ガールズバンドが家の合鍵を持っていました※認知してません   作:アライグマ318号

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 まぁ、作者はどちらかというと……大馬鹿寄りの天才らしいっす(謎)

 お気に入り、感想、評価、ありがとうございます!!

 赤バー評価まであと少し(・∀・)ニヤニヤ

 嬉しすぎてちょっと張り切っちゃったせいか、今回はすこ~~~~~し長いですが、ゆっくり読んでいただければ幸いです。

 あと、今回ちょっとR15のタグが火を噴きます!!

 


第3話 天才相手に勝てる人いる? いねぇよなぁ!!

 

 凡人が天才に勝つことなんて、できない。

 

 これはあくまで持論だし、もちろん異論は認めるが……どちらかと言えば俺はこの説を支持したい。

 

 なればこそ、努力は報われないのか?

 

 なればこそ、その努力に意味はないのか?

 

 なればこそ、凡人は天才に屈するしかないのか?

 

 否。断じて否である。

 

 確かに、凡人と天才が同じスタートラインに立った時。凡人が勝つことなど、まずあり得ない。

 

 だが、それはあくまでも同じスタートラインに立った場合の話である。

 

 天才と渡り合う上で、凡人が勝つ方法……それは、同じ場所から始めるのではなく、それよりも前に、ずっとずっと前の時点でスタートし、加速し、最高速を維持し続ける事である。

 

 天才のスタート地点と凡人の最高地点。

 

 凡人が天才に勝つには、常に本気と全力を以て挑むほかないのである。

 

 その点で言えば、Roseliaの氷川(ひかわ)紗夜(さよ)さんが分かりやすいだろう。

 あの人は常に全力でギターを、音楽を、バンドを続けている。

 

 だからこそ、彼女は天才に並び立つに至った。Roseliaとして、頂点へと至った。

 

 ……俺には、とても無理だ。

 

 さて、ここまで俺は凡人が天才に勝利する方法をさんざん説いてきた訳だが……先程も前述した通り、凡人が天才に勝利するには、並大抵の努力では敵わない。

 それこそ、天才が最高速など出したら、凡人では間違いなく勝てない。

 

「この状況……すっごくるんっ♪ ってするね、沙介くん♡」

「ぐっ……この……っ!」

 

 手足を動かそうとするが、ベッドと手を繋ぐ形で付けられた手錠によって手は無力化され、脚は彼女の全体重がかけられる事によって、こちらも無力化されていた。

 下腹部の辺りには柔らかい尻の感覚がのしかかり、彼女は蠱惑的な笑みを浮かべながら、俺の首や頬に対して愛おしそうに手を添わせた。

 

「生意気な沙介くんも良いけど……こうして何もできなくて悔しがってる沙介くんも、るんっ♪ ってくるなぁ」

日菜(ひな)さん……なんでこんな事を……」

 

 マウントを取り、完全に俺を組み伏せるアイドル……氷川(ひかわ)日菜(ひな)さんを精一杯睨みつけながら、俺はどうしてこうなってしまったのか……

 

 そんな後悔を抱えながら、俺は数時間前の失態に思いを馳せるのであった。

 

 

 

 

 


 

 数時間前。

 

「ふぅ……やっぱり休日の学校ほど嫌なもんはないな……」

 

 俺の通う某緑(ぼうりょく)学校には、少し特殊な制度がある。

 それは、一週間のうちに問題事を起こした生徒は土曜日に強制的に学校に登校させられるという内容の制度である。

 

「いや、俺巻き込まれただけなのに……」

 

 何が起こったのか簡潔に説明すると……

 俺のクラスメイトの一人が、授業の復習で理科室にある薬品を使って教室の窓を全て爆破したのである。

 ちなみに、俺はただその現場でクラスメイトが火薬などの危険物を作らないよう監修するように教師に言われていたのだが……結果はまぁ、見ての通りである。

 俺が少しトイレに行っている間にニトログリセリンを調合したドアホが教室を爆破。入った瞬間俺は巻き込まれ、理科室にいるクラスメイトは事前に防護服を着ていたおかげで軽傷。

 

 普通なら退学ものだが……

 

「まぁ、この学校の生徒だし仕方がないか。帰ったらちゃんとレポート作っとくように!」

 

