はい、こちらストーム1 ~IS編~   作:えるらるら

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一回はやってみたかった戦闘に入れそうだったので投稿です。


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『これより学年別タッグトーナメント第一回戦を開始します。それでは――開始!』

 

 選手待機室の隣、IS調整用の道具がある部屋に一人。

 基本的にこの部屋には誰も訪れず、アリーナのフィールドにも近く、俺が居ても言い訳もしやすいと思って選んだが……備え付けられている液晶で試合が観戦できるのはありがたいな。音と気配だけでも問題ないとはいえ、できれば試合も見ておきたいと思っていたところだ。

 

「織斑一夏から週末の訓練でタッグの練習をしている話は聞いていたが……疑似一対一。あまりにもスムーズに分かれた所から察するに、ラウラ・ボーデヴィッヒの織斑一夏に向ける執着から事前に予想して動いているな。早い段階でどちらかを脱落させ二対一をするつもりか」

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒ対織斑一夏は……慢心があれどラウラ・ボーデヴィッヒの方が純粋に上か。一撃離脱も出来ない状況。織斑一夏にとっては苦しいな。

 シャルル・デュノア対篠ノ之箒は……シャルル・デュノアの方が上手い戦い方をしている。一定距離を保ちつつ安定した射撃に、弾速の違う武装を切り替えながら弾幕に慣れさせないか。こちらはこちらで篠ノ之箒ではキツい相手だろう。

 それにしてもあの高速切替(ラピッド・スイッチ)というのは少しばかり親近感が湧く。

 

「しかしキツい相手ではあるが、篠ノ之箒もよくやっている」

 

 怯えもない。焦りもそれほど無く切り払いの判断も悪くはない。反応もいい……が、取捨選択がまだ未熟か。多少の被弾を覚悟している動きができても、どこまで受けられるかの判断が出来ずに踏み込みきれないといったところだな。

 

「織斑一夏とラウラ・ボーデヴィッヒの方は……アレが資料に載っていたAIC*1か。なるほど、確かに強力な機能だが、それだけだな」

 

 シャルル・デュノア達は動いている。篠ノ之箒が切り払った弾丸の中に織斑一夏の付近を通過したモノが幾つかある所を見ると、それほど範囲は広くない。射程は分からないが、AICを発動した辺りからラウラ・ボーデヴィッヒがほぼ動かないのは感情的になりすぎているからか、それとも動けば性能が落ちるぐらいにはじゃじゃ馬な機能なのか。

 

「……両方か」

 

 ん、篠ノ之箒のシールドエネルギーが切れて脱落か。グレネード弾を捌きそこなったな。そうなると、シャルル・デュノアが織斑一夏に合流して――まぁ、そうなるか。

 当たっていないグレネードでAICが切れた所を見ると、かなり繊細な機能みたいだな。シャルル・デュノアを一瞬止めてから二対一を仕切り直せばいいとは思うが、今のラウラ・ボーデヴィッヒにそこまで考える余裕はな――ほぉ、これは。

 

「盾付きのパイルバンカーか。音が少し軽く物足りないが、いいな。ロマンがある」

 

 シャルル・デュノアのセンスか、デュノア社のセンスかは知らんが中々に面白い武器を作るものだ。リボルバーと似た機構を使っているのか。

 あの機体、武装のリロードは裏で行われていた……二つ積めばループして使えるな。

 

「試合終了だな」

 

 一発は耐えたようだが、今のラウラ・ボーデヴィッヒでは冷静に持ち直すのは無理だろう。あの様子だと、後一、二発で「ア”ア”ア”ァ”ァ”!!!」――なるほど。悪知恵が働くようになったもんだ。

 まずは束さんに幾つか確認を取るか。

 

『緊急事態により試合を中止します!! 観客の皆さんは焦らずに避難誘導に従ってください!!』

 

 放送の声も焦っているな。今回のトーナメントは企業からの視察も来ているとかだったか。大人しく誘導に従ってくれればいいが、迅速さは期待はしない方がいいだろう。既に怒声や悲鳴が聞こえている。

