優しいいい子だからさ」

「びっくりした〜…」

 

鬼太郎がねこ娘の代わりに謝罪すると、彼女たちの真上に空を飛ぶ白く細長いなにかが現れ、そこから人影が降り立つと同時にその物体も地面に降り立つ。

白い反物の妖怪で、鬼太郎たちを乗せて移動することもある妖怪、一反もめん。

もう一人の妖怪は老人のような姿で赤ん坊のような泣き声で人をおびき寄せる妖怪、子泣き爺である。

 

「鬼太郎!久しぶりじゃのう!」

「久しぶりだな子泣き。それに一反もめんも」

 

鬼太郎がそう言って軽く挨拶をすると、一反もめんは彩たちに近づく。

 

「こりゃまぁ、べっぴんなおなごばい!ほらほら、おいどんと握手握手〜♪ん〜、シルクのように綺麗な手ばい♪若いおなごはやっぱりよかと〜♪」

 

すると一反もめんは少々強引に彩と握手をすると、困惑している彼女の手の感触を堪能していた。

 

「あ、あの〜…」

「この色ボケふんどし!初対面のおなごにセクハラするじゃない!」

 

それを見た砂かけばばあが一反もめんを怒鳴る。

 

「失礼したと〜」

「な、何だったの…?」

 

一反もめんがそう言って離れ、千聖が引き気味にそう呟くと、地面の中から大きな壁のようなものが現れる。

おおきな長方形の土壁の妖怪で、鬼太郎たちを守る盾にもなる妖怪、ぬりかべである。

 

「わっ!?また出ました!」

「コイツも僕の仲間のぬりかべだよ」

「ぬ〜り〜か〜べ〜」

 

鬼太郎が驚くイヴにぬりかべを紹介すると、ぬりかべは片言気味に自己紹介する。

 

「こ、この妖怪たちがみんな鬼太郎くんの仲間…?」

「そうじゃ。みんな鬼太郎を助けてくれる大切な仲間じゃ」

 

彩の言葉に鬼太郎の髪から出てきた目玉おやじがそう言い放つと、顔中傷だらけにになったねずみ男が問いかける。

 

「な、なぁ…立ち話もなんだし、そろそろ鬼太郎の家に入らねぇか…?」

「まぁ、そうだな。みんな、上がってくれよ」

「おじゃましまーす!」

 

鬼太郎がそう言って橋を渡って家の中に入り、他の者たちも家の中に入る。

彼の自宅の内部はそこそこ広いがかなり殺風景で、ちゃぶ台と布団ぐらいしかなかった。

 

「結構広いッスね〜、10人入っても余裕ッスね」

 

麻弥がそう呟くと、鬼太郎はお湯を沸かし、ちゃぶ台の上に置かれている茶碗の中にお湯を注ぎ入れると、目玉おやじは湯の溜まった茶碗に入る。

 

「ふぅ〜、いい湯じゃ〜。やっぱり茶碗風呂は格別じゃの〜」

「それお風呂だったんだ…」

 

気持ちよさそうに茶碗風呂に浸かる目玉おやじを見た彩がそう呟くと、砂かけばばあが口を開く。

 

「それにしてもゲゲゲの森に人間が来るのは何年ぶりかのう?」

「そうじゃの〜、ユメコちゃん以来じゃなかったかの〜?」

 

砂かけばばあの言葉に子泣き爺は常備している酒を飲みながら答えると、日菜が鬼太郎たちにあることを言い放つ。

 

「ねぇねぇ!鬼太ちゃんの森って、どんな感じか見て回ってもいいかなー?」

「ちょっと日菜ちゃん…」

 

日菜の急な提案に千聖が彼女を窘めようとすると、目玉おやじが笑みを浮かべながら言い放つ。

 

「構わんよ。袖振り合うも多生の縁じゃ。鬼太郎。彩ちゃんたちに森を案内してやろう」

「そうですね。みんな、一緒に彩ちゃんたちを案内しようよ」

「そうじゃな。わしの妖怪アパートも見せてやりたいし」

 

鬼太郎は目玉おやじを拭きながら言い、砂かけばばあたちも了承する。

 

「すみません。ジブンたちのためにわざわざ…」

「構わないよ。じゃあ行こうか」

 

鬼太郎たちは彩たちを連れてゲゲゲの森を案内することにした。

木々が生い茂る森の中にある道を歩き、しばらく歩いていると、大きな建物が現れる。

 

「この建物は?」

「わしの妖怪アパートじゃよ。ここにはいろんな妖怪が住んでおる」

 

彩の問いかけに砂かけばばあが答えると、妖怪アパートの前に楽しそうに談笑している妖怪たちの姿が見える。

やまびこの妖怪、呼子と将棋を指している妖怪、油すましに学校のトイレに住む少女の妖怪、花子さん。

海老のような姿に両腕のハサミが特徴的な妖怪、あみきり。

まりもに手足が生えたような姿の妖怪、丸毛に沖縄の妖怪、シーサーがいた。

 

「わぁー…!妖怪さんがいっぱいいます…!」

「ん〜?お〜、鬼太郎。久しぶりだな〜」

「油すまし。相変わらず将棋か?」

「んだ〜。王手」

「負けた〜!」

 