 とは、教室を爆破された理科の教師と校長の談。

 

 このことからも、俺の通う某緑(ぼうりょく)高校がいかに特殊……もといイカレた高校かが分かるだろう。

 

 こんな事を許容する学校も学校だが、俺が席を外したものの数分でニトログリセリンを調合するクラスメイトもクラスメイトだ。

 天才であることは間違いないのだが……爆破だけはやめて欲しいものだ。

 

「これだから天才ってやつは……」

 

 そんな愚痴を口にしながら、俺は帰路を辿る。

 

「ま、速く帰って寝るか……」

 

 元々、俺は夜型の人間ということもあり、朝にはめっぽう弱いのだ。速く帰りたいがために、歩みを早める。

 

 自室のあるマンションまで辿りつき、エレベーターに乗り、玄関前までたどりつく。

 

 鞄から鍵を取り出し、鍵口に差し込み一度回し、扉を開けようとするが……どういう訳か、鍵が開かない。

 

「はぁ……」

 

 鍵を開けたのに扉があかない。それはつまり鍵が最初から開いていたということであり……

 

 カチャリ

 

 音を立てて扉を開け、改めて玄関から自室へと足を踏み入れる。視線を足元に向けると、見覚えのない靴が一組。

 内心で諦めの気持ちを浮かべながら、リビングに入る。そして、リビングに滞在していたその人物が俺の存在に気が付いたのか、座っていたソファから立ち上がり、俺の前にやって来る。

 

「あ、沙介くんお帰り! ご飯にする? お風呂にする? それともあ、た——」

「帰れ」

 

 心の底から全て言い終える前に、リビングに居座る違法侵入者に心からの言葉を放つ。

 

「えー! せっかく収録終わって直ぐにこっちに来たのに、酷くない?」

 

 水色の髪を三つ編みにしてまとめ、白い服の上から紺色のチェックを纏った少女……氷川(ひかわ)日菜(ひな)は、不満そうに頬を膨らませる。

 

 よし、とりあえずやるべきことをやろう。

 

「日菜さん……どうやってウチに入りました?」

「え、普通に合鍵を使って入ったけど? それがどうしたの?」

 

 やはり持っていたらしい。まぁ、予想通りだ。このまま上手い具合に鍵を出させて鍵を破壊しよう。

 

「……その鍵、よかったら見せてもらっていいっすか?」

「え、いやだけど」

「ちっ」

 

 日菜さんの即答に、思わず舌打ちが出る。やはりダメか……

 

「だって沙介くん、リサちーや他の子の鍵も壊したんでしょ?」

「やっぱ伝わってたか……」

 

 おそらくリサさん経由で鍵の破壊に関してはほかの合鍵所有者にも伝わっているだろう。これからより合鍵の破壊難易度は上がっていくだろう。

 

「もうやだ疲れた……」

 

 半ば諦めにも等しい心の声が漏れ出る。あぁ、どこかにまともな女の子はいないものか……

 

「んー?」

 

 ふと、疲れた様子の俺を見た日菜さんが何かを考えるような声を漏らす。

 

 なぜだろう……日菜さんの口元は吊り上がり、目は妖しく細められ……もうこの際シンプルに言おう。めっちゃ悪だくみをしているような顔をしているのだ。

 

「ねぇ沙介くん」

「な、なんですか……」

 

 日菜さんの悪だくみなど、何をされるか分かったものではない。俺は無意識に一歩、後ずさりをする。

 

「もし、沙介くんがあたしの持ってきた鍵を見つけたら、壊してもいいよ?」

「え」

 

 まさかの提案に、俺は思わず間抜けな声を出してしまう。

 だってそうだろう? 鍵を破壊していいと提案するなんて誰が予想できただろうか。

 

「た、だ、し」

 

 日菜さんはくるりと向きを変え、リビングにあるソファに向けてごろんとして……イタズラめいた蠱惑的な笑みを浮かべると……

 

「あたしがどこに鍵を隠したか、見付けられたらね♡」

「……なっ!?」

 

 つまり、日菜さんは自分に近づいて探せという事だろう。否、この表現ではおそらく足りない。

 

 わたしの身体をまさぐって鍵を探してみろ

 

 と言っているのだ。

 

「あ、胸とか触ってもいいけど、優しくしてね?」

「さ、触るわけないでしょ……」

「えー、鍵がそこにあるかもしれないのに?」

「くっ……!」

 

 果たしてよいのだろうか?