 まぁいい。入場口には移動できた。逆光気味だが肉眼でも捉えた。確認したい事があったが後スリーコールで束さんがでなけ『スーくん! ごめん、少し特定作業してた!』

 

「問題ない。こちらの状況は?」

 

『把握してるよ。不細工なモノも』

 

「パワードスーツの通信に切り替える――聞こえるか?」

 

『バッチリ聞こえるよ!』

 

「確認したい事がある。あの状態で撃破した場合ラウラ・ボーデヴィッヒに影響はあるか?」

 

『あるね。でもあのまま戦い続けても最悪パイロットは死ぬね』

 

 篠ノ之箒はシールドエネルギーが無く、何故か怒り狂っている織斑一夏が飛び出さないように押さえている状況。唯一動けるシャルル・デュノアが牽制はしているが、ぎこちなさはあれど向こうの動きがいいな。

 それに完全に見た目が変わったあのIS……シミュレーションの時に見たISと似ている。

 

「救出方法は」

 

『一番手っ取り早いのはパイロットを引っこ抜くかな』

 

 となると貫通はさせずに装甲だけ削るか。だがあの装甲、見た目が変わる過程からして液体装甲の可能性もあるな。高火力は論外だが、半端な攻撃では無力化される可能性は視野に入れておこう。

 

「避難状況は」

 

『えっと、三割ぐらいパニック状態で出入り口でわちゃわちゃしてるね。そのせいで騒いでない連中も避難しきれてないかな』

 

 まだあのISの動きはぎこちないが、この数秒で良くなっている。これ以上シャルル・デュノアの攻撃は牽制にもならないか。

 

「通信は繋げたまま行動を開始する。何かあれば俺の返事を待たずに一方的に報告してく「千冬姉ぇの剣を穢したんだぞ! 許せるわけ無いだろ!」――なるほど」

 

 観客席を攻撃する様子は無い……そもそも攻めに転じる様子がない。だがそろそろ篠ノ之箒の方が織斑一夏を抑えるのは限界だな。後々を考えると、手間だが不安要素は取り除いておくべきか。

 

「作戦を変更。もう少し様子を見る」

 

 せっかくだ。ラウラ・ボーデヴィッヒ、意識があるのなら感じ、触れてみるといい。君と織斑一夏は、織斑千冬に憧れたという点では似た者同士だ。

 ただ彼は織斑千冬に性質が似ている。君が理解できない所の、らしい答えをもしかしたら見つけられるかもしれん。

 そして織斑一夏。ソレが誇りならば己の手で掲げ直すといい。それぐらいの時間は用意しよう。

 

『作戦変更はいっくんの為?』

 

「半分は。残りは後々暴走されても困る。であればガス抜きのサポートぐらい、あの程度の相手ならば問題ない」

 

 あのISに憤怒しているとは言え、彼の性格的にも、おそらくやろうとしている事的にも、織斑一夏にラウラ・ボーデヴィッヒは殺せない。

 何より篠ノ之箒とシャルル・デュノアが冷静だ。今あの二人が考えている事は近いだろう……シャルル・デュノアが最低限のエネルギーを二人に供給。織斑一夏を間に挟む様に前の篠ノ之箒。

 十中八九織斑一夏の"零落白夜"を軸にして展開を考えている。

 

『あの程度って、アレでも一応昔のちーちゃんをベースにしてるんだけどなぁ』

 

「剣に関しては知らんが、アレでは紛い物にもなりきれん。シミュレーションで見たモノの方がよっぽど質がいい」

 

『それもそっか』

 

 さて、とりあえずあの横薙ぎは止めた方がいいな。

 

 

 

◇◆

 

 

 

「狙撃!?」

 

「箒!」

 

「大丈夫だ! 足を止めるな!」

 

 反応が遅れてしまった一閃が謎の狙撃によって剣ごと吹き飛ばされ、シャルル・デュノア、篠ノ之箒、織斑一夏の三人は動揺を見せるが、すぐに切り替えた篠ノ之箒の声により織斑一夏は止まりかかった足を動かし前へと進んでいく。