鬼太郎の言葉に返事を返しながら油すましは王手をかける。

 

「鬼太郎さん。その人たちって人間?」

「うん。僕の友達だから仲良くしてやってくれよ。じゃあ、また」

 

花子さんの問いかけに鬼太郎は彩たちを紹介しながら答えると、その場を後にする。

ゲゲゲの森の名所を鬼太郎たちに紹介してもらいながら彩たちが歩いていると、イヴはあることに気づく。

それは、後ろから自分達の後を追う足音であり、イヴは振り返るが、そこには誰もいなかった。

 

「だ、誰かいるんですか…?」

「え?だ、誰って…?」

 

イヴが麻弥の腕にしがみついて怯えながらそう呟くと、それを見たねこ娘は微笑みながら言い放つ。

 

「大丈夫よ。べとべとさんよ」

「べ、べとべとさん…?」

「後ろを着いてくるだけの妖怪だよ。道を開けて「べとべとさん、お先にどうぞ」って言ってごらん」

「は、はい…べとべとさん、お先にどうぞ…」

 

鬼太郎に言われたとおりにイヴは道を開けてそう呼びかけると、べとべとさんが実体化する。

 

「わっ!まんまるな妖怪!?」

「す、少し可愛いわね…」

 

彩と千聖が突然現れたべとべとさんに驚くと、べとべとさんは軽く挨拶をして立ち去っていった。

 

「あんな妖怪もいるんだ〜」

 

日菜は立ち去っていくべとべとさんの後ろ姿を見ながらそう呟いた。

しばらく経ち、鬼太郎たちと彩たちはゲゲゲの森の泉の岩に座って一休みしていた。

 

「ふぅ〜、たくさん歩いた〜。ゲゲゲの森って、のんびりしてていいね〜」

 

彩は泉を眺めながら満足そうにそう呟く。

 

「気に入ってもらえて嬉しいよ」

 

鬼太郎が泉に来る途中で出会った小豆とぎから貰ったまんじゅうを食べながら言うと、日菜が鬼太郎に声をかける。

 

「ねぇねぇ。前から気になってたけど、鬼太ちゃんとおやじさんって、なんで親子なのに似てないの?それにおやじさんすごく小さいし」

「日菜ちゃん!いくらなんでもはっきり言い過ぎよ!」

 

日菜の問いかけに千聖は驚いて注意すると、ねこ娘は彼女を怒鳴る。

 

「アンタねぇ!その話は鬼太郎とおやじさんにとってデリケートな話なのよ!」

「まぁよい。そうじゃ、ちょうどいい機会じゃから話してやろう」

 

怒鳴りつけるねこ娘をなだめながら目玉おやじがそう言い放つと、それに驚いた鬼太郎が問いかける。

 

「い、いいんですか父さん…?」

「いいんじゃよ。では、話そうかの。ワシと鬼太郎は幽霊族と呼ばれていた種族での。鬼太郎は幽霊族最後の生き残りなのじゃ」

「幽霊族…?」

「人間たちが地球に現れる前から地球にいた種族じゃ。人間たちが現れてからは徐々に数を減らしていき、とうとうワシと妻の二人だけになったときのことじゃ…」

 

目玉おやじは昔のことを思い出しながら彩たちに過去の出来事を説明する。

 

今からちょうど70年前ほど昔のこと、ワシと妻である岩子は古い寺に移り住むことになったのじゃが、運悪く不治の病にかかってしまっての…生きるためにも血液銀行にワシらの血を売ってなんとか生きていたのじゃ。

じゃが、ワシらの血を輸血した患者が幽霊のようになってしまい、当時血液銀行の社員じゃった青年、水木が調査を始めたのじゃ。

お隣さんじゃった水木青年はワシらの家にやってきての。手厚くおもてなししたあとワシたちの身の上を明かしたのじゃ。

 

「…幽霊族…信じられん…」

「幽霊族の生き残りは我々夫婦だけとなり、しかも運悪く不治の病にかかってしまいました…ワシたちは生き残るために血を売りました…」

 

迷惑をかけしまい、申し訳なくなってしまったワシたちじゃったが、水木青年は会社にワシらのことを報告しようとしたのじゃ…。

 

「……僕は貴方たちのことを会社に報告しなくてはいけません」

「!それだけはやめてください!人間たちに見つかれば我々はなぶり殺され、絶滅してしまいます!」

「し、しかし…僕も仕事が…!」

「私は妊娠しているんです…!どうか…どうかこの子が生まれるまでの半年の間…どうか見逃してください…!お願いします…!」

 

既に鬼太郎を身籠っていた岩子は泣いて水木青年に懇願していてのう…病がなければこんな事にならなかったはずなのに…。

妻の必死な姿を見た水木青年は彼も思うところがあったのか、少し考え込みながら答えたのじゃ。

 

「…わかりました。では、半年間待ってあげましょう」

「…!ありがとうございます…!」

 

