はい、こちらストーム1 ~IS編~   作:えるらるら

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半分ちょっとぐらい吹き飛んだりもしましたが、お酒を片手に投稿です。


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 今日の分の日報を書き終え、ふと視線を上げた先のカレンダーは早いもので既に七月。

 一年生達は校外特別実習期間――つまるところIS学園における三日間の臨海学校の時期らしく、現在は学園にはいない。

 どうやら先日、織斑一夏達が水着を買いに来ていたのもこの為だったという事を、昨日の個人訓練の時に凰鈴音が話していた。

 

「主題はISの非限定空間における稼働試験」

 

 数日前からこぞって各国から一年の代表候補生宛に新型装備が送られて来ていたが、このタイミングで新装備のテストなども行う予定か。

 ただリストを見ても日本の代表候補生宛は届かなかったが……極秘中の極秘か、生徒会長の妹は今回不参加か。よく分からんな。

 

「……誰か来る用事は無かったはずだが」

 

 明らかにここへ近付いてくる気配。織斑一夏達が不在の今、ここを訪ねて来る人物に心当たりはない。

 あぁ、いや、この足音はそうか。

 

「二年の更識です。ストームさんはいらっしゃいますか?」

 

「どうぞ」

 

「失礼します」

 

 ノックの後に聞こえた声はやはり生徒会長か。

 随分と、なんだ、こそこそと周りを警戒しているな。

 

「今は部活動の時間だと思うが、生徒会がこんなに早く終るのは珍しいな。適当に座ってくれ、茶でも出そう」

 

「お言葉に甘えて遠慮なく。生徒会は本音も臨海学校で居ないし、たまには他の役員にも休んで欲しかったので今日はお休みにしました」

 

「そうか」

 

 せっかくの休みにわざわざこんな所に来るという事は、俺に用事があるのだろうな。現に生徒会長は何故か自前のタブレットPCを持ってきている。

 しかしそのタブレットを話題にはあげず、出されたお茶を一気に飲み干し、息を整え、纏う雰囲気が好戦的なモノへと変わった所を見ると、まずはそういう事なのだろう。

 

「後で織斑先生に知られても擁護はできんぞ」

 

「大丈夫です。ここを尋ねる様な一年生は全員、同伴の教員である織斑先生も当然、今は学園に居ません。つまりストームさんさえ内緒にしてくれれば、この密会は二人だけの秘密で終わりです」

 

「どうだかな……まぁ、君がそれでいいならばこちらは問題ない。一応箱の中に積んである物は好きに使うといい」

 

「そしてやっぱりストームさんはソレ……あの、ソレ、前のと同じですか?」

 

「同じものだが、少し修繕と補強を施してはある」

 

 些か手を加えすぎて鍋蓋の規格から飛び出してしまっているのは御愛嬌というやつだ。

 織斑一夏達が成長して不要になった場合は……この鍋蓋に合う鍋を探さねばな。

 

「少し……?」

 

 この鍋蓋もホットプレートの蓋も、今やライオットシールドの代わりぐらいにはできる。織斑先生と束さんに以前見せた時は、中々に好評だったんだが……どうやら生徒会長にはあまり受けが良くないらしい。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 場所は変わり、ここは校外特別実習期間中の宿泊先である 旅館"花月荘" その一室。

 篠ノ之箒を筆頭に若干五名が愉快な勘違いを起こし、酒が入った織斑千冬の提案により全員仲良く織斑一夏のマッサージにより骨抜きにされた後。

 

 用済みだと言わんばかりに部屋を叩き出された織斑一夏と入れ替わりで窓から篠ノ之束が部屋へと入ってきた。

 そして部屋の様子を見た篠ノ之束は、にやにやと表情を浮かべ、篠ノ之箒のふやけた姿を写真に収めながら一言。

 

「わぁお! ちーちゃんが酒池肉林してる!!」

 

