Pastel*Palettes feat.ゲゲゲの鬼太郎〜BanG Dream!ガールズバンドパーティ!外伝〜   作:キプkeep

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今回は吸血鬼の夫婦が登場します!
この小説はpixivで投稿されたものを加筆修正しています。


第八話「吸血鬼ピー」

某日、とある山奥の集落。

 

普段は事件もほとんどなく、穏やかな集落から突如として人々の悲鳴が上がる。

 

「うわー!助けてくれー!」

「やめろー!ぎゃー!」

 

人々は何者かによって襲われており、一人また一人と、次々と餌食になっていた。

その様子を二人組が眺めていた。

 

「順調ですね〜ハニー。この調子なら明日にはここの人々はぼく達の下僕ですね〜」

「そうねダーリン♪私たちの夢、人間と妖怪を全て吸血鬼に変えるという目標が達成されるわ」

 

二人組はキラリと牙を輝かせながら笑みを浮かべていた。

 

……………………

 

翌日、集落の近くの谷にねずみ男がやって来ていた。

彼はスコップで穴を掘っている様子だった。

 

「ん〜、見つからないわね〜。この辺に埋蔵金があるって聞いたけどな〜…やっぱガセか〜」

 

埋蔵金を探していたねずみ男はガッカリしながら穴を埋めて帰ろうとすると、岩の上に何かがあることに気づく。

 

「ん?なんだありゃ?」

 

近づいてみると、それはピンク色のシルクハットと赤いブーツだった。

 

「あらやだおしゃれなシルクハットとブーツね〜。こういうもんは俺みたいな美男子が身につけるものなのよ」

 

そう言いながらねずみ男はシルクハットとブーツを身につける。

 

「うん。我ながらいい男♪」

 

ボロボロの手鏡で自分の姿を確認しながら自惚れていたその時、誰かに肩を突かれる。

 

「ん?」

「ちょいとキミ。そのシルクハットとブーツはぼくのものですよ。洗濯して乾かしていたのだよ」

 

声をかけたのは前足側の二本足で逆立ちするように立つワニのような妖怪だった。

後ろ足に当たる部分はなく、代わりに尻尾の先に手があり、その手を使って肩を突いた様子だった。

 

「あら一体誰です?」

「申し遅れました。ワタクシ、ピーと申します。タイからやって来た妖怪です」

「んまー。タイの妖怪なの。いや〜、落とし物を交番に届けようと思っていただけですよ。この素敵なシルクハットとブーツは気品のある貴方様にお返ししましょう。あたしゃ見る目があるからね」

 

ピーと名乗る妖怪をおだてながらねずみ男はシルクハットとブーツを返すと、ピーの後ろからピンクのワンピースを着た美女が現れる。

 

「あら。私のダーリンを褒めてくれるなんて嬉しいわね♪」

「ぬおっ!ちょータイプ!失礼ですが、こちらの美しいお嬢さんは?」

「ぼくの妻のモンローです」

「なんと、奥様だったとは!いや〜、羨ましい限りですな〜」

 

ピーに妻を紹介されたねずみ男が羨ましそうにしていると、モンローはねずみ男に問いかける。

 

「ところで、貴方は何故こんなところに?」

「実は埋蔵金を探していて、見つからないので帰ろうとしたところなんですのよ」

 

モンローの問いかけにねずみ男はそう答えると、二人は笑みを浮かべる。

 

「そういうことでしたら早く帰ったほうが身のためですね〜。このままじゃ貴方危ないですよ」

「へ?」

 

ピーの言葉を聞いてねずみ男は不思議に思うと、彼の背後に無数の人影が現れる。

 

「ん?えぇっ!?」

 

後ろを振り返ったねずみ男がその集団に驚くと、集団が一斉に襲いかかる。

 

「ギャーーッ!」

 

ねずみ男の悲鳴が響き渡り、ピーとモンローはそれを見て高笑いをあげていた。

 

…………………………

 

それから数日後のこと、とある集落に彩たちパスパレが田舎ロケにやって来ていた。

 

「こんにちはー!まんまるお山に彩りを♪Pastel*Palettesのボーカル、丸山彩で〜す♪今日私たちは日本一大きな鐘のある集落にやって来ました〜♪」

 

カメラの前で自己紹介をしながら集落に来た理由を述べる彩だったが、集落は誰もおらず、人の気配はほとんどなかった。

 