 

 相手は勝手に俺の家の合鍵を使って部屋に入って来た不法侵入者だ。

 

 だが、それでも相手は女性であり、もっと言えばアイドルだ。

 

 こんなことしたら、普通にファンに殺される程度じゃ済まないだろう。たぶん、というか絶対に海に沈められる……

 

「あ、そういえば沙介くんの部屋見てなかった!」

「は?」

 

 俺が葛藤していたのも束の間。日菜さんはソファから跳び出すと俺の部屋に向けて駆け出した。

 あまりにも予備動作のない行動に一瞬反応が遅れてしまい、俺は日菜さんの凶行を許してしまう。

 

「ち、ちょっと!! 俺の部屋には入らな……ってもう入ってる!!」

 

 慌てて日菜さんを追いかけようと考えるが……ふと、日菜さんの持ってきたであろう小さなトートバッグが視界に入る。

 

 そうだ、もしかしたら日菜さんが愛音みたいに鞄に仕舞っているとしたら、こんな無駄なことをせずに終わらせられるかもしれない。

 

「とりあえず、こうだ!!」

 

 日菜さんの持ってきていた鞄を、机の上にぶちまける。

 

「鍵……鍵はどこだ!?」

 

 鞄の中から出てきたものを片っ端から手に取り、確認する。

 

 氷川家のものと思わしき家の鍵。簡単な化粧品の入ったポーチ。鉄製の手錠とその鍵と思わしき小さな鍵が三本。なにか良く分からないキーホルダー。紗夜さんの写真。アロマオイルの入った小瓶。

 

「いや待て待て待て待て待って、ちょっとおかしいものが混じってるぅ!?」

 

 鍵に関しても分かる。一瞬俺の家のものかと思ったが、違った。これはまぁ、良いだろう。

 簡単な化粧品のポーチ。これも女の人……それも大学生ともなれば納得のいく品だ。

 よくわからないキーホルダーも、きっと衝動買いしたものだろう。このスライムともタコともとれないクトゥルフっぽい見た目も、すごく気になるが気にするものではない。

 紗夜さんの写真も、無人島に一つ持ち込むものは? と聞かれて姉の写真を選択するような人だ。きっと、いつも持ち歩いているのだろう。

 アロマオイルの入った小瓶も、日菜さんの私物だと分かる。アロマオイルは、日菜さんの趣味も相まって納得のいくものだ。

 けれど……

 

「な、なんでこんなの持ってるのあの人……?」

 

 鞄の中に入っていた鉄製の手錠。

 

「え、あの人警察だっけ? アイドルじゃなくて? ん? ん? ん?」

 

 思考が麻痺する。こんなものの使用用途なんて、人を捕まえる以外にあるのだろうか……? 捕まえる? 誰を? なんのために?

 

「俺を……?」

 

 いやまさか。そんなことはありえない。そう考えて俺は手錠を捨てて、部屋の方を見つめる。

 

「ね、念のため……対策はしておこう……」

 

 俺はスマホである人物に連絡を入れ、日菜さんの後を追うのだった。

 

 

 


 

 

「あ、ねぇねぇ沙介くん、えっちな本が見つからないんだけど、どこか知らない?」

「あるワケねぇだろんなもん」

 

 手錠のことを忘れて改めて部屋に入ると、なぜか俺の使うベッドの下を見ようと地面に這いつくばる日菜さんの姿があった。何をしているのかと聞けば、この始末である。

 

「えー、高校生ってえっちな本を沢山持ってるんでしょ?」

「何億年前の話をしてんですか?」

 

 今時エロ本を持ってる高校生なんて、黒ギャルと同じく絶滅した存在である。

 

「え、もしかして沙介くん枯れてる?」

「エロ本を持ってないイコール枯れてるって発言は止めてもらえます?」

 

 こちとら毎度毎度女子が家にやって来るから、三大欲求的負担がエグイことになっているのだ。その発言は流石に怒りを覚える。

 