 

「準備はいいか一夏!」

 

「いつでも!」

 

 二回目の狙撃。吹き飛ばされたにも関わらず、断面から生える様に現れた剣は再度吹き飛ばされる。

 しかし今度は三人に動揺は無く、剣の代わりにとばかりに織斑一夏に向けられ振り下ろされようとした拳は、シャルル・デュノアのサブマシンガンにより勢いを殺され、先行していた篠ノ之箒がその腕を刀で抑えつけた。

 

 腕の再生は行われているが、それでもこの瞬間には無く。もう片方の腕も篠ノ之箒によって封じられている。

 その状況を見逃すほどこの場に居る者達は未熟ではない。

 

「一夏!」「やっちゃえ!」

 

「おおおおぉぉぉ!! 零落白夜ぁぁぁ!!」

 

 右腕だけ部分展開された白式を纏う織斑一夏の一刀は、もとより不安定であったシールドを容易く越え、その先にあるアーマーをも切り裂いてみせる。

 零落白夜の効果故か、縦に切り裂かれた部分は上手く再生が行われておらず、奥から意識を失っているラウラ・ボーデヴィッヒが押し出されるように出てきた。

 

「ラウラ!」

 

 部分展開を解除した織斑一夏がラウラ・ボーデヴィッヒを受け止め、その時に二人は互いの事を知るのだが――

 

「ッ!? 篠ノ之さん! 一夏とボーデヴィッヒさんを連れて下がって!」

 

 ――意識を失っている二人を他所に状況は変化する。

 

「今度は何だというのだ!」

 

 悪態をつきながらもシャルル・デュノアの声に反応して即座に二人を抱え、エネルギーが切れる事などお構いなしに篠ノ之箒は全力でそこから離れていく。

 同時に篠ノ之箒の後ろから、視界を遮断するほどの濃密な霧にも似た煙が発生し、フィールドを完全に埋め尽くした。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒの救出と三人の離脱は確認した。そして、先程よりも色濃く、俺が設定したわけでもなくレーダーに映る一つの真っ赤なマーカーも。

 束さんの説明によれば煙が充満して場に定着するまで三秒。効果時間は約五分で状況によっては前後あり……念の為に追加用は持ち込んでおくか。

 

「できれば避難を急がせて欲しい。一人で処理はできるが場合によってはアリーナは狭すぎる」

 

『わかった。ちーちゃんとも連絡ついてるから伝えておくね~。あ、それとえっと、スーくん、頑張ってね……は違うか。無理しないでねっていうのもなんか違うね。んー……ご武運を? こういう時なんて言えばいいかな?』

 

「言いたいことを言えばいい。もう時間だ。ストーム1、出撃する」

 

『そっか! じゃあ、いってらっしゃい!』

 

「……あぁ、いってくる」

 

 出撃前にいってきます。なんていつぶりだろうか……こんな感覚だったか。

 

 悪くない気分だが細かい事は後だな。今は敵の処理が優先だ。

 しかしまぁなんというか、予感はしていたが、こうして向かい合うと笑えてくるな。

 

 銀色。のっぺら。加えて不敵に腕組。以前と違うところは、三メートルあるかないかぐらいに縮んだ事か。

 とりあえず――

 

「お前のしぶとさは知っていたが……随分と小ぶりになったな。ペプ◯マン」

 

 ――顔面にブラホをぶち込む。

 

「……?」

 

 お返しとばかりの踵落としは見慣れたもの。翳した手から放たれる光弾も見慣れたものだ。

 ブーストで回避、慣性でも避け、数発は盾で受けて最後は反射で打ち消す。

 

 本体のサイズ感が違うからか光弾の小さく、踵落としの範囲も大したものじゃない。だがそれ以外に何か、なんだこの違和感は。

 

「とりあえずまず一回」

 