「え〜っと〜…人っ子一人いないっすね…?」

「廃村なのかな〜?」

「そんなはずはないわよ。少し前にロケの許可を頂いたからいるはずなんだけど…?」

 

辺りを見回しながらそう呟く麻弥と日菜に対して千聖がそう呟くと、建物の影に誰かがいることに気づく。

 

「あっ、誰かいるよ。すみませーん!」

 

彩が駆け寄ってその人物に声をかけると、声をかけられた人物は振り返る。

 

「ん?彩ちゃんじゃないか」

「鬼太郎くん!?」

 

声をかけた人物は鬼太郎であり、彩が鬼太郎がいることに驚くと、千聖たちも駆け寄る。

 

「鬼太郎君。どうしてここに?」

「それはこっちのセリフだって言いたいけど、その様子だとテレビのロケみたいだね。実はここの集落に住む両親と連絡が取れなくなったって言う人からの手紙で調査に来たんだよ」

 

千聖の問いかけに対して鬼太郎が事情を説明すると、鬼太郎の髪の中から目玉おやじが顔を出す。

 

「それにねずみ男も少し前からこの集落の近くに宝探しに出かけてから行方をくらませておるんじゃよ」

「ねずみ男さんも?」

 

すると、鬼太郎の後ろからねこ娘が駆け寄り、鬼太郎に声をかける。

 

「鬼太郎。こっちにも誰もいなかったわ」

「ねこちゃん」

「あら?彩ちゃん達じゃない!久しぶりね!」

「集落の人だけじゃなくてネズミオトコさんもいないなんて…悪い予感がします…」

 

ねこ娘の報告にイヴが悪い予感を感じていたその時である。

 

「ギャーッ!」

 

後ろの方から悲鳴が上がり、それに驚いた全員が後ろを振り返ると、撮影スタッフが村人の集団に襲われていた。

 

「わっ!?な、何!?」

「何してる!やめるんだ!」

 

鬼太郎が撮影スタッフを襲っている集団に向かって叫ぶと、集団のうち何人かが彩たちの方を向く。

彼らの肌は青白く、目も真っ赤に充血しており、明らかに異常だった。

 

「ひぃっ!?」

「な、なんすかあの人達!?」

 

彩と麻弥が驚いた次の瞬間、茂みの中から次々と青白い肌の集団が現れ、全員が口を開けていると、ギラリと鋭い歯が目立っていた。

 

「こ、この人たちもしかしてここの集落の人!?」

「アレ見て!」

 

ねこ娘が集団を見ながら言うと日菜が集団に襲われていた撮影スタッフを指さす。

起き上がった撮影スタッフの肌が青白くなり、目も真っ赤に充血して集団たちと同じ状態になっていた。

 

「ど、どうなってるんすか!?」

「とにかく早く逃げるわよ!」

 

慌てて逃げようとすると、全員の目の前にねずみ男が立ちふさがる。

彼の肌も他の者達と同様に青白くなっており、目も血走っていた。

 

「シャー!」

「ねずみ男!?アンタもなの!?」

「どいてくれねずみ男!」

 

変わり果てた姿のねずみ男を見てねこ娘が驚愕すると、鬼太郎がねずみ男の顔面にリモコン下駄をぶつける。

 

「ぶげぇっ!?」

「今のうちに逃げるぞ!」

「う、うん!」

 

ねずみ男が気絶している隙に全員は急いでその場から逃げ、集団たちは後を追う。

鬼太郎たちと彩たちは逃げた先にあった小屋の中に入って隠れ、集団たちは鬼太郎たちが小屋に入ったことに気づかずに通り過ぎていく。

 

「ぜぇ…!ぜぇ…!な、なんとか逃げ切れたぁ…」

「一体何なのあの人たち…?!スタッフさんたちやねずみ男さんもおかしくなってたわよ…」

「父さん。ねずみ男たちに一体何が…?」

 

彩と千聖は息を切らしつつもほっと胸をなで下ろし、鬼太郎は目玉おやじに問いかける。

 

「うぅむ…ワシにもよくわからんのぉ…じゃが、あの症状は何処かで聞いたような…?」

「それよりも疲れた〜…ん?」

 

