少し短めかもしれませんが、楽しんで読んでもらえたら嬉しいです。
それではどうぞ♪
翌朝
朝の五時。普段ならまだベッドの中で熟睡している時間だ。
春人はある人物に呼ばれ整備室に来ていた。欠伸を抑えつつ、目の前の人物を見る。
普段ならこんな格好のこの人は見れないだろう。
「…おはようございます。怜衣さん」
「……ふうわぁ……おはよう……」
いつもみたいに白衣をだらしなく着ている事もなく、髪の毛もしっかり整えられている。…雰囲気はいつも通りだが…。
「怜衣さんが居るってことは…」
「……ああ、出来たぞ~……ほら、そこにあるだろ?」
春人は怜衣が指を指した方向に顔を向けると、一つの金属体が鎮座していた。
そしてその中から…、
「名前は…そうだな~。……よし春人が決めろ」
「…ええ?僕ですか…?でも、こういうのって…操縦者自身に決めさせるんじゃ…」
「お前が決めるから良いんだろ?」
「………??」
春人は怜衣の言っている事が理解できずに首を傾げていた。
「(……こいつ気付いて無いのか?普通、自分の半身みたいな専用機をわざわざ一人の男子学生に預けるわけ無いだろ?……そいつが好きじゃないかぎり……。好きでも預けるかどうか分からないのに……)」
怜衣は呆れた様子で春人を見る。相手の子は分からないが、相当春人に惚れてるんだろうな~ということぐらいは簡単に分かる。
「……なんというか…、可哀想だな……」
「…何でそんな呆れた目で僕を見てくるんですか…!?」
春人は後ろからの視線に痛みを覚えつつも、怜衣にこの機体の性能について聞いてみた。
「…そうだな~。ベースはそのままで、簡単に言えばお前の『白鵠』と『黒雛』…それとあの゛戦術小僧゛の機体の能力を一部使わさせてもらった」
「………はい?」
「…と言っても『白鵠』と『黒雛』は春人の簡易版だ。゛戦術小僧゛のは完全に再現している。あとオリジナルで八つのビット兵器。このビット兵器は空間把握の力が結構要るからな…でも、使いこなせたら相当強いぞ」
「……いやいや……」
『流石じゃないか…な、主人♪』
天照はニヤニヤと笑い声を含めこのISを見る。
「…簪になんて言おう…」
「ほう…簪と言うのか~…まぁその辺りは良いのだが、名前は決めたのか?」
「…取り合えず…まぁ…」
春人は安直だろうな~と考えつつも、しっかりと名前を考えていた。
「じゃあ…私は行くよ~」
ヒラヒラと手を振りながら踵を返す怜衣。
「もう帰るんですか?」
「…ああ、別にここには長居するつもりもないし、データは後で春人が送ってくれればそれでいい~」
それだけ言うと怜衣はこの場からさっさといなくなってしまった。
「…ありがとうございました」
春人は深く頭を下げると同時に、簪に何て言えばいいのか分からず、どうしようもない複雑な気持ちを抱えたままになった。
◇◇◇◇◇
あの後すぐに簪の部屋へ行き、専用機が届いたことを知らせた。すると簪は、ずれた眼鏡をかけ直し急いで整備室へと走る。
途中、扇子を持った人と出会ったが、気にせず整備室へと向かう。
そして、
「…これが、私の…」
白と黒が入り交じったIS。打鉄弐式の形を崩さず、それでいてどこか本来の感じとは違う…、まさに異色と言ってもいいISが鎮座している。
「…えっと、簪。このISには名前があるんだけど…」
「えっ?」
「いや、製作に携わった人が、僕に名前をつけろって言ったんだけど……簪が嫌なら別にいいんだけど」
「春人に決めてほしい」
言い終わるか否かの時に簪が、ガッと春人の手を掴む。
「…いいの?」
「うん。だって、春人がいなかったらこの子はここにいないから…。この子は春人が作ったみたいなものだから」
笑顔で言ってくる簪に目を逸らしつつ、春人は目の前に立っているISと簪に向けて、
「…『白雛』…このISの名前は、『白雛』だ」
「…白、雛……。白雛、か…」
「ダメ、かな?」
すると簪は頭を横に振ると、
