はい、こちらストーム1 ~IS編~   作:えるらるら

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忙殺で更新が出来ずに震えたので投稿です。


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 ん、気が付けばもう十九時か。休みだったこともあってか、昼過ぎに束さん達が帰ってからずっとパワードスーツの手入れをしてしまっていたな。

 晩飯はどうするか……作るのも今日は面倒だ。束さんがお土産として置いていった完全食にするか。

 

「ん?」

 

 近付いてくる気配? 一人ではないな。

 こっちに向かって来ているみたいだが誰だ? 今日はもう来客の予定は無いはずだが。

 

「あのー、一年二組の凰鈴音です」

 

 何か迷いがあったのかノックするのに時間が掛かったなと思えば、凰鈴音か。

 門限も近いこんな時間に訪ねてくる場所でも無いだろうに……それに凰鈴音だけではないのも気になるが、いつまでも様子見をするのも悪いな。

 

「どうぞ」

 

「失礼しまーす」

 

「あー……挨拶はいいから、全員入るといい。茶ぐらいは出そう」

 

 一言と軽く頭を下げて入ってくる面々は、こうやって見てしまえば納得のメンバーだ。

 凰鈴音と織斑一夏、後は資料や写真でしかしっかりと見た記憶はないが、セシリア・オルコットと篠ノ之箒……いや、組み合わせは納得できるが、原作の主要人物達が揃って本当に一体何のようだろうか。

 

「もうすぐ門限だと思うが、急用か?」

 

「あ、えっと、その、この前のお礼を」

 

「……これは、酢豚か」

 

 この前の礼。特別に何かした覚えは無いんだが、一緒に来たということは仲直りぐらいはできたみたいだな。

 

「なるほど、上手くやれたか?」

 

「半々って感じ」

 

「悪くない結果だったのなら何よりだ。昨日も大変だったろうに気を遣わせたみたいだが、まだ夕食を食べていなかったんだ。酢豚はありがたく頂こう。君たち食事は?」

 

「食べてから来た」

 

「そうか」

 

 コップが足りないな。まぁ、自分の分はいいか。

 しかしまさか足りなくなる日が来るとは……俺もそろそろマイカップとやらを用意してみるのもいいかもな。

 

「さて、大所帯で来たということは、用事はそれだけではないのだろう? まずは三人は初めましてだな。用務員をさせてもらっているストーム1だ。好きに呼んでくれて構わない」

 

 とりあえず酢豚は冷蔵庫に入れ、用意した茶を並べてから軽い自己紹介をすれば、凰鈴音を除いた三人も軽い自己紹介を返してきた。

 ……まぁ、事前に名前程度は知っていたし特に驚くような事があるわけでもないが、織斑一夏はキョロキョロと周りが気になっているみたいだな。そんな珍しいモノは無いはずだが。

 

「何か気になるモノでもあったか? 織斑一夏君」

 

「え? あっ、いやなんか秘密基地みたいで良いなって思って」

 

「なるほど。確かに言われてみれば、そういう感じもあるか」

 

「あと……千冬姉ぇ居ました?」

 

「……確かに昨日の件を聞きに昼頃まで居たには居たが、良く分かったな。何か忘れ物でもあったか?」

 

「何となく?」

 

「なるほど?」

 

 姉弟ならではの感覚か? その辺は一人っ子だからよく分からんな。

 まぁいい。別に織斑先生が来ていた事が知られた所で大した問題はないだろう。仮に織斑先生がサボっていたのであれば、今度からは事前に伝えてもらう事にすればいいだけだ。

 

「それで、四人でこんな所へ何か用事があったのか?」

 

「お礼の酢豚を届けに来ただけよ?」

 

「……四人で?」

 

「四人で」

 

「そうか」

 

 他の三人は凰鈴音の付き添いか。仲良さそうで何よりだ。

 しかしそうか……よくよくみれば興味津々で見渡していたり、横目で俺を観察していたりするのは織斑一夏だけで、セシリア・オルコットと篠ノ之箒は緊張でかソワソワとしているだけだな。

 これは、俺が茶を出したのが逆に引き止めた感じになったのか? だったら悪いことをした。

 

「ではそろそろ戻るか?」

 

「んー、あっ! そういえばストームさん、昨日の試合見てた?」

 

「仕事の都合で遠巻きながらではあったが見ていた。二人とも大変だったな」

 

「本当よ! もう少しで一夏をボッコボコにできたのに!」

 

