崩壊3rd読み切り集   作:影元冬華

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吸血鬼パロ風味?
ゼレブロじゃけえ!


骨の髄まで

 ゆらゆらとはっきりしない意識と身体に篭った熱、そして体の奥底から求めるような「渇き」に起こされる。ゆっくりと呼吸をし、湧き上がる衝動を抑え込むために自らの胸元を押さえつける。

 ゼーレは苦しそうに息を吐きながら体を起こす。この症状が出るときは決まっていつも「一人」になる。しかしそんな異常すら思考の端に押しやるほどに、この体に刻まれてしまった「衝動」はゼーレに重く圧し掛かる。

 

 窓から外を見れば、外は真っ暗な夜空に星が浮かんでいた。こんな時間ではいつも頼っている「姉」は眠っているはずだ。それを自分の都合に合わせて起こしてしまうのは駄目だ。そうゼーレは自身を納得させるように心の中で何度も唱える。

 だが理性で抑え込んでも抑えきれない本能の獣はゼーレの意識を徐々に蝕んでいく。

 

 たりない

 

 たりない

 

たりない

 

 

 息をするたびに思い出す匂い、忘れようとしても体に刻み込まれた「酔い」、そして渇きが満たされていく満足感。自分勝手な欲望を押し付け、獣のように貪り、全てを食らい尽くしてしまうかのように奪っていく征服感。どうしようもないほどに醜い欲望すら、何も言わずに受け止めてくれる「姉」なら。

 

ふとそんな思考が過り、ゼーレは戒めるように己の腕を強く握りしめる。それは獣を押さえつけるかのように粗雑で力任せなやり方だ。それでも、ただの気休め程度にしかならない。それはゼーレ自身が一番分かっている。

 

ゼーレは強く目を瞑り、体を丸める。朝になればこの衝動も少しはマシになる。それまで耐える、耐えなければならない。ただひたすらに時間が過ぎていくのを待つしかないのだ。だが理性という檻に囚われるのを拒む本能の獣はゼーレの中で荒れ狂う。ドクドクと心臓の鼓動が耳元で煩く聞こえるほどに早くなり、思考が少しずつ溶けていく。

 

そのとき、ゼーレの耳はこの時間であれば聞かないはずの音と声を捉え、一瞬体が跳ねた。

 

 

「──ゼーレ」

「ブロー、ニャ…おねぇ、ちゃん…」

 扉を開けて入って来たのは「姉」であるブローニャだった。

 

どうして、なんで。

 

 

 そんな思考とは裏腹に体は言うことを利かなくなっていく。自分のテリトリーに入ってきた獲物を前に待てができる訳もなく、無意識に手を伸ばす。

 ブローニャはゼーレの元へと近寄っていき、無意識に伸ばされたその手を握る。そのまま怯えているゼーレを優しく抱きしめた。

 

 

「っ、うぁ…」

「大丈夫。大丈夫ですよ、ゼーレ」

 

 

 耳元で囁く優しい声はゼーレの理性を容易く溶かしていく。ブローニャは怯えて涙を瞳に浮かべたゼーレの頭をゆっくり、ゆっくりと撫で、背中を優しく叩く。ブローニャの腕の中で身体を固くしていたゼーレは、最後の抵抗なのか頭をブローニャに押し付けて少しでも「そのとき」が来るのを遅くしている。それでも少しずつ本能に引きずり込まれて来ているのか、ブローニャの体を逃がさないようにしていく。

 

 

 

 

 

 ブローニャはゼーレの頭を撫でる手を止めず、その首筋を無防備に晒している。少しして、ブツリと皮膚を食い破る感触と共に鋭い痛みが一瞬ブローニャを襲う。ほんの一瞬だけ呻き、しかしそのまま抵抗せずにゼーレのしたいように体を任せる。

 噛みつかれ、食い破られた傷から血が流れ出ていく感触と共にぐらりと視界が揺らぐ。ブローニャの傷口から流れ出ているのは血だけではない。ゼーレはそこから更に崩壊エネルギーも無理矢理引き剥がすように持っていっている。

 

 温い感触が傷口を上塗りするようになぞり、吐息が静かにかかる。首元からゼーレの頭が離れていく、それを理解したと同時にぐい、と強い力で押し倒される。

 上からブローニャを押さえつけるように、獲物を逃がさないようにしているゼーレは肩を上下に揺らすほどに荒く呼吸を繰り返し、見下ろすその瞳は赤い色が混ざり始めている。ゼーレの理性は最早あってないような状態なのだろう。どこか恍惚とした表情と目尻に薄っすら残っている涙が反立している。

 

 

「っは、はっ、はっ……っ」

「ゼーレ」

「っ!おね、ちゃ…だめ、だ、めな、のに」

 

 

 駄目だ、と口では言っていてもその体に刻まれた本能はもっと求めて止まないのだろう。ブローニャを押さえつける力が少し強くなる。先ほど晒した方とは逆の首をゼーレに見せつけるように晒し、少しだけ抵抗する。

 次の瞬間、逃げるのは許さないと言わんばかりに荒々しくゼーレは噛みついてくる。先ほどよりも強い痛みにびくりと体が反射で固くなるが、それすらも認めないと言わんばかりにゼーレはさらに強く抑え込んでくる。

 新しい傷口から止めどなく流れ出る血と崩壊エネルギーを一滴でも零さないようにするその姿を前に、ブローニャはまるで自分が肉食獣に狩られたウサギのようだと感じた。

 

 

「っぐ…」

「──っ、」

「大丈夫、好きなだけ持っていっていいですから…ブローニャの事は気にしないで、気が済むまで好きにして、ゼーレ」

 

 

 その言葉で完全に理性が途切れたのだろう。今までのがお遊びだったと言わんばかりにごっそりと崩壊エネルギーを持っていかれる。全てを、骨の髄まで何もかも持っていこうとする「妹」の頭をもう一度撫で、ブローニャは意識を手放した。

 

 

▽▽▽

 

 鈍く痛む頭と身体の感覚を感じながら、ブローニャは目を覚ます。首元に張られた絆創膏と、すぐ横から感じるゼーレの体温からして落ち着いたと判断し、起き上がろうとしたがいつもより多く持っていかれたらしく、ロクに動けなかった。

 ブローニャは変に動いてゼーレを起こすよりはこのままの方がいいと思い、少しだけゼーレの方に体を寄せてもう一度眠りについた。

 

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