日菜が座り込むと、背中に何やら妙な感触を感じていることに気づく。

何やらモサモサとした毛のような感触で温度も感じていた。

 

「誰かいるの?」

 

日菜が振り返ると、そこには口が耳元まで裂けたハゲ頭で毛むくじゃらの青緑色の妖怪がいた。

 

「わっ!?」

「ひえぇっ!噛まないでくれ〜!」

 

日菜が驚くと同時にその妖怪も頭を抱えながら怯えていた。

 

「よ、妖怪!?」

「お前はひょうすべじゃないか!」

「へ?き、鬼太郎!」

 

その妖怪は鬼太郎と知り合いだったのか、嬉しそうに顔を上げる。

 

「こ、この妖怪は?」

「コイツはひょうすべ。僕らの仲間の妖怪でこう見えて河童の一種なんだ」

「私たちがイメージする河童には全然見えないわね…」

 

ひょうすべの容姿が一般的な河童のイメージとかなり違うことに千聖が微妙な表情を浮かべていると、ひょうすべは彩たちを見る。

 

「ん?アンタたちは普通の人間か?よかった。吸血鬼になってないみたいだな」

「吸血鬼って、まさかさっきの人たちのこと!?」

「それにアンタ仲間の河童たちはどうしたのよ?」

 

彩とねこ娘が問いかけると、ひょうすべは事情を説明する。

 

「少し前にここにやってきたピーとモンローとかいう2人組が集落の人間を一人吸血鬼にしたんだよ。そこからどんどん人間たちが吸血鬼になって仲間たちも吸血鬼にされちまったんだよ」

「何!?ピーとモンローじゃと!?」

「一体どんな妖怪なんすか?」

 

ひょうすべの説明を聞いて驚く目玉おやじに対して麻弥が問いかけると、目玉おやじはピーとモンローについて説明する。

 

「ピーとモンローは夫婦の吸血鬼でな。強くはないが、人間と妖怪を吸血鬼に変える厄介な奴らじゃよ」

「それでねずみ男や集落の人たちが吸血鬼に…もとに戻す方法はあるんですか?」

「ピーとモンローを倒すしか戻せんよ。奴らは鐘の音が苦手じゃから鐘の音を聴かせれば無力化できるぞ」

「鐘…そういえばここには大きな鐘があったはずだわ!早くそこに…!」

 

千聖がそう言いかけたその時、小屋の壁を突き破って吸血鬼化した河童たちが入ってくる。

 

「ひゃあっ!?」

「しまった!居場所を気づかれたか!」

「あぁーーっ!」

 

突然の襲来に彩たちと鬼太郎たちは一箇所に集まるが、ひょうすべは河童たちに捕まって噛まれてしまう。

 

「ひょうすべ!くっ…!」

 

鬼太郎は飛びかかってきた一目入道とヒョウズンボを霊毛ちゃんちゃんこで薙ぎ払うと、彩たちを連れて小屋から脱出する。

 

「鬼太郎くん、これからどうするの!?」

「とにかく鐘のある場所に行くしかない!鐘は何処に…!?」

「確か…あっちだったはずよ!」

 

千聖が前方にある丘の上に建つ神社を指さし、全員がそちらに向かうことにすると、後ろから吸血鬼化した河童たちが追ってくる。

 

「来たわよ鬼太郎!」

「こうなったら仲間を呼ぼう!」

 

鬼太郎は妖怪オカリナを吹き、その音色によって仲間の妖怪を呼び寄せる。

 

「呼んだか鬼太郎はん?」

 

呼び出したのは海月の火の玉だった。

 

「海月の火の玉!河童たちの足止めを頼む!」

「お安い御用や!いくでー!」

 

海月の火の玉は回転して火を撒き散らすと、その火に驚いた河童たちは怯み、その隙に全員は神社に向かう。

しばらくして全員はようやく神社に到着する。

 

「や、やっと着いた〜…!確かあそこに鐘があるってロケの時にスタッフさんが言ってたけど…」

 

息を切らしながらも、彩が鐘があると言われている方角を指さすが、そこにあるはずの鐘は影も形もなかった。

 

「えっ!?な、ない!?」

「鐘なら既に処分しておきましたよ〜」

 

彩が驚いたその時、何処からか声が聞こえると同時に彼女の頭上から吸血鬼化したつるべ落としが落ちてくる。

 

「!危ない彩ちゃん!」

 