「あ、そっか! 今時の男の子は全部パソコンに入ってるんだ!」

「そりゃそ……ちょっ、何してるんですか!?」

 

 ベッドの下にエロ本がないと分かるや否や、即座に地面から起き上がって部屋の角に設置されたパソコンに向かう日菜さん。

 

「え、パソコンを開けて普段沙介くんがどんなものを見てるのか、気になるなぁって」

 

 パソコンを開こうとする日菜さんだが……当然、パスワードを入力するロック画面に直撃する。

 

「ねーねー! パスワード教えて!」

「教える訳ないでしょうが」

 

 とんでもない事を聞いてくる日菜さんだが、当然教える訳がない。

 そんな事よりも俺は、日菜さんの姿をじっくりと見続ける。

 一体どこに鍵を隠したのか。極力触らずに確認しておきたい。

 

(ズボンのポケットに財布とかスマホを入れてるみたいだけど……いや、隠れてるだけかもしれないな。どこだ? どこに隠した?)

 

 カタカタと聞こえるタイピング音の中から、鍵特有の金属音を聞き取ろうと耳を澄ませ……ん? タイピング音?

 

「開けたよー」

「嘘でしょ!?」

 

 ロック画面は完全に解除され、いつのまにか画像フォルダが開かれていた。

 

「ちょっ、なにしてるんですか!?」

「だって沙介くんパスワード教えてくれないんだもん、自力で開けるしかないじゃん!」

「ざっけんなそんな横暴通るか!!」

 

 俺は慌てて日菜さんに駆け寄り、日菜さんをパソコンから引き剥がそうとするが、日菜さんも足腰に力を入れる形でパソコンから離れようとしない。

 

「あ、もしかして全部サイトとか使ってみてるのかも! 検索履歴からえっちなサイトを探して~」

「やめろおおおおおおおおおおおお!!!!」

「わっ」

 

 もう我慢できない。俺は日菜さんの腰に抱き着き、そのまま力任せに空中に持ち上げる。

 

「これ以上好き勝手させてたまるか!!」

 

 こう見えて、しっかりと鍛えているのだ。日菜さんを片手で短時間抱える程度ならできる。俺は片手で日菜さんのズボンのポケットに手を突っ込み、鍵を探す。セクハラと言われようが、これ以上日菜さんにパソコンをいじらせる訳にはいかない。

 

「クソっ! どこにもない!!」

 

 日菜さんのポケットに手を入れてスマホや財布を取り出すが、鍵はどこにもない。

 

「よっと!!」

「うおっ!?」

 

 突然、日菜さんは俺に抱えられた状態でベッドのある向きへ身体を強引に引っ張り、俺は日菜さんに釣られる形で倒れそうになってしまう。

 

 俺は日菜さんを支えきれず、そのまま日菜さんをベッドに押し倒すような形で倒れてしまう。

 

「あ、危ないじゃないですか!! なに考えてるんですか!?」

「でも、沙介くんならしっかりと支えてくれるでしょ?」

 

 顔を少し赤くしながらも、嬉しそうに笑う日菜さん。

 

 ……不覚にも、その微笑みに一瞬ドキッとしてしまう。

 

「馬鹿なこといってないで、はやく鍵を……」

 

 カチャリ

 

「え?」

 

 ふと、聞き覚えのない金属音が耳に入った。

 

 手を見ると、なぜか見覚えのある金属品が。

 

 先ほど、日菜さんの私物であるバッグからも、同様のものを見たのを覚えている。

 でも、脳が理解を拒絶してる。

 

「日菜さん、これは?」

「んー? この前お店に行ったらるんっ♪ ってしたから買ったの! 三つくらいかな? 一つは手用、もう一つは足用、あと一つは予備で買ったんだけど……買っておいて良かった♡」

「そっかぁ」

 

 どこで買ったのかとかを聞いてるんじゃないんだけどなぁ。

 

「馬鹿なことやってないで早くこれ外してください」

 

 俺の両手に掛けられたモノ……鉄製の手錠を外すよう、俺は日菜さんに頼むが……

 

「えいっ」

 

 カチャリ

 

 再び、二度目の嫌な金属音。

 よく見ると、両手を繋ぐ手錠の間にもう一組の手錠が掛かり、空いたもう一つの手錠はベッドの空いた格子の隙間に付けられている。

 

