ごみ拾いしながらコーラル漬けの飼い犬と飼い主を救おうとするお話 作:一般通過コーラル漬けルビコニアン
エンケファリンとコーラルの併用なんてするもんじゃないですね。変な幻覚が見え隠れしています。
深夜、ウォッチポイントデルタ。惑星封鎖機構の警備が目を光らせているその場所から少し離れたビル。そこにハンドラー・ウォルター率いる五人の強化人間から成るハウンズ小隊は居た。
『今回の任務は、ウォッチポイントにあるセンシングバルブを破壊し、そこから流れたコーラルの流れを観測、技研都市の存在する地点を割り出すことが目的だ。無論、此処の警備は一筋縄ではいかない。気を引き締めていけ』
ウォルターの通信と共に彼女たちは警備部隊に奇襲を仕掛けていく。
『――ッ! 奇襲!! 総員、迎撃準備を――――――――』
一人がそれに気づき、通信を行うもすぐさま撃墜された。
『相手は――五機!? どこの企業だ! ベイラムか、アーキバスか!?』
『敵の詮索は後にしろ、今は迎撃をするぞ』
ウォッチポイントの警備と言うだけあり、レーザー砲二門にMT数機、更にその奥にも同様の警備がある厳重なものであるが、彼女たちからすればそんなもの紙よりも薄い警備としか言いようがなかった。
『コード78、応援を―――!? これは――本部と』
また一機、撃破。あっという間に前線の歩哨部隊を殲滅。途中、応援を要請しようとしたがウォルターにより、通信は妨害されている。陸の孤島と化した部隊の末路は猟犬達によって決められていた。
『前線の部隊を殲滅したようだな。次の地点に向かえ』
さらに奥、ウォッチポイントに続く橋を警備する
『なんだこのAC部隊は。歩哨部隊はどうした!?』
『コード18、総員戦闘配備!!』
途端に慌ただしくなる最後の防衛ライン。しかし、それでも彼女たちに焦りはない。
端に続く門と側面に設置された、3門ものレーザー砲も、数機のMT達も、彼女たちからすれば先ほどと変わらない、あってないような戦力だ。
『コード31C 被害甚大!! 至急、応援を』
最後の一人が本部に通信を行うも案の定届く訳も無く。あっけない最期を迎えることになった。
『最後の仕上げだ。その先にある、ウォッチポイントの制御センターに向かい、内部にあるセンシングバルブを破壊。その後はすぐに離脱しろ。そう長い間通信の妨害を行うことはできない』
橋を封鎖している門。その先にある制御センターに繋がる橋を通過しながら621は先輩である617達から聞いた話を思い出していた。
――RaDにいた時、『彼』が振舞ってくれた料理はとても美味しかった。機会があれば621も食べてみると良い。
そう言った彼女達は第4世代の強化人間らしからぬ豊かな表情を見せていた。
興味が湧いた。ひょっとしたら、私も何か変わるかもしれない。この仕事が終わったらウォルターにお願いしてみよう。
そう思いながら制御センターまで後僅かまで近づいた時だ。
『ほぉ……? あのハンドラー・ウォルターの飼い犬がここまで生き残っているとは。珍しいこともあるモノだな? ハンドラー・ウォルター』
突然開かれた通信チャンネル越しに聞こえた声に一番動揺したのは、その場のハウンズではなくその飼い主であるハンドラー・ウォルターだった。
『まさか貴様は、スッラ!?』
『あの時は一匹仕留め損ねたが……今度は全員仕留めてやろう』
通信越しからでも分かる粘り気のある殺意にハウンズは戦闘態勢に移った。
『c1-249 独立傭兵スッラ。第一世代強化人間の生き残りだ。話し合いでどうにかなる相手ではない、全員気を引き締めて対処しろ』
先ほどの相手とは異なり、全員の攻撃を掻い潜りながら確実に一人に攻撃を集中させてる。
『確か…私が相手していたのはお前だったな? 618。あの時逃げられたのは惜しかったが…ここで纏めて葬れるのは手間が省ける』
戦闘をしながらも通信越しから聞こえる声に何処か不快感を与えられ、集中を削がれる。
『618、奴の言葉は気にするな。617、618のフォローに入れ。619と620はスッラの体制を崩すことに集中しろ。621、この中ではお前の火力が一番高い。足が止まった隙を突け』