 言い終えると同時に風切音を纏いながら飛んでくるのは空き缶。

 

「遺言でいいか?」

 

「そこは、優しく顎クイして囁く感じで”混ざるか?”ぐらい言うところだぞッ! このこのぅ」

 

 その空き缶を片手でつかみ取る満足げな篠ノ之束のもう片方の手には、先ほどまで持っていたはずのカメラの代わりに酒とおつまみが入った袋が握られている。

 

「今日は一段と鬱陶しいな。手土産だけ置いてさっさと要件を言って帰れ」

 

 素早く近付いて肘でつんつんと小突かれるに連れ、織斑千冬は握る新たなビール缶を握りつぶすまいと力を青筋に変換する事で耐え忍ぶ。

 

「冷たいぞぉ~、うりうり~」

 

「お前の機嫌が良いのは分かった。後三秒だ」

 

「何の秒数!? まったく、ちーちゃんはせっかちさんだなぁ……明日は箒ちゃんの誕生日だから今日はちーちゃんの所にお泊りしようと思ってきたら、酒池肉林してたのちーちゃんの方なのに」

 

「なら今すぐ渡してさっさと帰れ。それと次にふざけたことを言ったら――アレだからな」

 

「どれ!? え、何その不敵な笑み……キュンとしちゃうね! まぁ、そう言われても今すぐ渡すのは無理かな。今から箒ちゃん連れ出したら、ちーちゃん怒るでしょ?」

 

「お前、何を用意した」

 

「ん? 箒ちゃんの専用機。世界最新鋭かつ最高のスペック。パッケージの換装を不要にする展開装甲を備えた第四世代ISの完成形。束さんの自信作だよ」

 

 空いているスペースに座りながらサラッと。夏休みの自由研究の内容を話すぐらいのテンションで告げて持ち込んだオレンジジュースを飲む篠ノ之束。

 対する織斑千冬、加えて篠ノ之束の登場に驚きながらも骨抜きの余韻に浸っていた五人は、驚きのあまりに言葉を失う。

 

 最先端であっても未だに各国は第三世代のデータ収集の段階。今回セシリア・オルコットなどに渡されているパッケージも実用段階ではあるとはいえテストの意味合いが強い。

 そんな中で湧いて出てきた第四世代。篠ノ之箒、織斑千冬を抜いた四人は専用機持ちである故に二人以上に驚きの反応を見せる。

 

「あ、あの、篠ノ之博士……パッケージの換装を不要にするとは?」

 

「君は……あぁ、スーくんと買い物の時に居たいっくんの金髪ストーカー。君に説明をする必要性を感じないんだけど? もちろん、ちっちゃいストーカーにも、そこのあざとそうな金髪にもね。眼帯ちゃんは……一緒に居るし一緒の扱いでいいでしょ。箒ちゃんには明日体験してもらえばいいし、ちーちゃんは理解できてるよね? うん、教える相手には伝わっている、もしくは伝わる現状。やっぱり説明の必要性ないな? ないね! 束さんは必要性をまーったく感じません!」

 

 必要性を感じないと突っぱねられたよりも、ストーカーやらあざといやらと言われ、「うっ……」とダメージを受けている三人を他所に、最後にマッサージをされて復帰が遅れた篠ノ之箒の頭の中では様々な疑問が浮かぶ。

 

 姉に会ったと一夏から聞いてはいたものの何故ここに居るのか。

 誕生日プレゼントに専用機を用意はいくら何でもおかしすぎではないか。

 何より、あの姉が言い方はどうであれ個人を記憶している!?

