ようこそ橋本正義の教室へ 作:ふわふわプリン
そして須藤暴力事件についてがメインですが、一瞬で終わります。
中間テストから一月が経過し、わたしは相も変わらず毎日毎日生徒会室に押しかけ生徒会の一員になりたいと訴え続けた。
私の熱意に負けたのか、私だけが例外的に生徒会役員となる事を許された。
風の噂でBクラスの一之瀬帆波が南雲の紹介で生徒会入りの推薦を受けたそうだが、私の熱意と比較され見事に惨敗して行った。
推薦なんてなくても、熱意があればなんでも出来る。
タイムマシンだって作れるし、どこ○もドアだって作れるし、空飛ぶ車だって作れる。
まあ見た事無いけど。
ボードゲーム部でお金を稼いだり、生徒会として見回りをしたり、書類作業をしたり、勉強をしたりとごく普通な生活を送っていた。
たまに監視カメラを仕掛けたり盗聴器を仕掛けたりもしたが、それも全て学校の平穏を守るためなのだ。
断じて、人の弱みを握る為や脅すために設置した訳では無い。
神には誓えるが、弟妹には誓えない…無念。
7月1日、事件が起きた。
いや、事件は先月に起きていたんだけど、それに関連してポイントの供給がストップしてしまったのである。
「ということで、CクラスとDクラスの問題が解消され次第ポイントは支給される。それまで不便をかけるだろうが、どうか理解して欲しい。」
Dクラスの須藤健という生徒がCクラスの小宮や石崎に暴力を振るい、CクラスはDクラスを訴えたらしい。
これらは特別棟で起きた事件であり、特別棟にには監視カメラがなく、判断が出来ないため審議会が開かれる事になったそうだ。
特別棟は部活動や授業で使う事もあるが、ほとんど無価値な建物であり、人の出入りは無い。
生徒会の見回りも滅多に行われないため、事件を起こすには持ってこいの場所である。
そんな場所くらい学校ご把握していてもおかしくないはずだ。
おそらく過去にも特別棟で事件が起こった事があるに違いない。
私は生徒会役員という立場なので、過去の事件や審議会の記録を確認する事ができるので、何件か調べたところ特別棟でも事件は起きている。
過去にはレイプ事件や公然わいせつ、恐喝等の事件が起きているが、証拠が無かった為に注意喚起のみ行われている。
だが今回何故審議会が開かれたのかと言うと、石崎達が本当に怪我をしているからだ。
敷地内の医者からも軽症ではあるが診断書を貰っており、目に見える形で事件が起きているため、学校側も生徒会と共に審議をつける必要が出てしまった。
該当クラスの支給を止めれば良いという単純な問題では無さそうだ。
もし他クラスも関係していれば、クラスポイントの支給額が変動する可能性がある。
だから安易に該当外のクラスの支給もする訳にもいかないのだろう。
翌日Dクラスの櫛田桔梗が何か知っている事があれば連絡して欲しいと、頭を下げて懇願しに来た。
クラスメイトの為に必死なところを見るに、典型的な良い子ちゃんなのだろう。
健気で愛らしい姿に心が痛むが、生憎私は何も知らないのである。
その日の放課後、珍しく部活が無い橋本とたまたま一緒に帰る事になった。
「そういえば橋本君、Dクラスの櫛田桔梗さんが今日事件についての目撃者を探しにAクラスに来たんだよ。」
橋本は櫛田が来たタイミングで先生に呼ばれて留守にしていた。
だから櫛田の訪問は知らない。
「櫛田桔梗ちゃん?あー、須藤暴力事件の証人を探してるのか。」
「そうそう。もし情報を知っていたとして、Dクラスに教えたところで何も得にならないんだよね。」
「教えるわけないよねー」と冗談混じりで笑えば、橋本は黙り込む。
一人分の足音が消えたので振り返ると、彼は立ち止まっていた。
「どうしたの?橋本君。」
「…龍園か。」
「ん?どーしたの?」
「いや、何でもない。早く帰ろうぜ?」
立ち止まったのは橋本なのだから、そのセリフは私が言うべきものだ。
それにしても橋本の「龍園か」という呟きにも何か意味があるのかもしれない。
恐らくDクラスに恩を売るのではなく、Cクラスに恩を売るべきだという事は分かっているはずだ。
しかし、Cクラスに恩を売るとしても、脅せるような材料は何もない。
他クラスを牽制したい気持ちはあるが、それをするのは今では無い。
家に帰ると何の気なしにPCを起動させ、監視カメラの映像を確認する。
監視カメラには、男子生徒4人が階段の目の前で何かを話している姿が映っている。
対応している盗聴器の録音を確認すると、どうやらバスケ部を辞めるように3人の男子生徒が1人の生徒に詰め寄っていた事が分かった。
そして挑発し、暴力を誘発させている。
…これって、もしかして、もしかしなくても今話題の暴力事件の真相だよね?