 回避と受け流しを主体に重点的に腕を狙い吹き飛ばしてみたが、再生能力はそのままか。むしろ小さくなった分、少し早いな。

 吹き飛ばした腕は――消滅。今のところ脅威になる強化要素はない。いやむしろこれは……確かめてみるか。

 

 わざと少し外した位置にブラホを打ち出せば、予想通りに回転しながら俺の横を取ろうとする。そしてそこから回し蹴りに派生するのが、お前の癖だ。変わらないな。

 避けるのも弾き返すのも問題ないが、敢えて受け止めて確信した。

 

 ――弱体化している。

 

 ペプ◯マンとも回数なぞ覚えていないほど戦った。望む結果を得る為に、何回か"戦略AIです"と言った時の様に冗談だと言えと少佐に文句を言いかけながらもオペレーションΩすら発動させない為に何度も戦い、こちらに来る前に最後に戦ったのもペプ◯マンだ。

 だからこそ分かる。前回に比べて弱っている。前回の戦闘から傷が癒えていないのか、それともこちらの世界では今が限界なのかは知らんが……好都合だな。

 物理攻撃は盾で受け止めきれる。ブラホを当てればのけぞる。光弾の威力も下がっている。誘導弾の回避にも問題はない。

 となると追加がなければ残るは転送、天輪起動からのヤケクソ隕石とヤケクソ飛び蹴り。

 

「小賢しい」

 

 先を考えていた矢先に奴の肩口から伸び出てきた砲身を盾で弾き上げ、下からブラホで撃ち抜いて破壊できたのはいいが、アレはシュヴァルツェア・レーゲンのレールカノンか。

 追加でAICの警戒も必要だな。

 

「思った側からか」

 

 再生しながら翳された腕にはペプ◯マンらしからぬ装甲。だが見覚えのあるソレを認識するのが少し遅かったか。

 なるほど、確かに動かない。マスターシールドとブラホでは考えていた突破法は使えんか……まぁ、問題ない。ISの機能を使えるのはお前だけじゃない。理解力は俺の方が上だ。

 

 パワードスーツを待機状態へ変更。

 

 元はPIC*2である以上、止めた後に範囲内で変化があれば処理しなければならない。おそらく維持にもかなりの集中を必要とする機能。

 俺の動きを予測できないお前では維持できないだろう。

 

「また貰うぞ」

 

 案の定AICによる拘束が解けた瞬間に腰のベルトポケットに入れていた清涼菓子の容器に酷似したタブレットケースの開閉を一度行い地面に落とせば、次の瞬間にはソレを中心として煙が吹き上がり俺とペプ◯マンの視界は白煙に染まる。

 同時に斜め前へ前転をして翳されている腕の側面へと回り込み、パワードスーツを展開してブラホを連続で叩き込み腕を吹き飛ばす。

 

 続けて無防備な腹にブラホを打ち込むが、やはり胴体は弱体化していても相変わらず硬いな。むしろ感触からしてダメージは入るが頭と胴体だけは以前よりも頑丈な気がする。

 まぁ、この本来以上の硬さの正体、シュヴァルツェア・レーゲンの真似事をした事で大体の予想はできている……ISのシールドの性質を模倣なり何なりしているのだろう。

 

 だがそれでも、皮一枚纏った所で俺のやることは変わらん。 

 時間を、経験を、命を、誇りを、全てを賭して。

 

 

 

「立ち塞がろう。これまで通り、これからも」

 

 

 

 それに変わったのはお前だけではない。こちらの世界に来て、パワードスーツの着脱が素早く行える様になってから試していたことがある。

 お前だってシュヴァルツェア・レーゲンの真似事をしたんだ。卑怯だなんて思ってくれるなよ。

 

 手始めにスラスターを吹かせ更に距離を詰め、再生しきった瞬間の腕を即座に吹き飛ばし、蹌踉めいた所にブラホを連続で再度ぶち込み片足を削り飛ばす。

 反撃のつもりか、残っている腕の拳を振るってくるがマスターシールドでタイミングをあわせて弾き飛ばした勢いのまま、マスターシールドを横薙ぎに振り、縁を脇腹に叩き込む。