 

「アンタ何やってるんですか!?」

「これでもう逃げられないね♡」

「く、クソっ! 外れない!!」

 

 ガチャガチャと動かしても、人間の力では鉄を素手で壊すことなどできない。

 そうやって抵抗している内に、日菜さんは次の手を打つ。

 

「えいっ!」

「うわっ!?」

 

 突然、日菜さんは俺に押し倒された状態のまま足を伸ばして足を俺の後ろに絡めて、腕でだけでなく、身体そのものを逃げれないようにする。

 その上で俺の首後ろに両手を回し、そのまま抱き着くように自分の方に俺を抱き寄せると、そのまま手錠ごと身体を捻り、寝技でも書けるように俺と自分の位置を入れ替える。

 あまりにも自然に、それでいて素早い日菜さんの行動に、手錠に夢中になっていた俺は対応できずにそのまま無抵抗に押し倒されてしまう。

 

「この状況……すっごくるんっ♪ ってするね、沙介くん♡」

「ぐっ……この……っ!」

 

 手足を動かそうとするが、ベッドと手を繋ぐ形で付けられた手錠によって手は無力化され、脚は日菜さんの全体重がかけられる事によって、こちらも無力化されていた。

 下腹部の辺りには柔らかい尻の感覚がのしかかり、日菜さんは蠱惑的な笑みを浮かべながら、俺の首や頬に対して愛おしそうに手を添わせた。

 

「生意気な沙介くんも良いけど……こうして何もできなくて悔しがってる沙介くんも、るんっ♪ ってくるなぁ」

「日菜さん……なんでこんな事を……」

 

 流石に手を塞がれ、足を無力化されてしまってはどうしようもない。

 

「な、何が目的なんですか……」

「もちろん、沙介くんだよ♡」

 

 日菜さんは、俺の着ている学ランのボタンにゆっくりと手を掛けながら説明する。他人のボタンを外し慣れていないのか、日菜さんは少し手間取っているようだった。

 

「このままあたしが沙介くんを美味しく頂いちゃえば既成事実ができて、他の人から沙介くんを独占できるでしょ?」

 

 抵抗しようにも、手も足も無力化されてしまい俺に抵抗する術はない。

 

「そうすれば、あたしとおねーちゃんで沙介くんを共有できる……」

 

 学ランのボタンを外した次は、制服のシャツのボタンに手をかける日菜さん。既にコツを掴んだのか、今度は流れるような速度で制服のボタンを外す日菜さん。

 

「なーんだ、シャツの下に下着来てたんだ」

 

 少し残念そうにため息を吐く日菜さん。

 

(このままコイツの好きにさせてたら本気でヤバい!! 色々と奪われる!?)

 

 今の状態で俺にできることは、何があるのだろう。

 

 全力で暴れるか? それとも口で説得するか? もういっそのこと諦めてしまうか……否、それだけは絶対にダメだ。

 

 とりあえず、全力で暴れてみよう。

 

「こ、このっ!!」

「わっと」

 

 腕は繋がれているが、足は日菜さんが乗っているだけだ。

 俺は全力で暴れることで、拘束解除を試みる。

 

 足を軸に腰を強引に起こし、そのまま大きく身体を動かしながら日菜さんを俺の上から落とそうとするが……

 

「ぜぇ……ぜぇ……」

「あはははは! おもしろ~い、るんっ♪ ってした! ねぇ沙介くん、もう一回やって!」

 

 普通に楽しまれただけで、何もできなかった。むしろ余分に体力を使ってしまったせいで、状況は悪化した気がする。

 こうなれば、説得する他逃げ道はない。

 

「こ、こんな事しても良い事なんて何もないですよ! 今なら鍵も壊すの諦めますから、やめてください!!」

「えー、説得のつもり? この状況で沙介くんを見逃す方がもったいなくない?」

 

 日菜さんは考える素振りすら見せずに、説明をした。

 

「沙介くんはそもそも年下だし、学校も違うから中々会えないし、それにこの状況で見逃したら沙介くんしばらく逃げるでしょ? だったら今逃げられない内に手籠めにした方が良くない?」

「て、手籠め……っ!?」

 

 手籠めにするなんて言葉、女子から聞くとは思わなかったなぁ……

 

