はい、こちらストーム1 ~IS編~   作:えるらるら

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正月太りの準備をしながら投稿です。


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「さて、待たせた……もう少し楽にしても構わんが」

 

「いえ。今でも十分に楽にしています」

 

「そうか」

 

 今日中に終わらせておきたい仕事を終わらせて対面を見ると、正座で座る篠ノ之箒の様子はどう見てもガチガチだが……これ以上は逆効果になりかねんか。

 緊張こそあれど無理をしているわけではなさそうだし、このまま続けるとしよう。

 

「初めての日課のランニングはどうだった。体力的に無理そうだとかは無いか?」

 

「余裕はありました。でも、時間の感覚がまだ……」

 

「目標は未達成。五分半前後が三周、六分が一周、最後は四分四十三秒か」

 

「すみません」

 

「謝る必要はない。もう少し様子を見て変更があれば俺から伝える。今後もやる気があるなら続けてみて欲しい」

 

「はい」

 

「「……」」

 

 昨日はそこまで考えが至らなかったが、個人を呼び出すのは間違いだったかもしれん。

 こんな外れに男と二人……不必要な緊張もさせてしまうか。話しにくい事があった場合などとは考えてみたものの、配慮が足りなかったな。

 まぁ今更だ。日課記録用の雛形も織斑先生が用意してくれたし、個別指導も全員から申請があったとも昼間連絡があった。やる気を折るのも申し訳ない……。

 

 とりあえず今は篠ノ之箒だ。

 昨日は偉そうに言いはしたが、ただの高校生相手に言うような事でも無かったのかもしれん。

 しかし、あのまま続けた所でどこを目指すにしろ大した成果は得られないだろう。空回りで踏み外しそうな者を見過ごすのは、俺の本意でもない。

 

「今から質問をするが、答えたくなければ答えなくていい。何故、焦ってまで強くなろうとする」

 

「何故……」

 

「そうだ。難しく考える必要はない。アレだ、ありきたりなやつだ。君は何故強くなりたい? それを焦る理由はなんだ」

 

「……」

 

 答えたくないわけではなさそうだな。これは答えを悩んでいるといった感じか。

 昨日のやり取りからして、十中八九織斑一夏が絡んでいるのだろうぐらいは分かるが、他に理由がある可能性もある。できることならば聞いておきたいが果たして――。

 

「……私の姉を知っていますか?」

 

「あぁ、た……しか……篠ノ之博士だと記憶しているが」

 

「はい……私は私だ。そう思っても、そう言っても、その事実は変わらないんです。そのせいで一夏と離れる事になった! そのせいで私の刃は鈍った!! やっと一夏ともう一度会えたのに、それなのに私にISの才能は無い!!! 篠ノ之束の妹という存在なのに、そのせいで、そのせいで! 恨んで憎んで悩んで諦めてきたのに、一夏の周りには他の女が集る! 私を見てくれない! 力がなければ、また隣にも居れない!!」

 

 あー、んー。言いたいことは何となく分かった……が、これはどうしたものか。

 事実もあるが、思い込みも強い。悲劇だと嘆く境遇を拠り所にしているのも厄介だな。

 切って捨てるのは簡単だが、それはしてはいけない。流石にそれぐらいは俺でも分かってはいる……本当にもう少しぐらいメンタルケアの場に同席しておくべきだった。その時間を作るぐらいはなんとかしてきたんだがな。

 

 まぁ、やれるだけやってみるか。恋愛に関してはからっきしの俺が開けそうな切り口は――。

 

「篠ノ之博士は嫌いか?」

 

「嫌いです。あの人のせいで私の人生はめちゃくちゃになりましたから」

 

「人生をめちゃくちゃにか……それは嫌いにもなるか」

 

「え?」

 

 唖然とされるとは思っていなかったな。

 それだけとも言わんが、別に何もおかしいことではないだろうに。

 

「突然平穏が終わり、落ち着く暇もなく四苦八苦としているにも関わらず次々と問題が起こる。嘆いても叫んでも状況は悪化するばかり。その要因ともなれば、嫌いにもなるだろう。その上で君はまだ幼かったことも踏まえれば、俺が考える以上に苦労をしたのだろうな」

 

「もしかしてストームさんも似たような経験があるんですか?」

 

「多少推測が出来る程度で語るほどの事はない。俺の場合は幾らでもやり直しができたし、君とは境遇も違う。それに俺は篠ノ之博士の方も多少は分からなくはない。故に君が思うような共感は無い」

 