「ちょ、俺だって今から本気でやるって時だったんだぞ!」

 

「例えそうでも、アイツ等が来なければ勝ってたのはアタシだった!!」

 

「どうだかな。もう鈴の龍砲は見切ってたも同然だったぜ?」

 

 何やら言い合いを始めた二人を眺めつつ、昨日の試合を頭の中で思い返してみるが……どちらも本心なんだろう。

 織斑一夏にはまだ手があったのだろうし、あの時点で凰鈴音の中では勝利への流れが出来上がっていたとしてもおかしくはない。

 

「あの、ストームさん」

 

「どうした。茶のおかわりがいるか?」

 

「いえ、失礼な質問であることは承知しているのですが、アレはストームさんの趣味ですか?」

 

 あの後はこうした。それならこうした。と口頭で試合の続きを始めた二人の言葉を脳内でイメージしていると、静かに篠ノ之箒が寄ってきたと思えば、その視線は俺の後ろの棚へと向いている。

 俺も同じ方を見れば、そこには昼間に束さんが置いていった束さん専用携帯を充電するための充電器。

 一見すると兎が携帯を抱きかかえている様にも見えるソレは、確かに俺のイメージでも置いてあるモノの中でも浮いているな。

 

 しかしどう答えたものか。

 今のタイミングで束さんと関係があるとバレるのは、あまりよろしくないか? 普通にあの時乱入してきたのは俺だと連想する可能性は高い。

 バレないように動いてくれている織斑先生的にも都合は良くないだろう。となると、適当に誤魔化すに限るが……。

 

「……かわいらしいだろう?」

 

「……はい」

 

 ……俺も間違えたなと思ったが、そんな引き攣った表情を当人の前でするものではない。これは君の姉の趣味だと言いたくなる。

 まぁ、自身もその考えが浮かんだから聞いてきたんだろうし、まさか束さんも篠ノ之箒がココに来るとは思っていなかったのだろう。そう思って今は甘んじてその引き攣った苦笑いを受け止めよう。

 だがアレだな。今日は何かボロを出してしまいそうな気がしてきた。追い返すようで悪いが、今日の所は帰ってもらうか。

 

「さて二人ともその辺でそろそろ寮へ戻ったほうがいい。篠ノ之箒さんもセシリア・オルコットさんも手持ち無沙汰だろ「ストーム、さっきの食事の話だが食えない物――お前達はこんな所で何をしている」――なるほど」

 

 何がなるほどなのか自分でも分からないが、織斑先生が風呂場側から出てきた瞬間、もうなんか空気が混沌とした事は理解した。

 織斑先生は四人を見て渋い表情を浮かべているし、対する四人は目を見開いて唖然としている。

 まぁ、ここでこんな会い方をするとは思わんだろうな。俺も思わん。

 

 さて……この空気をどうしたものか。

 まず問題なのが、夜な夜なこんな所に生徒が居ること。

 これは事情を説明すれば問題はあまりないだろう。となるとやはり問題は、織斑先生が束さんルートで出てきたのをどう説明したものか。

 後数秒もすればあの先が風呂場なのはバレるだろうし、束さんの事を伏せた上で丸く収まりそうな説明が浮かばん。織斑先生に収拾を任せるか? まぁ、とりあえず言えるのは――

 

「食べられない物は特に無い」

 

 ――アレルギーも好き嫌いも無い事ぐらいだな。

 

 

 

◇◆

 

 

 

「アルコールはどうする?」

 

「適度に飲めるぐらいであればいい」

 

「分かった。他にも聞いておきたい事があったが、場所が決まったらまとめて連絡する」

 

「そうか……では、次はこの状況についてになるが、どうする?」

 

 ストーム1と織斑千冬の二人が視線を向けた先では、四人は目を丸くして口すらも開けっ放しであり、すぐに閉まる様子はない。

 

「……私のせいか」

 

「不注意だったな」

 

「はぁ……お前達、門限だ。寮に戻れ」

 

 簡潔に、そして面倒だと言わんばかりの雰囲気で発された言葉。

 しかしそれだけでは、四人は今の状況を飲み込むことはできず、何よりも気になるのは二人の親しげなやり取りの様子と内容。

 

「ち、千冬姉ぇ? 今どこから?」

 

 まずは……といった様子で言葉をなんとか絞り出した織斑一夏は、織斑千冬が出入り口ではない場所から出てきたことが不思議でならない。更に一つの可能性が頭の中に浮かんでいるからこその一つ目の質問。

 見えている範囲には畳敷きの居間っぽい空間に隣接しているキッチン。後は家具が少しあるだけでだだっ広いそこには、あってもおかしくない場所がない。そう、トイレと風呂がない。

 無くてもおかしいわけではないが、ストーム1は先程「昼頃まで居た」と過去形で答えている。そうなればココに居るのはおかしく、尚且つあの奥が予想通りであれば……。

 

 ――ま、まさか! あの千冬姉ぇに!