 

 などなど。様々な考えが駆け巡りまとまらないものの、このままではダメだと思いなんとか声を出す。

 

「ね、姉さん! その、お久しぶりです」

 

「うん、久しぶりだね。会ったらますます思ったけど……ふむぅ、色々大きくなったねぇ!」

 

「……グー? いや、ここはチョキか?」

 

「おっとぉ……ビンタよりも先に目潰しが出てくるなんて、成長と喜ぶべきか物騒と悲しむべきか、束さんでも悩んでしまうよ」

 

 なんて言葉を漏らす姉を他所に、篠ノ之箒は悩みに悩んで出そうになる手を抑え、今度はしっかりともどかしさや不自然さも無く質問を口にする。

 

「あの、どうして私に専用機を?」

 

「一番喜びそうなのが専用機かなって思ったから。スーくんから聞いたよ。欲しかったんでしょ? 専用機が」

 

 無論ストーム1は教えていない。

 最初に織斑一夏達がストーム1と戦った時に聞き耳を立てていただけであり、その後はお好み焼きを食べただけである。

 しかし、ストーム1が教えていようが教えていまいが関係なく、篠ノ之箒は別の事に首を傾げた。

 

「スーくん?」

 

 個人を指しているであろう単語。

 それは篠ノ之箒にとって姉の口から出てくるにはあまりにも不思議な現象。

 織斑一夏や織斑千冬でもなく、自分の事でもない。友好関係を全て把握している訳では無いにしろ、自身の親ですらしっかりと覚えていない姉から出てきた呼称に、ふと一人の人物が思い当たった。

 

「もしかしてストームさん?」

 

「そうそう、スーくん」

 

「え、姉さん、ストームさんと知り合いなんですか!?」

 

「うん。一ヶ月ちょっと同棲したぐらいの仲」

 

「はぁ!?」「「「えっ!?」」」「教官!?」

 

「ちょっと待て、なんで私を見る」

 

「えっ、ちーちゃん……?」

 

「お前は悪ノリするな」

 

 にゃはは~と笑う篠ノ之束にため息が漏れ、視線を驚いて一斉に見てきた五人に戻せば、おろおろと――ラウラ・ボーデヴィッヒに至っては、他四人の倍あわあわおろおろと落ち着き無く自分と篠ノ之束を視線が行ったり来たり。

 そしてラウラ・ボーデヴィッヒの反応に心当たりのある織斑千冬は、更に深く呆れを含んだため息が漏れた。

 

 詫びの品としてラウラ・ボーデヴィッヒから渡された物。同日にストーム1の本棚にも追加された物……そう、結婚情報誌。

 つまりラウラ・ボーデヴィッヒの認識では二人はそういう事であり、織斑千冬が幾ら「勘違いだ」と言っていても照れ隠しとして捉えていた。その事を織斑千冬も理解しているのだ。

 

「んー……確かに悪ノリしたけどさ。この反応は、何か面白い事が起きているって束さんは思うんだけど、ちーちゃんのご意見は?」

 

「予想はつく。ボーデヴィッヒ!」

 

「ハッ!」

 

「お前、こいつらに何を吹き込んだ」

 

「何をと言われましても」

 

「はぁ……凰、ボーデヴィッヒに何を吹き込まれた。誤魔化すなよ?」

 

「う”ぇ!? ア、アタシですか!?」

 

 何となく察してなるべく存在感を消そうとしていたのが仇になったのか、突然の名指しにビクッとした凰鈴音は、渋々ビクビクとしながら座る位置を一歩分織斑千冬に近づく。

 

「えーっと、吹き込まれたといいますか、そういう雰囲気だからと聞いただけといいますか。ほら、あの、水着を買いに行った時、ストームさんが千冬さんのをすぐに選んだじゃないですか? 別に私達はストームさんの事を良く知っているわけではないですけど、そういうの得意な人じゃない印象だったので驚いたといいますか――「簡潔に話せ」――ラウラからお二人は結婚秒読みって聞きましヒッ!」

 

 なんとか当たり障りのない様に話そうとしていた凰鈴音だが、簡潔にという織斑千冬の圧と一言に耐えきれず簡潔に告げた瞬間、いい終える前に織斑千冬の隣に座る篠ノ之束に視線が向いてしまい悲鳴が漏れた。