ウォルターの指示に反応するように全員の配置が変わる。スッラはそれにも柔軟に対応するが、そのたびにウォルターによる的確な指示により徐々に不利になりつつある。
やがてその時は訪れた。積み重なった衝撃の残留が積もりに積もって制御システムの容量を超えた。その結果、やむなく緊急停止し姿勢の安定を図ろうとする。その一瞬を621が見逃すはずもなかった。
『―――ハンドラー・ウォルター…ウォッチポイントは……止めて置け』
懐に潜られ、パイルバンカーによりリペアキットを使う間もなく撃破されたスッラは、その言葉を残して機体と共にこの世を去った。
『お前たち、スッラの言ったことは気にするな…だが、よくやった。その先で補給用のシェルパを手配した。使うと良い』
隔壁にアクセスし、内部に入るとシェルパが入り口から飛来し、地面に着地。先ほどの戦闘で弾薬やリペアキットを消費してしまった彼女たちはそこから物資を補給すると、四人は入り口とセンシングバルブの空間を見張り、残った621がセンシングバルブを破壊することになった。
入り口から降下し、目的の物に近づく。空間の中央、下向きに設置されているそれを破壊し、後は脱出するだけになった――――筈だった。
破壊した直後、周辺の危機が電力を失い暗闇があたりを支配する中、地面からにじみ出るように赤い光が漏れ出る。
『これは―――不味い…! お前たちそこから脱出――――――――』
警告した時にはもう遅く、制御を失ったコーラルが解放され621達はその爆発的な本流に呑まれ意識を失った。
―レイヴン? レイヴン? 聞こえますかレイヴン?
―『今回』は随分と流れが違うのですね?
―それに貴女を介してではなく直接こちらに来てくれるなんて……貴女も薄々気付いてはいるのでしょう?
―ただ、私を知覚してくれないのはとても残念ですが……
―今度はウォルターも、皆も死ぬことの無い世界を目指しているみたいですね。
―初めて見る彼女達が、貴女の前に散ったハウンズの人達なのですね?
―……フフッ、これを言うのは何回目でしょうか? さあ、起きてください。貴女の意識がコーラルに散逸する、その前に。
視界に赤い何かが走った――――――――――
『嗚呼…俺も…コールサインが…欲しかったなぁ…』
『戦友―――』
『G13!―――』
『素敵なステップです――――――』
『選ぶのは良いことだ――――――』
『君が燃え殻に火をつけたんだ―――――』
『お前と俺で…何が違うってんだ―――――』
『貴様は駆除すべき―――――』
『ある科学者の話だ――――――』
『苛つくぜぇ…野良犬に…憧れたんだぁっ…!!』
目が覚めた。
気が付けば
――目が覚めましたか、レイヴン、いえ――『今の』貴女は621でしたね
脳内に≪知らない/よく知った≫聲が聞こえた。
――積もる話はありますが、先にやらなければいけないことがあります。それは、貴女もよく知っている筈
目の前に
|どうやってあの帯状のユニットを使うのかわからないけど《対処法はよく知っているから》、落ち着いて闘おう。此処には自分一人だけじゃない。他の皆もいる。
――さあ、621、そして始めて見るハウンズの皆――――――――――――
――メインシステム、戦闘モード再起動
おまけ:エアーちゃん
皆さんお馴染のヒロインの一人(?)。ただ、今回はどこか違うようで……?
主人公がここに来た瞬間に殆どの記憶をエアーちゃんは理解。その後に起こるイベントについて殆どを知ってしまった。ただ、主人公とコンタクトを取ろうとしたが知覚されず、ついには第十世代の手術まで受けてしまったので残念に思ってる。ただ、若返った主人公の姿には涎を垂らして見ていた。涎出るかは知らないけど。ハウンズが居るのを知って621とコンタクトを取れるかも期待し、ウォッチポイント襲撃にてついに念願が叶った。他のハウンズのメンバーも致死量のコーラル摂取によりエアーのことを知覚している。
ついでにエアーと交信した結果、エアーちゃんが保持していた記録(主人公のプレイ)も共有された。ただ、記録であって記憶ではないため、なんとなく覚えている、知っている程度しか感じていない模様。
いや、本当にどうしてこうなった(後悔)