それに気づいた鬼太郎が咄嗟に彩を突き飛ばすが、鬼太郎はそのままつるべ落としの下敷きになる。

 

「ぐあぁっ!」

「鬼太郎くん!」

「鬼太郎!」

 

彩と鬼太郎から転げ落ちた目玉おやじが声を上げると、林の中から吸血鬼化した人間たちと妖怪たちを引き連れたピーとモンローが現れる。

 

「ごきげんよう」

「アンタたちがピーとモンローね!なんでこんなことするのよ!?」

「それは簡単なことですわよ。私たち夫婦の楽園を作ることですわ。つるべ落とし。その子供の妖怪も吸血鬼にしなさい!」

 

ねこ娘の問いかけに答えたモンローはつるべ落としに命じると、つるべ落としは下敷きにした鬼太郎に噛みつく。

 

「うぐっ!うぅ…!あぁ…っ!!」

 

つるべ落としに噛まれた鬼太郎の肌が徐々に青白く変色し、目も真っ赤に充血して吸血鬼になる。

 

「そ、そんな…!鬼太郎くんが吸血鬼に…!」

「とほほ…鬼太郎…」

「キャーッ!」

 

彩と目玉おやじがショックを受けたその時、日菜とイヴの悲鳴が聞こえると、カシャボとがんぎ小僧が二人を襲い、その首元に噛みついていた。

 

「っ!日菜ちゃん!イヴちゃん!」

 

二人はそのまま吸血鬼と化してしまい、うめき声を出しながらフラフラと彩たちに歩み寄る。

 

「そんな…!二人まで…!」

「よくも鬼太郎たちを!カーッ!!」

「待つんじゃねこ娘!今戦えるお前までここでやられるわけにはいかん!ここは一旦退却じゃ!」

 

怒りで化け猫顔になるねこ娘に向かって目玉おやじがそう言い放つと、全員は急いでその場から退却する。

 

「逃がしませんよぉ…!追いなさい!」

 

ピーが吸血鬼たちに命じると吸血鬼たちは彩たちの後を追った。

吸血鬼軍団から退却した彩たちは岩陰に身を隠しており、吸血鬼と化したセコの集団が辺りを捜索していた。

 

「これからどうしよう…?鬼太郎くんが吸血鬼にされたら仲間の妖怪さん達も呼べないよ…」

「日菜さんとイヴさんも吸血鬼に変えられてしまいましたし、どうすれば…?」

 

彩と麻弥が考え込んでいると、目玉おやじがあることを思いつく。

 

「こうなったら最後の手段じゃ。まぼろしの汽車を使うしかない」

「まぼろしの汽車!?それって地獄にあるあの汽車のこと!?」

「ま、まぼろしの汽車って一体なんなの?」

 

目玉おやじの発言にねこ娘が驚くが、まぼろしの汽車がなんなのか分からなかった千聖が問いかけると、目玉おやじは説明する。

 

「まぼろしの汽車は時を戻すことが出来る汽車じゃ。あの汽車さえあれば鬼太郎を元に戻せるかもしれん」

「でも、まぼろしの汽車は閻魔大王のものでしょ?大丈夫なの親父さん?」

「これしか方法はない。海月の火の玉。ワシを地獄に連れて行ってくれ。ねこ娘はここに残って彩ちゃんたちを守ってくれ」

 

目玉おやじがねこ娘に彩たちを守るよう頼むと、海月の火の玉に乗って地獄へと向かった。

 

「気をつけてね…親父さん…!」

 

彩がそう呟くと、セコたちが彩たちを見つける。

 

「ミツケタ!ミツケタ!」

「!見つかったわよ!」

「みんな、アタシから離れちゃダメよ!フシャーッ!」

 

ねこ娘は化け猫顔になると飛びかかってきたセコたちを鋭い爪で退け、それと同時に他の吸血鬼たちも現れると、四人は再び逃げ出した。

 

………………………

 

その頃、地獄。

 

死者の魂が集まるこの死者の世界に目玉おやじと海月の火の玉がやって来ていた。

 

「閻魔大王!ワシじゃ!鬼太郎の親父じゃ!」

 

地獄の法廷に訪れた目玉おやじが声を上げると、地獄の王である閻魔大王が現れる。

 