「逃げられない沙介くんなんて、まな板の上のお魚と同じだよ? るるるるるんっ♪ ってするなぁ♡」

 

 ダメだ……そもそも天才(日菜さん)相手にレスバ勝負を挑むこと自体失策だった。

 

 もう、受け入れる他ないのだろうか……

 

 俺はそっと目を閉じ、日菜さんに何をされても耐えられるよう、心の準備を整える。

 

 その様子を日菜さんは了承としたのか、ゆっくりと俺の両頬を包むように手を当て、そのままゆっくりと自身の唇と俺の唇を近づける。

 

 吐息が、唇にかかる。日菜さんの息が、体温が、重さが、匂いが、俺の五感を占領してゆく。

 

(せめてもう少し、ムードがある方が良かったなぁ……)

 

 そんな事を思いながら、俺は全てを諦めた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、どうやら神様は俺を見捨ててはいなかったらしい。

 唇と唇が重なる直前に、その人物は現れた。

 

「随分とお熱い仲なのね、二人とも」

「「っ!?」」

 

 突然掛けられた声に日菜さんは動きを止め、俺は目を開く。

 長くサラサラとした金髪の髪を(なび)かせ、白いシャツタイプの服に薄い黄色のスカートを履き現れた救世主……白鷺(しらさぎ)千聖(ちさと)さんは、全く笑っていない笑みという矛盾した表情を浮かべながら、俺と日菜さんを見ていた。

 

「千聖さん……どうしてここに?」

「どうしてって、貴方が私を呼んだんでしょ?」

「え……あ」

 

 ふと、日菜さんの鞄の中から手錠を見つけた際のことを思い出す。

 

(そ、そうだ……俺、ヤバいと思って千聖さんに事前に連絡を入れてたんだ……)

 

『日菜さんが、家に来てます。よろしければ、連れて帰って貰えませんか?』

 

 と。

 紗夜さんを呼んでも良かったのだが……あの人だと最悪の場合日菜さんに言いくるめられる可能性もあった。だからこそ、俺は千聖さんを呼んだのだ。千聖さんなら、日菜さんを止めてくれるはずだと。

 

「え、えーっと……」

 

 流石にこの状況では色々と不味いと思ったのか、日菜さんも言葉を出すのに困っているようだった。

 

「ち、千聖ちゃんも一緒にやる?」

「うふふふふふふ」

 

 日菜さんの誘いに対し、笑いを持って返す千聖さん。何故だろう。その笑みを向けられているのは俺ではないのに、背後に薄ら寒いものを感じる。

 

「日菜ちゃん。沙介くんから今直ぐ離れなさい? さもないと……」

「さ、さもないと……?」

「紗夜ちゃんに貴方が沙介くんを襲って、沙介くんが快楽堕ちするくらいには滅茶苦茶にされて、大変なことになっちゃったって伝えるわよ? 紗夜ちゃん、すっごく怒るでしょうね」

「ちょっ、それは色々と誤解が生まれるでしょ!!」

 

 千聖さんの提案に、俺は恐怖を感じた。そんな事を伝えられた日には、次紗夜さんに会った日にどんな目を向けられるか……

 

「ま、()()未遂だもん! そこまでは()()やってないもん!!」

「まだ!? まだって何!? え、日菜さん俺がそんな状態になるようなことするつもりだったの!?」

 

 千聖さんが来てくれて良かったと、心の底から思う。

 

「日菜ちゃん、二度は言わないわ。今直ぐ沙介くんから降りなさい?」

「は、はーい……」

 

 これ以上千聖さんを怒られることは得策ではないと考えたのか、不満そうにしながらも、日菜さんは大人しく俺の上から降り、ベッドから離れた位置に移動した。

 

「あ、ありがとうございます、千聖さん……」

「良いのよ。頼ってくれて嬉しいわ」

 

 それより、と言葉を続け、今度は千聖さんが寄って来る。ただし、その鍵には日菜さんの鞄に入っていた小さな手錠の鍵が握られているが。

 

「私をこうして呼び出したわけだし、報酬があっても良いわよね?」

「は、はい、もちろんです! 俺にできることなら……!」

 

 千聖さんは、手錠の鍵を俺に見せながら告げた。

 