 

 などと頭の中を浮かんだ可能性は軽快なステップと踏み鳴らし、主張激しく駆け巡って仕方がない。

 対するは織斑千冬はそんな弟の思考を読み取り、加えて興味津々と言わんばかりに目を輝かせている女生徒三人組に大きな溜め息を零しながら考える。

 そして返した答えは。

 

「風呂場だ」

 

「「「「ハッ!」」」」

 

「先日壁が破壊されていてな。表に回るより近かったんだ」

 

「「「「は?」」」」「なるほど」

 

 まさかの返答に表情をコロコロと変える四人と、一切表情を変えず腕を組んで何を納得したのか小さく頷くストーム1。

 

「色ボケ共が次の質問をする前に答えておいてやるが、外食をしようにも土地勘がないとストームから相談され、私が幾つかピックアップしてやる約束を昼間にしただけだ」

 

「なんだぁ、そうだったのか……あれ? でもそれなら千冬姉ぇ、電話で良かったんじゃないのか?」

 

「……ストーム」

 

「ここで俺に振るのか。まぁ、単純に互いの連絡先を知らん」

 

「そういうことだ。分かったら寮に戻れ。私の前で門限を破る気か? それとも、目が覚めたら寮の部屋がお望みか?」

 

 手を握ったり開いたりと解す仕草をする織斑千冬からは有無を言わさぬ威圧感が放たれており、四人は四人でテーブルに置いてある時計を確認した後、威圧感のせいもあってか慌てて出ていく。

 そして四人の気配が遠ざかった辺りで、織斑千冬は何度目か分からない溜め息を零しながら腰を下ろした。

 

「何か飲み物を貰えるか?」

 

「用意しよう。しかし先程のは些か強引だったのでは? もし弟君達が裏に回れば壁の件はバレていただろう」

 

「アイツ等にそんな余裕があったように見えるか?」

 

「興味というのは中々に厄介なものだ」

 

「その時は先に壊していた」

 

「……。まぁいい、ただ次は靴の言い訳も考えていたほうが良いかもしれんな」

 

 織斑一夏が使っていたコップを軽く洗い、飲み物を用意したストーム1の言葉につられて足元を見れば小綺麗なままのタイツが目に入る。

 多少焦ったことは認めているが、ここまで頭が回らないとは……と思いながらお茶を飲めば、眉間に寄っていたシワも跡を消していく。

 そして落ち着いた織斑千冬は一つのUSBを取り出して、コップなどを片付け終えて向かいに座ったストーム1へと差し出した。

 

「これは?」

 

「先程までやっていた私のシミュレーションデータだ。使用ISと戦闘記録が映像として入っている」

 

「あぁ、だから束さんの扉から出てきたのか。晩飯でも食べながら見させてもらうとしよう」

 

「感想を期待しておこう。しかし束から聞いていたし、シミュレーションを見た時にも思ったが……本当にあれがお前の日常だったのか? 流石の私でも少し気分が悪くなったぞ」

 

「織斑先生が行った内容を知らんが、巨大生物共と戦っていたのは事実だ。そしてそれが俺の日常だ」

 

 淡々と。気にする様子無く、強がる素振りも無く、ただ当然のように淡々と答えるストーム1に織斑千冬は篠ノ之束が感じているであろう壁を感じた。そしてその壁は簡単に触れていいものでもなければ、内側に踏み入ってもならない領域である事も。

 同時に篠ノ之束が一目惚れした理由も察した。

 自他共認める天才。性格や言動に難はあれど揺るぎなく、式が先でもなく答えが先でもなく、同時に全てを理解する篠ノ之束は、ストーム1との最初の邂逅でその生き方と生き様に触れたのだと。

 

「気分が悪くなったというのは余計だった。すまん」

 

「その感覚は至って普通だ。戦い続けた事は俺の誇りではあるが、他人からの感想程度で揺らぐモノでもない」

 

「お前は強いな」

 

「……どこからその言葉が出てきたのか分からんが、弱くあるつもりはない。その評価は素直に受け取ろう」

 