「目玉か。久しぶりだな。我に何の用だ?」

「閻魔大王殿。頼みがある!ワシにまぼろしの汽車を貸してほしい!」

「なんだと!?いくら閻魔大王様のご友人だろうとあの汽車を使わせるわけにはいかん!」

 

地獄の鬼が目玉おやじの発言に腹を立てると、閻魔大王がそれを制止させる。

 

「構わん。現世の様子は我も把握している。吸血鬼が騒ぎを起こしているからお前の息子を元に戻すためにあの汽車を使うのだろう。使うがいい」

「本当か!ありがとうございます!」

「ただし、使うのはお前の息子を元に戻す一度だけだ。それ以外に使うことは許さん」

「はい!」

 

閻魔大王が目玉おやじにまぼろしの汽車の使用許可を与え、目玉おやじが感謝すると、閻魔大王は死神に声をかける。

 

「死神。まぼろしの汽車を現世に向けて発車しろ」

「わかりました閻魔様!親父さん、あとお連れ様。こちらへどうぞ!」

 

死神は目玉おやじと海月の火の玉を連れてまぼろしの汽車がある車庫へと向かった。

 

………………………

 

その頃、彩たちは吸血鬼たちに囲まれており、今にも危機的状況だった。

 

「ひぃ〜…!囲まれちゃったよ〜!」

「大丈夫よ彩ちゃん!必ずみんな助かるわ!」

 

逃げる途中で拾った木の棒を構えながら震える彩にねこ娘がそう言い放つと、吸血鬼化した鬼太郎たちを引き連れたピーとモンローが現れる。

 

「残念ですが。あなた方の悪あがきはここまでです。せめてもの情けです。あなた方のお仲間たちの手で吸血鬼に変えてもらいましょう」

 

ピーがそう言い放ったその時である。

何処からか蒸気を発する音が響き渡ると同時に蒸気機関車が現れる。

 

「むっ!?」

「あれは!?」

「まぼろしの汽車よ!」

 

まぼろしの汽車を見た全員が驚くと、目玉おやじが先頭車両の機関室の窓から顔を出す。

 

「遅くなってすまん!持ってきたぞー!」

「親父さん!」

「吸血鬼の鬼太郎はーん!ここまで来てみーやー!べろべろばー!」

「ギガーッ!」

 

目玉おやじに続いて顔を出した海月の火の玉が鬼太郎を挑発すると、挑発に乗って怒った鬼太郎はまぼろしの汽車の先頭車両に飛び込む。

 

「何をする気ですかあの目玉は!?吸血鬼たちよ!汽車を壊しなさい!」

 

危機感を感じたピーが吸血鬼たちに命じると吸血鬼たちはまぼろしの汽車に群がって破壊しようと試みる。

 

「あのままじゃ壊されるっすよ!」

「心配いらないわ。まぼろしの汽車はそう簡単に壊されないわ」

 

心配する麻弥の言葉に対してねこ娘が返答する。

まぼろしの汽車に乗り込んだ鬼太郎は今にも目玉おやじたちに襲いかかろうとしていた。

 

「グゲーッ!」

「親父はん!鬼太郎はんの動きを止めんとあかんで!」

「わかっとる!死神!早く鬼太郎の時を戻すんじゃ!」

「そうは言われても鬼太郎さんだけに範囲を絞って時を戻す調整が難しいんですよ〜!」

 

目玉おやじが死神に急かすが、死神は鬼太郎の時を戻す準備に手こずっていた。

ふと目玉おやじは霊毛ちゃんちゃんこを見る。

 

「そうじゃ!ちゃんちゃんこよ!鬼太郎の動きを封じるんじゃ!」

 

目玉おやじがちゃんちゃんこに命じると、ちゃんちゃんこはひとりでに動いて鬼太郎に巻きついて動きを封じる。

 

「グゲッ!?」

「よし今じゃ!」

「時戻り開始!」

 

調整を終えた死神がスイッチを押すと、火室から特殊な波動が放たれ、鬼太郎がそれを浴びると徐々に肌の色が元に戻る。

 

「ぐぅ…ぼ、僕は一体…?」

 

目の色も元に戻り、鬼太郎は正気に戻った。

 

「元に戻ったか鬼太郎!さぁ、ピーとモンローをやっつけるんじゃ!」

「はい、父さん!」

 