「じゃあ、この手錠の鍵とアナタの家の合鍵、交換しましょ♡」

「…………え?」

 

 その言葉に、俺は固まった。

 

「っていうか千聖ちゃん、それあたしが用意した鍵じゃん!」

「日菜ちゃんは静かにしてなさい」

「はーい……」

 

 流石に逆らえないのか、日菜さんは頬を膨らませながらも大人しくしていた。

 

「できないの? じゃあ、沙介くんはずっとこのままね」

「いやいやいや、そりゃああんまりでしょ!?」

「でも沙介くん。アナタ、私の要求を断れる状況かしら?」

「うっ……!?」

 

 そう、この状態では俺に逆らう権利はない。

 

 俺は手錠で繋がれ、千聖さんは手錠の鍵を持っている。

 

 おそらく、合鍵が欲しいというのは口実だ。

 

 俺が合鍵を破壊しているのは、その合鍵が俺が認知していないものだからであって、認知してしまえばその鍵を破壊する理由がなくなる。

 

 つまり、いつでも千聖さんだけは俺の家に自由に出入りできるということだ。

 

「あーあ。断られでもしたらうっかりこの鍵捨てちゃいそうね。もしかしたら日菜ちゃんと一緒になってアナタを襲っちゃうかもしれないわ」

「わ、分かりました……要求を呑みます……」

 

 二人同時に襲われるくらいなら、まだ要求を呑んだ方がマシだ。

 

「聡明で助かるわ、沙介くん」

 

 微笑みを浮かべながら、千聖さんは俺に繋がれた手錠を解除するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

「とりあえず日菜さん、アンタ俺の家出禁な」

「ちぇー」

 

 リビングにて。俺は日菜さんに判決を言い渡した。

 

「文句あります? 俺手錠で拘束されてあと一歩で貞操を奪われてたんですけど?」

「まぁ、出禁になっても外で仕掛ければいいや!」

「ぐっ、このっ!!」

 

 再び怒りが湧き上がるが、どうにかして心を落ち着かせる。

 

「ほら日菜ちゃん、そろそろ帰るわよ?」

「はーい」

 

 既に帰る準備を整えていたらしい千聖さんは、玄関に向かっていた。自身が持っている合鍵を公式的に認知されたことが嬉しかったのか、鼻歌混じりに玄関で待っており、上機嫌なことが見て分かる。

 ……追々、千聖さんの鍵も破壊しなきゃな。本人にバレないよう、なるべく内密に……

 

「それじゃ沙介くん、また遊ぼうね!」

「はは……もう勘弁してください……」

 

 肉体精神。どちらも疲れ切ったせいか、乾いた笑みが零れる。

 

「あ」

「?」

 

 ふと、靴を履こうとした日菜さんが何かを思い出したかのような声を出す。

 

「忘れるとこだった……っと」

 

 靴の中に手を入れ、日菜さんは何かを探す様に手を探り……銀色の鍵を取り出した。

 

「え、日菜さん靴の中に隠してたんですか!?」

「うん! 本当なら沙介くんに身体を隅々まで探させて、我慢できなくなって襲ってもらうつもりだったけど……あたしの方が我慢できなくなっちゃった!」

「我慢できなくなっちゃった! じゃねぇよ!! 俺をなんだと思ってやがる!!」

 

 そりゃあ、どこを探しても見つからないはずだ。だが、鍵を見つければこっちのものだ。

 

「よっと」

「あっ!!」

 

 取り出された鍵をひったくるように奪い取り、俺は玄関先に常備してある金槌を手に取る。

 

「え、待ってなんで金槌が玄関先に用意してあるの!?」

「護身用」

 

 それだけ言うと、俺は鍵をそのままリビングにあるヒビの入った机……もとい破壊台の上に置き……

 

「せいやっ!!」

「あああああああああああああ!!」

 

 バキッ!!

 

 と大きな音を立てて、鍵を破壊した。

 

 響く金属音。

 叫ぶ日菜さん。

 微笑んだままの千聖さん。

 

 俺は、そろそろ鍵のシリンダーを変えようと考えながら、今日の鬱憤をぶつけるかのように鍵を叩き割ったのだった。







 さて、次はだれを書こうかな(未定)。

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