 

 大きな反応はない。ただただ目笑越しに伝わる圧。

 徐々に強くなっていく錯覚すら覚える圧に耐えきれなくなった凰鈴音は、更に口を滑らせてしまう。

 

「で、でも! その話をラウラがした時、一夏も"あぁ~、やっぱりかぁ"みたいなこと言ってたし! "ストームさんを義兄さんと呼ぶ日が楽しみだなぁ"とかもぉ……」

 

「どうしたのさ。続けなよ、ちっちゃいストーカー」

 

「いや、だから、ちょっと! アンタ達もどうせ、なんて呼ぶべきか~とか妄想したんでしょ!!」

 

 ミリとも変わらぬ表情のまま増し続ける重圧に、道連れをと凰鈴音が振り向きながら言うが、悲しいかな全員が目を逸らした。

 

 五人はそれぞれが織斑一夏に対して恋心を持っている事を話している。そして凰鈴音の言う通りの妄想はした。悪くないとも思った。

 なんならそれぞれが青春の中で義姉夫婦から特別指導をしてもらい、ぐんぐんと伸びた技量でモンド・グロッソに出場し有終の美を飾りパーティーの後に熱い一夜までは想像を終えている。

 しかしそれを今認めるのとは別だった。

 

 中でも篠ノ之箒は気付いている。自身の姉が愛称を付けてまで個人を認識し、その名を呼ぶ時の声と空気がやたら柔らかい事に。

 そして姉妹故か、客観性が培われ始めた故か、本能で理解している。

 下手に触れれば絶対に面倒になることに。

 

「おい、悪ノリも大概にしろと言っただろ。あまり教え子を脅してくれるな」

 

「あうっ。う~~……ちなみにちーちゃん、もしかしてだけど……満更でもない感じ?」

 

 ペチッと織斑千冬に額を叩かれた篠ノ之束が、先ほどとは違い何かを期待する様な視線を向けて問う。

 

「友人の想い人と知ってちょっかいを出すほどではない。何よりお前の手綱を握っててもらわねばならん。だがストームの名誉のために言うが、有り無しを聞かれればストームは有りだ」

 

 聞き耳を立てていた五人は少し残念そうな表情を浮かべるが、そのの返答を聞いた篠ノ之束は、ストーム1の相関図が賑やかになり始めている五人とは違う捉え方をした。

 

「ほほぅ。つまり束さんが居なければ狙っていたと」

 

「さぁ、どうだろうな」

 

 アルコールの力が働いているせいか、いつもよりも表情に出やすい織斑千冬の様子を見た篠ノ之束は、意味深な笑みを浮かべて胸の谷間からズルズルッと一冊のファイルを取り出す。

 

「仮にちーちゃんが本気になっても私はスーくんを諦めないし、スーくんの最初も最後も譲る気はない。でも束さんは我儘だからちーちゃんをどこぞの馬の骨なんぞにも渡す気はない。そこで束さんは閃いたわけですよ」

 

 ばばーん! と口頭で言いながら織斑千冬に手渡したファイルの表紙には、極秘マークの他に"EDF百年計画"と書かれている。

 織斑千冬がそれを受け取りパラパラと流し読みしていくと、内容は宇宙開拓に関することが書き記されており、かなり大規模で夢物語だと笑われそうな事も書いてある。しかし篠ノ之束がやる気になったら……と考えながら読み進めていた所で、最後辺りのページでピタリとその手が止まった。

 

 そこに書かれていたのは今までの流れからして不自然過ぎる計画。というより、間違いなく私情だと確信できて怒る気すら失せる内容。

 

「なぁ束、私は今初めて知ったが……ストームは知っているのか?」

 

「まだ話してないよ?」

 

「私やストームが了承をしないと考えなかったのか?」

 

「私はスーくんもちーちゃんも離す気ないからね。何十年掛けても説得するつもりに決まってるじゃん」

 