 ん? 怒らせてしまうか、残念がる可能性ぐらいは予想していたが、驚いた表情を浮かべるとは……自分の姉に対してこんな風に言う人物がそんなに珍しいか。

 

「まぁ俺の事はいい。今は君の事を知る時間だ」

 

「私の事を知る時間ですか?」

 

「そうだ。これから言う事は否定をしてくれても構わんが、篠ノ之束という人物が嫌いな事も分かった。その妹という事に少なからずプレッシャーを感じている事も分かった。織斑一夏君に恋心を抱いているのも理解はしている。セシリア・オルコットさんや凰鈴音さんに嫉妬し、同時に劣等感を抱いていることも分かっている」

 

「……」

 

 表情はコロコロ変わったものの反論はせず沈黙。

 かなり感情的な面が強いと思っていたが、客観視ができないわけではないのか。むしろ抱え込んで悩み続けるタイプだと考えると――なるほど、行動力が振り切れていない束さんみたいだ……流石にこれは今は言えんな。

 

「だが汲み取れたものはマイナスなものばかりだ。おそらくそれが焦る要因の一つになってしまっているのだろうが、正直に言うとこれから先の出来事や時間で勝手に解決するだろうと俺は思う。もっと言えば、君の言う隣に居るという形はそういう事なのか? と疑問にも思う」

 

「それは……はい……」

 

「誤解を防ぐ為に言うが、俺が疑問に思うだけでそういう在り方を否定しているわけではない。篠ノ之箒さんが篠ノ之箒として決めた事を変えさせる気も無い。故に確認としての問いだ――理由の全てである必要はないが、少なからずそう在りたいと願っていることに違いはないか?」

 

「はい。私は一夏の隣で、その背中を守れる存在でいたいんです」

 

 即答する声にも目にも震えはなく、怯えや迷いもない。

 これは……もしかせずとも俺が変に考えすぎていただけで、もっとシンプルな事だったか。

 

「なるほど。少し体を動かそう」

 

「え、あ、はい」

 

 畳から離れて軽く体を解し、対面に移動して同じく体を解し始めた篠ノ之箒の準備を待っていると、前の世界でもこんな事をした時を思い出すな。

 最初は確か……4.1の輸送船急襲作戦の時だったか。5の時に軍曹にも頼まれたこともあったか。

 世界が違えばやり方も違うものだが……まぁ、今の篠ノ之箒にはこれで問題ないだろう。

 

「今から十分間だけ戦闘訓練を行う。武器は昨日持ってきた物がそのままだ。幾らでも好きなものを使うといい」

 

「わかりました。ストームさんは、やっぱり蓋ですか?」

 

「いや、今回は素手だが遠慮はいらん」

 

 未使用品もなければ、盾として使った二枚の修繕も終えていない。

 何より大怪我を追わせるわけにもいかん。

 

「実力差は分かっています。ただストームさんの言う迷いはまだ……」

 

「問題ない。一つの要因で無い以上、一朝一夕でどうなることでも無い。だがきっかけぐらいは俺でも与えられそうだ」

 

「きっかけですか?」

 

「あぁ。こうなるのであれば昨日の時点で言うべきだったが、俺の目で見た限り君のポテンシャルは織斑先生に匹敵する。経験をどれだけ積むか、訓練をどれだけするかではあるが五年もあれば今の織斑先生と肩を並べるぐらいにはなれるだろう」

 

「織斑先生に……? そんなお世辞は流石に」

 

「世辞ではない。と言った所で素直に受け止めもしないのも予想はできる。だが敢えて先に言わせてもらった」

 

 まぁ、あくまで()()織斑先生が基準だが……。

 織斑先生が持ってきたシミュレーションの映像を見る限り、武器の使用感を確かめるのもだが、鈍っていた感覚を取り戻すような動きもチラホラ見えた。

 蜘蛛の死亡確認を怠っていたり詰めの甘さや荒い面も多々あれど、あの調子であれば後数回もすれば今回やっていた所は無被弾ぐらいまではしてきそうだな。

 

「……とりあえず準備できました」

 

「あぁ、では、始める前に昨日と違う点を伝える」

 

「はい」

 

「大怪我をさせる気はないが、昨日ほど楽でもない。そして目標は十分以内に俺に有効打を入れることだが今回はこちらからも攻撃をする……それと幾つか言っておいた方がいいと思うことはあるが、参考として今は一つだけ伝えておく。これは聞き流してくれても構わん」

 

「は、はい!」

 