 

 ――相変わらずフィジカル差はあるが、いけるな。

 

 追い打ちでブラホを打ち、体勢もままならなず仰け反った奴の背後にスラスターで回り込み、マスターシールドの面を思い切りぶつけてディフレクター*3を使って奴を持ち上げ密着させたブラホを打てば、もとより浮いている奴の体が更に浮く。

 

 ――のっぺらな癖して、分かりやすいな。お前の焦りは。

 

 武装を切り替え、ジャンプブースターで追いかけ、追い越し、奴の真上を取り、ガリオンとは逆に握るボルケンの最大チャージを叩き込み――パワードスーツを待機状態へ移行。そして即座に準備を終え、パワードスーツを展開。

 

「選択肢が広がるのは良いものだ」

 

 思わずそんな台詞をこぼしながら一度ジャンプブースターで滞空時間を伸ばし、少し吹き飛んだものの地面に叩きつけられる前に踏ん張り止まったペプ◯マンに向け――()()()Y()H()7()()()()()()を叩き込み武装を切り替えて、四肢が吹き飛び仰向けに倒れる胸元を踏みつけて固定し、小顔になろうとも見飽きた顔面に狙いを合わせ――()()()()()()()()()()()()()M()A()を全弾叩き込んだ。

 

 

 

――

 

 

 

「戻ったか、おかえり」

 

 何か起こっても即座に警戒できるように警戒はしつつ待機場へ戻ると、そこにはIS用の刀を横に壁により掛かる織斑先生が待っていた。

 鍵をかけたはずと思ったが、織斑先生が持っていてもおかしくはないか。

 

「……あぁ、ただいま。わざわざこちらに来るとは、何か問題が起きたか?」

 

 ジャックハンマーを打ち終え、リロードが終わる前に動きがあれば即座に迫撃砲を打ち込もうと思っていた矢先、ペプ◯マンは一瞬憎悪の気配を強めると同時に溶ける様に消えていった。

 撤退の様子はなく、レーダーでもおかしなところは無く消えた。しかし何か俺の知らない方法で奴等が現れる可能性もある。もしそうならば早急に対処をしなければ。

 

「問題か……避難訓練の実施と教員生徒共々避難誘導マニュアルの徹底を轡木さんに進言しておこうと思ったぐらいだな」

 

「それは、あぁまぁ、そうだな」

 

 パワードスーツを待機状態にする前にレーダーを確認すると、観客席を埋める大量の灰色マーカーがほぼ動いていない。

 分かってはいたが避難指示の放送直後と大して代わり映えがない。評価をつけるならどう見ても避難状況は最低だ。

 

 思わずため息が出そうになるのを堪え、パワードスーツを待機状態にして今回も感謝を思えば、それに応える様に待機状態のドッグタグが少しだけ震えている。

 こうして反応が返ってくるからか、今まで以上に愛着が湧いてくるな。今日はいつもより念入りに手入れをしよう。

 

「ここに足を運んだ理由は束から、"着脱で通信が切れるのは仕方ないけど、ここぞとばかりに通信を遮断するな"と伝えてくれと言われたからだが……そんな事をしたのか?」

 

「意図的ではない。そういう問題が出てくるのは想定していなかったな……悪いことをした」

 

 服の下にあるドッグタグに意識を向けてみるが、それらしい反応はない。

 まぁ、かなり集中していたのは事実だ。もしかしたらパワードスーツが配慮をしてくれたのかもしれんな……いや、日頃の束さんとのやり取りを思うに、いつものじゃれ合いか?