彼はそう言ってワシらの家を後にして出ていったのじゃ。

しかしそれからしばらく経った頃、ワシと岩子は病によってとうとう命を落としてしまったのじゃ…。

雨の日に様子を見に来た水木青年は岩子を埋葬してくれ、ワシはドロドロに溶けてしまったこともあり、埋葬されなかったのじゃ。

彼が墓を作って立ち去ろうとした次の瞬間のことじゃ。

 

「オギャー…!オギャー…!」

 

突然赤ん坊の泣き声が聞こえてきたのじゃ。

その泣き声に驚いた水木青年は慌てて辺りを見回したのじゃ。

すると、岩子を埋めた墓から小さな手が出てきてそこから赤ん坊が生まれたのじゃ。

それが、鬼太郎の誕生の瞬間じゃった。

鬼太郎は生まれつき左目がなく、右目だけでこの世の景色を見ていたのじゃ。

水木青年は恐ろしさのあまり腰を抜かしていての。鬼太郎はそんな彼に近づいていったが、彼は思わず鬼太郎を突き飛ばして逃げてしまったのじゃ。

そうそう。ワシの方がまだじゃったのう。

ドロドロに溶けてしまったワシは泣いている鬼太郎の声を聞き、心配になって魂を目玉に移したのじゃ。

 

「ワシはせがれのことを思うと、安らかに死んではおられないのだ…!」

 

目玉に魂を移したことで今の姿となったワシはすぐに鬼太郎のもとへと駆け寄ったのじゃ。

 

「我が子よー!」

 

ワシは泣いている鬼太郎に駆け寄ると、鬼太郎はワシのことをじっと見つめておった。

本当ならこの手で抱きかかえてやりたかったが、この体となってしまったからには叶わなくなってしまったのう…。

 

「わかるな?ワシはお前の父さんじゃ!お前の名前は鬼太郎じゃ!」

 

この時ワシは鬼太郎に名前を与えたのじゃ。

そして雨宿りをするためにすぐに墓場から鬼太郎を連れて離れることにした。

 

「お前には生まれ落ちるときときから苦労をかけるなぁ…」

 

ワシらはそうして雨をしのげる場所にたどり着き、ワシはなにか鬼太郎に着せるものを探しに行ったのじゃ。

その家は偶然にもあの水木青年の家でのう。鬼太郎は家の扉が少し開いていることに気づいて扉に向かったのじゃ。

 

「つい突き飛ばしてしまった…!あの時僕はどうすればよかったんだ…?」

 

水木青年は生まれたばかりの鬼太郎を突き飛ばしたことを後悔しておってな。ずっと玄関先に座り込んで考えていると、鬼太郎が入ってきたのじゃ。

 

「だぁー…?」

「あっ…あの時の…!」

 

すると鬼太郎は彼に近づくと、彼の手をペロペロと舐めていたのじゃ。

 

「僕を頼りにしているのか…?…考えてみると可哀想な子供だ…よし、僕が育ててやろう」

 

鬼太郎を抱きしめ、息子を育てることを決めた水木青年は鬼太郎の体を洗ってやると服を着せて寝かせてくれたのじゃ。

ワシは眠っている鬼太郎を窓の外から見ていたのじゃ。

 

「これでやっとワシも安心した…!神様、どうかあの子をお守りください…!」

 

ワシは鬼太郎のことを彼に任せ、ワシは影から見守ることにしたのじゃ…。

 

「これがワシらの誕生の全てじゃ」

「そんな過去が…」

 

目玉おやじは全てを話し終え、話を聞いていた千聖が彼らの人生に驚いていると、鬼太郎は目玉おやじの代わりにその後のことを説明する。

 

「その後、僕が7歳の頃に水木さんの家を出て父さんからこのちゃんちゃんこを貰ったんだ」

「その後すぐに俺様と出会ったんだよな〜♪」

 

鬼太郎の説明にねずみ男がニヤニヤと笑みを浮かべながら言い放つ。

 

「鬼太郎くん…鬼太郎くんはお母さんと会えなくて寂しくないの…?生まれてすぐに亡くなったなんて…」

 

彩は感情移入してしまったのか、目に涙を浮かべながら問いかけると、鬼太郎は優しく微笑みながら答える。

 

「大丈夫だよ。僕には父さんやみんながいるから寂しくないよ。それに彩ちゃんたちだっているからね」

「鬼太郎くん…!」

「鬼太郎さんは強いッスね…」

「ふふっ、さてと。そろそろ人間界まで送り返してあげるよ。夜になるとちょっと危ないからね」

 

鬼太郎はそう言って立ち上がると、彩が声をかける。

 

「鬼太郎くん。またゲゲゲの森に来てもいいかな?」

「もちろんだよ」

 

鬼太郎は微笑みながらそう言って彩たちを連れて人間界に向かったのだった。

 

続く。

 

 

次回、第四話「ぬらりひょん」




鬼太郎の左目が無い理由は2つのバージョンがあり、1つは最初っから左目が生まれつきないバージョン。
もう一つはアニメ墓場鬼太郎でも描かれた左目は生まれたときからあったが、突き飛ばされたことで墓石にぶつけて潰れてしまい、隻眼になったというバージョン。
本作では最初から左目が生まれつきないバージョンでの設定を採用している。
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