「何かを守るというのは存外難しいものだ。一概に守ると言っても在り方もやり方も様々で、守れたとしても望まない結果になる時もある。境遇を盾に自身を守る事を咎めはせんが、幾ら武器として効果的であろうと誰かを守るにはあまりにも脆すぎる盾だ。今は織斑一夏君とも会えるだろう? 思い込まず、少しずつ過去と今から得るものを探すのもいいと考える」

 

「すぐには出来そうにありません……」

 

「そういう考えもあるというだけで聞き流してくれて構わん事だ。重く考える必要はない……さて、喋りが過ぎたな」

 

 こんな事を言う必要も無かったかもしれんが、もしかしたらこれが最後になるかもしれんと思うと……我ながらよく口が動いたものだ。

 何か自分でも気付かん所で思うことでもあったのだろうか。

 まぁいいだろう。今は考える時間ぐらいいくらでもある。

 

「では始めよう」

 

 

 

――

 

 

 

 もうすぐ十分だな。

 最初に比べ動きは単調になってはいるが、昨日ほどの迷いは無い。あったとしても劣等や焦燥というよりは、次への繋げ方が分からない気持ちの方が強いか。

 

「ハァァァッ!!」

 

 気力も限界か。

 振り下ろしを避け、横を通過した木刀を上から踏みつけてみれば、最初の方であれば問題なかっただろうがもうよろめく様になっている。

 少し早いが、今日はここまでだな。

 

「あっ……」

 

「二十四回目。そして時間だ、終わりにしよう」

 

 よろめいた篠ノ之箒の腕を掴み引き寄せ、その眼前に振り抜いた拳を寸で止めて告げると、緊張の糸が切れたのか呼吸荒く座り込んでしまった。

 

「気分はどうだ」

 

「ハッ……ハッ……初めて、死んだと思い、ました」

 

「実際この十分間で君は二十四回死んでいる。飲み物は水と茶、どちらがいい」

 

「み、水、ハー、で」

 

 必死に整えようとしている呼吸を耳に水を用意して、座り込んですぐには動けそうにない篠ノ之箒の元へ戻ると、直後は唖然としていたわりに今は笑っている。

 気を落としてはなさそうだな。

 

「ありが、とうございま、す」

 

「後で痛みがどこか出た場合は無理せず医務室で診てもらった方がいい。気を使いはしたが、元々俺は対人は苦手でな。加減を誤っている可能性もある」

 

「はい……あ、あの、ストームさん!」

 

「……どうした」

 

 篠ノ之箒に水を渡し、俺は俺で十分間でへし折ったりして散らばった木片なんかを片付けていると、息が整った様子の篠ノ之箒が正座をして真剣な表情でこちらを見ていた。

 

「私は、強くなれますか?」

 

「ISに関しては分からん。だが先程も言ったように戦闘という分野においての可能性は大いにある」

 

「やはりまだ素直にその評価を受け入れられません。今だってもう少しぐらいはやれると思っていました……でも、不思議と悪い気分ではないんです。また個別指導をお願いしてもいいですか?」

 

「こちらは元よりそのつもりだ。続けるも辞めるも君が決めると良い。それに、もし織斑一夏君達に弱さを見せたくないというのであれば、愚痴をこぼしにくるだけでも構わん。個別にしたのにはそういう理由もある」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

「あー……張り切るのはいいが頭を下げる必要はない」

 

 多少無理を強いても畳までは移動してもらうべきだった。

 流石にこれは絵面がよくない。見ようによっては、俺が女子高生に土下座をさせているように見えてしまう。

 

「あの!」

 

「どうした……」

 

 そういう意味ではなかったのだが、顔だけ上げた篠ノ之箒と視線が合えば……何故だろうか、嫌な予感しかしない。

 

「師匠と呼んでも?」

 

「やめてくれ」






個人的にですが、モッピーっていつものメンバー以外で少し本音を話せる場があれば、すぐに覚醒しそうな感じがあります。



なんか頭の中で
はい、こちらストーム1 ~四人のストーム1編~ が顔を出し、それの設定の為に、IS編以外にダバ子ならヒロアカの世界で……とそれぞれの兵科、別の世界で三作ほどやってなどふわっと考えていたら更新が遅れました。ユルシテ...クダサイ。


ちなみに当初から現在までの予定では、IS編は福音事件までぐらいで一旦終えるつもりです。


そんなこんなな私ですが、来年もお付き合いいただければ幸いです。
誤字脱字報告、感想等々ありがとうございます。色々とお世話になりました。
皆様良いお年を。
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