 二人のじゃれ合いにあまり口出しをするつもりはないが……ほどほどにな。

 

「まぁアイツもアイツでやる事があったようだから気にすることもないだろう。夜にでも連絡してやれ」

 

「そうしよう。今回の件で少し話しておきたい事もある」

 

「是非とも後で私も聞きたいな」

 

「俺の事も知っている織斑先生であれば、共有しておいて損はないだろう。今夜時間はあるだろうか、無ければ束さんに後で伝えておくように頼むか、後日俺から伝えるが」

 

「今晩の予定はない。開けておこう。せっかくの誘いだ、食事は期待していいな?」

 

「もやしと豚肉だけの皿うどんでも良ければ」

 

「やけにシンプルだな」

 

「それに酢を掛けて食うのが好きなんだ。さて、そろそろ煙幕が完全に晴れる、先に戻るとする」

 

 あぁ、そういえば一つ織斑先生にも頼み事があったな。

 

「おそらくシュヴァルツェア・レーゲンのだと思われるコアがフィールドに残っている。破壊も考えたがそのままにしてある。もし学園側で解析をするようであれば、結果をまとめたものを回してくれるとありがたい」

 

 本当ならば跡形もなく消し飛ばしたい所だったが、コアの価値から考えるとそんな事をすれば学園側も大変だろう。もっとも、あの黒い紛い物の状態が学園側の問題とも、正常だったとも思えんが。

 かといって俺が回収しても織斑先生に渡すぐらいしかできん。その先まで考えると、あの場に放置して誰かに回収させるのが良いと思ったが、丁度よかったな

 

「そうか……懸念が一つ減った。助かった」

 

「たまたまだ」

 

 ペプ◯マンと共に消えていたら、言及されるまでコアの事は頭に無かっただろう。

 あー……どうせ断られるとは思うが、二度手間にならんようにこれも聞いておくか。

 

「一応確認するが、織斑一夏達の回収に男手が必要か?」

 

「いや、部外者の目が多すぎる。くだらんゴシップの餌をくれてやる必要はない」

 

「だろうな」

 

 さて、本格的に移動しないと騒がしくなりそうだ。

 巻き込まれる前にさっさと戻るとしよう。

*1
アクティブ・イナーシャル・キャンセラーの略。慣性停止結界とも呼ばれ、任意で対象の動きを停止する事ができる。元はISに搭載されているPICを発展させた機能

*2
パッシブ・イナーシャル・キャンセラーの略。物体の慣性をなくしたかのような現象をおこす装置であり、これにより飛行などを可能としている。マニュアルとオートの切り替え可

*3
盾装備の反射機能





~ちなみにダイジェスト~
今回観客席から見た場合。

第一回戦がの勝敗が決まったと思ったらVTシステムが起動。
VTシステムと生徒三人が頑張って戦闘し勝利。少女救出! ――直後、煙幕によりフィールドが見えなくなる。
命の危機を感じる程の戦闘音、何かが千切れ落ちる不気味な音、時折アリーナの防壁まで飛んできては消える紫色の液体。そして爆音、打音。
煙幕が晴れた後には変わり果てたフィールドのみが残されている。

大体そんな感じです。


戦闘中に待機状態を利用して編成ごと変える。というのは、これを書くにあたっていつかはやってみたいなと思っていました。

元の世界ではどうだったの? と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、細々と脳内設定を書いてもいいのですが長くなるのでシンプルに
パワードスーツを脱いでいる状態のみ装備編成を変えられていた。
と覚えていただければ問題ないと思います。

まぁ、元の世界で両肩に迫撃砲を携えて、先に死んだフェンサー隊員の盾が残っていれば拝借して握ったりもしましたが……。


今回の装備
変更前
装備1左手:ボルケーン・ハンマーZD
装備1右手:ガリオン徹甲機関砲
装備2左手:マスター・シールド
装備2右手:ブラストホール・スピアMSXE
補助装備:ディフレクト・セルAX
補助装備:ダッシュセル5

変更後
装備1左手:YH7散弾迫撃砲
装備1右手:YH7散弾迫撃砲
装備2左手:ジャックハンマーMA
装備2右手:ジャックハンマーMA
補助装備:V3レッグスケルトン
補助装備:マルチチャージャー4-4


誤字報告、感想等々ありがとうございます。
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