「あぁ、うん。まぁ……強行を口にしない辺り、成長はしているのか……?」

 

 篠ノ之束に向けていた視線を再び手元のファイルに戻し、見間違いではない事に頭が痛くなった織斑千冬は、何が書かれていたのか興味が湧き始めている五人に見られないように静かにファイルを閉じる。

 織斑千冬には、色恋に浮足立っている面々に見せれば、心底くだらない流れになることが簡単に予想できた。

 

 書かれていたのは特殊重婚という謎項目。

 既存の物とは違う様式。

 篠ノ之束の配偶者の欄に、おそらくストーム1の本名であろう名前と自分の名前が記載されている婚姻届。

 

 そう、篠ノ之束はストーム1と婚姻を結んだ上で織斑千冬との同性婚を計画している。こともあろうに宇宙開拓の計画の一旦として組み込んでいる。

 

「知らない間に馬鹿になったな。束」

 

「いきなり罵倒!? あ、もしかして無理とか思ってる? 大丈夫、安心してよ! 都市型宇宙船の設計図も形になったし、準備は進めてるから十年以内に住めるようにはしてみせるよ」

 

「仮にそうだったとしても、これは意味が分からん」

 

「だって日本じゃないし、私がルールだし。束さんも悩んだんだよ……スーくんもちーちゃんもと欲張る方法を。そこでよくよく考えたら日本というか地球に拘る必要ないなって、だったら新しいルールを用意すればいいじゃんって」

 

 以前と比べ、本当に楽しそうにうきうきと語る姿は織斑千冬にとって微笑ましさすらある。

 私情オンリーであろう特殊重婚の項目も、婚姻届の隣のページには厳密に条件が記載されており、どこまでいっても一つの項目として組み込んでいるだけで"EDF百年計画"の概要はISを更に進化させ宇宙圏の進出と開拓、そして地球の防衛。

 最終的には複数の宇宙都市を想定し、篠ノ之束達だけではなく不特定多数の人類を想定して計画されている。長い付き合いから計画が本気であり、おふざけでない事はよく分かる

 

 篠ノ之束の計画に当たり前の様に他人が入っている。それだけでも織斑千冬からすれば大きな変化である事には違いなかった。

 しかし、だからと言って織斑千冬に特殊重婚なんぞを容認するつもりはない。ないが、自分では篠ノ之束を説得できるビジョンが浮かばないのも確か。できそうな方法も一つしか浮かばない。

 

「ストームとちゃんと相談はしろ」

 

「もちろんさぁ!」

 

 あくまで今は計画段階。まだ原案の段階。

 これでもしストームの説得が失敗に終わったのであれば、その時は仕方がないから束に付き合ってやるか……などと思いつつ、そう思えてしまっている事の意味に引っかかる事もなく、ストーム1に丸投げする。

 

 

 又、気になりすぎて悶々とするものの、割り込む勇気のない五人は、やり取りの全てを理解できたわけではないが、一つだけ確信した。

 都市型宇宙船とか、新しいルールとか、宇宙で何かをする気なのだろうなんて曖昧なものではない。

 

 

 そう、五人は確信している。

 篠ノ之束は――三人でヤる気だと。

 

 

 

◆◇

 

 

 

「一晩考えてみたが、やはりISのシステム面は分からん。俺よりは整備科の生徒を頼ったほうが有益だろう」

 

「やっぱりですよね~。一応力になってくれる子は知ってるんですけど……でもコレの相談をしてるってバレたら、多分もう二度と口聞いてくれなさそうなんですよ。やっと百分の一ぐらい回復した感じのする関係がまたマイナスに振り切っちゃいそうなんですッ!! ストームさんぐらいなんですよ! なんかいい感じに安全そうなのは!」

 

「……そういう状況であるのなら、仮に案が浮かんだとしてだ。妹さんにどう伝えるつもりだったんだ」

 