私はすぐさま映像を切り抜き、暴力事件の証拠を纏めて橋本の個別チャットに送信した。
『やっほー橋本君!須藤暴力事件の真相を知ってしまいましたよ。生徒会の一員として許せないけど、橋本君がクラスの為に使ってくれるならその方が良いかなと思って、これを送ります。有効活用してね!!』
すぐに既読が着いたため、何かしら返信が来るかと思ったが何故か3時間後に返信が来た。
『今回の映像を隠し通し、Cクラスが勝訴できるように協力する事になった。そして対価に毎月俺はCクラスから40万プライベートポイントを徴収する。俺と君に10万プライベートポイントずつ、残りの20万プライベートポイントは派閥の奴らで山分けするように言っておいて欲しい。くれぐれも俺の事は言わないでくれ。頼む、福智院さん。』
Cクラスと交渉をし、龍園との関係を築き莫大な富を得た。
そして、派閥の生徒へも気遣うなんて、まさに上司の鑑だ。
そして自分がポイントを渡すと提案した事実を隠そうとするなんて、かなりの照れ屋さんらしい。
このギャップを知ればまたクラスの女が騒ぎ出しかねないので、私は黙ってやる事にした。
『このポイントを皆に支給します!どこかの、誰かさんが皆んなの事を考えてポイントを支給してくれたの。少ないかもしれないけど、支給が止められている今、このポイントを使って生活しようね!』
まるであしながおじさんみたいだ。
しかし、わざわざ橋本派のグループチャットで伝えている時点で、橋本の仕業だという事は気づいているはず。
まあ、名前は出てないし問題ないはずだ。
すぐに既読が着き、感謝スタンプの嵐がやってくる。
橋本正義は親切な人間だ。
だからこそ、私は彼を信じて派閥の長を任せたのである。
数日後、DクラスはCクラスに対して50CPを支払い、須藤は2週間の停学となったらしい。
Aクラス 1100 CP
Bクラス 663 CP
Cクラス 614 CP
Dクラス 34 CP
AクラスとBクラスのクラスポイントは変動せず、Cクラスのクラスポイントが増加してDクラスのクラスポイントが減少した。
Cクラスは正攻法では無く、搦手を得意としたクラスだ。
Bクラスが陥落するのも時間の問題だ。
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7月1日の放課後のことだ。
俺は橋本正義。
学校生活を楽に過ごす為なら何でもする男だ。
所属は1年Aクラス。
当初はどこかの派閥に入るはずだったが、気付いた時には橋本派の派閥リーダーとなっていた。
そしてこれも全て福智院光のせいだ。
彼女とは中学が同じで、中学2年時に同じクラスになったりもした。
そして俺が体育委員会に所属していたこともあり、生徒会監査をしていた彼女とは生徒議会の時に何度か話した事があるので、切っても切れない縁がある。
福智院光は至って普通な人間だが、少し歪んだ面を持っていて危うい。
親切で真面目、授業中に本を読んだり落書きをしたりして教師に怒られはするが、成績は上位に位置している。
そして生徒会や委員会の役員として活躍した経験から、お咎めも軽く、信頼の厚い世渡り上手。
だけど、俺は知っている。
彼女がウチの学年を壊したことを。
学年崩壊したきっかけは些細なものだった。
流行中の願いの叶うアプリだった。
どんな願いでもインストールして願いを書けば叶ってしまう。
同級生の女子生徒が好きな人と付き合えた事により、このアプリは急速に広まっていった。
しかし、アプリに書き込まれる願いは明るいものばかりではない。
中には嫌いな人間に死んで欲しい、いじめっ子を殺して欲しい、自殺する勇気が欲しい、気に入らないから弱みを知りたい、といった願いを書く者もいた。
そしてそれらの願いが1人の少女の願いによって暴かれてしまったのである。
このアプリがハッキングされ、情報が学校掲示板に流出し、この学年は崩壊した。
そしてこのアプリを警察が調査したところ、この学校の生徒の兄が作ったものだと言う事が分かった。
そしてその兄の妹が、福智院光の親友である神楽美咲だ。
アプリを作ったのは一介の大学生であり、ハッキングをする事は容易だ。
アプリが悪意のある目的の為に作られた訳ではなく、世代別の日常的な願いを心理学の研究の一環で知るために作られていたため、罰せられる事は無かった。
しかし、神楽美咲は学校に居ずらくなり不登校になってしまった。
そして、俺はこのアプリを流行らせたのが福智院光である事を知っている。
福智院はアプリを流行らせただけでなく、アプリ内の願いの短冊と書かれたシステムを無断で学校掲示板に貼り付けた。
その情報をもとにハッキングされてしまい、SNSに生徒の情報が拡散されてしまったのだ。
ハッカーは逮捕されたが、福智院が掲示板に暴露した事が終わりの始まりだった。
実際その効果によって、助けられた生徒も何人かいる。
自殺をしようとしていた生徒、殺人計画を練ろうとしていた生徒は、福智院の行動を恨んではいたが一線を越える事は無かった。
しかし、その件で自分の願いが知れ渡り好きな相手に告白もしていない状況で振られたり、馬鹿にされたり、いじめが酷くなったりした人物もいた。
彼等は福智院の行動により、全てが壊されてしまったのである。
それでも、福智院は毎日学校に通い何事も無かったかのように振舞った。
数人の友人も福智院の行動を誉め、人に言えないような願いを持った生徒を非難し、福智院光は穏やかな青春を過ごし卒業していった。
自分がした事の重大さにも気付かずに。
そして高校に進学し、福智院と同じクラスになった時は驚いたぜ。
優等生では無く、問題児よりの秀才である福智院がAクラスに選ばれていたんだからさ。
そして今日、福智院の恐ろしさを俺は真の意味で理解してしまった。
『やっほー橋本君!須藤暴力事件の真相を知ってしまいましたよ。生徒会の一員として許せないけど、橋本君がクラスの為に使ってくれるならその方が良いかなと思って、これを送ります。有効活用してね!!』
届いたメッセージには映像と音声が添付されており、須藤暴力事件の真実を知った。
何故この現場を彼女は撮影していたのか。
普通の女子高生であれば、この映像の場面に遭遇する事はほぼ無い。
…まさか、学校の至るところに監視カメラでも設置しているのか?