ギュウッ。
「……へっ?」
「…ううん。ううん…。最高だよ。『白雛』。私は…なんてお礼を言えばいいのか分からない。こんなに、こんなにも…幸せな事があるなんて…。ありがとう…春人」
「……どういたしまして。でも、それはこれを作り上げた人達にも言ってあげなくちゃ」
「…うん。分かってる。ちゃんと会ってお礼がしたい。……今はいないの?」
簪は辺りを見渡すが、残念ながら怜衣さんは先程帰ってしまった。データを送るときにでも紹介しようかなと考える春人。
「…まぁ、それはいいんだけど……」
?と簪は分からないような顔で春人を見るが、
「そろそろ離れてくれないかな?…色々ヤバい…」
そう言うと、簪は今の状況に気づき、カアァッっと顔を赤くしてしまう。
「…ご、ごごご、ごめん」
バッと離れると、気まずい雰囲気が春人と簪を包み込む。なのだが、
『おい、主人よ……、そろそろ刺されるか?』
こんな怖い一言を言ってくる天照のおかげで、春人はいち早く現実の世界に戻ってこれた。
「あっ、その、簪。IS…使ってみるか?」
「…う、うん。アリーナに行こうか…」
取り敢えず、性能を確かめたいので、ISを待機状態に戻し、アリーナへと向かう二人。途中、簪がなにか言っていたような気もするが、何でもないと答えたので、あまり気にしない春人だった。
――大好きだよ…春人。
◇◇◇◇◇
その姿を後ろから見守る一人の女子生徒。扇子を広げ、感動と書かれた様は、女子生徒が流す涙を表していた。
「…よかったわね。…簪ちゃん」
涙を拭き取ると、笑顔になるが、簪を見る表情が少し暗くなった。
「…私は、貴女と…もう一度お話したいのよ…」
『こういう状況』を作ってしまったのは『姉』である自分に責任がある。その思う彼女は『妹』に手を差し伸べた春人に頭を下げると、ありがとう…と呟いた。
だが、
「…と、感謝はしたけど…、簪ちゃんと抱き付くなんて…なんて、羨ましい……。じゃなくて、けしからん!私の大事な妹に手を出したらどうなるか、分からせてあげる必要があるわね…」
フフフッと黒い笑みを浮かべる彼女の後ろに一人の女子生徒が現れる。
「…会長。ついに朝から堂々と自分の妹をストーキングする変態になってしまいましたか…。いや?元からでしたね」
「う、虚?な、何でこんなところに?」
「…それはこちらの台詞です。バカ。さぁ来て下さい。バカのおかげで仕事が溜まってるんですから」
虚と呼ばれた女子生徒は扇子を持った女子生徒を掴み、そのまま引きずる。
「…ちょっ、ちょっと待って?バカて私のこと?ねぇ?虚ちゃん!」
「他に誰かいますか?私には朝から堂々と自分の妹をストーキングする貴女以外見当たらないのですが…?」
「…ムッ、今回は怒ったわよ虚ちゃん。ちゃんと上下関係を教えないと――」
「…はぁ?何か言いました?」
真っ黒い瞳が扇子を持った女子生徒に向けられる。女子生徒は頭を横に振りながら、何でもないです。と震えた声で言う。
「…ああ、それと、会長。『お仕事』が来ています」
虚は手に持ってる資料を渡すと、先程の雰囲気が軽く何処かへ飛んでいた。
「…はぁ。また?今回で何件目?」
資料を受けとると、彼女もまた先程の軽い雰囲気が消え、真剣な表情になる。
「…四件目ですかね?毎回相手の『無人機』が強くなっているようにも思えますが」
「…思えるじゃなくてなってるのよ。本当嫌になるわ」
資料をパラパラめくりながらため息をつく。
「でも、これは私の問題だからしょうがないわ。それに、相手の情勢も気になるし」
資料をめくり終えると、すぐに歩きだす二人。
「…本当の本当に嫌になるわね。
―――葬儀屋」
会長と呼ばれる少女、更識楯無は資料をクシャリと丸めると、怒りを込めた声でそう呼ばれる組織の名前を呟いた。
どうだったでしょうか?
感想、ご指摘がありましたらよろしくお願いしますm(__)m
また読んでくださったら嬉しいです。
それではm(__)m