「あ……」

 

 生徒会長はストレスが溜まっていたのか、昨日の特訓は熱が入り続け結局は二時間以上も行っていたが、疲れが残っている様子はないな。

 伊達に学園最強ではないという事なのだろう。

 まぁ、その学園最強も妹が相手となるといつもの余裕が保てないようだが。

 

「まずはそこからだな。もし仲直りができたのであれば、機体を見せてくれればまた別の意見を出せるかもしれん」

 

「おねーさんだってできるならしたいですよぉ。でも簪ちゃん嫌がるし……」

 

 んもんも。とよく分からん声を上げて机に突っ伏して居るその姿を見せれば、話ぐらいなら聞いてくれそうな気もするがな。

 聞く限りでは姉と比較され続けて生まれた劣等感。更に姉の献身が拍車をかけている。そこに今回の専用機の未完成のまま放置されたことが重なり、一気に爆発して意固地にもなっていると言った辺りだろう。

 昔、似たような隊員が居たな……。

 

「これは俺の想像でしかないが、既に妹さんの中では君は完璧な姉だ。きっと今はそんな完璧な姉に見てほしくて頑張っているのだろう。故に一人でISを完成させようとしている」

 

「ちゃんと見ているつもりなんですけどね。すれ違っちゃうといいますか」

 

「今、妹さんが求めているのは君の庇護ではない。君からの評価だ。追いつきたくなったのだろう」

 

「私からの評価ですか? 頑張ってるねとかは言おうとしてますよ」

 

「卑屈になりすぎてしまうと素直に受け止められなくなる事も多い。完璧からの言葉では響かない。そうだな……これも何かの縁というやつだろう。俺を使うといい」

 

「ストームさんを使う?」

 

「君の話を聞いているだけで自慢の妹である事は伝わってきた。ならばその妹さんと共にであれば、俺にまともな一撃を入れられるかもしれん。腹を割って妹さんと話し、作戦を立ててみればいい。俺はその上で君達を退けてみせよう」

 

 別に本当に一撃を入れられるのであれば、それはそれで問題ない。

 必要なのは完璧という像に罅を入れる事。自尊心の芽が出る隙間を用意してあげる事……というのをメンタルケアが得意なレンジャー隊員から言っていた。

 

 あくまで一つのやり方でしかなく、状況によっての加減も必要とも言っていたが、この場にレンジャーは居ない。そこは俺が頑張ってみるしかないな。

 

「簪ちゃんと一緒に戦う」

 

「昨日の時にも感じていただろう? 後一手がない。もどかしい。その一手を詰めるのは、何も一人でやる必要はない。先に進みたいのであれば、完璧という妹さんからの評価に満足しないことだ」

 

 完璧とは永遠に分かり合えない隣人だ。分かり合えた瞬間それは完璧ではない――なんて言葉は、サテライト担当の学者が助手に言っていたんだったかな。

 あの時は頭に留める程度だったが、今ならば当時よりは理解できているかもしれん。

 

「ありがとうございます。すぐには難しいかもしれませんが、ちょっと頑張ってみます」

 

「ダメだった時はまた来ればいい。妹さんと来るのであればそれでもいい。織斑先生には秘密にしておこう――すまない。電話だ。はい、こちらストーム1」

 

『スーくん、銀テカが現れた』

 

「場所は」






今回の装備
装備1左手:なし
装備1右手:ステンレス製の鍋蓋 ストーム1カスタム(修繕済)
装備2左手:なし
装備2右手:なし
補助装備:なし
補助装備:なし



あわあわりんちゃんかわいいと思います。
ぶっとびわがまま兎も微笑ましいと思います。


何やら色々とあったようですが、無事続けられ嬉しい限りです。
又、もう少しで完結予定ですので、最後までお付き合い頂ければ幸いです。

誤字報告、感想等々ありがとうございます。
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