しかしこの映像は使える。
Cクラスが暴力事件をでっち上げた理由は、Dクラスから賠償金を得ると同時に訴訟が起きた場合の学校側の判断を知る為だろう。
なら、今回の訴訟を成功させる為に手伝ってやれば俺にもプラスに働くはずだ。
今の俺はAクラスのリーダー格だから下手に他クラスと交流する事は出来ないが、今回手に入れた映像と音声はCクラスを脅す上で使える材料になる。
俺は携帯を手に取り、電話をかける。
数回のコールの後、電話口から声が聞こえた。
『…よぉ、Aクラスの日和見主義。』
「はははっ、酷い言われようだぜ。龍園、今回の暴力事件はさぞ辛かっただろう?俺としてはお前に協力したいと思っているんだ。ちょうど面白いものを持っている事だしな。」
『…ハッ、なんだ?暴力事件の映像でも持っているのか?なぁ、おい。』
威圧的な話し声だが、コイツはどのクラスの王よりも冷静な人間だ。
だからこそ、ここで弱気になる必要は無い。
「せっかちさんは嫌われるぜ。今から送る映像に目を通してくれ。」
俺は映像を龍園のチャットに送る。
数分後、龍園は映像を確認し終わったらしい。
『チッ、見られていたか。』
「おいおい、何言ってるんだよ?確かに石崎達が先に煽ったとは言え、確実に須藤は軽傷を負わせている。Cクラスは被害者、そうだろ?」
『ほお』と感心したような声を上げ、龍園と取引をする土台作りが完了した。
『これから毎月俺に40万プライベートポイントを支払って貰う。期限は2年生の4月までだ。その代わり、今回の訴訟について俺はCクラスを勝たせる。俺は、お前と友好的な関係を築いていきたいんだが、どうだ?龍園。』
「…割に合わねぇ、と言いてぇところだが嘘だとバレればCクラスのクラスポイントが減るかもしれねぇ。いいぜ、その提案に乗ってやるよ。だが覚えておけ、まずはDクラス。次にBクラス。最後にAクラス、お前たちを潰す。」
怖い言葉を投げかけられたが、これで動く為の資金稼ぎが出来る。
毎月のポイント以外にも資金源は必要だ。
しかし龍園も、とんだ勘違い野郎だな。
「そりゃ有難いな。だが龍園、俺は最後に俺がAクラスに上がっていればそれで良い。その時どのクラスにいたとしても、な。」
俺が本当に欲しいものはポイントでは無く、人脈だ。
貸しを作り、その相手の力でAクラスに引き上げて貰う。
「俺はお前と仲良くしたいんだが、どうだ?協力しねぇか?」
『ハッ、考えておいてやるよ。だが協力じゃなく、俺が一方的に利用するだけだ。』
龍園の考えには同意するが、利用するのは俺で利用されるのはお前だ。
Cクラストの繋がりはできたが、一応一之瀬やDクラスとも繋がりはあった方が有利になれる。
情報収集もしやすくなるため、スパイでも雇いたいところだな。
その後、Cクラスが訴えを取り下げそうになったが、それはDクラスの策略である事が福智院のカメラ映像から分かった。
Dクラスはカメラをわざと設置し、特別棟に元から監視カメラがあったと思い込ませようとした。
この策はなかなか面白いが、Aクラスの俺が居たため、Cクラスは訴えを取り下げ無かった。
そして見事訴訟に勝ち、Dクラスから50CPを取上げた。
龍園との契約により、俺は毎月10万プライベートポイントが懐に入ってくる。
そして福智院の口止めもしてあるので、バレる心配も無い。
「いつでもクラスを乗り換えられるようにしておかないとな。」
俺はそう呟き今日も学校へと向かう。