 そういう所だ……と思いはしたものの織斑千冬は口を閉ざす。そして、まさか自分が羨望を強く感じる事になろうとはと思わず笑いそうになったが、お茶と共に流し込み気持ちを落ち着かせる。

 落ち着かせる間に訪れた互いに沈黙した静かな空間。それは息苦しいものではなく、織斑千冬にとって悪くはなかった。

 

「なるほど」

 

「どうした?」

 

「いや、大したことではない。それよりも一夏達が居るとは驚いた。ちゃんと生徒とも友好を深めているんだな」

 

 思わず呟いてしまった言葉に含まれたモノを覆う様にストーム1への返答をすると、冷蔵庫から一つのタッパーが出てくる。

 クリアになっている側面から見えるのは酢豚であり、織斑千冬にはそれを誰が作ったかはすぐに見当がついた。

 

「凰鈴音の話し相手になった事があってな。その礼を持ってきただけだ」

 

「凰? アイツが学園に来たのは最近だろう」

 

「たまたまだ。それ以外とは今日初めてちゃんと顔を合わせた。今回まともに話したのも凰鈴音と弟君ぐらいだな。セシリア・オルコットは自己紹介以外は沈黙していたし、篠ノ之箒は……顔を引き攣らせていた」

 

 ふとストーム1が見た先を追えば、そこには兎を模した充電器があり、織斑千冬は大方の流れを察した。

 視線を戻してタッパーを冷蔵庫に戻している背中を見て、ふと今の会話で気になった事を口にする。

 

「少し気になったんだが、私が相手だから一夏のことは弟君と言っているんだろう? 生徒本人相手にはどう呼んでいるんだ?」

 

「呼び方か……別に特別なことはない。役職があれば基本役職だ。一般生徒には、フルネームに君やさんだな」

 

「随分と距離感のある呼び方をしているんだな。ストームなりの線引があるのか?」

 

 織斑千冬の言葉にストーム1は「いや……」と零し、腕を組み、天井を見上げて暫し沈黙をしたあと静かに、そしていつもより少し小さめになった声で呟いた。

 

 

 

「現役高校生との距離感が分からん」

 

 

 

 

――

 

 織斑千冬がストーム1のボヤキに唖然とした後、しっかりと爆笑した翌日。

 轡木から頼まれていた業者への連絡を終え、報告書も書き終えて業務終了となった頃。軽いストレッチの後にパワードスーツの手入れでもしようか……と考えていたストーム1の元に数人の来客が来る。

 

「どうぞ」

 

 ノックに答えて入ってきた人物は、昨晩とは打って変わって青筋を立て、大きめのバッグを片肩に掛けている織斑千冬。

 そして気絶でもしているのか、織斑千冬にアイアンクローで引きずられていても尚、反応を見せない織斑一夏。

 更にその後ろを気まずそうな表情で入ってくるのは、篠ノ之箒、凰鈴音、セシリア・オルコットの三人。

 

「……状況が分からんのだが」

 

「ストーム、度々済まない。少しこのバカ共に訓練を付けてやってくれ」

 

「…………状況が分からんのだが」

 

 何事か一切理解できていないストーム1の頭の中では、とりあえずこんな事が続くのなら……とマイカップと追加の来客用食器の必要性を考え始めていた。







四人の現段階でのストーム1への印象。
織斑一夏:将来の義兄さん……? 見極めねば。
凰鈴音:アドバイスをくれる優しい常連さんみたいな人。
篠ノ之箒:隙がない。多分かなり強い人。 アドバイス欲しい。
セシリア・オルコット:男の人。 苦手意識はあるがアドバイス欲しい。

大体こんな感じで。
織斑一夏との一件があったとはいえ、セシリア・オルコットがこのタイミングで大人の男と普通に会話するイメージがどうしても浮かびませんでした。


織斑千冬が行ったシミュレーション内容は、防衛軍5のオフラインミッション25:再進撃に近い感じです。
敵の耐久はインフェ仕様ですが、総数は半分程ぐらいでリスタート回数は武器の性能確認まで合わせて88回でクリア。

ISはほぼ打鉄。
装備はクロエの要望でIS用に無理矢理データ上のサイズと性能を調整したフォース・ブレードモドキとデクスター自動散弾銃モドキ。




亀更新で申し訳ないです。度々こんな事はあると思いますが、防衛軍6発売までには完結させたいと考えてはいます。


誤字報告、感想等々ありがとうございます。
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