鬼太郎は機関室から出ると、吸血鬼たちをちゃんちゃんこで払いのける。

 

「鬼太郎くん!元に戻ったんだ!」

「心配かけてごめん!」

 

彩が鬼太郎が元に戻ったことに喜ぶと、ピーが鬼太郎の前に立つ。

 

「どうやって元に戻ったのかは知りませんが、我々夫婦の夢の為に貴方には死んでもらいますよ!」

「キャー!ダーリンカッコいー!」

 

モンローが飛び跳ねながら喜んでいると、ピーはシルクハットを掴む。

 

「喰らいなさい!シルクハットブーメラン!」

 

ピーはシルクハットを鬼太郎に投げつけ、鬼太郎はギリギリのところで攻撃を躱すと、シルクハットのつばの部分が鬼太郎の袖を切り裂く。

 

「っ!?」

「このシルクハットのつばにはカミソリを仕込んでいるんですよ!さぁ、今度はその首を貰いますよ!」

 

シルクハットを受け止めたピーは再びシルクハットを投げるが、鬼太郎はちゃんちゃんこでシルクハットを弾き飛ばす。

 

「へ?ぎょえぇぇぇぇっ!?」

 

弾き飛ばされたシルクハットの直撃を受け、ピーは吹き飛ばされる。

 

「キャーッ!ダーリン!!お願い攻撃はやめてー!」

 

攻撃を受けたピーを見て悲鳴を上げたモンローは鬼太郎に攻撃をやめるよう言うと、彼女は慌ててピーに駆け寄る。

 

「ハラホロヒレハレ〜…」

「ダーリン!大丈夫〜!?しっかりして〜!貴方が死んじゃったら私生きていけないわ!」

「モンローさぁ〜ん…ぼくたちの野望はこれまでです…諦めましょう…」

「ダーリンが生きていけるならそれでいいわよ〜!ダ〜〜リ〜〜ン!!」

 

ボロボロになって目を回すピーは計画を諦め、モンローはそれを受け入れて泣きながらピーに抱きついていた。

 

「え〜…弱っ…」

「アレならジブンでも倒せたかもっすね…」

「そ、そうね…」

 

あまりにもあっけないピーとモンローを見て彩たちは呆然と立ち尽くしていた。

数分後、手当てを受け、包帯で全身をぐるぐる巻きにされたピーは吸血鬼にされた者たち全員を集めていた。

 

「さぁ、これが元に戻す薬です。この薬を浴びればみんな元に戻りますよ…」

 

ピーは薬が入った小瓶を取り出すと、その蓋を開ける。

すると、小瓶の中から溢れ出た薬が集落中に散布される。

 

「あ、あれ?あたし一体何を…?」

「ブシドー…?」

「日菜ちゃん!イヴちゃん!」

 

薬を浴びた日菜とイヴは元に戻り、ねずみ男も元に戻る。

 

「あら?俺どうしちゃったの?」

「ねずみ男。元に戻ったのね」

 

不思議そうな表情を浮かべるねずみ男にねこ娘が声をかけ、他の人間たちや妖怪たちも元に戻っていた。

 

「私たちは故郷に帰ります。皆さま、ご迷惑をおかけしてすみませんでした…」

「さようなら…」

 

ピーとモンローは全員に頭を下げると、そのまま帰って行った。

 

「何はともあれ、これで一件落着だね鬼太郎くん!」

「そうだね」

「では、私はまぼろしの汽車を持って地獄へ帰ります。さようなら目玉おやじさん!」

 

死神が目玉おやじに挨拶をすると、まぼろしの汽車は地獄に戻って行った。

 

「あっ!ロケどうしよう!?鐘も無くなっちゃってるし…」

「あの〜、鐘ってコレのことか?」

 

ロケ番組のことを思い出して困っている彩につるべ落としが声をかけると、洞穴に放置された大きな鐘を見せる。

 

「多分それだよ!良かった〜!これでロケが再開できるよ〜!」

「もう、彩ちゃんったら」

 

ホッとする彩を見た千聖が微笑み、他の者たちの笑い声が響き渡った。

 

続く

 

次回、第九話「輪入道」




ピーのモデルになったのはインド神話のマカラがモデルとされ、また、ピーの名前の由来はタイの言葉で精霊やお化けという意味である。
そのため、本作でのピーはタイの妖怪という設定にしている。
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